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東大 工学系研究科 数学 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(解説6項目)

解説6項目の分野は確率・統計1項目、線形代数1項目、微分積分・解析1項目です。解説は2問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。原題の条件だけでは答えが一つに決まらないため、確定答案を収録していない箇所が1項目あります。各項目に対象の小問と収録範囲を記載しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 常微分方程式

I.1 定数係数の非同次方程式

特性方程式を使う理由

微分演算子を D=d/dxD=d/dx とすると、Derx=rerxDe^{rx}=re^{rx} なので、定数係数多項式 P(D)P(D) について P(D)erx=P(r)erxP(D)e^{rx}=P(r)e^{rx} が成り立つ。本問では P(r)=r2+6r+8P(r)=r^2+6r+8 である。この等式は、係数が xx に依存しないことに支えられている。特性根が異なるので二つの指数関数は線形独立であり、二階の同次方程式の解空間を張る。

非同次方程式では、一つの特解と任意の同次解を足せばよい。実際、線形性から P(D)(yp+yh)=3e−x+0P(D)(y_p+y_h)=3e^{-x}+0 であり、逆に二つの特解の差には P(D)(yp,1−yp,2)=0P(D)(y_{p,1}-y_{p,2})=0 が成り立つ。これが答案の形で全解を尽くす理由である。

指数関数の特解と共鳴

右辺が beaxbe^{ax} なら、P(a)≠0P(a)\ne0 の場合に beax/P(a)be^{ax}/P(a) が特解となる。本問は a=−1a=-1、P(−1)=3≠0P(-1)=3\ne0 なので、そのまま使える。aa が特性根なら分母が零となり、xeaxxe^{ax} などを試す必要がある。条件の確認をせずに形だけ覚えて使わない。

代入による確かめと誤答

e−2xe^{-2x} と e−4xe^{-4x} の左辺はそれぞれ (4−12+8)e−2x=0(4-12+8)e^{-2x}=0、(16−24+8)e−4x=0(16-24+8)e^{-4x}=0 である。特解 e−xe^{-x} の左辺は 3e−x3e^{-x} となる。右辺の係数をそのまま写して yp=3e−xy_p=3e^{-x} とすると、左辺は 9e−x9e^{-x} になり、要求される右辺の3倍になる。指数部だけでなく係数も代入して確かめる。

I.2 Euler型の方程式

べき関数が適する構造

Euler型の二階方程式 ax2y′′+bxy′+cy=0ax^2y''+bxy'+cy=0 では、xmx^m を微分して下がる次数を xx の係数が補う。そのため全項が xmx^m の定数倍になり、am(m−1)+bm+c=0am(m-1)+bm+c=0 という代数方程式に帰着する。y′′y'' の係数が零になる x=0x=0 を除けば、通常の二階方程式に直せる。

別の見方として t=log⁡∣x∣t=\log|x|、Y(t)=y(x)Y(t)=y(x) とおくと、xy′=Y′xy'=Y'、x2y′′=Y′′−Y′x^2y''=Y''-Y' である。これを使えば同次方程式は Y′′−Y′−2Y=0Y''-Y'-2Y=0 となり、特性根は 2,−12,-1 になる。x>0x>0 と x<0x<0 はこの置換で別の区間として扱うが、どちらでも x2,x−1x^2,x^{-1} を基底にできる。

原点を含める場合

原式に x=0x=0 を代入すると y(0)=0y(0)=0 が必要である。C2C^2 級の解として原点を通過させるなら、発散する C2/xC_2/x を除き、左右の x2x^2 の係数も y′′y'' の連続性のため一致させる。したがって、その場合は y=C1x2+x3y=C_1x^2+x^3 に限られる。通常点での一般解と、特異点をまたぐ滑らかな解の条件を混同しない。

検算と具体的な指数の誤り

x2x^2 なら x2(2)−2x2=0x^2(2)-2x^2=0、x−1x^{-1} なら x2(2x−3)−2x−1=0x^2(2x^{-3})-2x^{-1}=0、x3x^3 なら 6x3−2x3=4x36x^3-2x^3=4x^3 である。y′′y'' に由来する係数を m2m^2 と誤って置くと、特性方程式も解の指数も変わる。例えば x−2x^{-2} を同次解と書いた場合、左辺は 6x−2−2x−2=4x−2≠06x^{-2}-2x^{-2}=4x^{-2}\ne0 なので解ではない。二階微分の係数は必ず m(m−1)m(m-1) である。

II.1 二次式の特解を決める

係数比較が成立する条件

多項式がある開区間のすべての xx で零なら、各次数の係数がすべて零になる。非零の多項式は有限個の零点しかもてないためである。特定の数点で等式が合うだけでは、微分方程式の特解を得たことにはならない。

本問で係数比較を用いるのは、解の全体を多項式に制限するためではなく、次の設問で使える特解を一つ探すためである。非線形項 −2xy2-2xy^2 があるため、二つの解の和は一般には解にならない。線形方程式の重ね合わせをここへ持ち込まない。

最高次から比較する手順

x(2x3−1)y′x(2x^3-1)y' と −2xy2-2xy^2 がともに x5x^5 を生む。その釣り合いが 2A2(2−A2)=02A_2(2-A_2)=0 であり、候補を二つに絞る。低次項だけから先に決めようとすると、連立式が増え、A2=0A_2=0 の不適合を見落としやすい。得られた候補を元の式へ戻す最後の計算が必要である。

確かめと見落としやすい誤り

候補 y=0y=0 は最高次だけの条件には合うが、原式の残差は 2x22x^2 である。これを特解に含めると、例えば x=1x=1 で左辺が2となり破綻する。また、y2y^2 の項を誤って yy と読めば、y=2x2y=2x^2 の代入で −8x5-8x^5 が現れず、高次項が相殺しない。特解の直接代入では、微分項と二乗項の両方を追う。

II.2 特解を使うRiccati方程式の解法

逆数の置換で線形になる理由

一般のRiccati方程式 y′=a(x)y2+b(x)y+c(x)y'=a(x)y^2+b(x)y+c(x) で特解 ypy_p が一つ分かれば、u=y−ypu=y-y_p は u′=(2ayp+b)u+au2u'=(2ay_p+b)u+au^2 を満たす。定数項が消えたので、u≠0u\ne0 で逆数を取ると v′+(2ayp+b)v=−av'+(2ay_p+b)v=-a という一次線形方程式になる。特解が必要なのは、この定数項を消すためである。本問では係数をまとめた結果、積の微分にそのまま直せる。

一次線形方程式 v′+p(x)v=q(x)v'+p(x)v=q(x) の積分因子は μ=exp⁡(∫p dx)\mu=\exp(\int p\,dx) である。なぜなら (μv)′=μ(v′+pv)(\mu v)'=\mu(v'+pv) となるからである。本問の割る前の式では d′=8x3−1d'=8x^3-1 を使い、積分因子の計算を dd にまとめている。∫−2x dx=−x2+C\int -2x\,dx=-x^2+C の符号が、その後の分母を決める。

特異点と延長

元の方程式の最高次微分の係数は x=0x=0 と a=2−1/3a=2^{-1/3} で零になる。これらの点まで解を延ばす場合は、変形後の式だけでなく原式と連続性を確認する。例えば有限の C≠0C\ne0 なら上の有理式は x=0x=0 で y(0)=0y(0)=0 と延長できるが、C=0C=0 では y=1/xy=1/x となり延長できない。

C=a2C=a^2 のときは x=ax=a で分子・分母がともに零になる。しかし 2a3=12a^3=1 を使うと、x≠ax\ne a で x(2a2x−1)a2−x2=−2a2xx+a \frac{x(2a^2x-1)}{a^2-x^2} =-\frac{2a^2x}{x+a} と約分でき、y(a)=−a2y(a)=-a^2 へ滑らかに延長できる。C≠a2C\ne a^2 なら y(a)=2a2y(a)=2a^2 である。原式はこの点で y−2ay2+2a2=0y-2ay^2+2a^2=0 となり、いずれの値も満たす。分母零を一律に解の終端とするのでなく、除去可能かを確かめる。

検算と置換で失う解

有理式を N/DN/D、N=2Cx2−xN=2Cx^2-x、D=C−x2D=C-x^2 とおけば、y′=(N′D+2xN)/D2y'=(N'D+2xN)/D^2 である。これを(1)へ入れ、分母 D2D^2 を払うと全項が相殺する。別に y=2x2y=2x^2 も直接代入で残差零になる。v=1/(y−2x2)v=1/(y-2x^2) と置いた後に特解を書き戻さない答案は、この解を落とす。有限の CC をどの値にしても有理式が区間全体で 2x22x^2 になることはないので、任意定数があるだけでは補えていない。

解答

I.1 定数係数の非同次方程式

対応する同次方程式に y=erxy=e^{rx} を代入すると、特性方程式は r2+6r+8=(r+2)(r+4)=0. r^2+6r+8=(r+2)(r+4)=0. したがって同次解は C1e−2x+C2e−4xC_1e^{-2x}+C_2e^{-4x} である。右辺と同じ形の特解を yp=ce−xy_p=ce^{-x} とおけば、 yp′′+6yp′+8yp=(1−6+8)ce−x=3ce−x. y_p''+6y_p'+8y_p=(1-6+8)ce^{-x}=3ce^{-x}. これが 3e−x3e^{-x} に一致するのは c=1c=1 のときである。

I.2 Euler型の方程式

まず x≠0x\ne0 の連結な区間で解く。同次方程式 x2y′′−2y=0x^2y''-2y=0 に y=xmy=x^m を代入すると、 {m(m−1)−2}xm=(m−2)(m+1)xm=0. \{m(m-1)-2\}x^m=(m-2)(m+1)x^m=0. よって同次解は C1x2+C2x−1C_1x^2+C_2x^{-1} である。非同次項に合わせて yp=cx3y_p=cx^3 とおくと、 x2yp′′−2yp=(6−2)cx3=4cx3 x^2y_p''-2y_p=(6-2)cx^3=4cx^3 なので c=1c=1 である。

II.1 二次式の特解を決める

ここでは方程式を x(2x3−1)y′+y−2xy2+2x2=0(1) x(2x^3-1)y'+y-2xy^2+2x^2=0 \tag{1} と書く。y=A0+A1x+A2x2y=A_0+A_1x+A_2x^2 を代入する。最高次の x5x^5 の係数は 4A2−2A224A_2-2A_2^2 なので、A2=0A_2=0 または 22 である。

A2=0A_2=0 の場合、x4x^4 の係数 2A12A_1 から A1=0A_1=0。さらに定数項から A0=0A_0=0 になるが、残る 2x22x^2 を消せない。したがって、この場合に特解はない。

A2=2A_2=2 の場合、x4x^4 の係数は −6A1-6A_1 なので A1=0A_1=0、x3x^3 の係数は −8A0-8A_0 なので A0=0A_0=0。実際、y=2x2y=2x^2 を代入すると、 4x2(2x3−1)+2x2−8x5+2x2=0. 4x^2(2x^3-1)+2x^2-8x^5+2x^2=0.

II.2 特解を使うRiccati方程式の解法

d(x)=x(2x3−1)d(x)=x(2x^3-1) とおく。既知の特解を差し引き、y=2x2+uy=2x^2+u とすると、(1)は du′+(1−8x3)u−2xu2=0(2) du'+(1-8x^3)u-2xu^2=0 \tag{2} となる。u=0u=0 は一つの解なので保持する。u≠0u\ne0 の区間では v=1/uv=1/u とおき、u′=−v′/v2u'=-v'/v^2 を代入して dv′+(8x3−1)v=−2x dv'+(8x^3-1)v=-2x を得る。d′=8x3−1d'=8x^3-1 なので左辺は (dv)′(dv)' に等しい。積分すれば dv=C−x2,u=x(2x3−1)C−x2. dv=C-x^2,\qquad u=\frac{x(2x^3-1)}{C-x^2}. よって通常点を含む区間での解は次の形である。

最終答

y=C1e−2x+C2e−4x+e−xy=C_1e^{-2x}+C_2e^{-4x}+e^{-x}。C1,C2C_1,C_2 は任意定数である。

y=C1x2+C2/x+x3y=C_1x^2+C_2/x+x^3。この式は x=0x=0 を含まない区間での一般解である。

A0=0, A1=0, A2=2A_0=0,\ A_1=0,\ A_2=2、すなわち特解は yp=2x2y_p=2x^2 である。

y=2x2\displaystyle y=2x^2、または y=2x2+x(2x3−1)C−x2=x(2Cx−1)C−x2. y=2x^2+\frac{x(2x^3-1)}{C-x^2} =\frac{x(2Cx-1)}{C-x^2}. 後者は分母が零にならない区間で用いる。導出は d(x)≠0d(x)\ne0 の区間で行った。

第2問 — 固有値と行列の位数

固有値と行列の位数の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 複素解析

複素解析の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 回転面の長さ・面積・曲率

回転面の長さ・面積・曲率の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — Fourier変換とFourier級数

Fourier変換とFourier級数の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 超幾何分布と条件付き確率

一部の確定答案なし

原題で許される n=R=G=1 では、条件となる事象Y=0の確率が0になり、条件付き確率は定義されません。他の許容範囲では分母が正になることを示し、一般式を解答しています。

条件付き確率は、条件となる事象 BB の確率が正のときに Pr⁡(A∣B)=Pr⁡(A∩B)/Pr⁡(B)\Pr(A\mid B)=\Pr(A\cap B)/\Pr(B) と定義する。Pr⁡(B)=0\Pr(B)=0 なら、この比から値を定めることはできない。

原題で許される n=R=G=1n=R=G=1 では、最初に取り出した1個を白くしたあと、その白い玉を確実に取り出すため、必ず Y=1Y=1 となる。従って Pr⁡(Y=0)=0\Pr(Y=0)=0 であり、IV.2の条件付き確率は定義されない。PDFではこの境界条件を明記し、それ以外の許容範囲では分母が正であることと一般式を説明している。

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数学の解答・解説PDF

2021〜2026年度(6年度) · ¥3,200

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年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(このページ・解説6項目)

    常微分方程式 / 固有値と行列の位数 / 複素解析

  • 2025年度(解説6項目)

    微分方程式と極座標 / 行列指数関数と二次形式 / 留数定理と偶数べきの級数和

  • 2024年度(解説6項目)

    微分方程式・対称積分・漸化式 / 対称行列の固有空間と直交射影 / 複素平面の領域・留数・半円弧の評価

  • 2023年度(解説6項目)

    指数の極限・線形微分方程式・階乗の比 / 対角化・正定値性・二次関数の最小値 / 留数積分と半無限帯の複素写像

  • 2022年度(解説6項目)

    楕円の接線と円錐の最適化 / ラプラス変換の微分則と初期値問題 / 可換な対称行列の同時対角化

  • 2021年度(解説8項目)

    変数を指数に持つ関数と逆三角関数の積分 / 位相の変換と複素数値の連立微分方程式 / 反対称行列の固有値・高次のべき・指数関数

2026年度の出題内容

解説6項目

この6問の分野は確率・統計1問・線形代数1問・微分積分・解析1問・微分方程式1問・複素解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分方程式常微分方程式特性方程式を使う理由 / 指数関数の特解と共鳴あり
第2問線形代数固有値と行列の位数—あり
第3問複素解析——あり
第4問—回転面の長さ・面積・曲率—あり
第5問微分積分・解析Fourier変換とFourier級数—あり
第6問確率・統計超幾何分布と条件付き確率—一部の確定答案なし

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 6問 → 2026年度 6問
2025年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2017〜2026
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
TOEFL iBT/ITP のスコア提出。
院試hubの最終確認
2026-10-22
東京大学の公式過去問PDF