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東大 工学系研究科 数学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(解説6項目)

解説6項目の分野は確率・統計1項目、線形代数1項目、微分積分・解析1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 微分方程式と極座標

I.1 Bernoulli方程式

逆べきの置換が働く理由

Bernoulli方程式 y′+P(x)y=Q(x)ymy'+P(x)y=Q(x)y^m、m≠1m\ne1 で y≠0y\ne0 とすると、v=y1−mv=y^{1-m} は v′+(1−m)Pv=(1−m)Q v'+(1-m)Pv=(1-m)Q を満たす。v′=(1−m)y−my′v'=(1-m)y^{-m}y' という連鎖律で、非線形のべきを消している。本問は m=3m=3、P=1/xP=1/x、Q=1/x3Q=1/x^3 なので上の一次式になる。

一次方程式 v′+pv=qv'+pv=q は、μ′=pμ\mu'=p\mu を満たす非零関数を掛けると (μv)′=μq(\mu v)'=\mu q に直せる。本問では μ=x−2\mu=x^{-2} が μ′/μ=−2/x\mu'/\mu=-2/x を満たし、x>0x>0 と x<0x<0 のどちらでも使える。積分後の平方根では、元の方程式の区間と実数解の条件も必要になる。

零解と符号の扱い

y3y^3 で割る変形は y=0y=0 を対象から外すので、最初に確認した零解を最後に加える。x≠0x\ne0 では右辺 y3/x3−y/xy^3/x^3-y/x は yy に関して滑らかで、局所的に解が一意である。したがって零解と非零解を通常点でつなぎ合わせる別の解を追加する必要はない。正負の平方根は一つの連結区間で固定して使う。

定数を固定した検算と誤式

C=0C=0 なら y=±2xy=\pm\sqrt2x。y=2xy=\sqrt2x を原式へ戻すと左辺は 222\sqrt2、右辺も (2)3=22(\sqrt2)^3=2\sqrt2 で一致する。逆数の微分の係数 −2-2 を落とし、y=x/1+Cx4y=x/\sqrt{1+Cx^4} と書くと、C=0C=0 で左辺2、右辺1となる。また、y−2y^{-2} の式だけで答案を終えると、零解を表せていない。

I.2 三角関数を非同次項にもつ方程式

なぜ正弦も用意するのか

定数係数の線形作用素 P(D)=D2−5D+6P(D)=D^2-5D+6 では、指数関数に DD を作用させると指数の係数を掛けるだけなので、P(r)=0P(r)=0 の根から同次解を得る。二つの根が異なるため、e2x,e3xe^{2x},e^{3x} は線形独立であり同次解を尽くす。

一方、cos⁡3x\cos3x を一回微分すると −3sin⁡3x-3\sin3x になる。本問は一階微分項があるので、特解に余弦だけを置いても正弦成分が残る。正弦・余弦の張る二次元空間は微分で保たれるため、両方を置けば有限個の係数を決める問題に帰着する。3i3i は特性根2,3と異なり、この空間で作用素は可逆である。

線形性と直接代入の確認

二つの特解の差は同次方程式を満たすので、特解一つに同次解の全体を足せば一般解になる。求めた係数を入れると、余弦係数は (−3−75)/13=−6(-3-75)/13=-6、正弦係数は (15−15)/13=0(15-15)/13=0 であり、右辺に一致する。

例えば特解を 2cos⁡3x2\cos3x として二階微分と 6y6y だけを合わせると、その二項の和は −6cos⁡3x-6\cos3x になるが、一階微分項から 30sin⁡3x30\sin3x が残る。右辺と同じ関数形を一つ置くだけでは足りない場合がある。全項を代入して初めて特解の確認になる。

II.1 極曲線が囲む面積

極座標のJacobian

変換 x=ρcos⁡θx=\rho\cos\theta、y=ρsin⁡θy=\rho\sin\theta のJacobian行列式は det⁡(cos⁡θ−ρsin⁡θsin⁡θρcos⁡θ)=ρ. \det\begin{pmatrix}\cos\theta&-\rho\sin\theta\\ \sin\theta&\rho\cos\theta\end{pmatrix}=\rho. したがって平面の面積要素は dx dy=ρ dρ dθdx\,dy=\rho\,d\rho\,d\theta である。半径方向へ0から境界まで積分すると r2/2r^2/2 になる。小扇形の面積が r2 dθ/2r^2\,d\theta/2 になるという説明とも一致する。

この式を単純に一周分積分してよいのは、r>0r>0 で一つの方向に一つの境界点をもち、領域を重ねて数えないからである。負の半径や自己交差をもつ曲線では、領域の分割や重複を確認しなければならない。本問は 1≤r≤31\le r\le3 なのでその問題は生じない。

三角積分と平均半径の誤り

∫02πcos⁡θ=0\int_0^{2\pi}\cos\theta=0、cos⁡2θ=(1+cos⁡2θ)/2\cos^2\theta=(1+\cos2\theta)/2 より二乗項の積分は π\pi。半径2の円の面積 4π4\pi に π/2\pi/2 が加わる、とも読める。

半径の平均が2だから面積を π⋅22=4π\pi\cdot2^2=4\pi とするのは、平均の二乗と二乗の平均を交換している。面積に必要なのは r2r^2 の平均であり、⟨r2⟩=4+1/2\langle r^2\rangle=4+1/2 である。半径の振れを表す ⟨cos⁡2θ⟩=1/2\langle\cos^2\theta\rangle=1/2 は消えない。

II.2 極曲線の接線の傾き

媒介変数表示から傾きを求める条件

曲線を x=x(t),y=y(t)x=x(t),y=y(t) と表し、x′(t0)≠0x'(t_0)\ne0 なら、局所的に tt を xx の関数として解ける。よって連鎖律から dy/dx=y′(t)/x′(t)dy/dx=y'(t)/x'(t) になる。本問は t=θt=\theta で x′=−1−2≠0x'=-1-\sqrt2\ne0 なので、有限な傾きを求められる。接ベクトルも零ではない。

半径 rr も角度とともに変化するため、rcos⁡θr\cos\theta の微分には r′cos⁡θr'\cos\theta と −rsin⁡θ-r\sin\theta の二項がある。同じように yy の微分でも二項を保つ。dr/dθdr/d\theta は半径の変化率であり、直交座標の接線の傾きとは別の量である。

接方向の確認と円との取り違え

この点で θ\theta を増やすと xx は減り、yy は増える。したがって傾きは負であり、答え 2−2≃−0.586\sqrt2-2\simeq-0.586 はこの符号に合う。接線の方向ベクトル (−1−2,2)(-1-\sqrt2,\sqrt2) を使っても同じ比になる。

r′r' を0として円の接線の式 −cot⁡θ-\cot\theta を使うと、θ=π/4\theta=\pi/4 で −1-1 と誤る。これは半径が一定の曲線だけの式である。また dy/dx=dr/dθdy/dx=dr/d\theta とすると −2/2-\sqrt2/2 になるが、x,yx,y の微分の比と一致しない。どの座標の変化率を求めているかを式で区別する。

解答

I.1 Bernoulli方程式

原式には 1/x1/x があるので、x≠0x\ne0 の連結な区間で考える。y=0y=0 は解である。y≠0y\ne0 なら v=y−2v=y^{-2} と置き、原式を y3y^3 で割って −2-2 倍すると v′−2xv=−2x3. v'-\frac2xv=-\frac2{x^3}. 積分因子は x−2x^{-2} であり、 (vx2)′=−2x5,vx2=12x4+C0. \left(\frac{v}{x^2}\right)'=-\frac2{x^5},\qquad \frac{v}{x^2}=\frac1{2x^4}+C_0. したがって y−2=1/(2x2)+C0x2y^{-2}=1/(2x^2)+C_0x^2。定数を C=2C0C=2C_0 と書き直す。

I.2 三角関数を非同次項にもつ方程式

同次方程式の特性方程式は r2−5r+6=(r−2)(r−3)=0r^2-5r+6=(r-2)(r-3)=0 なので、同次解は C1e2x+C2e3xC_1e^{2x}+C_2e^{3x} である。原式を y′′−5y′+6y=−6cos⁡3xy''-5y'+6y=-6\cos3x と書き、特解を acos⁡3x+bsin⁡3xa\cos3x+b\sin3x と置くと、左辺は (−3a−15b)cos⁡3x+(15a−3b)sin⁡3x. (-3a-15b)\cos3x+(15a-3b)\sin3x. 係数比較から a+5b=2a+5b=2、5a−b=05a-b=0、ゆえに a=1/13a=1/13、b=5/13b=5/13 である。

II.1 極曲線が囲む面積

r(θ)=2+cos⁡θr(\theta)=2+\cos\theta は全周で1以上なので、原点から各方向へ一つの境界点をもつ。極座標の面積要素 ρ dρ dθ\rho\,d\rho\,d\theta を使うと、囲まれる領域の面積は S=∫02π∫02+cos⁡θρ dρ dθ=12∫02π(2+cos⁡θ)2dθ=12(8π+4∫02πcos⁡θ dθ+∫02πcos⁡2θ dθ)=9π2.\begin{align*} S&=\int_0^{2\pi}\int_0^{2+\cos\theta}\rho\,d\rho\,d\theta =\frac12\int_0^{2\pi}(2+\cos\theta)^2d\theta\\ &=\frac12\left(8\pi+4\int_0^{2\pi}\cos\theta\,d\theta +\int_0^{2\pi}\cos^2\theta\,d\theta\right) =\frac{9\pi}{2}. \end{align*}

II.2 極曲線の接線の傾き

直交座標へ x=rcos⁡θx=r\cos\theta、y=rsin⁡θy=r\sin\theta と直す。連鎖律により、dx/dθ≠0dx/d\theta\ne0 の点では dydx=r′sin⁡θ+rcos⁡θr′cos⁡θ−rsin⁡θ. \frac{dy}{dx} =\frac{r'\sin\theta+r\cos\theta}{r'\cos\theta-r\sin\theta}. θ=π/4\theta=\pi/4 で r=2+2/2r=2+\sqrt2/2、r′=−2/2r'=-\sqrt2/2 なので、 dxdθ=−1−2,dydθ=2. \frac{dx}{d\theta}=-1-\sqrt2,\qquad \frac{dy}{d\theta}=\sqrt2.

最終答

実数値の解は y=0y=0、または y=±2 x1+Cx4\displaystyle y=\pm\frac{\sqrt2\,x}{\sqrt{1+Cx^4}}。 後者は x≠0x\ne0、1+Cx4>01+Cx^4>0 を満たす区間で用いる。CC は任意の実定数である。

y=C1e2x+C2e3x+cos⁡3x+5sin⁡3x13\displaystyle y=C_1e^{2x}+C_2e^{3x}+\frac{\cos3x+5\sin3x}{13}。

S=9π/2S=9\pi/2。

dydx=−21+2=2−2\displaystyle \frac{dy}{dx}=-\frac{\sqrt2}{1+\sqrt2}=\sqrt2-2。

第2問 — 行列指数関数と二次形式

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第3問 — 留数定理と偶数べきの級数和

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第4問 — トーラスと円柱の共通部分

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第5問 — 切り取った余弦の自己相関

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第6問 — 停止する確率列

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年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(解説6項目)

    常微分方程式 / 固有値と行列の位数 / 複素解析

  • 2025年度(このページ・解説6項目)

    微分方程式と極座標 / 行列指数関数と二次形式 / 留数定理と偶数べきの級数和

  • 2024年度(解説6項目)

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  • 2023年度(解説6項目)

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  • 2022年度(解説6項目)

    楕円の接線と円錐の最適化 / ラプラス変換の微分則と初期値問題 / 可換な対称行列の同時対角化

  • 2021年度(解説8項目)

    変数を指数に持つ関数と逆三角関数の積分 / 位相の変換と複素数値の連立微分方程式 / 反対称行列の固有値・高次のべき・指数関数

2025年度の出題内容

解説6項目

この6問の分野は確率・統計1問・線形代数1問・微分積分・解析1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分方程式微分方程式と極座標逆べきの置換が働く理由 / 零解と符号の扱いあり
第2問線形代数行列指数関数と二次形式—あり
第3問微分積分・解析留数定理と偶数べきの級数和—あり
第4問—トーラスと円柱の共通部分—あり
第5問—切り取った余弦の自己相関—あり
第6問確率・統計停止する確率列—あり

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 6問 → 2025年度 6問
2024年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2017〜2026
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
TOEFL iBT/ITP のスコア提出。
院試hubの最終確認
2026-10-22
東京大学の公式過去問PDF