東大 理学系研究科 地球惑星科学専攻 地球科学 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全2問)
全2問の分野は鉱物・岩石1問、地質1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。
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第1問 — 第四紀の海水準変動とホットスポット火山列
方針
第I問は、第四紀の酸素同位体比、相対的海水準、海成段丘、ホットスポット列を同じ 「基準面の変化」として整理すると書きやすい。絶対海水準は海水量そのものに近いが、 相対的海水準は として考える。海面が上がっても地盤がそれ以上に上がれば、相対的海水準は低下する。
酸素同位体比の検算
氷期に有孔虫殻の が重くなる、という向きを取り違えないことが 重要である。蒸発・降水過程では軽い を含む水が氷床に入りやすい。 氷床が大きい時期ほど海水側には が残り、有孔虫殻の値も重くなる。 「寒いから軽くなる」と直感で答えるのは典型的な誤りである。
図の読み取り
設問の図は縦軸の向きが通常のグラフ感覚とずれやすい。問題文で「値が小さいほど軽い」 とされているので、軽いピークは間氷期、重いピークは氷期を表す。現在に最も近い重い ピークが最終氷期、その直下の大きな軽いピークが最終間氷期である。読み取り問題では 一点だけを断定するより、答案中で「およそ」「中心をとれば」と書いて許容範囲を示すと 強い。
海水準指標で書くべきこと
地形を挙げるだけでは不十分で、その地形が「どの水深・どの汀線位置でできるか」を 短く添える必要がある。海成段丘面なら旧海岸付近の平坦面、ノッチなら旧海食崖基部の くぼみ、サンゴ礁なら造礁サンゴが生育できる浅海域を示す。堆積層についても、貝化石 や円磨礫、淘汰のよい砂など、海成である根拠を書くと答案が具体的になる。
高緯度域の相対的海水準
ここでは「海水量増加」と「相対的海水準低下」が一見矛盾して見える。解消する鍵は 地盤運動である。旧氷床域では氷の荷重がなくなると地殻と上部マントルがゆっくり戻り、 地表が上昇する。この後氷期隆起が海面上昇を上回ると、海岸から見た海面は下がる。 地点Cのような低緯度域では、氷床荷重による局地的な地盤上昇が小さく、融氷による 海面上昇が相対的海水準に出やすい。
海成段丘の答案上の注意
指定語句の「間氷期」「隆起」は、単に文中へ入れるだけではなく、形成順序の中に置く。 典型的な流れは である。隆起がない地域でも一時的な離水は起こりうるが、高度の異なる段丘列として 残すには、継続的または間欠的な隆起を明示する必要がある。
ホットスポット列の速度
速度計算は単位換算で失点しやすい。便利な関係は である。したがって は となる。地図からの距離読み取りが -- 程度にぶれても、答えの桁は で 変わらない。
サンゴ礁の変化と干出
ダーウィン型の説明では、火山島の侵食・沈降とサンゴ礁の上方成長を組み合わせる。 裾礁、堡礁、環礁という名称だけを並べるのではなく、「島が沈降し、サンゴ礁は浅海に 追随して成長する」と書くのが採点上の核である。不整合面は、連続的な沈降だけでは 説明しにくく、氷期・間氷期に伴う海水準変動によって礁が一時的に海面上に出た、と 結びつける。
解答
空欄は酸素である。
海水中の酸素同位体比は、氷床量に応じて変わる。蒸発した水には相対的に軽い が多く含まれ、氷期にはその水が大陸氷床として陸上に固定される。 そのため海水は相対的に に富み、海水から殻をつくる浮遊性有孔虫の 炭酸カルシウムにもその変化が記録される。したがって有孔虫殻の酸素同位体比は、 氷床量、すなわち海水量の指標となる。
図からの読み取りなので幅をもたせて答える。最終氷期は、現在の海底面直下の 重い値を示す区間で、およそ -- 付近、中心をとれば 前後である。最終間氷期はその下位の軽い値のピークで、 およそ -- 付近、中心をとれば 前後である。
海水準の指標となる地形の例は、海成段丘面または波食台である。旧汀線付近で 波食・浅海堆積により形成された、ほぼ平坦な面として残る。
堆積層の例は、浜堤・砂浜堆積物、または浅海性貝化石を含む海成砂礫層である。 丸い礫、淘汰のよい砂、浅海生物化石などから、堆積時の海岸・浅海環境を示す。
高緯度域では、最終氷期に厚い氷床が地殻を押し下げていた。融氷後には全球的な 海水量増加で海面は上昇するが、旧氷床域では荷重の除去に対する地殻のアイソスタ ティックな反発、すなわち後氷期隆起が大きい。地盤の上昇速度が海面上昇を上回る ため、観測地点から見た相対的海水準は低下し続ける。
間氷期には海水準が高く、海岸付近で波食台や浅海堆積面が形成される。その後、 氷期の海水準低下と地域の隆起により、その面は離水して段丘面となる。間氷期ごと に同様の海岸面がつくられ、隆起が継続すると高度の異なる海成段丘列が発達する。
ホットスポット。
ホットスポット上で火山島ができた後、プレート運動により火山は熱源から離れ、 火山体と海洋プレートは冷却・沈降する。一方、サンゴは浅海で上方成長するため、 島との相対位置が裾礁、堡礁、環礁へ変化する。
図のスケールから、ハワイ島からミッドウェー環礁までの水平距離はおよそ と読む。ミッドウェー環礁下の玄武岩年代を 、ハワイ島の年代を現在とみなすと、 したがって、水平運動速度はおよそ 、すなわち である。図の読み取り誤差を考えれば -- 程度が妥当である。
環礁は海洋プレートの冷却に伴って沈降するが、氷期には全球的な海水準低下が 起こる。低海水準期に相対的海水準がサンゴ礁面より下がると、礁が海面上に露出し、 侵食面や不整合面が形成される。
最終答
(1) 酸素。最終氷期は約 --、最終間氷期は約 --。海成段丘面・海成砂礫層などが海水準指標となる。高緯度域の相対的海水準低下は後氷期隆起による。(2) ホットスポット。プレート速度は約 。環礁の干出は沈降に重なる氷期の海水準低下で説明できる。
第2問 — 沈み込み帯の岩石循環とFo--SiO_22系相図
沈み込み帯の全体像
この設問は、海溝から深部、さらに火山弧までを一つの物質循環として問うている。 海溝側では水平短縮により衝上断層が発達し、海洋プレート上の堆積物や玄武岩質岩石が はぎ取られて付加体になる。深部へ運ばれた岩石は高圧低温型変成作用を受ける。一方、 スラブから出た水はマントルウェッジのソリダスを下げ、部分溶融を起こす。地殻内で 固結した深成岩の代表として花崗岩を答えればよい。
変成相の選び方
高圧低温型では青色片岩相をまず挙げるのが安全である。藍閃石などの含水高圧鉱物を 含む典型的な沈み込み帯の変成相だからである。エクロジャイト相も高圧変成相だが、 問題文が「高圧低温型」として沈み込み帯を説明している場合、青色片岩相のほうが 意図に合いやすい。接触変成作用側では、低圧高温のホルンフェルス相を書く。
曹長石の反応式の検算
反応式は元素数で確認する。左辺の曹長石は である。右辺のヒスイ輝石 と石英 を足すと になり、保存している。鉱物名だけでなく 化学式も併記すると、誤記を発見しやすい。
部分溶融と不適合元素
不適合元素は固相に入りにくく、融液に濃集する。分別溶融では融液ができるたびに 取り去られるため、残りマントルから不適合元素が効率よく抜ける。バッチ溶融では 融液と固相が平衡を保つので、同じ溶融度でも分別溶融ほど急激には残り固相が枯渇 しない。答案では「融液中」ではなく、設問が求める「融け残りマントル岩石中」の濃度 を述べているかを確認する。
火山フロントから背弧への変化
指定語句の「火山フロント」「圧力」「アルカリ元素」は因果関係でつなぐ。火山フロント はスラブ脱水でマントルが溶け始める位置である。海溝から遠い火山では、より深い、 つまり高圧条件で生成した融液の寄与が大きく、部分溶融度が小さいため不適合元素である アルカリ元素が濃集しやすい。単に「遠いほどアルカリ」と暗記で書くより、深さと溶融度 を添えると答案の説得力が上がる。
Fo--SiO2系相図の読み方
Fo--SiO 系では、Enが中間化合物として現れる。1 barではEnが単純に同組成の液へ 溶けるのではなく、包晶点Xで の反応を介する。冷却では右向き、加熱では左向きに読む。点YはEnとシリカ鉱物が液と 共存する共融点で、最後の液が消える場所である。
経路問題での典型ミス
経路図では、温度だけでなく「どの相の組成を追跡しているか」を分ける必要がある。 全岩組成は閉じた系なら変わらないが、液相組成と残り固相の組成は相境界に沿って 変化する。点Pの加熱では最初の液が全岩組成Pで出るのではなく、包晶点Xの組成で 出る。点Qの冷却では最初にFoが出るが、XでFoが液と反応してEnをつくるため、単純に Foが最後まで増え続けるわけではない。
反応縁の意味
非平衡組織の問題では、相図上の平衡反応と実際の拡散・反応速度を分けて考える。 平衡ならFoと液は完全に反応してEnへ置き換わる。しかし結晶内部の拡散が遅いと、 液と接する表面だけが反応し、Fo核の周囲にEnのリムができる。この「反応が途中で 凍結された記録」として反応縁やコロナ組織を説明する。
高圧での相図変化
キーワードは、不調和融解から調和融解への変化である。1 barではEnは包晶反応を通じて Foと液に分かれるため不調和融解である。圧力を上げるとEn組成付近のリキダス関係が 変わり、Enが同じ組成の液と平衡になる調和融解を示す。答案では「リキダスが変わる」 だけで止めず、「SiO 不飽和側でFo--En関係が変化し、Enの調和融解が現れる」と 書くと指定語句を自然に満たせる。
年度別の解答例(5年度)
2026年度(このページ・全2問)
第四紀の海水準変動とホットスポット火山列 / 沈み込み帯の岩石循環とFo--SiO_22系相図
地質調査・炭素循環・地球内部 / 海洋プレートと沈み込み帯
海水準変動・大気酸素史・地球内部構造 / 変成岩・火山・地質構造
第四紀・野外地質・偏光顕微鏡 / 沈み込み帯・変成作用・火成活動
火成作用と微量元素分配 / 海底堆積岩の間隙率と間隙水圧
2026年度の出題内容
全2問
前年度(2025年度)との違い
- 大問数
- 2025年度 2問 → 2026年度 2問
東京大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 2022〜2026(直近5年)
- 公式の解答例
- 一部の年度・科目のみ公開
- 院試hubの最終確認
- 2026-08-13