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東大 工学系研究科 数学 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(解説6項目)

解説6項目の分野は微分積分・解析1項目、微分方程式1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 指数の極限・線形微分方程式・階乗の比

I 指数関数の差の極限

底が正である条件と微分係数

実数の指数 bxb^x を全ての xx の近傍で一つの実数値関数として定義するには、b>0b>0 が必要である。指数関数の微分 (ekx)′=kekx(e^{kx})'=ke^{kx} から (bx)′=bxlog⁡b(b^x)'=b^x\log b、特に x=0x=0 では導関数の値が log⁡b\log b になる。分子の定数項1同士を引いているので、その一次の変化の差だけが極限に残る。

テイラー展開で確かめると、bx=1+xlog⁡b+O(x2)b^x=1+x\log b+O(x^2)、cx=1+xlog⁡c+O(x2)c^x=1+x\log c+O(x^2) である。固定された正の a,b,ca,b,c に対して剰余を axax で割った部分は O(x)O(x) となり、左右どちらから近付けても零へ収束する。a>0a>0 より分母の定数係数も零でない。

等しい底と符号による確認

b=cb=c なら元の分子は全ての xx で零となり、答えも (log⁡1)/a=0(\log1)/a=0 になる。b>cb>c なら底を固定した微分の差が正で、答えも正になる。例えば a=2,b=e3,c=ea=2,b=e^3,c=e では極限は (3−1)/2=1(3-1)/2=1 である。

指数を普通の一次関数と取り違えて bx−cx≃(b−c)xb^x-c^x\simeq(b-c)x とすると、同じ例で (e3−e)/2(e^3-e)/2 と誤る。一次係数は底そのものではなく、その対数である。また x=0x=0 を直接代入した 0/00/0 は値0を意味せず、分子と分母がどの速さで消えるかを調べる必要がある。

II.1 積分因子による一次方程式

積分因子が積の微分を作る理由

一次線形方程式 y′+p(x)y=q(x)y'+p(x)y=q(x) では、μ′=pμ\mu'=p\mu を満たす零でない関数 μ=e∫p(x)dx\mu=e^{\int p(x)dx} を掛けると (μy)′=μq(\mu y)'=\mu q となる。本問は p=−1/xp=-1/x、x>0x>0 なので μ=e−log⁡x=1/x\mu=e^{-\log x}=1/x である。商の微分がちょうど積分因子を掛けた左辺に一致している。

右辺の積分では u=log⁡xu=\log x、du=dx/xdu=dx/x と置くため、原始関数は u2/2u^2/2 になる。積分後に yy へ戻すと任意定数にも xx が掛かる。この CxCx は同次方程式 y′−y/x=0y'-y/x=0 の一般解であり、二つの解の差としても確認できる。

代入と任意定数の形の確認

y′=12(log⁡x)2+C+log⁡xy'=\tfrac12(\log x)^2+C+\log x、y/x=12(log⁡x)2+Cy/x=\tfrac12(\log x)^2+C なので、差は確かに log⁡x\log x である。任意の x0>0x_0>0 と初期値 y(x0)=y0y(x_0)=y_0 に対し C=y0/x0−(log⁡x0)2/2C=y_0/x_0-(\log x_0)^2/2 が一意に決まり、正の半直線上で解を与える。

最後を y=x(log⁡x)2/2+Cy=x(\log x)^2/2+C と書くと、CC の寄与が原式で −C/x-C/x と残る。例えば C=1,x=1C=1,x=1 では右辺0に対して左辺が −1-1 となり、解でない。積分因子を戻す操作は、特解だけでなく積分定数にも適用する。

II.2 定数係数の二階非同次方程式

同次解と特解を足せる条件

演算子 L[y]=y′′−y′−2yL[y]=y''-y'-2y は線形なので、L[yh]=0L[y_h]=0、L[yp]=2x2+2xL[y_p]=2x^2+2x なら yh+ypy_h+y_p も非同次方程式の解になる。逆に任意の二つの非同次解の差は同次方程式を満たすため、特解一つに同次一般解を足せば全ての解を表せる。

指数関数 erxe^{rx} へ LL を作用させると (r2−r−2)erx(r^2-r-2)e^{rx} となる。相異なる根2と −1-1 から得る二本は、ワロンシアンが −3ex≠0-3e^x\ne0 なので一次独立である。右辺が二次多項式で、特性方程式に根0がないため、同じ次数の多項式で特解を探して係数を決められる。

直接の残差と定数項の役割

yp=−x2−1y_p=-x^2-1 なら yp′=−2x,yp′′=−2y_p'=-2x,y_p''=-2 なので、左辺は −2+2x+2x2+2=2x2+2x-2+2x+2x^2+2=2x^2+2x。二つの指数項の残差はそれぞれ零である。係数が全実数上で連続な二階方程式なので、任意の一点で y,y′y,y' を指定すれば二つの定数が決まる。

yp=−x2y_p=-x^2 だけで済ませると、残差は 2x2+2x−22x^2+2x-2 となり、定数項 −2-2 が残る。右辺に定数がない場合でも、微分によって定数が発生するため、特解には定数項を用意する。また特性根の和が1、積が −2-2 であることを確かめれば、符号を誤った −2,1-2,1 という根を検出できる。

III 階乗を含む正数列の比の極限

凸性から積分の上下を挟む

凸な微分可能関数は、区間の中点における接線以上であり、両端を結ぶ弦以下にある。f(t)=1/tf(t)=1/t の中点を m=n+1/2m=n+1/2 とすると f(t)≥f(m)+f′(m)(t−m)f(t)\ge f(m)+f'(m)(t-m)。長さ1の対称区間で積分すれば接線の傾きの項が零になり、下界 f(m)f(m) を得る。弦の積分は台形の面積 {f(n)+f(n+1)}/2\{f(n)+f(n+1)\}/2 になる。

この二つを正の mm 倍して1を引くと、上界は (2n+1)2/{4n(n+1)}−1=1/{4n(n+1)}(2n+1)^2/\{4n(n+1)\}-1=1/\{4n(n+1)\} である。対数の上下が零へ収束するので、指数関数の連続性から比は e0=1e^0=1 へ収束する。階乗自体の漸近公式を仮定せずに証明できる。

比の展開と指数因子の検算

log⁡(1+1/n)=1/n−1/(2n2)+1/(3n3)+O(n−4)\log(1+1/n)=1/n-1/(2n^2)+1/(3n^3)+O(n^{-4}) を用いると、対数の比は 1/(12n2)+O(n−3)1/(12n^2)+O(n^{-3}) となる。比が1より少し大きく、二次の速さで1へ近付くことは、凸性の評価とも整合する。例えば n=1n=1 の比は 22/e≃1.04052\sqrt2/e\simeq1.0405 である。

e−ne^{-n} と e−(n+1)e^{-(n+1)} の割り算を誤り、比の前の e−1e^{-1} を落とすと、極限を ee としてしまう。階乗比 n!/(n+1)!=1/(n+1)n!/(n+1)!=1/(n+1)、べきの比、指数の比を一つずつ書いて整理する。また比の極限が1という結果だけから、ana_n 自体の極限値が1と結論することはできない。問われている対象を区別する。

解答

I 指数関数の差の極限

b,c>0b,c>0 なので bx=exlog⁡bb^x=e^{x\log b}、cx=exlog⁡cc^x=e^{x\log c} と実数上で書ける。x=0x=0 における微分係数の定義から bx−cxax=1a(bx−1x−cx−1x)⟶log⁡b−log⁡ca. \frac{b^x-c^x}{ax} =\frac1a\left(\frac{b^x-1}{x}-\frac{c^x-1}{x}\right) \longrightarrow\frac{\log b-\log c}{a}.

II.1 積分因子による一次方程式

x>0x>0 で式を xx で割ると y′x−yx2=log⁡xx. \frac{y'}x-\frac y{x^2}=\frac{\log x}{x}. 左辺は (y/x)′(y/x)' なので、∫(log⁡x)/x dx=(log⁡x)2/2\int(\log x)/x\,dx=(\log x)^2/2 を使い、

II.2 定数係数の二階非同次方程式

同次方程式の特性方程式は r2−r−2=(r−2)(r+1)=0r^2-r-2=(r-2)(r+1)=0 なので、同次解は C1e2x+C2e−xC_1e^{2x}+C_2e^{-x}。多項式の特解を yp=αx2+βx+γy_p=\alpha x^2+\beta x+\gamma と置くと yp′′−yp′−2yp=−2αx2+(−2α−2β)x+(2α−β−2γ). y_p''-y_p'-2y_p =-2\alpha x^2+(-2\alpha-2\beta)x+(2\alpha-\beta-2\gamma). 2x2+2x2x^2+2x と係数を比較して α=−1,β=0,γ=−1\alpha=-1,\beta=0,\gamma=-1 を得る。

III 階乗を含む正数列の比の極限

定義をそのまま割って階乗を消すと anan+1=e−1(1+1n)n+1/2,log⁡anan+1=(n+12)∫nn+1dtt−1. \frac{a_n}{a_{n+1}}=e^{-1}\left(1+\frac1n\right)^{n+1/2},\qquad \log\frac{a_n}{a_{n+1}}=\left(n+\frac12\right)\int_n^{n+1}\frac{dt}{t}-1. 1/t1/t は t>0t>0 で二階微分 2/t3>02/t^3>0 の凸関数である。接線による下界と弦による上界を積分すると 1n+1/2≤∫nn+1dtt≤12(1n+1n+1). \frac1{n+1/2}\le\int_n^{n+1}\frac{dt}{t} \le\frac12\left(\frac1n+\frac1{n+1}\right). 従って 0≤log⁡anan+1≤14n(n+1)⟶0. 0\le\log\frac{a_n}{a_{n+1}}\le\frac1{4n(n+1)}\longrightarrow0.

最終答

1alog⁡bc\displaystyle\frac1a\log\frac bc。

y=x{(log⁡x)22+C}\displaystyle y=x\left\{\frac{(\log x)^2}{2}+C\right\}、x>0x>0、CC は任意の実数。

y=C1e2x+C2e−x−x2−1y=C_1e^{2x}+C_2e^{-x}-x^2-1。C1,C2C_1,C_2 は任意の実数。

lim⁡n→∞anan+1=1\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{a_n}{a_{n+1}}=1。

第2問 — 対角化・正定値性・二次関数の最小値

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第3問 — 留数積分と半無限帯の複素写像

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第4問 — 円柱と二重円錐で囲まれる立体の境界

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第5問 — 周期関数の実フーリエ級数と回路の周期解

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第6問 — 指数滞在時間を持つ点灯・消灯過程

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数学の解答・解説PDF

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年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(解説6項目)

    常微分方程式 / 固有値と行列の位数 / 複素解析

  • 2025年度(解説6項目)

    微分方程式と極座標 / 行列指数関数と二次形式 / 留数定理と偶数べきの級数和

  • 2024年度(解説6項目)

    微分方程式・対称積分・漸化式 / 対称行列の固有空間と直交射影 / 複素平面の領域・留数・半円弧の評価

  • 2023年度(このページ・解説6項目)

    指数の極限・線形微分方程式・階乗の比 / 対角化・正定値性・二次関数の最小値 / 留数積分と半無限帯の複素写像

  • 2022年度(解説6項目)

    楕円の接線と円錐の最適化 / ラプラス変換の微分則と初期値問題 / 可換な対称行列の同時対角化

  • 2021年度(解説8項目)

    変数を指数に持つ関数と逆三角関数の積分 / 位相の変換と複素数値の連立微分方程式 / 反対称行列の固有値・高次のべき・指数関数

2023年度の出題内容

解説6項目

この6問の分野は微分積分・解析1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分方程式指数の極限・線形微分方程式・階乗の比底が正である条件と微分係数 / 等しい底と符号による確認あり
第2問—対角化・正定値性・二次関数の最小値—あり
第3問—留数積分と半無限帯の複素写像—あり
第4問—円柱と二重円錐で囲まれる立体の境界—あり
第5問微分積分・解析周期関数の実フーリエ級数と回路の周期解—あり
第6問—指数滞在時間を持つ点灯・消灯過程—あり

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 6問 → 2023年度 6問
2022年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2017〜2026
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
TOEFL iBT/ITP のスコア提出。
院試hubの最終確認
2026-10-22
東京大学の公式過去問PDF