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東大 理学系研究科 地球惑星科学専攻 地球科学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全2問)

全2問の分野は固体地球科学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 海水準変動・大気酸素史・地球内部構造

全体の方針

第I問は暗記だけでなく,時間軸と物理過程を対応させる問題である。関東の相対海水準は,全球的な氷床量の変化,氷床荷重に対する固体地球の応答,プレート境界地震による局地的隆起を分けて考える。大気酸素史では「いつ酸素が増えたか」と「どの地質証拠が酸化的環境を示すか」を対応させる。内部構造では地震波速度の不連続と物性を結びつける。

海水準変動の時代対応

最終間氷期の高海面期は酸素同位体ステージ5eに相当し,代表値は約12.5万年前である。最終氷期最盛期は約2万年前,ヤンガードリアスの終わりは約1万1700年前,完新世の高海面期は日本周辺ではおおむね約6000年前と覚えておくとよい。沼サンゴ層は現在の標高約20 mにあるが,これは堆積時の海面が20 m高かったという意味ではない。堆積後に海面低下と地震性隆起を受けた結果として現在の標高にある,という因果関係を書く必要がある。

ヤンガードリアスの機構

「メキシコ湾流」と「熱塩循環」を使う指定があるので,単に「寒冷化した」と書くだけでは不十分である。答案では,淡水流入により北大西洋表層水の密度が下がり,深層水形成が弱まる,その結果としてメキシコ湾流を含む大西洋子午面循環の熱輸送が低下する,という順に書くと論理が通る。

デルタ発達の検算

デルタは,河川から供給される土砂量が,波浪・潮汐・海面上昇による収容空間の増加に対して十分になると前進しやすい。海面が急上昇している時期は河谷が沈水し,土砂は内湾を埋めることに使われる。高海面期以降に上昇速度が小さくなると,河口付近で土砂が保持され,沖合へ前進する。この「海面上昇の鈍化」を落とすと,単なる堆積作用の説明になってしまう。

酸素史の読み方

太古代は約40億年前から25億年前,原生代は約25億年前から5.41億年前である。酸素濃度は,約24億年前の大酸化イベントで初めて大きく増え,原生代後期から顕生代にかけてさらに増えた。したがって,長く低い値を保った後,段階的に増加する曲線を酸素と判断する。

地質証拠の選び方

縞状鉄鉱層は,海水中の二価鉄が酸化されて三価鉄鉱物として沈殿したことを示すため,酸素発生・酸化環境の重要な証拠である。赤色砂岩は陸上で鉄が酸化された赤鉄鉱などを含み,大気中に遊離酸素が存在したことを示しやすい。イリジウム濃集は主に隕石衝突,黒色頁岩は還元的な海底環境や有機物保存,酸素同位体比の負異常は気候・水循環や炭酸塩記録に関わるため,ここでは選ばない。

全球凍結の典型時期

全球凍結としてよく問われるのは,古原生代のヒューロニアン氷期と,新原生代のスターチアン氷期・マリノアン氷期である。図の時代目盛でいうと,約23億年前付近と約7億年前前後の複数の氷期を選ぶ。似た縦帯が多数ある図では,顕生代の通常の氷期や古生代末の寒冷期まで機械的に選ばないことが重要である。

石炭紀からペルム紀の酸素増加

酸素は光合成で発生するが,その有機物がすぐ酸化分解されれば正味の酸素増加は残らない。正味で酸素を増やす条件は,有機炭素が堆積物中に埋没し,酸素との再反応から隔離されることである。石炭紀の湿地林と石炭形成はこの条件を満たしたため,一時的な酸素濃度増大を説明できる。

地震波速度図のポイント

P波は圧縮波で固体・液体を伝わる。一方,S波はせん断波であり,剛性率をもつ固体中でしか伝わらない。外核でS波速度が0になることは,外核が液体であることの強い根拠である。P波速度も外核上面で急低下するが,0にはならないので,AとBを取り違えない。

境界深度と密度順

核・マントル境界は約2890 km,内核・外核境界は約5150 kmである。密度順では,地球全体の平均密度が上部マントルより大きいことに注意する。これは金属鉄を主成分とする核が地球質量の大きな割合を占めるためである。地球年齢は地球表層の最古岩石だけでは下限しか与えにくく,太陽系初期物質であるコンドライト隕石の放射年代から約45.6億年と推定する。

試験で書くべきポイント

短答では用語を正確に書き,記述では因果を一文の中に入れる。たとえば「淡水流入で熱塩循環が弱まった」「海面上昇が鈍化して土砂が河口に堆積した」「液体外核では剛性率が0」といった主語・原因・結果の組を明示すると,部分点を安定して取れる。年代問題では,12.5万年前と1万1700年前のように桁が違う値を混同しないことが最も多い失点である。

解答

  1. 関東周辺の海水準変動と地形発達

    1. 空欄は,ア:氷河性アイソスタシー,イ:相模トラフ,ウ:ヤンガードリアスである。

    2. 各時期を特徴づける年代は次の通りである。 A:12.5万年前,B:2万年前,C:1万1700年前,D:6000年前 \text{A:12.5万年前,B:2万年前,C:1万1700年前,D:6000年前}

    3. 沼サンゴ層をつくった海進は最終間氷期の高海面期に対応するので,Aである。

    4. ヤンガードリアス期の寒冷化は,北大西洋への淡水流入でメキシコ湾流を含む熱塩循環が弱まり,高緯度への熱輸送が低下したためと考えられる。

    5. 完新世中期以降は海水準上昇が鈍化し,河川から供給された土砂が河口付近に堆積・前進しやすくなったためである。

  2. 地球大気中の酸素濃度の変遷

    1. Aは太古代,Bは原生代である。

    2. 酸素濃度の変化に対応する曲線はIIIである。

    3. 酸素濃度の上昇を示す証拠として,縞状鉄鉱層と赤色砂岩を選ぶ。

    4. 全球凍結が起きた時期として,ウ,カ,キを選ぶ。

    5. 石炭紀からペルム紀には,陸上植物の繁栄により有機炭素が石炭として大量に埋没し,酸化に消費されなかった分だけ大気中の酸素が増えた。

  3. 地球の内部構造

    1. AはP波,BはS波,Cは外核である。

    2. 外核は液体で剛性率がほぼ0であり,せん断変形を伝えられないためS波が伝わらない。

    3. Dは2890 km,Eは5150 kmである。

    4. 平均密度が小さい順に並べると, 大陸地殻<海洋地殻<上部マントル<地球全体<核 \text{大陸地殻}<\text{海洋地殻}<\text{上部マントル}<\text{地球全体}<\text{核} である。

    5. 地球誕生の年代推定に用いられるものは,コンドライト隕石である。

最終答

上記の各小問の解答を参照。特に,(1)ではA=12.5万年前,B=2万年前,C=1万1700年前,D=6000年前,EはA,(2)では酸素曲線=III,全球凍結=ウ・カ・キ,(3)ではA=P波,B=S波,C=外核,D=2890 km,E=5150 km。

第2問 — 変成岩・火山・地質構造

全体の方針

第II問は,岩石名や構造名の丸暗記ではなく,形成条件を読む問題である。変成岩では温度・圧力条件と原岩組成を分けて考える。火山ではマグマ発生の物理過程と噴火様式を,揮発性成分・粘性・冷却条件から説明する。地質構造では,ステレオネット上の点や大円を,走向・傾斜・線構造の方位に変換する手順を確認する。

変成岩の定義

変成作用は,既存の岩石が固体状態で再結晶・再配列する過程である。「ソリダス以下」を入れるのは,溶融してマグマになり火成岩として固結する過程と区別するためである。答案では,鉱物組合せだけでなく「組織」も変わることを書くと,指定語句を自然に満たせる。

広域変成と接触変成

プレート収束境界では,沈み込みや衝突に伴って広い範囲の岩石が圧力・温度条件の変化を受けるので広域変成作用が起こる。マグマ貫入の周囲では,熱の供給が支配的で圧力変化は相対的に小さいので接触変成作用が起こる。温度/圧力比が大きい組合せとして紅柱石や直方輝石を含む高温低圧型を,小さい組合せとして藍閃石・ローソン石を含む低温高圧型を選ぶ。

原岩推定の根拠

ほとんど石英からなる片岩は珪質岩やチャート,方解石のみからなる片岩は石灰岩に由来する。白雲母・緑泥石・石墨を含む細粒な石英・斜長石質の岩石は泥質堆積岩に由来しやすい。緑泥石・緑れん石・アクチノ閃石・斜長石を含む緑色片岩は,玄武岩などの苦鉄質岩の低度変成で典型的に現れる。粗粒な石英・斜長石と少量の白雲母などは砂質岩を示す。

閉鎖温度と年代値

U-Pbジルコン年代とK-Ar白雲母年代を同じ「変成年代」として扱うのは典型的な誤りである。ジルコンは閉鎖温度が高く,砕屑性ジルコンであれば原岩の供給源や堆積前の火成活動の年代を残す。一方,白雲母のK-Ar年代は変成・変形後の冷却過程でアルゴンが保持され始めた時期を表しやすい。したがって,100 Maは原岩形成の上限または供給源年代,70 Maは変成帯の冷却・上昇年代として読む。

マグマ発生過程

中央海嶺や多くのホットスポットでは,マントル物質が上昇して圧力が下がるため,温度が大きく上がらなくても固相線を越えて部分融解する。これが減圧融解である。沈み込み帯では,スラブ由来の水などがマントルウェッジに加わり,かんらん岩の固相線を下げるために融解が起こる。これは流体添加融解または加水融解と呼ばれる。

斑晶鉱物の選択

中央海嶺や海洋ホットスポットの海底溶岩は一般に玄武岩質で,斜長石・かんらん石・単斜輝石を含みやすい。直方輝石も玄武岩質から安山岩質の系で現れうる。一方,石英はシリカに過飽和な酸性マグマで安定しやすく,通常の海洋玄武岩の斑晶としては最も考えにくい。

枕状溶岩の説明

枕状溶岩では「水中噴出」「急冷」「低粘性」を結びつける。低粘性で流れやすい玄武岩質溶岩が水中に出ると,外側は急冷して固い殻になるが,内側はまだ流動的である。その内側が殻を破るように前進し,新しい丸い突出部を作る。この繰り返しが枕を積み重ねた構造をつくる。高粘性だから丸くなる,と書くのは逆である。

爆発的噴火の因果

沈み込み帯の噴火では,揮発性成分の供給だけでなく,減圧による発泡とマグマの破砕まで書くと答案が強い。水に富むマグマは上昇時に揮発性成分が気泡として分離する。粘性が高い安山岩質から流紋岩質のマグマでは気泡が抜けにくく,内圧が高まって破砕し,火山灰や軽石を広域に散布する爆発的噴火になる。

ステレオネットの読み取り

下半球投影では,大円の両端が走向,中心から大円までの位置が傾斜角を反映する。極を読む問題では,極のプランジが大きいほど面の傾斜は小さくなり,面の傾斜角はおおむね 90∘−極のプランジ90^\circ-\text{極のプランジ} で求める。極の方位から走向は90度ずらし,傾斜方向が選択肢と整合するものを選ぶ。

応力場と断層

アンダーソンの断層理論では,地表が自由表面なので主応力軸の一つが鉛直になる。正断層は鉛直方向の圧縮が最大で,水平方向に伸張するため σ1\sigma_1 が鉛直である。逆断層は水平方向の圧縮が最大で,鉛直方向が最小圧縮となるため σ3\sigma_3 が鉛直である。横ずれ断層では中間主応力 σ2\sigma_2 が鉛直になる。

プルアパート堆積盆

プルアパート堆積盆は,横ずれ断層が直線的に続く場所ではなく,断層がステップしたり屈曲したりして局所的な伸張場が生じる場所に形成される。右横ずれ断層なら左ステップ,左横ずれ断層なら右ステップが典型的な解放性ステップである。具体例は死海堆積盆,サルトン・トラフ,カリフォルニア湾などを挙げればよい。

試験で書くべきポイント

短答では同義語の許容範囲を意識しつつ,標準的な語で答える。たとえば「加水融解」は「流体添加融解」と書いても趣旨は同じであるが,「熱で融ける」とだけ書くと沈み込み帯の本質を外す。記述では,閉鎖温度,揮発性成分,粘性,主応力軸など,設問が指定するキーワードを説明の中心に置く。図示問題では,公式図を写す必要はなく,形態と形成過程が伝わる簡潔な模式図を添えれば十分である。

変成岩・火山・地質構造の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(全2問)

    第四紀の海水準変動とホットスポット火山列 / 沈み込み帯の岩石循環とFo--SiO_22系相図

  • 2025年度(全2問)

    地質調査・炭素循環・地球内部 / 海洋プレートと沈み込み帯

  • 2024年度(このページ・全2問)

    海水準変動・大気酸素史・地球内部構造 / 変成岩・火山・地質構造

  • 2023年度(全2問)

    第四紀・野外地質・偏光顕微鏡 / 沈み込み帯・変成作用・火成活動

  • 2022年度(全2問)

    火成作用と微量元素分配 / 海底堆積岩の間隙率と間隙水圧

2024年度の出題内容

全2問

この2問の分野は固体地球科学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問固体地球科学海水準変動・大気酸素史・地球内部構造全体の方針 / 海水準変動の時代対応あり
第2問—変成岩・火山・地質構造全体の方針 / 変成岩の定義あり

2024年度の解説には試験で書くべきポイント2件が付いています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 2問 → 2024年度 2問
2023年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2022〜2026(直近5年)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
院試hubの最終確認
2026-08-13
東京大学の公式過去問PDF