院試 4力(材料力学・流体力学・熱力学・機械力学)の出題傾向と対策
院試 4力(材料力学・流体力学・熱力学・機械力学)の出題傾向と頻出パターン、答案で失点しやすい論点、機械系志望の外部生が押さえておくべき大学・研究科ごとの試験範囲を整理します。
- 出題大学
- 16大学
- 収録した設問
- 181問
- 収録年度
- 2012〜2026年度
- 2024〜2026年度
- 103問
- 試験科目
- 53科目
- 頻出テーマ
- 7テーマ
4力 院試の出題傾向 — 頻出テーマ × 年度(2012〜2026年度)
最も多いのははりの曲げで71問(11大学)、 年度別では2025年度の44問が最多です。
| テーマ | 2026 | 2025 | 2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 | 2019 | 〜2018 | 大学 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| はりの曲げ | 12 | 17 | 12 | 12 | 11 | 4 | 3 | – | – | 11 | 71 |
| 固有振動数と振動系 | 6 | 18 | 16 | 13 | 5 | 6 | 3 | – | 4 | 16 | 71 |
| 境界層 | 5 | 4 | 6 | 4 | 3 | 3 | 2 | 1 | 2 | 8 | 30 |
| 応力・ひずみ | 2 | 3 | 2 | – | 1 | 2 | 1 | – | 3 | 6 | 14 |
| 伝熱工学 | 2 | 1 | 1 | 2 | 1 | – | – | – | – | 4 | 7 |
| ナビエ・ストークス方程式 | – | 1 | 1 | 1 | – | 1 | – | – | – | 3 | 4 |
| モールの応力円 | – | – | 2 | 1 | – | – | – | – | – | 3 | 3 |
| 年度計 | 27 | 44 | 40 | 33 | 21 | 16 | 9 | 1 | 9 | 200 |
「〜2018」は2012〜2018年度の合計です。数字はテーマ別ののべ件数で、1つの設問が複数テーマに当たる場合は重複して数えています。重複を除いた設問数は181問です。
4力を出題する大学・研究科と試験科目
この分野が出た大学×研究科×試験科目は53件。出題数の多い順に24件を挙げます。うち24件は年度別の解答PDF122本を公開しています。
| 大学・研究科 | 試験科目 | 設問 | 出題年度 | 解答PDF |
|---|---|---|---|---|
| 電気通信大学大学院情報理工学研究科 | 専門科目(機械知能システム学) | 23 | 2020〜2026(7年度) | 2020〜2026年度・7本 ¥3,200 |
| 東京科学大学工学院 機械系 | 機械系 専門科目 | 13 | 2021〜2025(5年度) | 2021〜2025年度・5本 ¥2,880 |
| 東京大学工学系研究科 建築学専攻 | 建築学 専門科目 | 12 | 2020〜2026(6年度) | 2020〜2026年度・6本 ¥3,200 |
| 九州大学大学院工学府 機械工学専攻・水素エネルギーシステム専攻 | 機械工学 | 11 | 2023〜2026(4年度) | 2023〜2026年度・4本 ¥2,580 |
| 東京大学工学系研究科 機械工学専攻 | 機械工学 専門科目 | 10 | 2021〜2026(5年度) | 2021〜2026年度・6本 ¥3,200 |
| 早稲田大学大学院基幹理工学研究科 | 機械科学・航空宇宙専攻 専門科目 | 8 | 2022〜2026(5年度) | 2022〜2026年度・5本 ¥2,880 |
| 東京大学学際情報学府 | 学際情報学専攻 先端表現情報学コース 専門科目 | 8 | 2012〜2020(7年度) | 2010〜2020年度・11本 ¥3,200 |
| 東京大学工学系研究科 | 社会基盤学 | 7 | 2021〜2026(6年度) | 2021〜2026年度・6本 ¥3,200 |
| 東北大学大学院工学研究科 機械系 | 機械系 数学・専門科目 | 7 | 2023〜2025(3年度) | 2023〜2025年度・3本 ¥2,180 |
| 東北大学大学院情報科学研究科 | 3群 機械・知能系 数学・専門科目 | 7 | 2023〜2025(3年度) | 2023〜2025年度・3本 ¥2,180 |
| 名古屋大学大学院工学研究科 機械航空系 | 基礎部門・専門部門 | 7 | 2022〜2025(4年度) | 2022〜2025年度・4本 ¥2,580 |
| 京都大学工学研究科 機械工学群 | 数学・機械力学・専門科目 | 5 | 2024〜2026(3年度) | 2024〜2026年度・3本 ¥2,180 |
| 九州工業大学大学院情報工学府 | 専門科目(知的システム工学) | 4 | 2025〜2026(2年度) | 2025〜2026年度・2本 ¥1,680 |
| 東京大学工学系研究科 | 化学システム工学 | 4 | 2022〜2026(4年度) | 2022〜2026年度・5本 ¥2,880 |
| 北海道大学大学院工学院 機械・宇宙航空工学系研究室群 | 専門科目 | 4 | 2024〜2025(2年度) | 2024〜2026年度・3本 ¥2,180 |
| 東京大学工学系研究科 電気系工学専攻 | 専門科目 | 3 | 2023〜2025(2年度) | 2022〜2025年度・3本 ¥2,180 |
| 名古屋工業大学工学研究科 電気・機械工学系 機械工学プログラム | 機械工学プログラム 専門科目 | 3 | 2024〜2026(3年度) | 2024〜2026年度・3本 ¥2,180 |
| 京都大学理学研究科 地球惑星科学専攻 | 地球惑星科学専攻 基礎科目 | 2 | 2025〜2026(2年度) | 2022〜2026年度・5本 ¥2,880 |
| 九州大学大学院理学府 | 地球惑星科学専門科目 | 2 | 2021〜2023(2年度) | 2021〜2026年度・6本 ¥3,200 |
| 九州大学大学院理学府 物理学専攻 | 物理学 | 2 | 2020〜2026(2年度) | 2020〜2026年度・6本 ¥3,200 |
| 筑波大学大学院理工情報生命学術院 数理物質科学研究群 応用理工学学位プログラム 電子・物理工学サブプログラム | 専門科目 | 2 | 2025〜2026(2年度) | 2025〜2026年度・4本 ¥2,580 |
| 東京大学工学系研究科 精密工学専攻 | 専門学術(小論文) | 2 | 2025〜2026(2年度) | 2025〜2026年度・4本 ¥2,580 |
| 東京大学工学系研究科 物理工学専攻 | 物理学 | 2 | 2022〜2025(2年度) | 2012〜2026年度・15本 ¥3,200 |
| 北海道大学大学院理学院 物性物理学専攻・宇宙理学専攻 | 物理学 | 2 | 2023〜2024(2年度) | 2021〜2024年度・3本 ¥2,180 |
4力と設問が重なる他分野の頻出テーマ
- カルノーサイクル 9大学22問 — 集計は院試 統計力学の出題傾向と対策側
- 熱力学第一・第二法則 10大学22問 — 集計は院試 統計力学の出題傾向と対策側
4力とは、機械系の院試で必出となる「材料力学・流体力学・熱力学・機械力学」の総称です。学部の標準教科書から大きく外れる範囲は出ません。にもかかわらず、合格者と不合格者の差は明確に出ます。なぜか。4科目すべてを2〜3時間の試験時間で答案化する物量負荷と、各科目に固有の「答案の作法」があるからです。1科目だけ得意でも、残り3科目で形式不備の失点を重ねれば総点は落ちます。本記事は、外部生がこの4科目をどう順に攻め、どこに時間を使うべきかを整理した実務マップです。
学部段階で固めておくべき基礎
- ベクトル解析:勾配・発散・回転、ガウス・ストークスの定理。流体力学と材料力学の応力テンソルで必須
- 常微分方程式:定数係数線形(同次・非同次)、ラプラス変換。振動・伝熱・制御で全面的に使う
- 偏微分方程式:熱方程式と波動方程式の変数分離法。伝熱と連続体振動で必須
- 線形代数:固有値問題、対称行列の対角化。多自由度系の振動と応力テンソルで必須
- SI単位と次元解析:流体力学の問題は次元チェックで答えの当たりがつくことが多い
科目別に見る出題と失点
4力それぞれに固有の答案作法があり、各科目の頻出論点と失点パターンは独立に整理した方が頭に残ります。1つずつ見ていきます。
材料力学
頻出は、はりのたわみ(オイラー=ベルヌーイ)、組み合わせ応力(モールの応力円)、座屈、ねじり、応力・ひずみテンソルの基礎。出題の中心は「定型問題が解けるか」ではなく「境界条件と座標を正しく設定できるか」です。はりのたわみ問題で原点と正の向きが明示されていない答案は、たわみの符号と最大値の位置が一意に定まらず、計算が合っていても採点者は減点せざるを得ません。フリーボディダイアグラム(FBD)を本式に入る前に必ず描き、支点反力を求める段階で「何を未知数とし、何の方程式が幾つあるか」を答案で明示してください。組み合わせ応力では、面の向きをθで切ったときの応力成分を変換式で出すよりも、まずモールの応力円を描いてから主応力・最大せん断応力を読み取る方が、計算ミスが起きにくく採点者にも伝わります。
流体力学
頻出は、連続の式、運動量保存、ベルヌーイの式、粘性流れ(クエット・ポアズイユ)、境界層理論、管路抵抗、次元解析。流体力学で最も多い失点は、近似条件の明示漏れです。ベルヌーイを使う瞬間に「非粘性・非圧縮・定常・流線に沿って」の4条件のうち、その問題で課されているものを書かないまま代入してしまう。境界層問題でプラントルの近似に入る前に「高レイノルズ数の極限」「圧力勾配の取り扱い」を一行書かない。これらは内容理解とは別の、純粋な答案作法の問題です。検査体積(コントロールボリューム)を取る問題では、まず体積を図に描き、境界の流入・流出を矢印で示してから運動量方程式を立てる順序を崩さないでください。次元解析の問題は捨てずに必ず手を付けてください。難易度に対する得点効率が4力の中で最も高い類型です。
熱力学
頻出は、第一法則と第二法則、エントロピー、各種サイクル(カルノー・ランキン・オットー・ブレイトン)、湿り蒸気、伝熱の基礎。失点の発生源は、状態量と過程量の混同、そして準静的・断熱の仮定の暗黙適用です。「P-V線図上で経路を示せ」と問われたら、まず本式の前にP-V線図を答案上に描き、過程ごとに準静的か否か、断熱か等温かを明記してから熱量・仕事の計算に入る。湿り蒸気の問題では蒸気表の数値を引用するだけでなく、乾き度の定義式(x = m_v / (m_v + m_l))を一行書き添えるだけで採点者の心象が変わります。サイクル問題は数値計算が長くなりますが、各点の状態量(P, T, v, h, s)を表にまとめてから熱効率の計算に入ると、転記ミスが激減します。
機械力学
頻出は、1自由度・多自由度系の振動、固有振動数とモード、強制振動と共振、連続体(弦・棒・はり)の振動、ラグランジュの運動方程式。最大の失点源は、運動方程式を立てる前の座標と自由度の設定が曖昧なままで答案が始まることです。多自由度系では、質量行列と剛性行列を明示した上で固有値方程式 |K − ω²M| = 0 を立てる順序を必ず守ってください。固有モードは正規化(最大成分を1にする・質量行列で正規化する等)の規約を一行明記してから書きます。連続体振動では、境界条件(自由端・固定端・単純支持)と初期条件の指定がモード解の選択を決めるので、これも図と一緒に明示する。ラグランジュ方程式の問題では一般化座標の取り方が複数あり得るため、最初に取った座標を明示しないと答えが採点基準と一致しなくなります。