院試 制御工学の出題傾向と対策
院試 制御工学の出題傾向。伝達関数・周波数応答・状態空間表現・安定性判別・PID制御・可制御性可観測性の頻出パターンと、機械系・電気電子系研究科ごとの試験範囲、答案で失点しやすい論点を整理します。
- 出題大学
- 15大学
- 収録した設問
- 160問
- 収録年度
- 2010〜2026年度
- 2024〜2026年度
- 89問
- 試験科目
- 43科目
- 頻出テーマ
- 5テーマ
制御工学 院試の出題傾向 — 頻出テーマ × 年度(2010〜2026年度)
最も多いのは伝達関数で113問(12大学)、 年度別では2025年度の48問が最多です。
| テーマ | 2026 | 2025 | 2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 | 2019 | 〜2018 | 大学 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 伝達関数 | 13 | 27 | 21 | 17 | 18 | 6 | 4 | 1 | 6 | 12 | 113 |
| RC回路の過渡応答 | 6 | 12 | 8 | 3 | 7 | 3 | 3 | 2 | – | 12 | 44 |
| ボード線図 | 3 | 5 | 6 | 2 | 5 | – | – | 1 | 1 | 8 | 23 |
| フィードバック制御 | 2 | 3 | 2 | 1 | 3 | 1 | 1 | 1 | 1 | 3 | 15 |
| RLC回路 | 3 | 1 | 4 | 2 | – | 1 | 1 | – | 1 | 7 | 13 |
| 年度計 | 27 | 48 | 41 | 25 | 33 | 11 | 9 | 5 | 9 | 208 |
「〜2018」は2010〜2018年度の合計です。数字はテーマ別ののべ件数で、1つの設問が複数テーマに当たる場合は重複して数えています。重複を除いた設問数は160問です。
制御工学を出題する大学・研究科と試験科目
この分野が出た大学×研究科×試験科目は43件。出題数の多い順に24件を挙げます。うち24件は年度別の解答PDF129本を公開しています。
| 大学・研究科 | 試験科目 | 設問 | 出題年度 | 解答PDF |
|---|---|---|---|---|
| 電気通信大学大学院情報理工学研究科 | 専門科目(機械知能システム学) | 25 | 2020〜2026(7年度) | 2020〜2026年度・7本 ¥3,200 |
| 九州大学大学院システム情報科学府 電気電子工学専攻 | 専門科目 | 13 | 2022〜2026(5年度) | 2022〜2026年度・5本 ¥2,880 |
| 京都大学情報学研究科 | システム科学コース | 10 | 2021〜2025(5年度) | 2021〜2025年度・5本 ¥2,880 |
| 東京大学情報理工学系研究科 システム情報学専攻 | システム情報学 | 9 | 2022〜2026(5年度) | 2022〜2026年度・5本 ¥2,880 |
| 早稲田大学大学院基幹理工学研究科 | 機械科学・航空宇宙専攻 専門科目 | 5 | 2022〜2026(5年度) | 2022〜2026年度・5本 ¥2,880 |
| 大阪大学情報科学研究科 | 専門科目(情報工学) | 5 | 2021〜2024(3年度) | 2020〜2025年度・6本 ¥3,200 |
| 東京大学情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 | 知能機械情報学 | 5 | 2016〜2020(5年度) | 2016〜2020年度・5本 ¥2,880 |
| 東京大学工学系研究科 機械工学専攻 | 機械工学 専門科目 | 5 | 2021〜2026(4年度) | 2021〜2026年度・6本 ¥3,200 |
| 九州工業大学大学院情報工学府 | 専門科目(知的システム工学) | 4 | 2025〜2026(2年度) | 2025〜2026年度・2本 ¥1,680 |
| 東京大学情報理工学系研究科 電子情報学専攻 | 専門科目 | 4 | 2023〜2025(3年度) | 2021〜2025年度・5本 ¥2,880 |
| 東北大学大学院工学研究科 電気・情報系 | 基礎・専門科目 | 4 | 2023〜2025(3年度) | 2023〜2026年度・7本 ¥3,200 |
| 東北大学大学院情報科学研究科 | 2群 情報・生命系 基礎・専門科目 | 4 | 2023〜2025(3年度) | 2023〜2026年度・7本 ¥3,200 |
| 北海道大学大学院情報科学院 | 情報科学専攻 システム情報科学コース 専門科目 | 4 | 2025〜2026(2年度) | 2025〜2026年度・2本 ¥1,680 |
| 名古屋大学大学院工学研究科 機械航空系 | 基礎部門・専門部門 | 4 | 2022〜2025(4年度) | 2022〜2025年度・4本 ¥2,580 |
| 京都大学情報学研究科 | 数理工学コース | 3 | 2021〜2024(3年度) | 2021〜2025年度・5本 ¥2,880 |
| 京都大学工学研究科 機械工学群 | 数学・機械力学・専門科目 | 3 | 2024〜2026(3年度) | 2024〜2026年度・3本 ¥2,180 |
| 京都大学理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 | 専門科目(物理学) | 3 | 2023〜2025(2年度) | 2022〜2026年度・5本 ¥2,880 |
| 京都大学情報学研究科 | 通信情報システムコース | 3 | 2022〜2025(2年度) | 2021〜2025年度・5本 ¥2,880 |
| 東京科学大学情報理工学院 情報工学系 | 専門科目(情報工学) | 3 | 2020〜2023(3年度) | 2020〜2025年度・5本 ¥2,880 |
| 東京大学工学系研究科 電気系工学専攻 | 専門科目 | 3 | 2022〜2025(2年度) | 2022〜2025年度・3本 ¥2,180 |
| 東京大学学際情報学府 | 学際情報学専攻 先端表現情報学コース 専門科目 | 3 | 2010〜2019(3年度) | 2010〜2020年度・11本 ¥3,200 |
| 東京大学理学系研究科 物理学専攻 | 専門科目(物理学) | 3 | 2016〜2020(2年度) | 2011〜2026年度・15本 ¥3,200 |
| 東北大学大学院工学研究科 機械系 | 機械系 数学・専門科目 | 3 | 2023〜2025(3年度) | 2023〜2025年度・3本 ¥2,180 |
| 東北大学大学院情報科学研究科 | 3群 機械・知能系 数学・専門科目 | 3 | 2023〜2025(3年度) | 2023〜2025年度・3本 ¥2,180 |
制御工学と設問が重なる他分野の頻出テーマ
- ラプラス変換 12大学56問 — 集計は院試 信号処理の出題傾向と対策側
制御工学は、機械系・電気系・情報系のいずれの研究科でも横断的に出題される一方で、研究科ごとに「古典制御と現代制御のどちらに重みを置くか」「現代制御をどこまで踏み込むか」が大きく違う、特殊な科目です。学部で古典制御(伝達関数・周波数応答・安定性判別)だけ習った外部生が、志望先で状態空間表現と可制御性・可観測性まで問われて初めて気付くことが多い。逆に、電気系で現代制御を中心に演習してきた学生が、機械系の試験でPID制御の過渡応答(オーバーシュート量・整定時間)を要求されて手が止まることもあります。本記事は「古典と現代の二刀流をどう作るか」「自分の志望研究科がどちらに寄っているか」を切り分けるための実務マップです。
学部段階で固めておくべき基礎
- 線形代数:固有値・固有ベクトル、対称行列の対角化、行列のランクとカーネル。状態空間表現・可制御性可観測性・極配置で全面的に使う
- ラプラス変換:定義と基本対応表、最終値の定理、逆ラプラス変換(部分分数分解)。伝達関数・過渡応答で必須
- 常微分方程式:定数係数線形(同次・非同次)。状態方程式とPID制御の過渡応答解析で必須
- 複素関数の「極」の概念:複素平面上の点としての極、極の実部と安定性の関係。ナイキスト線図・根軌跡で必須
- ブール代数・離散数学の基礎:Z変換まで踏み込む研究科では、離散時間の畳み込みと差分方程式の扱いが必要
特に「極」を単なる s = a + jb という記号ではなく、複素平面上で実部の符号が安定性を決めるという視覚的なイメージで持っていないと、ナイキスト線図と根軌跡の問題で迷子になります。ここは図形的に納得するまで戻ってください。
論点別に見る出題と失点
制御工学は論点ごとに答案の作法が独立に決まっています。1つずつ「何を答案上で明示するか」を固めていきます。
伝達関数と周波数応答(ボード線図・ナイキスト線図)
頻出は、ブロック線図の縮約、フィードバック系の閉ループ伝達関数導出、開ループ伝達関数からのボード線図作図、ナイキスト線図と安定余裕。最も多い失点は、ブロック線図の符号です。負帰還を仮定しているにもかかわらず閉ループ伝達関数の分母に (1 − GH) と書いてしまう。教科書の式 G/(1 + GH) は負帰還を前提にしているのに、その前提を答案上で明示しないまま使う。負帰還か正帰還かは図から判断するしかないので、本式に入る前に「ここでは負帰還を仮定する」と一行書く所作を徹底してください。ボード線図の作図問題では、漸近線の折点周波数(コーナー周波数)と各帯域での傾き(-20 dB/dec、-40 dB/dec)を答案上に数値で明示しないと、波形だけ描いて根拠が抜けた答案になります。ゲイン余裕・位相余裕を求める問題では、位相が −180°になる周波数(位相交差周波数)とゲインが0 dBになる周波数(ゲイン交差周波数)の区別を答案で明記してください。
安定性判別(ラウス・フルビッツ、ナイキストの安定判別法)
頻出は、特性多項式へのラウス・フルビッツ法の適用、開ループ伝達関数からナイキスト線図を描いて閉ループ安定性を判別する問題、定常偏差を出すための型分類。ラウス・フルビッツの典型失点は、特性多項式の全係数が同符号であることの確認を飛ばして表に入ること。これは安定の必要条件であり、係数が異符号の段階で「安定でない」と即答できる問題なのに、表を作る時間を浪費してしまう。ナイキストの安定判別法では、開ループ伝達関数の右半平面の極の個数 P を数え忘れて、Z = N + P の公式の N(−1点の周りを右回りに回る回数)だけで結論する答案が頻発します。例として、開ループに不安定な極が1つあるのにナイキスト線図が −1点を回らない場合、Z = 0 + 1 = 1 で閉ループは不安定と判別すべきなのに、N = 0 だけ見て「安定」と書いてしまう。P を答案上に数値で書く所作を必ず守ってください。
PID制御と補償器設計
頻出は、P制御・PI制御・PD制御・PID制御の役割の対比、定常偏差の計算(型による分類)、過渡応答の特性値(オーバーシュート量、立ち上がり時間、整定時間、減衰比)、進み・遅れ補償器の設計。失点パターンは、定常偏差を「最終値の定理」で計算する際に、入力の種類(ステップ・ランプ・放物線)と系の型の対応を表で整理せず、いきなり lim_(s→0) を計算してしまうこと。型0の系にランプ入力を入れれば定常偏差は無限大になるという原則を答案で確認しないまま数値を出すと、無限大の結果に動揺して計算ミスを重ねる。過渡応答の問題では、2次系の標準形 ω_n² / (s² + 2ζω_n s + ω_n²) に書き直してから、減衰比 ζ と固有角振動数 ω_n を読み取り、オーバーシュート量 e^(−ζπ/√(1−ζ²)) で計算する手順を必ず明示してください。
状態空間表現と可制御性・可観測性
頻出は、伝達関数から状態空間表現への変換(可制御正準形・可観測正準形)、その逆変換、可制御性行列・可観測性行列のランク条件の確認、双対性の議論。最大の失点源は、状態変数の選び方を答案冒頭で明示せずに方程式を立てることです。同じ伝達関数でも状態変数の取り方は無数にあり、可制御正準形と可観測正準形では A・B・C 行列の形が全く違う。答案の最初に「ここでは x_1 = y、x_2 = ẏ と置く」のように定義を一行書かないと、採点者が答案を追えません。可制御性行列 [B, AB, A²B, ..., A^(n-1)B] のランクが n(状態の次元)と一致するか、可観測性行列 [C^T, A^T C^T, ..., (A^T)^(n-1) C^T] のランクが n と一致するかを判定する問題で、ランクの値を書かずに「可制御である」とだけ結論する答案は配点を取りこぼします。ランク条件は必ず数値で示してください。
オブザーバ設計と極配置
頻出は、状態フィードバック u = −Kx による極配置、フルオーダ・低次オブザーバの構成、分離原理。極配置の問題では、目標の閉ループ極(設計仕様)からフィードバックゲイン K を求める際に、可制御正準形に変換してから K を読み取る手順と、係数比較で直接 K を解く手順の2通りがあります。どちらを使ったかを答案冒頭で宣言してください。オブザーバ設計では、推定誤差の方程式 ė = (A − LC)e を導出してから L を設計する流れを省略する答案が多く、L だけ書いて根拠が見えない状態になります。分離原理は「状態フィードバックゲイン K の設計とオブザーバゲイン L の設計を独立に行ってよい」という強力な主張なので、これを使うときは「分離原理により独立に設計できる」と明示的に言及することで、採点者に論理の流れが伝わります。
最適制御の基礎(LQR)
上位校で頻出になるのは、線形2次レギュレータ(LQR)、リカッチ方程式、評価関数の重み行列 Q・R の意味、無限時間レギュレータと有限時間レギュレータの違い。失点パターンは、評価関数 J = ∫(x^T Q x + u^T R u) dt の Q と R を物理量の単位を考えずに設定してしまうこと。Q の対角成分の比は「どの状態変数を優先して0に近づけたいか」、R の対角成分は「制御入力をどれだけ節約したいか」を表すので、本式の前に意味を一行書いてから数値を入れる。代数リカッチ方程式 A^T P + PA − PB R^(-1) B^T P + Q = 0 から解 P を求め、最適フィードバックゲイン K = R^(-1) B^T P を導出する流れを記号レベルで追えるようにしておけば、上位校の典型問題は取り切れます。