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埼玉大学 理工学研究科 数理電子情報専攻 数学プログラム 数学 2026年度(2026年2月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問の分野は線形代数2問、位相・幾何1問、代数1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 線形代数:2次行列の対角化と冪

方針

22 次行列ならトレースと行列式から特性方程式を書くのが最短である。行列式を展開する際、(−1)⋅(−3)(-1)\cdot(-3) の符号を落とさないよう、det⁡=ad−bc\det=ad-bc の bcbc を括弧つきで書くとよい。

検算

固有値の和は 2+(−2)=0=tr⁡A2+(-2)=0=\operatorname{tr}A、積は 2⋅(−2)=−4=det⁡A2\cdot(-2)=-4=\det A で一致する。

失点しやすい点

det⁡A\det A を ad−bcad-bc に当てはめる際、b=−1b=-1、c=−3c=-3 の積が +3+3 になることを見落として det⁡A=−1+3=2\det A=-1+3=2 としてしまう誤りが多い。−bc=−(−1)(−3)=−3-bc=-(-1)(-3)=-3 と符号を分けて書く。

設問2 対角化行列

方針

相異なる固有値をもつ行列は必ず対角化可能である。この一文を書いておけば、PP の正則性を別途示す必要がない。

検算

det⁡P=1⋅3−1⋅(−1)=4≠0\det P=1\cdot3-1\cdot(-1)=4\ne0 で PP は正則。AP=(2−2−2−6)AP=\begin{pmatrix}2&-2\\-2&-6\end{pmatrix}、Pdiag⁡(2,−2)=(2−2−2−6)P\operatorname{diag}(2,-2)=\begin{pmatrix}2&-2\\-2&-6\end{pmatrix} で一致する。

失点しやすい点

PP の列の順序と対角成分の順序の対応を書かないと、P−1APP^{-1}AP がどちらの並びになるか判定できない。

設問3 AnA^n

方針

Pdiag⁡(2n,(−2)n)P−1P\operatorname{diag}(2^n,(-2)^n)P^{-1} を計算しても答えは出るが、P−1=14(3−111)P^{-1}=\frac14\begin{pmatrix}3&-1\\1&1\end{pmatrix} を求めて 22 回の行列積を実行することになる。特性方程式 λ2−4=0\lambda^2-4=0 にケーリー・ハミルトンを適用すれば A2=4IA^2=4I が即座に得られ、以後は指数法則だけで済む。

別解による確認

対角化から書くと An=14(3⋅2n+(−2)n−2n+(−2)n−3⋅2n+3(−2)n2n+3(−2)n) A^{n}=\frac14\begin{pmatrix}3\cdot2^{n}+(-2)^{n} & -2^{n}+(-2)^{n}\\ -3\cdot2^{n}+3(-2)^{n} & 2^{n}+3(-2)^{n}\end{pmatrix} となる。nn が偶数なら (−2)n=2n(-2)^n=2^n で非対角成分が消え 2nI2^nI、奇数なら (−2)n=−2n(-2)^n=-2^n で 2n−1A2^{n-1}A となり、上の結果に一致する。

検算

n=1n=1 は奇数なので 20A=A2^{0}A=A。n=2n=2 は偶数なので 22I=4I2^{2}I=4I で、直接計算した A2A^2 と合う。

失点しやすい点

A2=4IA^2=4I を見つけても、nn の偶奇の場合分けを書かずに 2nI2^nI とだけ答えると奇数の場合を落とす。設問は自然数 nn 全体を要求している。

解答

特性方程式

A=(1−1−3−1)A=\begin{pmatrix}1&-1\\-3&-1\end{pmatrix} に対し tr⁡A=1+(−1)=0\operatorname{tr}A=1+(-1)=0、det⁡A=1⋅(−1)−(−1)⋅(−3)=−1−3=−4\det A=1\cdot(-1)-(-1)\cdot(-3)=-1-3=-4 である。 22 次行列の特性方程式は λ2−(tr⁡A)λ+det⁡A=0\lambda^2-(\operatorname{tr}A)\lambda+\det A=0 だから λ2−4=0,λ=±2. \lambda^2-4=0,\qquad \lambda=\pm2 .

λ=2\lambda=2

A−2I=(−1−1−3−3)A-2I=\begin{pmatrix}-1&-1\\-3&-3\end{pmatrix} より x+y=0x+y=0。固有ベクトルは (1,−1)⊤(1,-1)^{\top}。

λ=−2\lambda=-2

A+2I=(3−1−31)A+2I=\begin{pmatrix}3&-1\\-3&1\end{pmatrix} より 3x−y=03x-y=0。固有ベクトルは (1,3)⊤(1,3)^{\top}。

対角化

固有値が相異なるので 22 本の固有ベクトルは一次独立であり、 P=(11−13),P−1AP=(200−2). P=\begin{pmatrix}1&1\\-1&3\end{pmatrix},\qquad P^{-1}AP=\begin{pmatrix}2&0\\0&-2\end{pmatrix}.

A2A^2 の計算

A2=(1−1−3−1)(1−1−3−1)=(1+3−1+1−3+33+1)=(4004)=4I. A^2=\begin{pmatrix}1&-1\\-3&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&-1\\-3&-1\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}1+3&-1+1\\-3+3&3+1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}4&0\\0&4\end{pmatrix}=4I . これは固有値が ±2\pm2 でどちらも λ2=4\lambda^2=4 を満たすこと、および AA が対角化可能であることから予想できる。

偶奇で場合分け

nn が偶数のとき n=2mn=2m とおくと An=(A2)m=(4I)m=4mI=2nI. A^{n}=(A^2)^{m}=(4I)^{m}=4^{m}I=2^{n}I . nn が奇数のとき n=2m+1n=2m+1 とおくと An=(A2)mA=4mA=2 n−1A. A^{n}=(A^2)^{m}A=4^{m}A=2^{\,n-1}A .

最終答

λ=2, −2\lambda=2,\ -2

P=(11−13)P=\begin{pmatrix}1&1\\-1&3\end{pmatrix} とすれば P−1AP=diag⁡(2,−2)P^{-1}AP=\operatorname{diag}(2,-2)

An={2nI(n 偶数)2 n−1(1−1−3−1)(n 奇数)A^{n}=\begin{cases}2^{n}I & (n\ \text{偶数})\\[2pt] 2^{\,n-1}\begin{pmatrix}1&-1\\-3&-1\end{pmatrix} & (n\ \text{奇数})\end{cases}

第2問 — 線形代数:対称行列の核・像と直交補空間

方針

33 次の特性多項式を展開してもよいが、成分に 11 と 33 が対称に並ぶこの行列では、(1,1,1)⊤(1,1,1)^{\top} と (1,0,−1)⊤(1,0,-1)^{\top} を試すほうが速い。行和が一定なら (1,1,1)⊤(1,1,1)^{\top} が固有ベクトルになる、という定石が使える。

検算

トレースが固有値の和 −1-1、行列式が積 00 と一致する。行の従属関係から det⁡A=0\det A=0 を独立に確認しているので、λ=0\lambda=0 の見落としはない。

失点しやすい点

特定の固有ベクトルを見つける方法だけで進めると、固有値の重複度が不明のまま残る。トレースとの照合で 33 個そろったことを示す一行を必ず入れる。

設問2 Ker⁡(f)\operatorname{Ker}(f) と Im⁡(f)\operatorname{Im}(f) の次元

方針

rank⁡A\operatorname{rank}A を掃き出しで求めてもよい。r1+r3=2r2\bm{r}_1+\bm{r}_3=2\bm{r}_2 という関係が 11 本だけで、r2,r3\bm{r}_2,\bm{r}_3 が一次独立だから rank⁡A=2\operatorname{rank}A=2 となり、同じ結論が出る。

失点しやすい点

「λ=0\lambda=0 が固有値だから Ker⁡≠{0}\operatorname{Ker}\ne\{\bm{0}\}」までは正しいが、次元が 11 であることには重複度の議論が要る。対称行列だから幾何的重複度と代数的重複度が一致する、と根拠を書く。

検算

rank⁡A=2\operatorname{rank}A=2 なら 22 次の小行列式に 00 でないものがあるはずである。左上の ∣−1111∣=−2≠0\begin{vmatrix}-1&1\\1&1\end{vmatrix}=-2\ne0 が実際にそうなっており、33 次の行列式は 00 だから階数はちょうど 22 である。

設問3 Im⁡(f)⊥\operatorname{Im}(f)^{\perp} の基底

方針

Im⁡(f)\operatorname{Im}(f) の基底を 22 本求めてから直交条件を連立させる道もあるが、対称性を使えば核を 11 回解くだけで済む。A⊤=AA^{\top}=A を明示的に使う点が本設問の狙いである。

検算

Im⁡(f)\operatorname{Im}(f) は λ=3\lambda=3 と λ=−4\lambda=-4 の固有ベクトル (1,1,1)⊤(1,1,1)^{\top}、(1,0,−1)⊤(1,0,-1)^{\top} が張る。(1,−2,1)(1,-2,1) との内積はそれぞれ 1−2+1=01-2+1=0、1+0−1=01+0-1=0 でともに 00 である。

背景

一般の行列では Im⁡(A)⊥=Ker⁡(A⊤)\operatorname{Im}(A)^{\perp}=\operatorname{Ker}(A^{\top}) が成り立ち、これが線形代数の基本定理と呼ばれる関係の一つである。対称行列はその特別な場合にあたる。

失点しやすい点

Im⁡(f)⊥=Ker⁡(f)\operatorname{Im}(f)^{\perp}=\operatorname{Ker}(f) を根拠なしに使うと減点される。A⊤=AA^{\top}=A から導く 33 行を省かない。

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第3問 — 微分積分:連続性・偏微分可能性・全微分可能性の分離

方針

sin⁡(1/y)\sin(1/y) は y→0y\to0 で振動して極限をもたないが、係数 x2x^2 が 00 に近づけば積は 00 に押さえ込まれる。「振動する因子 ×\times 00 に行く因子」の型では、はさみうちが使えるかどうかが xx の値で決まる。

検算

不連続を示す側は具体的な 22 本の点列で十分である。連続を示す側は不等式 ∣f∣≤x2|f|\le x^2 一本で足り、ε\varepsilon に対して δ=ε\delta=\sqrt{\varepsilon} と取れる。

失点しやすい点

xx 軸全体を不連続と書くと原点を巻き込んで誤りになる。原点だけが例外であることを明示する。

設問2 原点における偏微分係数

方針

偏微分係数は座標軸に沿った 11 変数の微分にすぎない。xx 軸上でも yy 軸上でも ff が恒等的に 00 なので、極限を取るまでもなく 00 である。

失点しやすい点

fyf_y を求めるとき、y≠0y\ne0 での式 x2sin⁡(1/y)x^2\sin(1/y) を yy で微分して −x2y2cos⁡(1/y)-\frac{x^2}{y^2}\cos(1/y) とし、y→0y\to0 の極限を考えてしまう誤りが多い。原点での偏微分係数は定義の差分商で計算する。x=0x=0 を先に代入すれば分子が消える。

検算

y≠0y\ne0 の領域で偏微分すると fx=2xsin⁡(1/y)f_x=2x\sin(1/y)、fy=−x2y2cos⁡(1/y)f_y=-\dfrac{x^2}{y^2}\cos(1/y) である。x=0x=0 を代入すればどちらも 00 になり、原点での値 00 と矛盾しない。ただし fyf_y は x≠0x\ne0 のまま y→0y\to0 とすると発散するので、偏導関数は原点で連続でない。

設問3 原点における全微分可能性

方針

全微分可能性の判定は、偏微分係数を先に求めてから剰余を rr で割って 00 に行くかを見る、という順序が確実である。本問は剰余がそのまま ff になるので、設問1で使った不等式 ∣f∣≤x2|f|\le x^2 がここでも効く。

この設問が試していること

「C1C^1 級ならば全微分可能」という十分条件しか知らないと、本問は扱えない。fxf_x は原点の近くで 2xsin⁡(1/y)2x\sin(1/y) となり原点で連続でないので ff は C1C^1 級ではないが、それでも全微分可能である。十分条件は必要条件ではない、という点が問われている。

関連する事実の整理

本問の ff は、原点において「全微分可能だが、任意の近傍に不連続点をもつ」例になっている。全微分可能性はその一点での近似の良さだけを述べる局所的な性質であり、近傍での連続性を保証しない。

失点しやすい点

「偏微分可能かつ偏導関数が連続でないから全微分可能でない」と結論するのが典型的な誤答である。定義の剰余評価を実行することが唯一の判定手段である。

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第4問 — 微分積分:楕円座標変換による重積分

方針

楕円領域では x=arcos⁡θx=ar\cos\theta、y=brsin⁡θy=br\sin\theta と半軸をそのまま係数に入れる。ヤコビアンは abrabr になり、円の極座標の rr に abab が掛かるだけである。本問は ab=6ab=6。

角の範囲の決め方

3sin⁡θ−3cos⁡θ≥03\sin\theta-\sqrt3\cos\theta\ge0 を tan⁡θ≥13\tan\theta\ge\frac{1}{\sqrt3} と変形すると、cos⁡θ\cos\theta の符号で不等号の向きが変わるため場合分けが要る。Rsin⁡(θ−φ)R\sin(\theta-\varphi) の形に合成すれば符号の議論が不要になり、範囲が長さ π\pi の区間として一度に出る。

検算

領域 DD は楕円を直線で二分した半分で、θ\theta の幅がちょうど π\pi であることと整合する。また値が負になるのは、θ∈[π/6,7π/6]\theta\in[\pi/6,7\pi/6] が x<0x<0 側(θ∈(π/2,3π/2)\theta\in(\pi/2,3\pi/2))をより多く含み、xx の符号が負の寄与を上回るためである。実際 ∫π/67π/6cos⁡θ dθ\int_{\pi/6}^{7\pi/6}\cos\theta\,d\theta は θ=π/2\theta=\pi/2 から 3π/23\pi/2 の区間で負になる。

別解

θ\theta の積分だけを先に見ると、区間の幅が π\pi なので ∫αα+πcos⁡θ dθ=−2sin⁡α\int_{\alpha}^{\alpha+\pi}\cos\theta\,d\theta=-2\sin\alpha が使える。α=π/6\alpha=\pi/6 として −2⋅12=−1-2\cdot\frac12=-1 と一行で出る。

失点しやすい点

ヤコビアンを rr とだけ書いて ab=6ab=6 を落とすと値が 66 分の 11 になる。また平方根の中を r2r^2 に直したあと r2=r\sqrt{r^2}=r とするとき、r≥0r\ge0 であることを明記する。

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第5問 — 代数:剰余類の一致条件と商群の位数

方針

両方向とも「HH が部分群であること」の 33 条件、すなわち 0∈H0\in H、和で閉じる、逆元で閉じる、のどれを使ったかを明示する。必要性で 0∈H0\in H、十分性で和と逆元を使っている。

失点しやすい点

片方向だけ示して同値と書く答案が多い。また十分性で「x+H⊂y+Hx+H\subset y+H」しか示さずに等号を主張すると不十分で、−h0∈H-h_0\in H による逆向きの包含が要る。

この設問が使われる場面

(2)で剰余類の個数を数えるとき、22 つの元が同じ類に入るかどうかは差が部分群に入るかで判定する。ここで示した同値がそのまま判定条件として使われる。

設問2 G=Z2G=\mathbb{Z}^2 の生成と商群

方針

Z2\mathbb{Z}^2 の有限指数部分群の指数は、生成元を列に並べた整数行列の行列式の絶対値に等しい。(イ)は ∣1003∣=3\begin{vmatrix}1&0\\0&3\end{vmatrix}=3、(ウ)は ∣1023∣=3\begin{vmatrix}1&0\\2&3\end{vmatrix}=3 で、どちらも 33 である。答案ではこの事実を使ってもよいが、準同型定理で核として書き下すほうが根拠が閉じる。

検算

(ウ)の代表元は (0,0),(0,1),(0,2)(0,0),(0,1),(0,2) と取れる。実際 ψ\psi の値がそれぞれ 0,1,20,1,2 となり、相異なる 33 つの剰余類に落ちる。(1,2)(1,2) は ψ=0\psi=0 なので H2H_2 に属し、単位元の類に戻る。

(ア)が置かれている理由

(ア)で (1,2)⊤(1,2)^{\top} と (0,1)⊤(0,1)^{\top} が GG を生成することを見せ、(ウ)で (0,1)⊤(0,1)^{\top} を (0,3)⊤(0,3)^{\top} に置き換えると指数 33 の真部分群になる、という対比を作っている。生成元をひとつ「33 倍に薄める」と指数が 33 になる、という感覚をつかませる構成である。

失点しやすい点

(ウ)で H2H_2 を Z×3Z\mathbb{Z}\times3\mathbb{Z} と混同すると位数を誤る。(1,2)(1,2) の第 22 成分が 00 でないため、条件は「bb が 33 の倍数」ではなく「b≡2ab\equiv2a」である点に注意する。

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第6問 — 位相:商位相空間としての円周

方針

33 条件それぞれで「Z\mathbb{Z} が 00 を含み、逆元と和で閉じる」ことを使っている。Z\mathbb{Z} が R\mathbb{R} の部分群であることが、この関係が同値関係になる理由そのものである。

失点しやすい点

mm を各条件で使い回さず、別の同値関係ごとに新しい整数を取り直すことを明示する。推移律で m+m′m+m' が整数であると一言添える。

同値類の形

xx の同値類は [x]={x+m∣m∈Z}[x]=\{x+m\mid m\in\mathbb{Z}\} であり、各類はちょうど 11 つの代表元を [0,1)[0,1) の中にもつ。この見方が(2)(3)での計算の下地になる。

設問2 π\pi が開写像であること

方針

商写像は一般には開写像ではない。ここで開になるのは、同値類が「群 Z\mathbb{Z} の平行移動による軌道」であり、逆像が開集合の平行移動の和集合として書けるからである。群作用による商にはこの性質がある。

失点しやすい点

π−1(π(U))=U\pi^{-1}(\pi(U))=U と書いてしまう誤りが多い。π\pi は単射でないので、逆像は UU より真に大きくなり得る。和集合の形を必ず書く。

閉写像ではあるか

π\pi は開写像だが、一般の商写像と同じく閉写像であるとは限らない。本問では Z\mathbb{Z} による平行移動の族が局所有限なので実際には閉写像にもなるが、開写像であることの証明とは別の議論が要る。

設問3 ハウスドルフであること

方針

商空間のハウスドルフ性は一般には成り立たないので、R\mathbb{R} 側の距離を使って具体的に近傍を作る。「22 点の差が整数からどれだけ離れているか」を dd と置くのが要点で、ε\varepsilon を d/3d/3 と取れば余裕をもって矛盾を出せる。

d>0d>0 の根拠

Z\mathbb{Z} は離散で閉集合だから、Z\mathbb{Z} に属さない点との距離は正である。min⁡\min が実現することも、∣x−y−m∣|x-y-m| が ∣m∣→∞|m|\to\infty で発散するので有限個の mm を見れば足りることから従う。

背景

R/ ⁣∼\mathbb{R}/\!\sim は円周 S1S^1 と同相である。実際 x↦e2πixx\mapsto e^{2\pi ix} が全単射な連続写像 R/ ⁣∼→S1\mathbb{R}/\!\sim\to S^1 を誘導し、[0,1][0,1] がコンパクトであることから同相になる。S1S^1 が距離空間だからハウスドルフであることも別証明になる。

失点しやすい点

ε=d/2\varepsilon=d/2 と取ると ∣t−s∣<d|t-s|<d が等号込みになり得て、境界の議論が甘くなる。d/3d/3 のように余裕をもたせるか、不等号の扱いを丁寧に書く。

位相:商位相空間としての円周の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 複素解析:留数定理による実積分

方針

zn=wz^n=w の根は極形式で書くのが確実である。−1-1 の偏角を π\pi とし、44 で割って 2π/42\pi/4 ずつ回した 44 点になる。単位円周上に 45∘45^\circ から 90∘90^\circ おきに並ぶ。

失点しやすい点

極の位数を確かめずに「44 つの極」とだけ書くと、(2)で留数を 11 位の公式で計算する根拠が欠ける。分母の微分が消えないことを一言添える。

図形的な確認

44 つの極は単位円周上にあり、実軸・虚軸のいずれにも乗らず、45∘45^\circ、135∘135^\circ、225∘225^\circ、315∘315^\circ に等間隔で並ぶ。実軸上に極がないので(2)の積分路が極を踏まず、主値を取る必要がないことがここで確認できる。

設問2 留数定理による積分

方針

分母の次数が分子より 22 以上大きい有理関数は、上半平面の半円で閉じれば弧上の積分が消える。次数差が 11 しかない場合はこの評価が効かないので、次数差の確認を最初に書いておく。

検算

被積分関数は正だから積分値は正でなければならず、π/2≈2.22>0\pi/\sqrt2\approx2.22>0 で矛盾しない。また偶関数なので 2∫0∞2\int_0^{\infty} と書き換えられ、x=1x=1 付近で最大値 1/21/2 をとる山が幅 22 程度に広がっていることから、値が 22 前後になるという概算とも合う。

別解

実数の計算だけで済ませることもできる。x4+1=(x2+2x+1)(x2−2x+1)x^4+1=(x^2+\sqrt2x+1)(x^2-\sqrt2x+1) と因数分解して部分分数に分ければ、初等的に同じ値が得られる。留数を使うほうが短いが、因数分解は(1)の極の位置(偏角 ±π/4\pm\pi/4、±3π/4\pm3\pi/4)と対応している。

失点しやすい点

44 つの極すべての留数を足してしまう誤りが典型である。閉曲線の内部にあるのは上半平面の 22 つだけである。また 2πi2\pi i を掛けたあと i2=−1i^2=-1 の処理を誤って虚数のまま答えるミスも多い。実積分なので答えは実数になることを確認する。

複素解析:留数定理による実積分の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(2026年2月実施)(このページ・全7問)

    線形代数:2次行列の対角化と冪 / 線形代数:対称行列の核・像と直交補空間 / 微分積分:連続性・偏微分可能性・全微分可能性の分離

  • 2026年度(2025年8月実施)(全7問)

    線形代数:対称行列の対角化と冪 / 線形代数:直交補空間と正規直交基底 / 微分積分:2変数関数の臨界点と極値判定

  • 2025年度(2025年2月実施)(全7問)

    線形代数:符号付き対角行列が定める線形写像と双1次形式 / 線形代数:重複固有値をもつ行列の冪 / 微分積分:一様連続の定義と距離関数への適用

  • 2025年度(2024年8月実施)(全7問)

    線形代数:固有値分解と冪の漸近方向 / 線形代数:抽象ベクトルを座標に直して調べる線形写像 / 微分積分:min と max で定めた関数の原点における微分可能性

  • 2024年度(2024年2月実施)(全7問)

    線形代数:パラメータつき行列の正則性と対角化可能性 / 線形代数:線形写像の空間と部分空間を保つ写像のなす部分空間 / 微分積分:3次多項式の極値と三角形領域上の最大最小

  • 2024年度(2023年8月実施)(全7問)

    線形代数:2次形式の対称行列表示と直交変換による標準化 / 線形代数:直交補空間の正規直交基底と鏡映変換 / 微分積分:分数項を含む2変数関数の極値

2026年度(2026年2月実施)の出題内容

全7問

この7問の分野は線形代数2問・位相・幾何1問・代数1問・微分積分・解析1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数2次行列の対角化と冪別解による確認あり
第2問線形代数対称行列の核・像と直交補空間—あり
第3問微分方程式連続性・偏微分可能性・全微分可能性の分離この設問が試していること / 関連する事実の整理あり
第4問微分積分・解析楕円座標変換による重積分角の範囲の決め方あり
第5問代数剰余類の一致条件と商群の位数この設問が使われる場面 / (ア)が置かれている理由あり
第6問位相・幾何商位相空間としての円周同値類の形 / 閉写像ではあるか—
第7問—複素解析:留数定理による実積分図形的な確認あり

2026年度(2026年2月実施)の解説には失点しやすい点7件・検算6件が付いています。

前年度(2026年度(2025年8月実施))との違い

大問数
2026年度(2025年8月実施) 7問 → 2026年度(2026年2月実施) 7問
2026年度(2025年8月実施)の解答例

埼玉大学の公式過去問

公開年度範囲
平成年代からの各回(直近は2024〜2026年度の8月実施・2月実施)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
英語は TOEIC・TOEIC IP のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-05
埼玉大学の公式過去問PDF