I 指数関数の差の極限
底が正である条件と微分係数
実数の指数 bx を全ての x の近傍で一つの実数値関数として定義するには、b>0 が必要である。指数関数の微分 (ekx)′=kekx から (bx)′=bxlogb、特に x=0 では導関数の値が logb になる。分子の定数項1同士を引いているので、その一次の変化の差だけが極限に残る。
テイラー展開で確かめると、bx=1+xlogb+O(x2)、cx=1+xlogc+O(x2) である。固定された正の a,b,c に対して剰余を ax で割った部分は O(x) となり、左右どちらから近付けても零へ収束する。a>0 より分母の定数係数も零でない。
等しい底と符号による確認
b=c なら元の分子は全ての x で零となり、答えも (log1)/a=0 になる。b>c なら底を固定した微分の差が正で、答えも正になる。例えば a=2,b=e3,c=e では極限は (3−1)/2=1 である。
指数を普通の一次関数と取り違えて bx−cx≃(b−c)x とすると、同じ例で (e3−e)/2 と誤る。一次係数は底そのものではなく、その対数である。また x=0 を直接代入した 0/0 は値0を意味せず、分子と分母がどの速さで消えるかを調べる必要がある。
II.1 積分因子による一次方程式
積分因子が積の微分を作る理由
一次線形方程式 y′+p(x)y=q(x) では、μ′=pμ を満たす零でない関数 μ=e∫p(x)dx を掛けると (μy)′=μq となる。本問は p=−1/x、x>0 なので μ=e−logx=1/x である。商の微分がちょうど積分因子を掛けた左辺に一致している。
右辺の積分では u=logx、du=dx/x と置くため、原始関数は u2/2 になる。積分後に y へ戻すと任意定数にも x が掛かる。この Cx は同次方程式 y′−y/x=0 の一般解であり、二つの解の差としても確認できる。
代入と任意定数の形の確認
y′=21(logx)2+C+logx、y/x=21(logx)2+C なので、差は確かに logx である。任意の x0>0 と初期値 y(x0)=y0 に対し C=y0/x0−(logx0)2/2 が一意に決まり、正の半直線上で解を与える。
最後を y=x(logx)2/2+C と書くと、C の寄与が原式で −C/x と残る。例えば C=1,x=1 では右辺0に対して左辺が −1 となり、解でない。積分因子を戻す操作は、特解だけでなく積分定数にも適用する。
II.2 定数係数の二階非同次方程式
同次解と特解を足せる条件
演算子 L[y]=y′′−y′−2y は線形なので、L[yh]=0、L[yp]=2x2+2x なら yh+yp も非同次方程式の解になる。逆に任意の二つの非同次解の差は同次方程式を満たすため、特解一つに同次一般解を足せば全ての解を表せる。
指数関数 erx へ L を作用させると (r2−r−2)erx となる。相異なる根2と −1 から得る二本は、ワロンシアンが −3ex=0 なので一次独立である。右辺が二次多項式で、特性方程式に根0がないため、同じ次数の多項式で特解を探して係数を決められる。
直接の残差と定数項の役割
yp=−x2−1 なら yp′=−2x,yp′′=−2 なので、左辺は −2+2x+2x2+2=2x2+2x。二つの指数項の残差はそれぞれ零である。係数が全実数上で連続な二階方程式なので、任意の一点で y,y′ を指定すれば二つの定数が決まる。
yp=−x2 だけで済ませると、残差は 2x2+2x−2 となり、定数項 −2 が残る。右辺に定数がない場合でも、微分によって定数が発生するため、特解には定数項を用意する。また特性根の和が1、積が −2 であることを確かめれば、符号を誤った −2,1 という根を検出できる。
III 階乗を含む正数列の比の極限
凸性から積分の上下を挟む
凸な微分可能関数は、区間の中点における接線以上であり、両端を結ぶ弦以下にある。f(t)=1/t の中点を m=n+1/2 とすると f(t)≥f(m)+f′(m)(t−m)。長さ1の対称区間で積分すれば接線の傾きの項が零になり、下界 f(m) を得る。弦の積分は台形の面積 {f(n)+f(n+1)}/2 になる。
この二つを正の m 倍して1を引くと、上界は (2n+1)2/{4n(n+1)}−1=1/{4n(n+1)} である。対数の上下が零へ収束するので、指数関数の連続性から比は e0=1 へ収束する。階乗自体の漸近公式を仮定せずに証明できる。
比の展開と指数因子の検算
log(1+1/n)=1/n−1/(2n2)+1/(3n3)+O(n−4) を用いると、対数の比は 1/(12n2)+O(n−3) となる。比が1より少し大きく、二次の速さで1へ近付くことは、凸性の評価とも整合する。例えば n=1 の比は 22/e≃1.0405 である。
e−n と e−(n+1) の割り算を誤り、比の前の e−1 を落とすと、極限を e としてしまう。階乗比 n!/(n+1)!=1/(n+1)、べきの比、指数の比を一つずつ書いて整理する。また比の極限が1という結果だけから、an 自体の極限値が1と結論することはできない。問われている対象を区別する。
解答
I 指数関数の差の極限
b,c>0 なので bx=exlogb、cx=exlogc と実数上で書ける。x=0 における微分係数の定義から
axbx−cx=a1(xbx−1−xcx−1)⟶alogb−logc.
II.1 積分因子による一次方程式
x>0 で式を x で割ると
xy′−x2y=xlogx.
左辺は (y/x)′ なので、∫(logx)/xdx=(logx)2/2 を使い、
II.2 定数係数の二階非同次方程式
同次方程式の特性方程式は r2−r−2=(r−2)(r+1)=0 なので、同次解は C1e2x+C2e−x。多項式の特解を yp=αx2+βx+γ と置くと
yp′′−yp′−2yp=−2αx2+(−2α−2β)x+(2α−β−2γ).
2x2+2x と係数を比較して α=−1,β=0,γ=−1 を得る。
III 階乗を含む正数列の比の極限
定義をそのまま割って階乗を消すと
an+1an=e−1(1+n1)n+1/2,logan+1an=(n+21)∫nn+1tdt−1.
1/t は t>0 で二階微分 2/t3>0 の凸関数である。接線による下界と弦による上界を積分すると
n+1/21≤∫nn+1tdt≤21(n1+n+11).
従って
0≤logan+1an≤4n(n+1)1⟶0.
最終答
a1logcb。
y=x{2(logx)2+C}、x>0、C は任意の実数。
y=C1e2x+C2e−x−x2−1。C1,C2 は任意の実数。
n→∞liman+1an=1。