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院試 制御工学の出題傾向と対策

院試 制御工学の出題傾向。伝達関数・周波数応答・状態空間表現・安定性判別・PID制御・可制御性可観測性の頻出パターンと、機械系・電気電子系研究科ごとの試験範囲、答案で失点しやすい論点を整理します。

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制御工学は、機械系・電気系・情報系のいずれの研究科でも横断的に出題される一方で、研究科ごとに「古典制御と現代制御のどちらに重みを置くか」「現代制御をどこまで踏み込むか」が大きく違う、特殊な科目です。学部で古典制御(伝達関数・周波数応答・安定性判別)だけ習った外部生が、志望先で状態空間表現と可制御性・可観測性まで問われて初めて気付くことが多い。逆に、電気系で現代制御を中心に演習してきた学生が、機械系の試験でPID制御の過渡応答(オーバーシュート量・整定時間)を要求されて手が止まることもあります。本記事は「古典と現代の二刀流をどう作るか」「自分の志望研究科がどちらに寄っているか」を切り分けるための実務マップです。

この分野が出題される大学・研究科

機械系では、東京大学 工学系研究科 機械工学、京都大学 工学研究科 機械理工学、東北大学 工学研究科 機械工学、名古屋大学 工学研究科 機械航空宇宙工学、九州大学 工学府 機械工学、東京科学大学 工学院 機械系、電気通信大学 機械知能システム などで、4力と並ぶ主要試験科目に制御工学が含まれます。電気電子系では東北大学 電気・情報工学、九州大学 システム情報科学府 電気電子工学、東京科学大学 工学院 システム制御系などが該当します。情報系でも東京大学 情報理工学系研究科 電子情報学で制御の基礎が問われる年度があります。出題範囲は研究科で異なり、機械系は古典制御中心で状態空間は基礎まで、電気電子系は古典・現代を半々で、東京科学大 システム制御系のように制御工学を中心科目に据える研究科では最適制御(LQR)・オブザーバ設計・ロバスト制御の入門まで対象になります。志望研究科の出題範囲は想像で済ませず、必ず最新の募集要項を直接確認してください。

学部段階で固めておくべき基礎

制御工学は数学の道具を借りて動く科目です。道具が錆びていると、制御の論理は理解できても答案を最後まで書き切れません。次の項目が怪しい場合、制御の演習に入る前に1〜2週間を集中的に使って詰め直した方が、結果的に近道になります。

  • 線形代数:固有値・固有ベクトル、対称行列の対角化、行列のランクとカーネル。状態空間表現・可制御性可観測性・極配置で全面的に使う
  • ラプラス変換:定義と基本対応表、最終値の定理、逆ラプラス変換(部分分数分解)。伝達関数・過渡応答で必須
  • 常微分方程式:定数係数線形(同次・非同次)。状態方程式とPID制御の過渡応答解析で必須
  • 複素関数の「極」の概念:複素平面上の点としての極、極の実部と安定性の関係。ナイキスト線図・根軌跡で必須
  • ブール代数・離散数学の基礎:Z変換まで踏み込む研究科では、離散時間の畳み込みと差分方程式の扱いが必要

特に「極」を単なる s = a + jb という記号ではなく、複素平面上で実部の符号が安定性を決めるという視覚的なイメージで持っていないと、ナイキスト線図と根軌跡の問題で迷子になります。ここは図形的に納得するまで戻ってください。

論点別に見る出題と失点

制御工学は論点ごとに答案の作法が独立に決まっています。1つずつ「何を答案上で明示するか」を固めていきます。

伝達関数と周波数応答(ボード線図・ナイキスト線図)

頻出は、ブロック線図の縮約、フィードバック系の閉ループ伝達関数導出、開ループ伝達関数からのボード線図作図、ナイキスト線図と安定余裕。最も多い失点は、ブロック線図の符号です。負帰還を仮定しているにもかかわらず閉ループ伝達関数の分母に (1 − GH) と書いてしまう。教科書の式 G/(1 + GH) は負帰還を前提にしているのに、その前提を答案上で明示しないまま使う。負帰還か正帰還かは図から判断するしかないので、本式に入る前に「ここでは負帰還を仮定する」と一行書く所作を徹底してください。ボード線図の作図問題では、漸近線の折点周波数(コーナー周波数)と各帯域での傾き(-20 dB/dec、-40 dB/dec)を答案上に数値で明示しないと、波形だけ描いて根拠が抜けた答案になります。ゲイン余裕・位相余裕を求める問題では、位相が −180°になる周波数(位相交差周波数)とゲインが0 dBになる周波数(ゲイン交差周波数)の区別を答案で明記してください。

安定性判別(ラウス・フルビッツ、ナイキストの安定判別法)

頻出は、特性多項式へのラウス・フルビッツ法の適用、開ループ伝達関数からナイキスト線図を描いて閉ループ安定性を判別する問題、定常偏差を出すための型分類。ラウス・フルビッツの典型失点は、特性多項式の全係数が同符号であることの確認を飛ばして表に入ること。これは安定の必要条件であり、係数が異符号の段階で「安定でない」と即答できる問題なのに、表を作る時間を浪費してしまう。ナイキストの安定判別法では、開ループ伝達関数の右半平面の極の個数 P を数え忘れて、Z = N + P の公式の N(−1点の周りを右回りに回る回数)だけで結論する答案が頻発します。例として、開ループに不安定な極が1つあるのにナイキスト線図が −1点を回らない場合、Z = 0 + 1 = 1 で閉ループは不安定と判別すべきなのに、N = 0 だけ見て「安定」と書いてしまう。P を答案上に数値で書く所作を必ず守ってください。

PID制御と補償器設計

頻出は、P制御・PI制御・PD制御・PID制御の役割の対比、定常偏差の計算(型による分類)、過渡応答の特性値(オーバーシュート量、立ち上がり時間、整定時間、減衰比)、進み・遅れ補償器の設計。失点パターンは、定常偏差を「最終値の定理」で計算する際に、入力の種類(ステップ・ランプ・放物線)と系の型の対応を表で整理せず、いきなり lim_(s→0) を計算してしまうこと。型0の系にランプ入力を入れれば定常偏差は無限大になるという原則を答案で確認しないまま数値を出すと、無限大の結果に動揺して計算ミスを重ねる。過渡応答の問題では、2次系の標準形 ω_n² / (s² + 2ζω_n s + ω_n²) に書き直してから、減衰比 ζ と固有角振動数 ω_n を読み取り、オーバーシュート量 e^(−ζπ/√(1−ζ²)) で計算する手順を必ず明示してください。

状態空間表現と可制御性・可観測性

頻出は、伝達関数から状態空間表現への変換(可制御正準形・可観測正準形)、その逆変換、可制御性行列・可観測性行列のランク条件の確認、双対性の議論。最大の失点源は、状態変数の選び方を答案冒頭で明示せずに方程式を立てることです。同じ伝達関数でも状態変数の取り方は無数にあり、可制御正準形と可観測正準形では A・B・C 行列の形が全く違う。答案の最初に「ここでは x_1 = y、x_2 = ẏ と置く」のように定義を一行書かないと、採点者が答案を追えません。可制御性行列 [B, AB, A²B, ..., A^(n-1)B] のランクが n(状態の次元)と一致するか、可観測性行列 [C^T, A^T C^T, ..., (A^T)^(n-1) C^T] のランクが n と一致するかを判定する問題で、ランクの値を書かずに「可制御である」とだけ結論する答案は配点を取りこぼします。ランク条件は必ず数値で示してください。

オブザーバ設計と極配置

頻出は、状態フィードバック u = −Kx による極配置、フルオーダ・低次オブザーバの構成、分離原理。極配置の問題では、目標の閉ループ極(設計仕様)からフィードバックゲイン K を求める際に、可制御正準形に変換してから K を読み取る手順と、係数比較で直接 K を解く手順の2通りがあります。どちらを使ったかを答案冒頭で宣言してください。オブザーバ設計では、推定誤差の方程式 ė = (A − LC)e を導出してから L を設計する流れを省略する答案が多く、L だけ書いて根拠が見えない状態になります。分離原理は「状態フィードバックゲイン K の設計とオブザーバゲイン L の設計を独立に行ってよい」という強力な主張なので、これを使うときは「分離原理により独立に設計できる」と明示的に言及することで、採点者に論理の流れが伝わります。

最適制御の基礎(LQR)

上位校で頻出になるのは、線形2次レギュレータ(LQR)、リカッチ方程式、評価関数の重み行列 Q・R の意味、無限時間レギュレータと有限時間レギュレータの違い。失点パターンは、評価関数 J = ∫(x^T Q x + u^T R u) dt の Q と R を物理量の単位を考えずに設定してしまうこと。Q の対角成分の比は「どの状態変数を優先して0に近づけたいか」、R の対角成分は「制御入力をどれだけ節約したいか」を表すので、本式の前に意味を一行書いてから数値を入れる。代数リカッチ方程式 A^T P + PA − PB R^(-1) B^T P + Q = 0 から解 P を求め、最適フィードバックゲイン K = R^(-1) B^T P を導出する流れを記号レベルで追えるようにしておけば、上位校の典型問題は取り切れます。

出題大学ごとの色の違い

同じ「制御工学」でも、研究科が違えば採点者が見ているものが違います。志望先によって演習の比重の置き方が変わります。

  • 東大 機械工学:古典制御中心で、伝達関数・周波数応答・PID制御の標準論点を計算精度高く解かせる傾向。状態空間は基礎まで。基礎数学が別科目で課されるので、制御の答案では計算技術より論理の簡潔さを優先する方が安全。
  • 京大 機械理工学:古典制御の論理過程を最後まで書かせる文化。安定性判別の前提条件確認や、ナイキスト線図の極の数え方など、途中の論理を省略すると配点を取り切れない。
  • 東北大 機械工学・電気情報工学:機械工学では古典制御中心、電気情報工学では古典・現代を半々で問う。電気情報側を併願する場合は状態空間表現と可制御性・可観測性まで踏み込んでおく必要がある。
  • 名大 機械航空宇宙工学:航空応用に振れる年度があり、サーボ系・追従制御の問題が出ることがある。古典制御の標準範囲+PID制御の過渡応答まで自力で解けるように。
  • 九大 機械工学・電気電子工学:4力と並んで制御が必須化していて、機械系志望者は古典制御中心、電気電子系志望者は現代制御まで深く問われる。両者で範囲が違うので志望先に応じて演習配分を分けるべき。
  • 東京科学大 システム制御系:制御工学を中心科目に据える研究科で、古典・現代の両方を深く問い、最適制御(LQR)・オブザーバ設計・ロバスト制御の入門まで対象になる。問題集ベースの定型対策では足りず、教科書を1冊精読する覚悟が要る。
  • 電気通信大 機械知能システム:機械系の標準範囲+状態空間表現の基礎まで。試験時間内で図示(ボード線図・ナイキスト線図)と計算の両方を要求されるので、作図の速度が得点に直結する。

外部生がつまずく構造的な理由

制御工学で外部生が苦戦するのは、能力差ではなく構造的な要因が大きい。第一に、所属学部で習った制御の範囲と志望研究科の出題範囲のズレが大きいこと。学部の制御工学は半期1コマで古典制御だけ済ませる大学が多く、現代制御は選択科目だったり、そもそも開講されなかったりします。志望先が現代制御まで問う場合、学部の授業だけでは入口にも立てておらず、状態空間表現・可制御性・極配置・オブザーバの一連を独学で1冊仕上げる必要が出てきます。

第二に、図示と計算の両刀が要求されること。制御工学はボード線図・ナイキスト線図・根軌跡という3つの代表的な図を、定規も使えない試験時間内で描かせます。形が頭に入っていない状態で本番に臨むと、漸近線の折点や交差周波数の位置がずれて、ゲイン余裕・位相余裕の読み取りが狂う。これは知識ではなく手の慣れの問題なので、過去問演習で必ず「実際に紙に描いて」答案を再現する訓練が必要です。

第三に、答案の作法。制御工学は前提条件(負帰還の仮定・系の型・状態変数の選び方・分離原理)を答案冒頭で宣言する文化が強く、これを省略すると論理が一意に決まらず、計算が合っていても配点が落ちます。学部のレポート文化で「結論だけ書く」癖がついている学生は、本番でも前提を書かずに本式に入って失点を重ねる。これは独学で意識的に固めない限り、教科書を読むだけでは身につきません。

残り月数別の演習ロードマップ

制御工学対策に使える月数別に、現実的に効くやり方を整理します。すべての月数で共通するのは、最初に過去問1年分を時間を計って解き、自分が古典・現代のどちらで失点しているかを可視化することです。これを飛ばすと、得意な方に時間を使いすぎて弱い方を後回しにする悪い循環に入ります。

残り6か月の場合

最初の2か月は古典制御の教科書を1冊通読し、伝達関数・周波数応答・安定性判別・PID制御の章末問題を埋めます。次の2か月で現代制御の教科書を1冊通読し、状態空間表現・可制御性可観測性・極配置・オブザーバまで一通り手を動かす。最後の2か月で志望研究科の過去問を年度別に解き、答案の作法(前提条件の宣言・図示の正確さ)を時間制限付きで叩き直します。最適制御(LQR)まで問われる研究科の場合、最後の2か月の前半で1〜2週間 LQR とリカッチ方程式に集中する枠を確保してください。

残り3か月の場合

過去問1年分を時間を計って解き、古典・現代のどちらが弱いかを判定します。最初の1か月は弱い方の教科書を集中的に復習し、章末問題を1日10題ペースで埋める。次の1か月で過去問を直近5年分2周し、3周目は答案の作法を直すことに集中。最後の1か月は時間配分の最適化と、図示問題(ボード線図・ナイキスト線図)の作図訓練。基礎数学(線形代数・ラプラス変換)は毎日30分の固定枠を切らさないでください。

残り1か月の場合

新規範囲に手を広げるより、既に解いた過去問の答案を「採点者が読める形」に書き直す方が得点を伸ばします。各設問について、前提条件(負帰還・状態変数の選び方・系の型)・図(ボード線図やナイキスト線図の主要点)・最終結果の単位、を必ず答案に残す訓練を反復します。最適制御や離散時間制御のような上位論点は、配点が低ければ捨てる判断も必要で、その分の時間を古典制御の確実な得点(伝達関数の縮約・ラウス表の作成・PID制御の定常偏差)に回す方が総点が伸びます。

推奨教科書・参考書

制御工学の教科書は古典制御と現代制御で別の本を持つのが標準で、両方を1冊ずつ完走するのが現実的なゴールです。

  • 古典制御:小郷寛・美多勉『システム制御理論入門』『制御工学』(実教出版・コロナ社) — 古典制御の標準的な構成で、ボード線図・ナイキスト線図の作図と安定性判別の演習が充実。
  • 古典制御:川田昌克『MATLAB/Scilabで理解する 現代制御』『フィードバック制御入門』(森北出版) — 計算と図示の両方を丁寧に追える。外部生が独学で入る最初の1冊として推奨。
  • 現代制御:佐藤和也・平元和彦・平田研二『はじめての現代制御理論』(講談社) — 状態空間表現・可制御性可観測性・極配置・オブザーバまでが平易な構成で網羅。
  • 現代制御:足立修一『MATLABによる制御理論の基礎』『線形システム制御入門』(東京電機大学出版局) — 状態方程式とリカッチ方程式の扱いが実務的。LQR まで踏み込む研究科の準備に。
  • 横断:Ogata『Modern Control Engineering』(Pearson) — 英語の世界標準。古典・現代の両方を1冊でカバーし、東京科学大 システム制御系のように深く問う研究科の準備に有効。
  • 演習:『大学院入試問題集(制御工学)』各社 — 実戦演習。本番形式での時間配分訓練に使う。

院試hub の解答パックでカバーされる範囲

院試hub では制御工学が試験範囲に含まれる機械系・電気電子系・システム制御系の研究科について、年度別の解答パックを整備しています。東大 工学系研究科 機械工学京大 工学研究科 機械理工学東北大 電気・情報工学東京科学大 工学院 システム制御系 などを横断的に確認することで、古典制御中心の研究科と現代制御まで踏み込む研究科の出題比重の差を整理できます。

各解答PDFは年度別に整理されていて、各設問に方針・典型失点・部分点の置き所を併記しています。使い方の推奨は次の順序です。まず公式PDFの問題を自力で時間を計って解く。次に解答パックの「方針」だけ先に読み、自分の方針と一致しているかを確認する。最後に答案全体を突き合わせ、ブロック線図の符号・安定性判別の前提条件・状態変数の選び方・ナイキスト線図の極の数え方など、答案作法の不備を直していく。3周目以降は時間配分の最適化と図示の速度向上に使えます。1年分を解くごとに、自分の弱点が「古典の論点理解」「現代の論点理解」「答案作法」「図示の速度」のどれに分類されるかを記録しておくと、残り月数別ロードマップの調整に役立ちます。

公開前に必ず最新の公式募集要項・公式過去問ページで試験科目・出題範囲を確認してください。

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