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東大 工学系研究科 数学 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(解説8項目)

解説8項目の分野は線形代数2項目、微分積分・解析2項目、確率・統計1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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数学1 問I — 変数を指数に持つ関数と逆三角関数の積分

1 底と指数がともに変わる関数の導関数

実数のべきの定義から対数微分を導く

正の底 u(x)u(x) に対する実数指数 v(x)v(x) のべきは uv=exp⁡(vlog⁡u)u^v=\exp(v\log u) と定義する。この式を連鎖律で微分すると、(uv)′=uv{v′log⁡u+vu′/u}(u^v)'=u^v\{v'\log u+vu'/u\} となる。従って底と指数の一方だけを定数のように扱うことはできない。本問では u>0u>0 に加え、x>0x>0 により log⁡x\log x も定義される。逆余弦の微分は x=cos⁡ux=\cos u を微分して 1=−sin⁡u u′1=-\sin u\,u' とし、0<u<π/20<u<\pi/2 における sin⁡u=1−x2>0\sin u=\sqrt{1-x^2}>0 を使って得られる。

導関数の二項は、指数の変化 v′=1/xv'=1/x と底の変化 u′u' の寄与である。区間の内部では分母はいずれも零でなく、式は実数として有限である。端点0や1への極限を、そのまま端点での微分可能性と取り違えてはならない。

底がその点で1でも、底の変化は消えない

x=cos⁡1x=\cos1 とすると u=1u=1、y=1y=1 なので、正しい式は y′=−log⁡(cos⁡1)/sin⁡1>0y'=-\log(\cos1)/\sin1>0 になる。これは y=exp⁡(log⁡xlog⁡u)y=\exp(\log x\log u) の指数をその点で直接微分しても得られる。

底を定数と誤認して y′=ylog⁡u/xy'=y\log u/x とすると、この点の値を0と誤る。逆に指数を定数と扱えば第一項が失われる。一般に u(x0)=1u(x_0)=1 という一点での等式は、近くの全ての xx で u=1u=1 であることを意味しない。どの関数を微分しているかを区別する。

2 実定数を含む有理関数の不定積分

分母の重複因子と定数による場合分け

p≠0p\ne0 なら分母には二重因子 x2x^2 と、異なる一次因子 x−px-p がある。そのため部分分数を A/x+B/x2+D/(x−p)A/x+B/x^2+D/(x-p) と置く。両辺に x2(x−p)x^2(x-p) を掛けると x2+x+2=(A+D)x2+(B−pA)x−pB. x^2+x+2=(A+D)x^2+(B-pA)x-pB. 定数項から B=−2/pB=-2/p、一次項から A=−(p+2)/p2A=-(p+2)/p^2、二次項から D=1−AD=1-A と順に求まる。p=0p=0 ではこの計算の除算が使えず、元の三重極に戻って直接積分する必要がある。

実数上では (log⁡∣x−a∣)′=1/(x−a)(\log|x-a|)'=1/(x-a) が x≠ax\ne a で成立する。また ∫x−2dx=−x−1\int x^{-2}dx=-x^{-1}、∫x−3dx=−x−2/2\int x^{-3}dx=-x^{-2}/2 である。原始関数は、極0と pp を除いた各連結区間ごとに示している。積分定数も区間ごとに異なってよい。

微分による検算と符号の誤り

p≠0p\ne0 の答えを微分すると、対数二項から A/x+D/(x−p)A/x+D/(x-p)、有理式の項から −2/(px2)-2/(px^2) が出て、部分分数へ正確に戻る。p=0p=0 の答えも微分すれば 1/x+1/x2+2/x31/x+1/x^2+2/x^3 に戻る。

−2/(px2)-2/(px^2) の積分を −2/(px)-2/(px) と誤ると、微分した値が正解から 4/(px2)4/(px^2) だけずれる。例えば p=1,x=2p=1,x=2 で元の被積分関数は2だが、誤った原始関数の微分は3になる。また絶対値を外して log⁡x\log x と書くと、x<0x<0 で定義される実数の原始関数を失う。p=0p=0 を分母 pp の式へ代入する操作もできない。

3 逆正弦による置換と部分積分

逆関数の枝と積分区間を一緒に変える

arcsin⁡x\arcsin x は値域 [−π/2,π/2][-\pi/2,\pi/2] を選んだ正弦の逆関数である。0≤x≤sin⁡θ<10\le x\le\sin\theta<1 では連続微分可能で、その導関数は 1/1−x2>01/\sqrt{1-x^2}>0 になる。このため置換は単調で、区間の向きは変わらない。与えられた θ\theta の範囲が、上端を単に θ\theta と書ける条件になっている。

arctan⁡u\arctan u の原始関数は、積の微分 (uarctan⁡u)′=arctan⁡u+u/(1+u2)(u\arctan u)'=\arctan u+u/(1+u^2) から作る。余分に出た有理式を差し引き、dlog⁡(1+u2)/du=2u/(1+u2)d\log(1+u^2)/du=2u/(1+u^2) を使うと答えになる。対数の中身は常に正で、下端では両項とも0である。

上端微分と小さい角度で確かめる

答えを θ\theta で微分すると arctan⁡θ\arctan\theta になる。元の積分の上端微分でも、cos⁡θ/1−sin⁡2θ=1\cos\theta/\sqrt{1-\sin^2\theta}=1 により同じ値になる。さらに θ→0\theta\to0 で I=θ2/2+O(θ4)I=\theta^2/2+O(\theta^4) となり、arctan⁡u=u+O(u3)\arctan u=u+O(u^3) の積分と一致する。

θarctan⁡θ\theta\arctan\theta だけを答えると、導関数に θ/(1+θ2)\theta/(1+\theta^2) が余り、例えば θ=1\theta=1 では微分が正解より 1/21/2 大きくなる。積分変数を uu に変えた後も上端を sin⁡θ\sin\theta のままにする誤りは、別の短い区間を積分したことになる。置換式、微小量、上下端を一組として書く。

解答

1 底と指数がともに変わる関数の導関数

0<x<10<x<1 では u=arccos⁡x>0u=\arccos x>0 なので、y=ulog⁡x>0y=u^{\log x}>0 である。対数を取ると log⁡y=(log⁡x)(log⁡u),y′y=log⁡ux+log⁡xuu′,u′=−11−x2. \log y=(\log x)(\log u),\qquad \frac{y'}y=\frac{\log u}{x}+\frac{\log x}{u}u',\qquad u'=-\frac1{\sqrt{1-x^2}}.

2 実定数を含む有理関数の不定積分

p≠0p\ne0 のとき、係数比較により x2+x+2x2(x−p)=−p+2p2x−2px2+p2+p+2p2(x−p). \frac{x^2+x+2}{x^2(x-p)} =-\frac{p+2}{p^2x}-\frac2{px^2} +\frac{p^2+p+2}{p^2(x-p)}. 一方 p=0p=0 では被積分関数は x−1+x−2+2x−3x^{-1}+x^{-2}+2x^{-3} になる。

3 逆正弦による置換と部分積分

u=arcsin⁡xu=\arcsin x と置く。du=dx/1−x2du=dx/\sqrt{1-x^2} で、0<θ<π/20<\theta<\pi/2 より上端は arcsin⁡(sin⁡θ)=θ\arcsin(\sin\theta)=\theta になる。従って I=∫0θarctan⁡u du=[uarctan⁡u]0θ−∫0θu1+u2 du. I=\int_0^\theta\arctan u\,du =\left[u\arctan u\right]_0^\theta -\int_0^\theta\frac{u}{1+u^2}\,du.

最終答

y′=(arccos⁡x)log⁡x{log⁡(arccos⁡x)x−log⁡x(arccos⁡x)1−x2}\displaystyle y'=(\arccos x)^{\log x}\left\{\frac{\log(\arccos x)}x-\frac{\log x}{(\arccos x)\sqrt{1-x^2}}\right\}。

{−p+2p2log⁡∣x∣+2px+p2+p+2p2log⁡∣x−p∣+C,p≠0,log⁡∣x∣−1x−1x2+C,p=0.\displaystyle \begin{cases} -\dfrac{p+2}{p^2}\log|x|+\dfrac2{px} +\dfrac{p^2+p+2}{p^2}\log|x-p|+C,&p\ne0,\\[3pt] \log|x|-\dfrac1x-\dfrac1{x^2}+C,&p=0. \end{cases}

I=θarctan⁡θ−12log⁡(1+θ2)\displaystyle I=\theta\arctan\theta-\frac12\log(1+\theta^2)。

数学1 問II — 位相の変換と複素数値の連立微分方程式

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数学2 問I — 反対称行列の固有値・高次のべき・指数関数

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数学2 問II — 二状態の確率遷移と定常分布への収束

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数学2 問III — 隣り合うベクトルの和と一次独立性

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数学3 問I — 一次分数変換の不動点と円の像

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数学3 問II — 回転を含むジューコフスキー型変換の虚部

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数学3 問III — 非整数べきの枝と半円環に沿う留数積分

非整数べきの枝と半円環に沿う留数積分の途中式・最終答をPDFで見る

数学の解答・解説PDF

2021〜2026年度(6年度) · ¥3,200

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年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(解説6項目)

    常微分方程式 / 固有値と行列の位数 / 複素解析

  • 2025年度(解説6項目)

    微分方程式と極座標 / 行列指数関数と二次形式 / 留数定理と偶数べきの級数和

  • 2024年度(解説6項目)

    微分方程式・対称積分・漸化式 / 対称行列の固有空間と直交射影 / 複素平面の領域・留数・半円弧の評価

  • 2023年度(解説6項目)

    指数の極限・線形微分方程式・階乗の比 / 対角化・正定値性・二次関数の最小値 / 留数積分と半無限帯の複素写像

  • 2022年度(解説6項目)

    楕円の接線と円錐の最適化 / ラプラス変換の微分則と初期値問題 / 可換な対称行列の同時対角化

  • 2021年度(このページ・解説8項目)

    変数を指数に持つ関数と逆三角関数の積分 / 位相の変換と複素数値の連立微分方程式 / 反対称行列の固有値・高次のべき・指数関数

2021年度の出題内容

解説8項目

この8問の分野は線形代数2問・微分積分・解析2問・確率・統計1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
数学1 問I微分積分・解析変数を指数に持つ関数と逆三角関数の積分実数のべきの定義から対数微分を導く / 底がその点で1でも、底の変化は消えないあり
数学1 問II—位相の変換と複素数値の連立微分方程式—あり
数学2 問I線形代数反対称行列の固有値・高次のべき・指数関数—あり
数学2 問II確率・統計二状態の確率遷移と定常分布への収束—あり
数学2 問III線形代数隣り合うベクトルの和と一次独立性—あり
数学3 問I—一次分数変換の不動点と円の像—あり
数学3 問II—回転を含むジューコフスキー型変換の虚部—あり
数学3 問III微分積分・解析非整数べきの枝と半円環に沿う留数積分—あり

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2017〜2026
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
TOEFL iBT/ITP のスコア提出。
院試hubの最終確認
2026-10-22
東京大学の公式過去問PDF