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九大 数理学府 数理学コース 基礎科目 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野は線形代数1問、微分積分・解析1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 線形代数:行列式の微分公式とロンスキアン

方針

公式として覚えていても証明にはならない。定義(置換による展開)に戻る,積の微分法則を1回使う,和の順序を入れ替える,の3手で終わる。答案では「有限和・有限積だから項別微分と順序交換が正当である」と一言添えると論理の穴がなくなる。

検算(n=2n=2 で確かめる)

ddx(a11a22−a12a21)=(a11′a22−a12′a21)+(a11a22′−a12a21′) \frac{d}{dx}\bigl(a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}\bigr) =\bigl(a'_{11}a_{22}-a'_{12}a_{21}\bigr)+\bigl(a_{11}a'_{22}-a_{12}a'_{21}\bigr) であり,右辺の第1項は第1行を微分した行列式,第2項は第2行を微分した行列式である。公式の形と一致する。

別の見方(多重線形性)

det⁡\det は行ベクトル r1,…,rnr_1,\dots,r_n の nn 重線形交代形式である。この立場では,差分 det⁡(r1(x+h),…,rn(x+h))−det⁡(r1(x),…,rn(x))\det\bigl(r_1(x+h),\dots,r_n(x+h)\bigr)-\det\bigl(r_1(x),\dots,r_n(x)\bigr) を「1行ずつ xx から x+hx+h に取り替える」伸縮和に分解し,各段で線形性を使って h→0h\to0 とすればよい。得られる構造は上と同じで,「1行だけ微分したものの和」という形は多重線形性の帰結だとわかる。

典型ミス

det⁡(A)′=det⁡(A′)\det(A)'=\det(A'),つまり全成分を同時に微分した行列の行列式にしてしまう誤り。上の n=2n=2 の計算がすでに反例になっている(一般に a11′a22′−a12′a21′a'_{11}a'_{22}-a'_{12}a'_{21} とは一致しない)。

設問(2) 多項式のロンスキアンが定数であること

方針

「行を1つ微分すると次の行になる」という階段状の構造がこの行列の急所である。設問(1) を適用すると,k≤n−1k\le n-1 の項は行が重なって消え,最後の k=nk=n の項だけ別の理由(次数の仮定)で消える。

次数の仮定が効く場所

(n−1)(n-1) 次以下という仮定は (ii) の1か所でしか使わない。逆に言えば,そこを外すと結論は崩れる。n=2n=2,p1(x)=1p_1(x)=1,p2(x)=x2p_2(x)=x^2 とすると det⁡(1x202x)=2x \det\begin{pmatrix}1&x^2\\0&2x\end{pmatrix}=2x となり定数ではない(p2p_2 が n−1=1n-1=1 次以下でない)。答案にこの一言を添えると,仮定を使った位置がはっきりする。

定数の正体

pj(x)=∑k=0n−1cjkxkp_j(x)=\sum_{k=0}^{n-1}c_{jk}x^{k} と書くと pj(i−1)(0)=(i−1)! cj,i−1p_j^{(i-1)}(0)=(i-1)!\,c_{j,i-1} だから,x=0x=0 を代入して w=(∏k=0n−1k!)det⁡(cjk)1≤j,k≤n w=\Bigl(\prod_{k=0}^{n-1}k!\Bigr)\det\bigl(c_{jk}\bigr)_{1\le j,k\le n} となる(kk は 00 から n−1n-1 まで動く列番号)。したがって w≠0w\ne0 であることと p1,…,pnp_1,\dots,p_n が一次独立であることは同値であり,この行列式は「(n−1)(n-1) 次以下の多項式の空間で基底をなすか」を測る量だとわかる。設問(3) の検算にも使える。

典型ミス

w′w' の各項を「行列式だから 0」とまとめて処理しない。(i) は同じ行が2つ現れるから,(ii) は行が零になるからで,理由が異なる。また,「導関数が 0 だから定数」と言うには定義域が区間であることが要る(ここでは R\mathbb R 全体なので問題ない)。

設問(3) 4次の場合の具体計算

方針

設問(2) で定数性が保証されているので,「どの点で計算してもよい」という自由度を使うのがこの設問の要点である。x=0x=0 では2階・3階の微分係数が定数項だけで決まり,0 が多く現れるので計算が最も軽い。

検算1(係数行列による公式)

設問(2) の解説で得た w=(∏k=0n−1k!)det⁡Cw=\bigl(\prod_{k=0}^{n-1}k!\bigr)\det C を使う。ここで ∏k=03k!=1⋅1⋅2⋅6=12\prod_{k=0}^{3}k!=1\cdot1\cdot2\cdot6=12,第 jj 行に pjp_j の x0,x1,x2,x3x^0,x^1,x^2,x^3 の係数を並べた行列は C=(1011301050022300) C=\begin{pmatrix} 1&0&1&1\\ 3&0&1&0\\ 5&0&0&2\\ 2&3&0&0 \end{pmatrix} である。第2列は第4行以外が 0 だから det⁡C=3⋅(−1)4+2∣111310502∣=3⋅(2−6−5)=3⋅(−9)=−27 \det C=3\cdot(-1)^{4+2}\begin{vmatrix}1&1&1\\3&1&0\\5&0&2\end{vmatrix} =3\cdot\bigl(2-6-5\bigr)=3\cdot(-9)=-27 となり,12⋅(−27)=−32412\cdot(-27)=-324 で一致する。

検算2(別の点で計算する)

定数性そのものを確かめるには x=1x=1 で計算すればよい。微分係数を並べると ∣347552638212060120∣ \begin{vmatrix} 3&4&7&5\\ 5&2&6&3\\ 8&2&12&0\\ 6&0&12&0 \end{vmatrix} となり,第4列に沿って展開すると第1項の3次行列式が 0 になるため,値は 3⋅(−108)=−3243\cdot(-108)=-324 で同じである。値が一致しなければ微分係数の計算ミスが疑える。

失点しやすい点

「定数だから x=0x=0 でよい」と書く前に,次数がすべて 33 次以下であること,すなわち設問(2) の仮定がみたされていることを必ず確認する。この一行がないと論理が飛ぶ。計算面では,0 の多い行(ここでは第2行)を選んで展開しないと4次の行列式を正面から展開することになり,符号ミスが増える。

解答

記号の準備

成分が R\mathbb R 上の可微分関数である nn 次正方行列を A(x)=(aij(x))A(x)=(a_{ij}(x)) と書く。また 1≤k≤n1\le k\le n に対し,A(x)A(x) の第 kk 行だけを (ak1′(x),…,akn′(x))(a'_{k1}(x),\dots,a'_{kn}(x)) に置き換え,他の行はそのままにした行列を Ak(x)A_k(x) と書く。示すべきことは ddxdet⁡A(x)=∑k=1ndet⁡Ak(x) \frac{d}{dx}\det A(x)=\sum_{k=1}^{n}\det A_k(x) である。

定義に戻る

行列式のライプニッツの公式より det⁡A(x)=∑σ∈Snsgn⁡(σ)∏i=1naiσ(i)(x) \det A(x)=\sum_{\sigma\in S_n}\operatorname{sgn}(\sigma)\prod_{i=1}^{n}a_{i\sigma(i)}(x) である。右辺は可微分関数の有限個の積の有限和だから,det⁡A(x)\det A(x) は xx について可微分であり,項別に微分してよい。

積の微分法則を1回使う

nn 個の関数の積に積の微分法則を用いると,各 σ∈Sn\sigma\in S_n に対して ddx∏i=1naiσ(i)(x)=∑k=1nakσ(k)′(x)∏i≠kaiσ(i)(x) \frac{d}{dx}\prod_{i=1}^{n}a_{i\sigma(i)}(x) =\sum_{k=1}^{n}a'_{k\sigma(k)}(x)\prod_{i\ne k}a_{i\sigma(i)}(x) が成り立つ。

和の順序を入れ替える

これを代入し,どちらも有限和だから ∑σ\sum_{\sigma} と ∑k\sum_{k} を入れ替えると ddxdet⁡A(x)=∑k=1n{∑σ∈Snsgn⁡(σ) akσ(k)′(x)∏i≠kaiσ(i)(x)} \frac{d}{dx}\det A(x) =\sum_{k=1}^{n}\left\{\sum_{\sigma\in S_n}\operatorname{sgn}(\sigma)\, a'_{k\sigma(k)}(x)\prod_{i\ne k}a_{i\sigma(i)}(x)\right\} を得る。kk を固定したとき,中括弧の中身は「第 kk 行が (ak1′,…,akn′)(a'_{k1},\dots,a'_{kn}),他の行は A(x)A(x) と同じ」である行列 Ak(x)A_k(x) のライプニッツ展開そのものである。すなわち中括弧の中身は det⁡Ak(x)\det A_k(x) に等しい。よって ddxdet⁡A(x)=∑k=1ndet⁡Ak(x) \frac{d}{dx}\det A(x)=\sum_{k=1}^{n}\det A_k(x) が成り立つ。□\square

記号

p1,…,pnp_1,\dots,p_n を (n−1)(n-1) 次以下の多項式とし,第 ii 行第 jj 列成分が pj(i−1)(x)p_j^{(i-1)}(x) である nn 次行列を W(x)W(x),その行列式を w(x)=det⁡W(x)w(x)=\det W(x) と書く(p(0)=pp^{(0)}=p とする)。多項式は何回でも微分できるので,設問(1) の公式がそのまま使える。

(1) を適用して各項を評価する

設問(1) より w′(x)=∑k=1ndet⁡Wk(x) w'(x)=\sum_{k=1}^{n}\det W_k(x) である。ここで Wk(x)W_k(x) は W(x)W(x) の第 kk 行だけを微分した行列である。W(x)W(x) の第 kk 行は (p1(k−1)(x),…,pn(k−1)(x))\bigl(p_1^{(k-1)}(x),\dots,p_n^{(k-1)}(x)\bigr) だから,微分すると (p1(k)(x),…,pn(k)(x))\bigl(p_1^{(k)}(x),\dots,p_n^{(k)}(x)\bigr) になる。

(i) 1≤k≤n−11\le k\le n-1 のとき,この行は W(x)W(x) の第 k+1k+1 行と一致する。よって Wk(x)W_k(x) は第 kk 行と第 k+1k+1 行が等しい行列であり,同じ行を2つもつ行列式は 0 だから det⁡Wk(x)=0\det W_k(x)=0。

(ii) k=nk=n のとき,得られる行は (p1(n)(x),…,pn(n)(x))\bigl(p_1^{(n)}(x),\dots,p_n^{(n)}(x)\bigr) である。各 pjp_j は (n−1)(n-1) 次以下だから pj(n)≡0p_j^{(n)}\equiv0,すなわちこの行は零ベクトルである。零行をもつ行列式は 0 だから det⁡Wn(x)=0\det W_n(x)=0。

結論

以上より,すべての x∈Rx\in\mathbb R で w′(x)=0w'(x)=0 である。ww は多項式なので R\mathbb R 上可微分であり,区間 R\mathbb R の上で導関数が恒等的に 0 だから,平均値の定理より ww は定数関数である。□\square

定数であることの確認

与えられた4つの多項式の次数はそれぞれ 3, 2, 3, 13,\,2,\,3,\,1 で,いずれも n−1=3n-1=3 次以下である。よって設問(2) の仮定がみたされ,求める 44 次の行列式は xx によらない定数である。したがって値の求めやすい x=0x=0 で計算してよい。

x=0x=0 における微分係数

各多項式を3階まで微分して x=0x=0 を代入すると,次の表を得る。 p1p2p3p4p(0)(0)1352p(1)(0)0003p(2)(0)2200p(3)(0)60120 \begin{array}{c|cccc} & p_1 & p_2 & p_3 & p_4\\\hline p^{(0)}(0) & 1 & 3 & 5 & 2\\ p^{(1)}(0) & 0 & 0 & 0 & 3\\ p^{(2)}(0) & 2 & 2 & 0 & 0\\ p^{(3)}(0) & 6 & 0 & 12 & 0 \end{array}

行列式の計算

求める値 ww は,上の表を成分とする行列の行列式である。 w=∣13520003220060120∣ w=\begin{vmatrix} 1 & 3 & 5 & 2\\ 0 & 0 & 0 & 3\\ 2 & 2 & 0 & 0\\ 6 & 0 & 12 & 0 \end{vmatrix} 第2行は第4列以外がすべて 0 なので,第2行に沿って余因子展開すると w=3⋅(−1)2+4∣1352206012∣ w=3\cdot(-1)^{2+4}\begin{vmatrix} 1 & 3 & 5\\ 2 & 2 & 0\\ 6 & 0 & 12 \end{vmatrix} となる。3次の行列式を第1行に沿って展開すると ∣1352206012∣=1⋅(2⋅12−0⋅0)−3⋅(2⋅12−0⋅6)+5⋅(2⋅0−2⋅6)=24−72−60=−108 \begin{vmatrix} 1 & 3 & 5\\ 2 & 2 & 0\\ 6 & 0 & 12 \end{vmatrix} =1\cdot(2\cdot12-0\cdot0)-3\cdot(2\cdot12-0\cdot6)+5\cdot(2\cdot0-2\cdot6) =24-72-60=-108 である。よって w=3⋅(−108)=−324w=3\cdot(-108)=-324。

最終答

行列式の導関数は,1行ずつ微分して得られる nn 個の行列式の和 ∑k=1ndet⁡Ak(x)\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\det A_k(x) に等しい。

w′(x)≡0w'(x)\equiv0 が成り立つので,この行列式は R\mathbb R 上の定数関数である。

−324-324

第2問 — 線形代数:最小多項式による対角化可能性の判定

方針

与えられているのは「行列がみたす等式」だけである。等式をそのまま多項式 ff に読み替え,その根の様子を調べる,という一本道でよい。示すべきことは ff が重根をもたないことに尽きる。

固有値がどうなるか

λ\lambda が AA の固有値で v≠0v\ne0 を固有ベクトルとすると Amv=λmvA^mv=\lambda^mv かつ Amv=Av=λvA^mv=Av=\lambda v だから λm=λ\lambda^m=\lambda,すなわち λ(λm−1−1)=0\lambda\bigl(\lambda^{m-1}-1\bigr)=0。固有値が 00 と 1 の (m−1)(m-1) 乗根に限られることは,このように直接も確かめられる。ただし「固有値がこれらに限る」だけでは対角化可能の証明にはならない。

具体例

m=2m=2(A2=AA^2=A)は射影行列で,Cn=ker⁡A⊕ker⁡(A−In)\mathbb C^n=\ker A\oplus\ker(A-I_n) と分解し,固有値 0,10,1 で対角化される。m=3m=3(A3=AA^3=A)なら固有値は 0,1,−10,1,-1 のいずれかになる。いずれも上の一般論の特別な場合である。

典型ミス

「f(A)=Of(A)=O となる多項式があるから対角化可能」と書くのは誤りである。重根をもたないことの確認が証明の本体で,そこを落とすと点にならない。たとえば A=(0100)A=\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix} は f(t)=t2f(t)=t^2 に対して f(A)=Of(A)=O をみたすが対角化可能でない。

設問(2) 巡回ベクトルをもつ行列

方針

仮定は「vv が生成する軌道が nn 段だけ続いてから消える」という形をしている。まずそこから基底を作り,基底の上で Bn=OB^n=O を確かめて冪零性に持ち込む。結論が「不可能」なので,対角化可能と仮定して矛盾を導く背理法が書きやすい。

一次独立を示す定石

係数の最小添字 jj をとり,B n−1−jB^{\,n-1-j} を掛けて他の項を 00 にする,という手順は冪零作用素の議論で繰り返し現れる。掛ける冪の指数を n−1−jn-1-j と決める根拠は,「残したい項 cjBjvc_jB^jv をちょうど B n−1vB^{\,n-1}v に運ぶ」ことにある。

最小多項式で見る

Bn=OB^n=O より最小多項式は tnt^n を割り切る。一方 B n−1v≠0B^{\,n-1}v\ne0 なので B n−1≠OB^{\,n-1}\ne O,したがって最小多項式は tnt^{n} そのものである。n≥2n\ge2 だから重根をもち,設問(1)(3) と同じ判定条件から直ちに対角化不可能が出る。3つの設問を1つの道具でそろえて書けると答案が締まる。

典型ミス

「Bn=OB^n=O だから固有値は 00 だけ,よって対角化できない」で止めると誤りである。零行列も固有値は 00 だけだが対角化可能なので,B≠OB\ne O を示す一行が必ず要る。ここで n≥2n\ge2 という条件が効いている。

設問(3) CC の2次式が対角化可能な場合

仮定「11 を固有値にもたない」の使いどころ

D−In=(C+In)2D-I_n=(C+I_n)^2 だから,DD の固有値 dd に対する方程式は (t+1)2=d−1(t+1)^2=d-1 である。d=1d=1 のときだけこれが重根 t=−1t=-1 をもち,議論が破れる。この一点を除くために仮定が置かれている,という読み方ができると見通しがよい。

仮定を外すと成り立たない

n=2n=2,C=(−110−1)C=\begin{pmatrix}-1&1\\0&-1\end{pmatrix} とすると (C+I2)2=O(C+I_2)^2=O だから D=(C+I2)2+I2=I2 D=(C+I_2)^2+I_2=I_2 である。D=I2D=I_2 は対角化可能だが固有値 11 をもち,一方 CC は固有値 −1-1 の2次ジョルダン細胞なので対角化可能でない。すなわち「DD が対角化可能」という条件だけからは CC の対角化可能性は従わず,固有値 11 を除く仮定が本質的である。

別解(固有空間に分けて考える)

CC と D=g(C)D=g(C) は可換だから,各固有空間 Vj=ker⁡(D−djIn)V_j=\ker(D-d_jI_n) は CC-不変である。DD は対角化可能なので Cn=⨁jVj\mathbb C^n=\bigoplus_{j}V_j と分解する。VjV_j 上では (C+In)2=(dj−1)I(C+I_n)^2=(d_j-1)I が成り立ち,dj≠1d_j\ne1 だから t2+2t+2−djt^2+2t+2-d_j は相異なる2根をもつ。よって C∣VjC|_{V_j} は各 VjV_j で対角化でき,全体としても対角化できる。最小多項式を使う本解と,結局は同じことを別の言葉で述べている。

典型ミス

「DD が対角化可能なら CC も対角化可能」と一般論として述べてしまう誤り。上の反例のとおり正しくない。また,dj−1\sqrt{d_j-1} の符号の取り方に悩む必要はない。どちらを取っても {−1+dj−1, −1−dj−1}\{-1+\sqrt{d_j-1},\,-1-\sqrt{d_j-1}\} という2元集合は変わらず,議論に必要なのは「2根が相異なる」ことだけである。

線形代数:最小多項式による対角化可能性の判定の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 微分積分:関数列の各点収束と一様収束

方針

「多項式的増大 ×\times 等比的減少」では等比が勝つ,という事実を,数列の比 an+1/ana_{n+1}/a_n の極限が 11 より小さいことから示すのが最短である。極限が存在することを問われているので,値が 00 であることまで書けば十分である。

別解(対数をとる)

0<x<10<x<1 では log⁡an=αlog⁡n+nlog⁡x \log a_n=\alpha\log n+n\log x であり,log⁡x<0\log x<0 だから nlog⁡xn\log x が支配して log⁡an→−∞\log a_n\to-\infty,したがって an→0a_n\to0。α\alpha が整数でなくても使え,比の評価より短く書ける。

端点を分けて扱う理由

x=1x=1 では an+1/an→1a_{n+1}/a_n\to1 となり,上の比の議論はそのままでは使えない。もっとも fn(1)=0f_n(1)=0 は代入で分かるので,端点は最初に片づけておくのがよい。x=0x=0 も同様である。

設問(2) への布石

極限関数 f≡0f\equiv0 は連続である。したがって「極限関数が不連続だから一様収束しない」という定番の論法はここでは使えない。(2) では sup⁡\sup を実際に評価する必要がある。

設問(2) 一様収束するための必要十分条件

最大値を求めずに済ませる書き方

十分性だけなら,(1+1/n)−n≤1(1+1/n)^{-n}\le1 より Mn≤nαn+1≤nα−1 M_n\le\frac{n^{\alpha}}{n+1}\le n^{\alpha-1} であり,α<1\alpha<1 なら Mn→0M_n\to0 が出る。必要性は x=1−1nx=1-\frac1n を代入して fn ⁣(1−1n)=nα−1(1−1n)n⟶{e−1(α=1)+∞(α>1) f_n\!\left(1-\frac1n\right)=n^{\alpha-1}\left(1-\frac1n\right)^{n} \longrightarrow \begin{cases} e^{-1} & (\alpha=1)\\ +\infty & (\alpha>1) \end{cases} とすればよい。最大点を厳密に求めなくても結論は出るので,時間が足りないときはこの経路が速い。

図で見る

次の図は α=1\alpha=1(境界の場合)の fnf_n を n=1,3,10n=1,3,10 について描いたものである。山の位置 xn=n/(n+1)x_n=n/(n+1) は右端 x=1x=1 に近づき,山の高さ MnM_n は e−1e^{-1} に近づく。各点では 00 に収束しているのに「どの nn でも高さ e−1e^{-1} 程度の山がどこかに残る」という状況が見える。一般の α\alpha では山の高さがおよそ nα−1n^{\alpha-1} 倍の速さで変わるので,α<1\alpha<1 なら山ごと沈み,α>1\alpha>1 なら山が高くなっていく。

境界 α=1\alpha=1 の扱い

「必要十分条件」を求めよという設問なので,α=1\alpha=1 を含めるかどうかを判定しないと答えにならない。Mn→e−1≠0M_n\to e^{-1}\ne0 を計算して除外する,という一手間が採点の分かれ目になる。α≥0\alpha\ge0 という条件が与えられているので,答えは 0≤α<10\le\alpha<1 と書くのが丁寧である。

典型ミス

各点収束することから一様収束を結論してはならない。また [0,1][0,1] がコンパクトで fnf_n も ff も連続だからディニの定理が使える,と考えるのも誤りである。ディニの定理には {fn}\{f_n\} が各点で単調な列であるという仮定が必要だが, fn+1(x)fn(x)=(1+1n)αx \frac{f_{n+1}(x)}{f_n(x)}=\left(1+\frac1n\right)^{\alpha}x は xx によって 11 より大きくも小さくもなり,単調ではない。

この設問が試していること

「各点収束と一様収束の違いを,sup⁡\sup の計算という形で扱えるか」である。最大点が定義域の内部を動いて端に逃げるとき,各点では収束しても一様収束が壊れる。同じ構造は fn(x)=nxe−nxf_n(x)=nxe^{-nx}(最大値 e−1e^{-1})や fn(x)=nx1+n2x2f_n(x)=\dfrac{nx}{1+n^2x^2}(最大値 1/21/2)といった標準例にも現れる。最大値を求めて sup⁡\sup を評価する手順は身につけておきたい。

微分積分:関数列の各点収束と一様収束の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 分野:第4問の内容を表す短い見出し

方針

最初の一手とその理由。

検算

数値代入・極限・境界値などによる確認。

失点しやすい点

よくある誤りと、答案に明示すべき前提。

分野:第4問の内容を表す短い見出しの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(全4問)

    連立一次方程式 / 二変数関数の極値 / 線形写像の安定像分解

  • 2025年度(全4問)

    行列空間上の線形写像 / Dirichlet積分の収束 / スペクトル半径

  • 2024年度(全4問)

    対称行列の直交対角化 / 偏微分可能性と二階微分 / トーラス上の周期点

  • 2023年度(全4問)

    線形代数:像と核から作られる部分空間の次元 / 線形代数:不変部分空間と相似変換によるブロック分解 / 微分積分:連続関数を重みにもつ特異積分の極限

  • 2022年度(このページ・全4問)

    線形代数:行列式の微分公式とロンスキアン / 線形代数:最小多項式による対角化可能性の判定 / 微分積分:関数列の各点収束と一様収束

2022年度の出題内容

全4問

この4問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—線形代数:行列式の微分公式とロンスキアン検算(n=2 で確かめる) / 別の見方(多重線形性)あり
第2問線形代数最小多項式による対角化可能性の判定固有値がどうなるか / 具体例あり
第3問微分積分・解析関数列の各点収束と一様収束別解(対数をとる) / 端点を分けて扱う理由あり
第4問第4問の内容を表す短い見出し—あり

2022年度の解説には典型ミス3件・失点しやすい点2件・検算1件が付いています。

九州大学の公式過去問

公開年度範囲
数理学府の案内ページに依存
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
2027年度数理学コース一般の通常出願には英語スコアの記載なし。システム生命科学府を第2志望として併願する場合はTOEIC・TOEFLの写しを別提出。
院試hubの最終確認
2026-10-15
九州大学の公式過去問PDF