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東大 工学系研究科 数学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(解説6項目)

解説6項目の分野は線形代数2項目、微分積分・解析1項目、微分方程式1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 微分方程式・対称積分・漸化式

I 0と1の間を動く解

変数分離と対数の条件

y′=F(y)y'=F(y) で F(y)≠0F(y)\ne0 となる区間では、∫dy/F(y)=x+C\int dy/F(y)=x+C と積分できる。本問は値域が開区間 (0,1)(0,1) に限定されるため、分離の途中で零除算をしていない。yy と 1−y1-y はともに正なので、対数は絶対値を外した実数の対数でよい。

指数関数へ戻すと任意定数の符号が制約される。y/(1−y)>0y/(1-y)>0 であるから、その比例係数 eCe^C は正である。この条件を保ったまま A>0A>0 と書けば、答えは全実数 xx で分母が1より大きく、必ず 0<y<10<y<1 を満たす。

導関数と端の挙動による確認

直接微分すると y′=Ae−x/(1+Ae−x)2y'=Ae^{-x}/(1+Ae^{-x})^2。一方 y(1−y)y(1-y) も同じ式になる。さらに x→−∞x\to-\infty で y→0+y\to0^+、x→∞x\to\infty で y→1−y\to1^- であり、y′>0y'>0 とも一致する。任意の初期値 y(x0)=y0∈(0,1)y(x_0)=y_0\in(0,1) に対し A=ex0(1−y0)/y0>0A=e^{x_0}(1-y_0)/y_0>0 が一つに決まる。

AA を無条件の実数とすると、例えば A=−1,x=1A=-1,x=1 で y=1/(1−e−1)>1y=1/(1-e^{-1})>1 となり、原題の値域に反する。A=0A=0 の定数解 y=1y=1 や、原式自体の定数解 y=0y=0 も、本問の厳密な不等式では除かれている。一般の微分方程式の解と、指定値域内の解を区別する。

II 逆余弦を含む対称区間の積分

枝と偶奇を確認する

0≤arccos⁡t≤π0\le\arccos t\le\pi の主値では、cos⁡(π−θ)=−cos⁡θ\cos(\pi-\theta)=-\cos\theta と π−θ∈[0,π]\pi-\theta\in[0,\pi] から arccos⁡(−t)=π−arccos⁡t\arccos(-t)=\pi-\arccos t が従う。逆関数の枝が指定されていることを使う等式である。本問の x/2x/2 は [−1/2,1/2][-1/2,1/2] 内なので、区間全体で有効になる。

h(x)−π/2h(x)-\pi/2 は奇関数であり、偶関数 ww を掛けても奇関数のままである。対称区間上の奇関数の積分は、正負の点を対応させると打ち消し合う。このため逆余弦の部分を平均値 π/2\pi/2 に置き換えた積分だけが残る。複雑な原始関数を探す前に、対称性を見ると計算を短くできる。

積分可能性・係数・誤った奇関数扱い

∣πx/3∣≤π/3|\pi x/3|\le\pi/3 なので cos⁡(πx/3)≥1/2\cos(\pi x/3)\ge1/2。分母は区間で零にならず、通常の定積分として計算してよい。tan⁡(πx/3)\tan(\pi x/3) の微分は (π/3)sec⁡2(πx/3)(\pi/3)\sec^2(\pi x/3) なので、原始関数には 3/π3/\pi が必要である。上式の前に掛かった π\pi と相殺して係数3になる。

arccos⁡(−x/2)=−arccos⁡(x/2)\arccos(-x/2)=-\arccos(x/2) と誤ると、被積分関数を奇関数として I=0I=0 としてしまう。しかし区間内で逆余弦も分母も正なので積分は必ず正である。正しい奇関数は逆余弦そのものではなく、そこから π/2\pi/2 を引いた関数である。

III.1 偶数べきの指数級数

べき級数を操作できる範囲

指数級数 ∑xm/m!\sum x^m/m! は比の判定により任意の有限の xx で絶対収束し、収束半径は無限大である。その内部では項別微分できるので、偶数項だけを集めた級数の微分も正当化される。実際に微分すれば g(x)=∑m≥1x2m−1/(2m−1)!g(x)=\sum_{m\ge1}x^{2m-1}/(2m-1)! となり、指数関数の奇数項の部分に一致する。

二つの関数は双曲線関数 cosh⁡,sinh⁡\cosh,\sinh の定義そのものである。三角関数の cos⁡2+sin⁡2=1\cos^2+\sin^2=1 と似た形だが、指数の符号が実数なので恒等式は二乗の差になる。(a+b)2−(a−b)2=4ab(a+b)^2-(a-b)^2=4ab と exe−x=1e^xe^{-x}=1 による直接計算で、符号も確かめられる。

微分による別の確認と誤り

f′=gf'=g、g′=fg'=f なので (f2−g2)′=2fg−2gf=0(f^2-g^2)'=2fg-2gf=0。また級数から f(0)=1,g(0)=0f(0)=1,g(0)=0 であり、定数値は1となる。正の xx だけで指定された関数でも、級数は0へ連続に延長できるのでこの端の値を使える。

g=cosh⁡xg=\cosh x と微分前後を取り違えると、差は0と誤る。例えば x=0x=0 の極限では差は必ず1であり矛盾する。また恒等式を f2+g2=1f^2+g^2=1 と書くと、x>0x>0 では g>0g>0 かつ f>1f>1 なので成り立たない。

III.2 積分の次数を二つ上げる漸化式

全体を微分の形にする

べきの次数を二つ下げるには hn+2=hn{1−(1−h2)}h^{n+2}=h^n\{1-(1-h^2)\} と分ける。1−h2=h′1-h^2=h' なので、差の部分が合成関数の微分 hnh′={hn+1/(n+1)}′h^nh'=\{h^{n+1}/(n+1)\}' になる。単に hnh^n の原始関数を hn+1/(n+1)h^{n+1}/(n+1) としているのではなく、h′h' の因子が必要である。

nn が非負整数だから、端点 h(0)=0h(0)=0 で hn+1(0)=0h^{n+1}(0)=0 になる。n=0n=0 でもこの議論は有効である。漸化式を繰り返す場合は I0(x)=xI_0(x)=x、I1(x)=log⁡cosh⁡xI_1(x)=\log\cosh x が初期値となる。後者は (log⁡cosh⁡x)′=tanh⁡x(\log\cosh x)'=\tanh x と cosh⁡0=1\cosh0=1 から求まる。

大小関係・具体値による検算

x>0x>0 では 0<tanh⁡X<10<\tanh X<1(X>0X>0)なので、被積分関数の次数を二つ上げると小さくなる。したがって 0<In+2(x)<In(x)0<I_{n+2}(x)<I_n(x) であり、答案が正の量を引いていることと一致する。

n=0,x=1n=0,x=1 なら I2(1)=1−tanh⁡1≃0.2384I_2(1)=1-\tanh1\simeq0.2384。補正項の符号を逆にすると 1+tanh⁡1≃1.76161+\tanh1\simeq1.7616 となり、tanh⁡2X≤1\tanh^2X\le1 から得る上界 I2(1)≤1I_2(1)\le1 に反する。また下端の値を残し忘れた不定積分の定数を勝手に加えると、必ず成り立つ In(0)=0I_n(0)=0 を壊す。

解答

I 0と1の間を動く解

0<y<10<y<1 なので y(1−y)>0y(1-y)>0 であり、両辺をこれで割れる。変数分離して dyy(1−y)=dx,1y(1−y)=1y+11−y \frac{dy}{y(1-y)}=dx,\qquad \frac1{y(1-y)}=\frac1y+\frac1{1-y} より、 log⁡y−log⁡(1−y)=x+C. \log y-\log(1-y)=x+C. したがって y/(1−y)=eCexy/(1-y)=e^Ce^x。A=e−C>0A=e^{-C}>0 と置いて解く。

II 逆余弦を含む対称区間の積分

h(x)=arccos⁡(x/2)h(x)=\arccos(x/2)、w(x)=1/cos⁡2(πx/3)w(x)=1/\cos^2(\pi x/3) と書く。指定された逆余弦の値域から h(−x)=π−h(x)h(-x)=\pi-h(x)、また w(−x)=w(x)w(-x)=w(x) である。x↦−xx\mapsto-x により I=∫−11h(−x)w(x)dx=∫−11{π−h(x)}w(x)dx. I=\int_{-1}^1h(-x)w(x)dx =\int_{-1}^1\{\pi-h(x)\}w(x)dx. 元の式と足して 2I=π∫−11sec⁡2(πx/3)dx=3[tan⁡(πx/3)]−11=63. 2I=\pi\int_{-1}^1\sec^2(\pi x/3)dx =3[\tan(\pi x/3)]_{-1}^1=6\sqrt3.

III.1 偶数べきの指数級数

指数関数の級数で xx と −x-x を足すと奇数べきが消えるから f(x)=ex+e−x2=cosh⁡x. f(x)=\frac{e^x+e^{-x}}2=\cosh x. したがって g(x)=f′(x)=(ex−e−x)/2=sinh⁡xg(x)=f'(x)=(e^x-e^{-x})/2=\sinh x。二乗の差は f(x)2−g(x)2=(ex+e−x)2−(ex−e−x)24=1. f(x)^2-g(x)^2 =\frac{(e^x+e^{-x})^2-(e^x-e^{-x})^2}{4}=1.

III.2 積分の次数を二つ上げる漸化式

h(x)=g(x)/f(x)=tanh⁡xh(x)=g(x)/f(x)=\tanh x と置く。f(x)≥1f(x)\ge1 なので分母は零にならない。前問と商の微分から h′=g′f−gf′f2=f2−g2f2=1−h2. h'=\frac{g'f-gf'}{f^2}=\frac{f^2-g^2}{f^2} =1-h^2. よって hn−hn+2=hnh′h^n-h^{n+2}=h^nh'。これを0から xx まで積分すると In(x)−In+2(x)=[h(X)n+1n+1]0x=tanh⁡n+1xn+1. I_n(x)-I_{n+2}(x) =\left[\frac{h(X)^{n+1}}{n+1}\right]_0^x =\frac{\tanh^{n+1}x}{n+1}. ここで n≥0n\ge0、h(0)=0h(0)=0 を用いた。

最終答

y(x)=11+Ae−x\displaystyle y(x)=\frac1{1+Ae^{-x}}、A>0A>0。

I=33I=3\sqrt3。

f(x)2−g(x)2=1f(x)^2-g(x)^2=1。

In+2(x)=In(x)−tanh⁡n+1xn+1\displaystyle I_{n+2}(x)=I_n(x)-\frac{\tanh^{n+1}x}{n+1}。

第2問 — 対称行列の固有空間と直交射影

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第3問 — 複素平面の領域・留数・半円弧の評価

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第4問 — サイクロイドと双曲面の幾何

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第5問 — フーリエ変換の尺度・変調・離散直交性

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第6問 — 有限容量の待ち行列と定常分布

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数学の解答・解説PDF

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年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(解説6項目)

    常微分方程式 / 固有値と行列の位数 / 複素解析

  • 2025年度(解説6項目)

    微分方程式と極座標 / 行列指数関数と二次形式 / 留数定理と偶数べきの級数和

  • 2024年度(このページ・解説6項目)

    微分方程式・対称積分・漸化式 / 対称行列の固有空間と直交射影 / 複素平面の領域・留数・半円弧の評価

  • 2023年度(解説6項目)

    指数の極限・線形微分方程式・階乗の比 / 対角化・正定値性・二次関数の最小値 / 留数積分と半無限帯の複素写像

  • 2022年度(解説6項目)

    楕円の接線と円錐の最適化 / ラプラス変換の微分則と初期値問題 / 可換な対称行列の同時対角化

  • 2021年度(解説8項目)

    変数を指数に持つ関数と逆三角関数の積分 / 位相の変換と複素数値の連立微分方程式 / 反対称行列の固有値・高次のべき・指数関数

2024年度の出題内容

解説6項目

この6問の分野は線形代数2問・微分積分・解析1問・微分方程式1問・複素解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分方程式微分方程式・対称積分・漸化式変数分離と対数の条件 / 導関数と端の挙動による確認あり
第2問線形代数対称行列の固有空間と直交射影—あり
第3問複素解析複素平面の領域・留数・半円弧の評価—あり
第4問—サイクロイドと双曲面の幾何—あり
第5問微分積分・解析フーリエ変換の尺度・変調・離散直交性—あり
第6問線形代数有限容量の待ち行列と定常分布—あり

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 6問 → 2024年度 6問
2023年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2017〜2026
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
TOEFL iBT/ITP のスコア提出。
院試hubの最終確認
2026-10-22
東京大学の公式過去問PDF