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東大 理学系研究科 地球惑星科学専攻 地球科学 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全2問)

全2問の分野は化学1問、地質1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 火成作用と微量元素分配

方針

この問題は,語句問題,分配係数の読み取り,バルク分配係数の加重平均,部分溶融と分別結晶作用の質量保存,という順に処理すればよい。地球化学の問題では,暗記だけでなく「元素量がどこに保存されるか」を式にできるかが得点差になる。

分配係数の見方

分配係数 D=Cs/CLD=C_s/C_L は,鉱物中濃度をメルト中濃度で割った無次元量である。DD が大きいほど鉱物に入りやすく,DD が小さいほどメルトに残りやすい。したがって,D≪1D\ll 1 の元素は部分溶融の初期メルトに濃集しやすい。不適合元素を「存在量が少ない元素」と誤解しないこと。微量元素であっても適合元素はあり,主要元素でも相対的な分配を考える場面はある。

元素同定の考え方

Rb\mathrm{Rb} は大きなイオン半径と一価の電荷をもち,かんらん石・輝石・ざくろ石の結晶構造には入りにくい。そのため,問題で与えられたようにどの主要鉱物に対しても非常に小さい分配係数を示す。候補の Co\mathrm{Co},Cr\mathrm{Cr},Ni\mathrm{Ni} は遷移金属元素で,かんらん石や輝石に入りやすいものが多く,表の挙動とは合わない。

Hf\mathrm{Hf} は Lu\mathrm{Lu}-Hf\mathrm{Hf} 系として同位体地球化学で広く用いられ,Nd\mathrm{Nd} 同位体や Pb\mathrm{Pb} 同位体と組み合わせてマントル源の枯渇・濃集や地殻物質混入を議論する。ざくろ石を含む残存鉱物組み合わせでは,Hfや希土類元素の分配が融解メルトの特徴を大きく左右する。

バルク分配係数の検算

バルク分配係数は単純平均ではなく,鉱物の割合で重みを付ける。今回の比は合計が 1010 なので,各係数に 1/10,2/10,2/10,5/101/10,2/10,2/10,5/10 を掛ければよい。微量元素2では,ざくろ石に対する係数が大きいため,ざくろ石の質量比 5/105/10 が結果を支配し,0.780.78 という比較的大きな値になる。微量元素1では最大の項でも 0.0500.050 なので,加重平均後も 0.0260.026 にとどまる。この大小関係は計算ミスの発見に使える。

バッチ溶融の導出

バッチ溶融では,メルトと残存固相が最後まで平衡を保つ。全体を質量 11 とおくと,メルト量は FF,固相量は 1−F1-F である。元素の総量は 初期量=C0,溶融後の量=FCL+(1−F)DCL \text{初期量}=C_0,\qquad \text{溶融後の量}=F C_L+(1-F)D C_L で等しい。この一行を書ければ導出はほぼ終わりである。

上の模式図は公式図の再現ではなく,式の性質を示すための概念図である。DD が小さい元素ほど,FF が小さい側で濃集が急激になる。

典型ミス

よくあるミスは三つある。第一に,分配係数を CL/CsC_L/C_s と逆に定義してしまうこと。第二に,バルク分配係数を鉱物数で割る単純平均にしてしまうこと。第三に,バッチ溶融と分別結晶作用を同じ式で処理してしまうことである。バッチ溶融は「固相と液相が平衡を保つ」ため D+F(1−D)D+F(1-D) が出る。一方,レイリー分別では「晶出物が取り除かれる」ため,微分的な濃縮が起こる。今回は D=0D=0 と指定されているので,残液に元素量がすべて残るという単純な保存式で足りる。

試験で書くべきポイント

答案では,最終数値だけでなく,D=Cs/CLD=C_s/C_L,D‾=∑XiDi\overline{D}=\sum X_iD_i,C0=FCL+(1−F)DCLC_0=F C_L+(1-F)D C_L の三つを明示する。これらを書けば,たとえ元素同定で迷っても,計算問題の得点を安定して確保できる。

解答

まず,鉱物とメルトが平衡共存するとき,元素がどちらの相に入りやすいかを表す用語を確認する。鉱物に濃集する元素は適合元素,メルトに濃集する元素は不適合元素である。ある元素について,鉱物中濃度を CsC_s,平衡共存するメルト中濃度を CLC_L とすれば,その鉱物--メルト間の分配係数は D=CsCL D=\frac{C_s}{C_L} で定義される。したがって D>1D>1 なら鉱物に入りやすく,D<1D<1 ならメルトに残りやすい。

与えられた分配係数を比較すると,微量元素1はどの主要鉱物に対しても D≪1D\ll 1 であり,特に上部マントル主要鉱物へ入りにくい典型的な不適合元素である。候補の中では Rb\mathrm{Rb} が該当する。微量元素2はざくろ石に強く分配される高電場強度元素の挙動を示し,同位体比が Pb\mathrm{Pb},Nd\mathrm{Nd} などとともにマントル起源物質の判別に用いられる元素として Hf\mathrm{Hf} が該当する。

鉱物の質量比が 1:2:2:51:2:2:5 であるから,バルク分配係数は,各鉱物の分配係数の質量加重平均 D‾=∑iXiDi \overline{D}=\sum_i X_iD_i である。ただし XiX_i は各鉱物の質量分率である。微量元素1について D‾1=1(0.0010)+2(0.0030)+2(0.0030)+5(0.050)1+2+2+5=0.0263⋯ \overline{D}_1 =\frac{1(0.0010)+2(0.0030)+2(0.0030)+5(0.050)}{1+2+2+5} =0.0263\cdots より,有効数字2桁で D‾1=2.6×10−2. \overline{D}_1=2.6\times 10^{-2}. 微量元素2について D‾2=1(0.0010)+2(0.12)+2(0.020)+5(1.5)10=0.7781⋯ \overline{D}_2 =\frac{1(0.0010)+2(0.12)+2(0.020)+5(1.5)}{10} =0.7781\cdots より, D‾2=7.8×10−1. \overline{D}_2=7.8\times 10^{-1}.

次に,バッチ式の部分溶融を考える。溶融前の全岩中濃度を C0C_0,溶融後に生成したメルトの濃度を CLC_L,メルトの質量分率を FF,バルク分配係数を DD とする。残った固相中濃度は平衡条件より Cs=DCLC_s=DC_L である。質量保存から C0=FCL+(1−F)Cs=FCL+(1−F)DCL={D+F(1−D)}CL C_0 = F C_L + (1-F)C_s = F C_L + (1-F)D C_L = \{D+F(1-D)\}C_L である。したがって CLC0=1D+F(1−D) \frac{C_L}{C_0}=\frac{1}{D+F(1-D)} となる。

バルク分配係数が小さい元素では D≪1D\ll 1 なので,この式は CLC0≃1F \frac{C_L}{C_0}\simeq \frac{1}{F} となる。同一起源物質であっても,部分溶融度 FF が小さいメルトほど不適合元素が強く濃集するため,火山岩中濃度は大きく変化し得る。

分別結晶作用で,晶出した鉱物が直ちに系から除かれ,さらに対象元素のバルク分配係数を D=0D=0 とみなせる場合を考える。残液の質量分率を FF,結晶化開始直前のメルト濃度を C0′C'_0,残液濃度を CLC_L とすると,対象元素は固相にほとんど入らない。したがって元素量は残液中に保存され, C0′=FCL C'_0 = F C_L であるから, CLC0′=1F \frac{C_L}{C'_0}=\frac{1}{F} である。

最終答

適合元素,不適合元素。分配係数は D=Cs/CLD=C_s/C_L。微量元素1は Rb\mathrm{Rb},微量元素2は Hf\mathrm{Hf}。バルク分配係数は微量元素1が 2.6×10−22.6\times10^{-2},微量元素2が 7.8×10−17.8\times10^{-1}。バッチ溶融では CL/C0={D+F(1−D)}−1C_L/C_0=\{D+F(1-D)\}^{-1}。小さい DD の元素では,部分溶融度 FF の違いがメルト濃度を大きく変える。分別結晶作用で D=0D=0 なら CL/C0′=1/FC_L/C'_0=1/F。

第2問 — 海底堆積岩の間隙率と間隙水圧

方針

第II問は,間隙率の定義,圧密式の指数関数,静水圧,そして有効応力の考え方をつなぐ問題である。計算自体は短いが,語句の因果関係を逆にしやすいので,固体部分・水部分・力学的強度を分けて整理する。

間隙率と物性

間隙率が大きいとは,岩石の中で水や空隙が占める割合が大きいということである。粒子そのものの密度は水より大きいので,間隙率が上がると全体密度は下がる。地震波速度については,固体骨格が少なく,弾性的に弱い水を多く含むほど小さくなると考えればよい。電気伝導度は逆で,海水は鉱物粒子より電流を通しやすいため,海水で飽和した間隙が多いほど大きくなる。

指数関数の読み取り

ϕ=ϕ0exp⁡(−βz) \phi=\phi_0\exp(-\beta z) では,β\beta の単位が m−1\mathrm{m^{-1}} であるため,βz\beta z は無次元でなければならない。ϕ0/e\phi_0/e になる深さは,指数の中身が −1-1 になる深さであり,z=1/βz=1/\beta と一発で求まる。ここで β=2.0×10−3 m−1\beta=2.0\times10^{-3}\ \mathrm{m^{-1}} なので 500 m500\ \mathrm{m} である。e=2.7e=2.7 と指定されているため,75/2.775/2.7 を使って 28%28\% とする。

図示で押さえる点

図は,横軸に間隙率,縦軸に深さを下向き正として描く。海底面で最大値を取り,深くなるほど左へ曲がる指数減少曲線にする。答案では,z=0z=0 の点と,z=1/βz=1/\beta の点を明記すれば十分である。直線で描いてしまうと,指数関数的圧密という条件を反映していないため減点されやすい。

間隙水圧の式

静水圧は水柱の重さによる圧力である。海底面での圧力が P0P_0 と与えられているので,深さ zz での増加分は ρwgz\rho_wgz である。よって Pp=P0+ρwgzP_p=P_0+\rho_wgz となる。符号を迷ったら,深くなるほど圧力が大きくなるべきだと検算すればよい。

断層すべりへの影響

断層摩擦では,全応力そのものではなく,有効法線応力 σn′=σn−Pp \sigma'_n=\sigma_n-P_p が重要である。間隙水圧 PpP_p が大きくなると,断層面を押し付ける有効法線応力が小さくなる。その結果,摩擦抵抗としてのせん断強度 τf=c+μσn′ \tau_f=c+\mu\sigma'_n も小さくなり,同じせん断応力でもすべりやすくなる。指定語句を使うなら,「間隙水圧の上昇により有効法線応力が低下し,せん断強度が低下する」と書けば因果関係が明確である。

典型ミス

第一に,20 cm320\ \mathrm{cm^3} の 75%75\% を 5 cm35\ \mathrm{cm^3} としてしまうミスがある。5 cm35\ \mathrm{cm^3} は固体部分の体積であり,問われている間隙体積は 15 cm315\ \mathrm{cm^3} である。第二に,深度方向を上向き正の感覚で扱い,静水圧を P0−ρwgzP_0-\rho_wgz としてしまうミスがある。この問題では zz は深さ方向を正に取るので,圧力は加算される。第三に,間隙率が高いと強度が上がると考えてしまうミスである。断層すべりでは,高い間隙水圧が有効法線応力を下げる点が本質である。

試験で書くべきポイント

計算答案では,z=1/βz=1/\beta と Pp=P0+ρwgzP_p=P_0+\rho_wgz を明示する。記述答案では,「高い間隙率」「間隙水圧上昇」「有効法線応力低下」「せん断強度低下」「すべり促進」の順に一文でつなぐと,採点者に因果の流れが伝わる。

海底堆積岩の間隙率と間隙水圧の途中式・最終答をPDFで見る

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  • 2022年度(このページ・全2問)

    火成作用と微量元素分配 / 海底堆積岩の間隙率と間隙水圧

2022年度の出題内容

全2問

この2問の分野は化学1問・地質1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問化学火成作用と微量元素分配分配係数の見方 / 元素同定の考え方あり
第2問地質海底堆積岩の間隙率と間隙水圧間隙率と物性 / 指数関数の読み取りあり

2022年度の解説には試験で書くべきポイント2件・典型ミス2件が付いています。

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