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東大 理学系研究科 地球惑星科学専攻 地球科学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全2問)

全2問の分野は固体地球科学1問、地質1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 地質調査・炭素循環・地球内部

方針

第I問は,計算問題と短文説明問題が混在している。計算問題では「どの量をどの方向に射影するか」「貯蔵量をどのフラックスで割るか」を明示することが得点の中心である。短文説明では,単語だけでなく,なぜ年代や温度変化の制約になるのかという因果関係を書く。

地層の厚さの検算

同じ標高で東へ進むと,東傾斜の層理面を上位方向へ横切る。層厚は層理面に垂直な距離なので,露頭面上の水平距離 250 m250\,\mathrm{m} そのものではない。傾斜角を θ\theta とすれば,水平距離 dd に対する層厚は dsin⁡θd\sin\theta である。θ=30∘\theta=30^\circ なので半分になり,125 m125\,\mathrm{m} となる。典型ミスは 250cos⁡30∘250\cos30^\circ とすること,または露頭に沿った見かけの距離をそのまま層厚にすることである。

放射年代の読み方

放射性同位体の残存量は,経過時間が半減期の何倍かで決まる。本問では t/T1/2=1/2t/T_{1/2}=1/2 なので,半分の半分ではなく「平方根としての半減」である。したがって残存割合は 1/21/\sqrt{2} で,約 70%70\% になる。3.5×1083.5\times 10^8 年が半減期の半分であることを見落とし,50%50\% としてしまうのが典型的な誤答である。

化石年代と放射年代のずれ

化石は堆積物がたまった時代を制約する。一方,火山灰中の鉱物の放射年代は,鉱物中の同位体時計が閉じた時点を示す。火山噴火時に新しく晶出した結晶なら噴火・堆積年代に近いが,古い基盤岩やマグマ溜まりから取り込まれた結晶なら,堆積年代よりはるかに古い年代を示す。答案では「測定誤差」ではなく「継承結晶・異質結晶」を原因として書く。

炭素の平均滞留時間

平均滞留時間は貯蔵量を流出量で割る。大気では,大気から土壌・海洋へ出る大きな交換フラックスを使うため数年程度になる。地球表層全体では,大気・土壌・海洋の内部交換は系の中で回っているだけなので,岩石圏へ出る小さなフラックスだけが流出である。そのため 10510^5 年規模となり,気候安定化の長期過程を表す。内部交換まで分母に入れると,表層系の滞留時間を不当に短く見積もる。

気候フィードバックの書き方

フィードバックの答案では,「温暖化で何が変わるか」と「それがなぜさらに温暖化を強めるか」を一続きで書く。雪氷アルベドのほか,水蒸気量の増加による温室効果の強化,永久凍土融解による CO2\mathrm{CO_2}・CH4\mathrm{CH_4} 放出なども正答になりうる。ただし,単に「氷が溶ける」とだけ書くと加速機構の説明が不足する。

プルーム問題の要点

ホットスポットは深部からの高温物質上昇,大地溝帯は大陸リソスフェアの伸張と上昇流に関連づけられる。一方,海溝は冷たい海洋プレートの沈み込み,大陸衝突はプレート収束による地殻短縮が主因であり,ホットプルームの代表例ではない。ホットプルームとコールドプルームの説明では,上昇・下降の向きだけでなく,核付近,下部マントル,上部マントル,海洋リソスフェア,相転移境界を結びつけると答案の密度が上がる。

試験で書くべきポイント

短文指定のある小問では,指定語句を含めつつ,因果関係を 1 文で閉じるのがよい。例えば大量絶滅の説明では「プルーム活動」から「大規模火成活動」,さらに「温室効果ガス・硫黄化合物・海洋無酸素化」へつなげる。現象名だけを列挙するより,環境変化が生物に与えるストレスまで書く方が採点者に伝わりやすい。

解答

  1. 露頭面は東西方向の鉛直断面であり,地層は東へ 30∘30^\circ 傾斜している。地点 A と地点 B は同じ標高で東西に 250 m250\,\mathrm{m} 離れているので,層理面に垂直な距離は,水平距離を法線方向に射影して L=250sin⁡30∘=250×12=125 m L=250\sin 30^\circ=250\times \frac{1}{2}=125\,\mathrm{m} である。火山灰層自身の厚さは 0.10 m0.10\,\mathrm{m},0.30 m0.30\,\mathrm{m} とメートルスケールの計算に比べて十分小さく,有効数字 2 桁では結果を変えない。したがって,火山灰層 a と b の間の地層の合計層厚は 1.3×102 m 1.3\times 10^2\,\mathrm{m} である。

  2. 半減期を T1/2=7.0×108 yrT_{1/2}=7.0\times 10^8\,\mathrm{yr},測定年代を t=3.5×108 yrt=3.5\times 10^8\,\mathrm{yr} とする。残存割合は NN0=(12)t/T1/2=(12)1/2=12≃11.4≃0.71 \frac{N}{N_0}=\left(\frac12\right)^{t/T_{1/2}} =\left(\frac12\right)^{1/2} =\frac{1}{\sqrt{2}} \simeq \frac{1}{1.4}\simeq 0.71 である。百分率では約 71%71\% なので,有効数字 1 桁では 7×101% 7\times 10^1\% である。

  3. アンモナイトや放散虫は,進化が比較的速く,広域に分布し,産出する時代範囲が限られるため,地層の堆積年代を対比・制約する示準化石として用いられる。

  4. 鉱物 Z の放射年代は,火山灰が堆積した年代ではなく,その鉱物が結晶化した年代を示す。古い岩石から取り込まれた異質結晶・継承結晶であれば,周囲の白亜紀化石より大きく古い年代を与える。

  1. 日周期では陸が海より速く昇温・冷却するため海陸風が生じる。年周期では大陸と海洋の季節的な温度差により,夏冬で向きの変わる季節風が発達する。

  2. 北大西洋での深層水形成を含む熱塩循環,すなわち大西洋子午面循環の強弱や停止により,低緯度から高緯度への熱輸送が変化したことに起因する。

  3. 平均滞留時間は τ=貯蔵量単位時間あたりの流出量 \tau=\frac{\text{貯蔵量}}{\text{単位時間あたりの流出量}} で見積もる。大気中の炭素について,図の値から大気の貯蔵量は 600600,大気から土壌・海洋への流出は 120+70.02120+70.02 である。よって τatm=600120+70.02≃3.2 yr≃3 yr \tau_{\mathrm{atm}} =\frac{600}{120+70.02} \simeq 3.2\,\mathrm{yr} \simeq 3\,\mathrm{yr} となる。

    地球表層を大気・土壌・海洋の和とすると,貯蔵量は 600+2300+37900=40800 600+2300+37900=40800 である。表層系から岩石圏へ出ていく流量は,土壌からの 0.040.04 と海洋からの 0.040.04 の和で 0.08 0.08 である。したがって τsurface=408000.08=5.1×105 yr≃5×105 yr \tau_{\mathrm{surface}} =\frac{40800}{0.08} =5.1\times 10^5\,\mathrm{yr} \simeq 5\times 10^5\,\mathrm{yr} である。

  4. 例として雪氷アルベドフィードバックがある。温暖化で雪氷が減ると地表の反射率が下がり,太陽放射の吸収が増え,さらに昇温して融解が進む。

  1. 地震波トモグラフィを用いる。高温部では弾性波速度が遅く,低温部では速くなるため,地震波到達時刻のずれから内部の温度異常を推定できる。

  2. ホットプルームで説明されるものは,ホットスポットと大地溝帯である。したがって該当する選択肢は (ア),(ウ) \text{(ア),(ウ)} である。

  3. ホットプルームは,核に近い下部マントル深部で加熱された低密度物質が,上部マントルへ上昇する流れである。コールドプルームは,沈み込んだ海洋リソスフェアが相転移境界付近で滞留または崩落し,下部マントルへ沈降する低温物質の流れである。

  4. 大規模なホットプルームの上昇は巨大火成岩岩石区を形成し,短時間に大量の玄武岩質火山活動を起こす。これに伴う CO2\mathrm{CO_2} 放出は長期温暖化を,SO2\mathrm{SO_2} や火山灰は短期寒冷化や酸性雨をもたらす。また海洋の貧酸素化・酸性化,栄養塩循環の変化が重なると,生態系に強い環境ストレスがかかり,大量絶滅につながりうる。

最終答

(1-1) 1.3×102 m1.3\times 10^2\,\mathrm{m},(1-2) 7×101%7\times 10^1\%,(1-3) 広域分布・短い生存期間をもつ示準化石であるため,(1-4) 古い継承結晶・異質結晶の年代を測ったため。(2-3) 大気は約 3 yr3\,\mathrm{yr},表層系は約 5×105 yr5\times 10^5\,\mathrm{yr}。(3-2) (ア),(ウ)。

第2問 — 海洋プレートと沈み込み帯

方針

第II問は,海洋プレートの形成・老化・含水化と,沈み込み帯の地震・変成・構造地質を横断して問う。用語問題では標準的な岩石名・現象名を外さないこと,記述問題では指定語句を単に並べず,物理過程の順に接続することが重要である。

海洋地殻の標準層序

中央海嶺下では,マントルかんらん岩が減圧融解して玄武岩質マグマを生じる。下部ではゆっくり冷えてはんれい岩になり,上方では岩脈群を作って,海底面では急冷して枕状溶岩になる。BB を「かんらん岩」とすると,それは地殻ではなく主に上部マントルの岩石を答えていることになり,典型的な取り違えである。

斜長石の組成式

An-Ab 系では,An 成分が増えるほど Ca\mathrm{Ca} と Al\mathrm{Al} が増え,Na\mathrm{Na} と Si\mathrm{Si} が減る。An20_{20}Ab80_{80} の係数は 0.2 CaAl2Si2O8+0.8 NaAlSi3O8 0.2\,\mathrm{CaAl_2Si_2O_8} +0.8\,\mathrm{NaAlSi_3O_8} として平均すればよい。酸素はどちらの端成分も 8 なので O8\mathrm{O}_8 のままである。電荷も 0.2×2+0.8×1+1.2×3+2.8×4=16 0.2\times2+0.8\times1+1.2\times3+2.8\times4=16 となり,酸素 88 個の −16-16 とつり合う。

水深と年代の平方根則

若い海洋プレートでは,熱は主に鉛直一次元の熱伝導で逃げる。このとき冷却境界層の厚さは時間の平方根に比例して増すため,熱収縮による沈降量もおおむね t\sqrt{t} に比例する。答案では数式まで不要な場合が多いが,「冷却」「リソスフェアの厚化・高密度化」「アイソスタシーによる沈降」を一続きで書くとよい。

磁気縞模様による年代推定

海嶺軸で作られた玄武岩は,キュリー温度以下に冷えると磁化を固定する。地磁気は過去に何度も逆転しているため,海嶺から左右対称に正帯磁・逆帯磁の縞模様が並ぶ。この縞を地磁気逆転年代表と照合することで年代を推定する。典型ミスは,磁気異常を「現在の緯度」だけの情報として説明し,逆転年代尺度との対比を書かないことである。

石灰質軟泥と珪質軟泥

石灰質軟泥が保存されるかどうかは,生産量だけでなく溶解と水深に強く支配される。海洋底が冷却沈降して深くなると,炭酸塩が溶けやすい深度に入り,石灰質殻は残りにくくなる。その結果,深海でも保存されやすい珪質殻が相対的に目立つ。ここで「海嶺から遠いほど生物が少ないから」とだけ書くのは不十分で,炭酸塩補償深度に触れるのが安全である。

含水化の場

海洋プレートの含水化は,海水が岩石内部へ入る割れ目と,水と反応する鉱物がそろう場で進む。中央海嶺近傍では熱水循環により海洋地殻が変質する。海溝外側隆起帯ではプレートの屈曲で正断層が発達し,水が深部まで入りやすくなる。特にかんらん岩の蛇紋岩化は,沈み込み帯へ水を運ぶ重要な過程である。

変成帯の対応

低温高圧型と高温低圧型は,日本列島の対になった変成帯として三波川変成帯と領家変成帯を覚えるとよい。ただし暗記だけでなく,前者は沈み込み帯の低地温勾配,後者は島弧火成活動に伴う高地温勾配という形成場まで書く必要がある。

褶曲軸の求め方

層理面の走向・傾斜が複数与えられたとき,褶曲軸は各層理面に共通に含まれる方向として近似できる。ステレオネットでは層理面を大円で描き,それらが集まる交点を読む。選択肢の中では水平軸ではなく,北東へ約 30∘30^\circ 傾く軸が最も整合する。走向だけを平均すると誤りやすい。

シュードタキライトの判断

高速すべりの摩擦発熱で岩石が溶融し,急冷した断層岩がシュードタキライトである。黒色脈,ガラス質から微晶質の基質,角礫状の母岩片,母岩へ入り込む注入脈などが観察上の手がかりになる。カタクレーサイトや断層ガウジは破砕を主体とする断層岩であり,摩擦溶融を示すとは限らない。

発見例が少ない理由の書き方

指定語句を使う問題では,その語が因果関係の中心になるように置く。本問なら「間隙水圧が高い」から「有効応力が低い」,その結果「摩擦発熱が小さい」ので「溶融・保存・認識が難しい」とつなぐ。単に「水が多いから見つからない」と書くより,力学的理由が明確になる。

海洋プレートと沈み込み帯の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(全2問)

    第四紀の海水準変動とホットスポット火山列 / 沈み込み帯の岩石循環とFo--SiO_22系相図

  • 2025年度(このページ・全2問)

    地質調査・炭素循環・地球内部 / 海洋プレートと沈み込み帯

  • 2024年度(全2問)

    海水準変動・大気酸素史・地球内部構造 / 変成岩・火山・地質構造

  • 2023年度(全2問)

    第四紀・野外地質・偏光顕微鏡 / 沈み込み帯・変成作用・火成活動

  • 2022年度(全2問)

    火成作用と微量元素分配 / 海底堆積岩の間隙率と間隙水圧

2025年度の出題内容

全2問

この2問の分野は固体地球科学1問・地質1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問地質地質調査・炭素循環・地球内部地層の厚さの検算 / 放射年代の読み方あり
第2問固体地球科学海洋プレートと沈み込み帯海洋地殻の標準層序 / 斜長石の組成式あり

2025年度の解説には試験で書くべきポイント1件が付いています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 2問 → 2025年度 2問
2024年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2022〜2026(直近5年)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
院試hubの最終確認
2026-08-13
東京大学の公式過去問PDF