I 0と1の間を動く解
変数分離と対数の条件
y′=F(y) で F(y)=0 となる区間では、∫dy/F(y)=x+C と積分できる。本問は値域が開区間 (0,1) に限定されるため、分離の途中で零除算をしていない。y と 1−y はともに正なので、対数は絶対値を外した実数の対数でよい。
指数関数へ戻すと任意定数の符号が制約される。y/(1−y)>0 であるから、その比例係数 eC は正である。この条件を保ったまま A>0 と書けば、答えは全実数 x で分母が1より大きく、必ず 0<y<1 を満たす。
導関数と端の挙動による確認
直接微分すると y′=Ae−x/(1+Ae−x)2。一方 y(1−y) も同じ式になる。さらに x→−∞ で y→0+、x→∞ で y→1− であり、y′>0 とも一致する。任意の初期値 y(x0)=y0∈(0,1) に対し A=ex0(1−y0)/y0>0 が一つに決まる。
A を無条件の実数とすると、例えば A=−1,x=1 で y=1/(1−e−1)>1 となり、原題の値域に反する。A=0 の定数解 y=1 や、原式自体の定数解 y=0 も、本問の厳密な不等式では除かれている。一般の微分方程式の解と、指定値域内の解を区別する。
II 逆余弦を含む対称区間の積分
枝と偶奇を確認する
0≤arccost≤π の主値では、cos(π−θ)=−cosθ と π−θ∈[0,π] から arccos(−t)=π−arccost が従う。逆関数の枝が指定されていることを使う等式である。本問の x/2 は [−1/2,1/2] 内なので、区間全体で有効になる。
h(x)−π/2 は奇関数であり、偶関数 w を掛けても奇関数のままである。対称区間上の奇関数の積分は、正負の点を対応させると打ち消し合う。このため逆余弦の部分を平均値 π/2 に置き換えた積分だけが残る。複雑な原始関数を探す前に、対称性を見ると計算を短くできる。
積分可能性・係数・誤った奇関数扱い
∣πx/3∣≤π/3 なので cos(πx/3)≥1/2。分母は区間で零にならず、通常の定積分として計算してよい。tan(πx/3) の微分は (π/3)sec2(πx/3) なので、原始関数には 3/π が必要である。上式の前に掛かった π と相殺して係数3になる。
arccos(−x/2)=−arccos(x/2) と誤ると、被積分関数を奇関数として I=0 としてしまう。しかし区間内で逆余弦も分母も正なので積分は必ず正である。正しい奇関数は逆余弦そのものではなく、そこから π/2 を引いた関数である。
III.1 偶数べきの指数級数
べき級数を操作できる範囲
指数級数 ∑xm/m! は比の判定により任意の有限の x で絶対収束し、収束半径は無限大である。その内部では項別微分できるので、偶数項だけを集めた級数の微分も正当化される。実際に微分すれば g(x)=∑m≥1x2m−1/(2m−1)! となり、指数関数の奇数項の部分に一致する。
二つの関数は双曲線関数 cosh,sinh の定義そのものである。三角関数の cos2+sin2=1 と似た形だが、指数の符号が実数なので恒等式は二乗の差になる。(a+b)2−(a−b)2=4ab と exe−x=1 による直接計算で、符号も確かめられる。
微分による別の確認と誤り
f′=g、g′=f なので (f2−g2)′=2fg−2gf=0。また級数から f(0)=1,g(0)=0 であり、定数値は1となる。正の x だけで指定された関数でも、級数は0へ連続に延長できるのでこの端の値を使える。
g=coshx と微分前後を取り違えると、差は0と誤る。例えば x=0 の極限では差は必ず1であり矛盾する。また恒等式を f2+g2=1 と書くと、x>0 では g>0 かつ f>1 なので成り立たない。
III.2 積分の次数を二つ上げる漸化式
全体を微分の形にする
べきの次数を二つ下げるには hn+2=hn{1−(1−h2)} と分ける。1−h2=h′ なので、差の部分が合成関数の微分 hnh′={hn+1/(n+1)}′ になる。単に hn の原始関数を hn+1/(n+1) としているのではなく、h′ の因子が必要である。
n が非負整数だから、端点 h(0)=0 で hn+1(0)=0 になる。n=0 でもこの議論は有効である。漸化式を繰り返す場合は I0(x)=x、I1(x)=logcoshx が初期値となる。後者は (logcoshx)′=tanhx と cosh0=1 から求まる。
大小関係・具体値による検算
x>0 では 0<tanhX<1(X>0)なので、被積分関数の次数を二つ上げると小さくなる。したがって 0<In+2(x)<In(x) であり、答案が正の量を引いていることと一致する。
n=0,x=1 なら I2(1)=1−tanh1≃0.2384。補正項の符号を逆にすると 1+tanh1≃1.7616 となり、tanh2X≤1 から得る上界 I2(1)≤1 に反する。また下端の値を残し忘れた不定積分の定数を勝手に加えると、必ず成り立つ In(0)=0 を壊す。
解答
I 0と1の間を動く解
0<y<1 なので y(1−y)>0 であり、両辺をこれで割れる。変数分離して
y(1−y)dy=dx,y(1−y)1=y1+1−y1
より、
logy−log(1−y)=x+C.
したがって y/(1−y)=eCex。A=e−C>0 と置いて解く。
II 逆余弦を含む対称区間の積分
h(x)=arccos(x/2)、w(x)=1/cos2(πx/3) と書く。指定された逆余弦の値域から h(−x)=π−h(x)、また w(−x)=w(x) である。x↦−x により
I=∫−11h(−x)w(x)dx=∫−11{π−h(x)}w(x)dx.
元の式と足して
2I=π∫−11sec2(πx/3)dx=3[tan(πx/3)]−11=63.
III.1 偶数べきの指数級数
指数関数の級数で x と −x を足すと奇数べきが消えるから
f(x)=2ex+e−x=coshx.
したがって g(x)=f′(x)=(ex−e−x)/2=sinhx。二乗の差は
f(x)2−g(x)2=4(ex+e−x)2−(ex−e−x)2=1.
III.2 積分の次数を二つ上げる漸化式
h(x)=g(x)/f(x)=tanhx と置く。f(x)≥1 なので分母は零にならない。前問と商の微分から
h′=f2g′f−gf′=f2f2−g2=1−h2.
よって hn−hn+2=hnh′。これを0から x まで積分すると
In(x)−In+2(x)=[n+1h(X)n+1]0x=n+1tanhn+1x.
ここで n≥0、h(0)=0 を用いた。
最終答
y(x)=1+Ae−x1、A>0。
I=33。
f(x)2−g(x)2=1。
In+2(x)=In(x)−n+1tanhn+1x。