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埼玉大学 理工学研究科 数理電子情報専攻 数学プログラム 数学 2025年度(2025年2月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問の分野は微分積分・解析2問、線形代数1問、代数1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数:符号付き対角行列が定める線形写像と双1次形式

方針

(1 1 1)M(1\ 1\ 1)M を先に計算して (−1 1 1)(-1\ 1\ 1) という 11 行の行列にしてしまえば、ff は 11 本の一次形式になる。行列の積の順序を保ったまま先に潰すのが早い。

検算

得た 22 本はいずれも −1+1+0=0-1+1+0=0、−1+0+1=0-1+0+1=0 を満たし、比例関係にないので一次独立である。本数 22 も次元と一致する。

失点しやすい点

MM を掛けずに x1+x2+x3=0x_1+x_2+x_3=0 としてしまう誤りが典型である。MM の (1,1)(1,1) 成分が −1-1 であることが本問の唯一の仕掛けなので、ここを落とすと(2)も連鎖して誤る。

設問2 g(w,w)=0g(\bm{w},\bm{w})=0 となる1次元部分空間

方針

gg は符号 (−,+,+)(-,+,+) の対称双 11 次形式で、g(w,w)=0g(\bm{w},\bm{w})=0 は円錐 w12=w22+w32w_1^2=w_2^2+w_3^2 を表す。この円錐上の母線が求める 11 次元部分空間である。ミンコフスキー空間の光円錐と同じ形をしている。

なぜ c2c^2 で済むか

WW が 11 次元だから、生成元 11 本の値だけ確かめればよい。22 次元以上の部分空間で同じことを要求すると、g(w1,w2)=0g(\bm{w}_1,\bm{w}_2)=0 という交差項の条件も必要になり、話が変わる。この違いを答案に書いておくと、条件を正しく読んだことが示せる。

検算

w=(1,1,0)⊤\bm{w}=(1,1,0)^{\top} は設問1の Ker⁡f\operatorname{Ker}f の基底の 11 本でもある。これは偶然ではなく、f(x)=(1 1 1)Mx=g((1,1,1)⊤,x)f(\bm{x})=(1\ 1\ 1)M\bm{x}=g\bigl((1,1,1)^{\top},\bm{x}\bigr) と書けるためで、u=(1,1,1)⊤\bm{u}=(1,1,1)^{\top} 自身が g(u,u)=−1+1+1=1≠0g(\bm{u},\bm{u})=-1+1+1=1\ne0 である一方、核の中に等方ベクトルが取れている。

失点しやすい点

「WW を 11 つ求めよ」なので答えは一意でないが、w=0\bm{w}=\bm{0} は 11 次元部分空間を張らないので不可である。零でないことを明記する。

解答

ff を成分で書く

M=diag⁡(−1,1,1)M=\operatorname{diag}(-1,1,1) だから、x=(x1,x2,x3)⊤\bm{x}=(x_1,x_2,x_3)^{\top} に対し Mx=(−x1,x2,x3)⊤M\bm{x}=(-x_1,x_2,x_3)^{\top} である。よって f(x)=(1 1 1)Mx=−x1+x2+x3. f(\bm{x})=(1\ 1\ 1)M\bm{x}=-x_1+x_2+x_3 .

核

ff は R3\mathbb{R}^3 から R\mathbb{R} への零でない線形写像だから dim⁡Ker⁡f=3−1=2\dim\operatorname{Ker}f=3-1=2 である。 Ker⁡f={−x1+x2+x3=0}\operatorname{Ker}f=\{-x_1+x_2+x_3=0\} で、x2,x3x_2,x_3 を自由変数として x1=x2+x3x_1=x_2+x_3 と表せる。

gg を成分で書く

g(x,y)=txMy=−x1y1+x2y2+x3y3. g(\bm{x},\bm{y})={}^{t}\bm{x}M\bm{y}=-x_1y_1+x_2y_2+x_3y_3 . よって g(w,w)=−w12+w22+w32g(\bm{w},\bm{w})=-w_1^2+w_2^2+w_3^2 である。

1次元部分空間への条件の言い換え

W=span⁡{w}W=\operatorname{span}\{\bm{w}\} とすると、WW の元は cwc\bm{w}(c∈Rc\in\mathbb{R})と書ける。双 11 次性より g(cw,cw)=c2g(w,w) g(c\bm{w},c\bm{w})=c^2g(\bm{w},\bm{w}) だから、「すべての v∈W\bm{v}\in W で g(v,v)=0g(\bm{v},\bm{v})=0」は「g(w,w)=0g(\bm{w},\bm{w})=0」と同値である。

具体的な w\bm{w}

−w12+w22+w32=0-w_1^2+w_2^2+w_3^2=0 を満たす零でないベクトルを 11 つ取ればよい。w=(1,1,0)⊤\bm{w}=(1,1,0)^{\top} とすると −1+1+0=0-1+1+0=0 で条件を満たす。

最終答

{(1,1,0)⊤, (1,0,1)⊤}\left\{(1,1,0)^{\top},\ (1,0,1)^{\top}\right\}

W=span⁡{(1,1,0)⊤}W=\operatorname{span}\left\{(1,1,0)^{\top}\right\}(w=(1,0,1)⊤\bm{w}=(1,0,1)^{\top} や (2,1,1)⊤(\sqrt2,1,1)^{\top} でもよい)

第2問 — 線形代数:重複固有値をもつ行列の冪

方針

「ただ 11 つ」を示すには、特性多項式が完全平方になることを見せるのが最も直接的である。判別式 (tr⁡A)2−4det⁡A=4−4=0(\operatorname{tr}A)^2-4\det A=4-4=0 を計算しても同じ結論になる。

失点しやすい点

det⁡A\det A で −(−2)⋅2=+4-(-2)\cdot2=+4 の符号を落とすと det⁡A=−7\det A=-7 となり、相異なる 22 実根が出てしまう。ad−bcad-bc の bcbc を括弧つきで扱う。

検算

λ=−1\lambda=-1 を重根としてもつなら A+I2A+I_2 は正則でないはずである。実際 det⁡(A+I2)=2⋅(−2)−(−2)⋅2=−4+4=0\det(A+I_2)=2\cdot(-2)-(-2)\cdot2=-4+4=0 で確かめられる。

設問2 固有空間の基底

対角化できないこと

代数的重複度は 22 だが幾何的重複度は 11 である。両者が食い違うので AA は対角化不可能で、(4)で対角化を使えない。この観察を(3)(4)の前置きとして書いておくとよい。

失点しやすい点

22 つの行が同じなので階数は 11 である。掃き出しを最後まで書かずに「22 次元」と誤ると、(4)の方針を誤る。

方針

固有空間は (A−αI2)x=0(A-\alpha I_2)\bm{x}=\bm{0} の解空間である。22 行が一致しているので条件は 11 本に潰れ、自由変数が 11 つ残る。

設問3 (A−αI2)2(A-\alpha I_2)^2

別の導き方

ケーリー・ハミルトンの定理より AA は自身の特性多項式 (λ+1)2(\lambda+1)^2 を満たすから、(A+I2)2=O(A+I_2)^2=O が計算なしで従う。設問1の結果がそのまま使える。

この設問の役割

(4)で二項展開したとき、N2N^2 以降の項がすべて消えることの根拠になる。ここを示さずに(4)の展開を打ち切ると論理が飛ぶ。

検算

NN の各列は (2,2)⊤(2,2)^{\top} の定数倍で、NN の像は (1,1)⊤(1,1)^{\top} の張る直線である。これは設問2で求めた固有空間、すなわち NN の核と一致する。像が核に含まれるので N2=ON^2=O となることが構造的にも見える。

設問4 AnA^n

方針

対角化できない行列の冪は、対角部分と冪零部分に分けるジョルダン分解の考え方で処理する。22 次で固有値が重根の場合は必ず N2=ON^2=O になるので、展開は 22 項で終わる。

検算

n=1n=1 を代入すると (−1)(−12−23)=(1−22−3)=A(-1)\begin{pmatrix}-1&2\\-2&3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&-2\\2&-3\end{pmatrix}=A で一致する(設問は n≥2n\ge2 だが、公式は n=1n=1 でも正しい)。n=2n=2 では (−34−45)\begin{pmatrix}-3&4\\-4&5\end{pmatrix} となり、A2A^2 を直接計算した (1−4−2+62−6−4+9)\begin{pmatrix}1-4&-2+6\\2-6&-4+9\end{pmatrix} と一致する。

失点しやすい点

可換性に触れずに二項定理を使うと、行列の積が非可換であることを踏まえていないと見なされる。「スカラー行列だから可換」の一行を必ず入れる。また nαn−1n\alpha^{n-1} の符号処理で (−1)n−1=−(−1)n(-1)^{n-1}=-(-1)^n を誤ると全体の符号が反転する。

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第3問 — 微分積分:一様連続の定義と距離関数への適用

各点連続との違い

各点連続の定義は ∀p ∀ε>0 ∃δ>0 ∀q (∥p−q∥<δ⇒∣f(p)−f(q)∣<ε)\forall\bm{p}\ \forall\varepsilon>0\ \exists\delta>0\ \forall\bm{q}\ (\|\bm{p}-\bm{q}\|<\delta\Rightarrow|f(\bm{p})-f(\bm{q})|<\varepsilon) であり、δ\delta を選ぶのが p\bm{p} を固定した後になる。一様連続では ∃δ\exists\delta が ∀p\forall\bm{p} より前に来るため、δ\delta は ε\varepsilon だけで決まり、点の位置に依存しない。この量化子の順序が定義の核心である。

答案の書き方

記号だけでなく「δ\delta は ε\varepsilon のみに依存し、点の取り方に依存しない」という日本語を添えると、順序を理解して書いたことが伝わる。

失点しやすい点

∀p\forall\bm{p} を ∃δ\exists\delta の前に置いてしまうと各点連続の定義になり、設問の答えにならない。定義を問う設問では、量化子の順序そのものが配点対象である。

設問2 f(x,y)=x2+y2f(x,y)=\sqrt{x^2+y^2} の一様連続性

方針

∣f(p)−f(q)∣≤L∥p−q∥|f(\bm{p})-f(\bm{q})|\le L\|\bm{p}-\bm{q}\| の形(リプシッツ条件)が示せれば、δ=ε/L\delta=\varepsilon/L と取るだけで一様連続が従う。本問は L=1L=1 の場合である。定義に戻る前に、まずリプシッツ性を狙うのが定石である。

検算

q=0\bm{q}=\bm{0} とすると不等式は ∣ ∥p∥−0 ∣≤∥p∥|\,\|\bm{p}\|-0\,|\le\|\bm{p}\| となり自明に成立する。等号は p,q\bm{p},\bm{q} が原点から同じ向きに並ぶとき、たとえば p=(2,0)\bm{p}=(2,0)、q=(1,0)\bm{q}=(1,0) で ∣2−1∣=1=∥p−q∥|2-1|=1=\|\bm{p}-\bm{q}\| として起こる。L=1L=1 が最良の定数であることも分かる。

定義域が非有界であることの意味

有界閉集合上の連続関数は自動的に一様連続になる(ハイネ・カントールの定理)が、R2\mathbb{R}^2 は非有界なのでこの定理は使えない。たとえば f(x,y)=x2f(x,y)=x^2 は R2\mathbb{R}^2 上連続だが一様連続でない。本問で不等式評価が要るのはこのためである。

失点しやすい点

x2+y2\sqrt{x^2+y^2} を x,yx,y 別々に評価しようとすると煩雑になる。ノルムとして一括で扱う。また δ=ε\delta=\varepsilon が点に依存しないことを最後に明記する。

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第4問 — 微分積分:回転放物面と球面で囲まれた立体の体積

方針

「上下 22 枚の曲面で挟まれた領域」は、xyxy 平面への射影を求めてから高さの差を積分するのが基本である。射影は交線を xyxy 平面へ落とした円板 r≤1r\le1 になる。

検算

数値では 82≈11.31378\sqrt2\approx11.3137 なので vol⁡(V)≈4.3137π6≈2.26\operatorname{vol}(V)\approx\frac{4.3137\pi}{6}\approx2.26 である。 半径 2\sqrt2 の球の体積は 43π(2)3=823π≈11.85\frac43\pi(\sqrt2)^3=\frac{8\sqrt2}{3}\pi\approx11.85 だから、VV はその 22 割弱にあたる。放物面より上で球の内側という細い領域としては妥当な大きさである。

別解

zz で先に切る方法もある。0≤z≤10\le z\le1 では断面は半径 z\sqrt{z} の円板(放物面の内側)、1≤z≤21\le z\le\sqrt2 では半径 2−z2\sqrt{2-z^2} の円板(球の内側)だから vol⁡(V)=π∫01z dz+π∫12(2−z2) dz=π2+π[2z−z33]12=π2+π(423−53) \operatorname{vol}(V)=\pi\int_0^1 z\,dz+\pi\int_1^{\sqrt2}(2-z^2)\,dz =\frac{\pi}{2}+\pi\Bigl[2z-\frac{z^3}{3}\Bigr]_1^{\sqrt2} =\frac{\pi}{2}+\pi\Bigl(\frac{4\sqrt2}{3}-\frac53\Bigr) となり、通分すると (82−7)π6\frac{(8\sqrt2-7)\pi}{6} で一致する。切り方を変えて同じ値が出ることが確認になる。

失点しやすい点

交線を求めるとき z2+z−2=0z^2+z-2=0 の負の根 z=−2z=-2 を採用すると領域が空になる。z=r2≥0z=r^2\ge0 という制約を明記して棄却する。また上側の曲面を z=2−r2z=\sqrt{2-r^2} とすべきところを z=2−r2z=2-r^2 と書き誤る例が多い。

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第5問 — 代数:有限群の位数、巡回性、指数2の部分群

有限性の前提

本問は GG が有限群と仮定されているので位数は必ず有限の自然数である。無限群では位数を「∣G∣|G| は無限」と述べるか、濃度で測ることになる。

記号

∣G∣|G| のほか #G\#G や ord⁡(G)\operatorname{ord}(G) と書く流儀もある。設問(2)の元の位数 ord⁡(x)\operatorname{ord}(x) と混同しないよう、答案では対象を明示する。

失点しやすい点

「GG の大きさ」といった曖昧な表現では定義にならない。元の個数であることを言い切る。

設問2 元の位数

存在の根拠

GG が有限なら x,x2,x3,…x,x^2,x^3,\dots の中に必ず重複が現れ、xi=xjx^{i}=x^{j}(i<ji<j)から x j−i=ex^{\,j-i}=e が従う。よって xm=ex^m=e となる正整数が存在し、最小のものが取れる。定義を書く設問だが、この一行を添えると「最小」が意味をもつ理由まで示せる。

失点しやすい点

「xm=ex^m=e となる整数 mm」とだけ書くと m=0m=0 が含まれてしまう。正の整数であること、および最小であることの 22 点を落とさない。

ラグランジュの定理との関係

有限群では、元 xx の位数は ∣⟨x⟩∣|\langle x\rangle| に等しく、これは ∣G∣|G| の約数になる。設問3はこの等式が ∣G∣|G| そのものになる場合を扱っている。

設問3 位数 nn の元をもつ位数 nn の群は巡回群

方針

「部分集合で個数が全体と等しい」ことから一致を導くのは有限集合に固有の議論である。無限群では成り立たないので、有限性を明示する。

失点しやすい点

⟨x⟩\langle x\rangle の元が相異なることの証明を省くと、∣⟨x⟩∣=n|\langle x\rangle|=n が示せていない。位数の最小性を使うこの部分が本設問の実質である。

逆も成り立つこと

巡回群 G=⟨x⟩G=\langle x\rangle が位数 nn なら xx の位数はちょうど nn である。したがって設問3の主張は「位数 nn の群が巡回群であること」と「位数 nn の元をもつこと」が同値であると言い換えられる。

設問4 指数2の部分群は正規

方針

指数が 22 という条件は「HH でない部分がひとかたまりしかない」ことを意味する。左右どちらの剰余類分解でも 22 個目は G∖HG\setminus H に確定するので、左右が一致する。指数が 33 以上ではこの論法は使えない。

失点しやすい点

右剰余類の個数も 22 であることを断らずに進めると論理が飛ぶ。左右の剰余類の個数が一致することは、gH↦Hg−1gH\mapsto Hg^{-1} が全単射を与えることから従う。

指数3では成り立たないこと

S3S_3 の部分群 ⟨(1 2)⟩={e,(1 2)}\langle(1\,2)\rangle=\{e,(1\,2)\} は指数 33 だが正規でない。実際 (1 3)(1 2)(1 3)−1=(2 3)∉⟨(1 2)⟩(1\,3)(1\,2)(1\,3)^{-1}=(2\,3)\notin\langle(1\,2)\rangle である。指数 22 という条件が効いていることが分かる。

設問5 S3S_3 における例

設問の流れ

(3)と(4)がここで両方使われる構成になっている。(4)で正規性を、(3)で商群の巡回性を出す。個別に証明し直さず、前の設問を引用するのが答案として自然である。

他の候補との比較

H={e}H=\{e\} では S3/H≅S3S_3/H\cong S_3 が非可換なので巡回群にならない。H=S3H=S_3 でも S3S_3 自身が巡回群でない。位数 22 の部分群 ⟨(1 2)⟩\langle(1\,2)\rangle は指数 33 で正規でない。条件を満たすのは A3A_3 のみである。

背景

{e}⊂A3⊂S3\{e\}\subset A_3\subset S_3 は、各商が巡回群になる列であり、S3S_3 が可解群であることを示している。55 次以上の対称群にはこのような列が存在しない。

代数:有限群の位数、巡回性、指数2の部分群の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 位相:完全不連結性

選び方

証明が不要なので、連結であることが既知の空間を挙げるのが最短である。区間、円周、Rn\mathbb{R}^n のいずれでもよい。22 点以上の密着空間も連結なので該当する。

失点しやすい点

11 点集合や空集合を挙げると、連結成分がすべて 11 点(あるいは成分が存在しない)ので反例にならない。22 点以上を含み、かつ連結な空間を選ぶ。

連結成分の定義の確認

連結成分とは、その点を含む連結部分集合のうち極大なものである。空間全体が連結なら成分は 11 つで全体に一致する。

設問2 離散空間は完全不連結

方針

完全不連結性は「22 点を含む部分集合はどれも非連結」と同値である。分離を与える開集合を具体的に書けば証明が終わる。

失点しやすい点

XX の開集合ではなく AA の相対位相での開集合が必要である。{a}=A∩{a}\{a\}=A\cap\{a\} という書き方で相対開であることを示す。

逆は成り立たないこと

離散ならば完全不連結だが、逆は偽である。設問3の Q\mathbb{Q} がその反例になっており、(2)と(3)はこの含意の向きを確かめる構成になっている。

設問3 Q\mathbb{Q} は完全不連結

方針

Q\mathbb{Q} には「穴」が稠密に空いているので、どの 22 点の間にも切れ目が取れる。切れ目を無理数に取ることで、切断面が Q\mathbb{Q} に属さず AA を漏れなく 22 つに分けられる点が要点である。

有理数で切ってはいけない理由

α\alpha を有理数に取ると α\alpha 自身が AA に属する可能性があり、U∪VU\cup V が AA 全体にならない。無理数を選ぶことが本質的である。

離散でないことの注意

Q\mathbb{Q} は完全不連結だが離散空間ではない。{0}\{0\} は Q\mathbb{Q} の開集合ではなく、00 に収束する有理数列が存在する。したがって(3)は(2)の系ではなく、独立した議論が必要である。

失点しやすい点

AA を Q\mathbb{Q} 全体に限定して議論すると、連結成分が 11 点であることまでは言えない。任意の部分集合 AA について示す必要がある。

位相:完全不連結性の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 複素解析:正則関数と調和関数の合成

実微分との違い

hh が複素平面上を任意の方向から 00 に近づく点が本質である。実 22 変数の全微分可能性より強い条件になり、その帰結が(2)のコーシー・リーマンの関係式である。「方向によらない」の一言を必ず書く。

失点しやすい点

「各点で微分可能」とだけ書くと実微分と区別がつかない。h∈Ch\in\mathbb{C} であることを明記する。

正則の範囲

本問は C\mathbb{C} 全体で正則、すなわち整関数を仮定している。一般には開集合上での正則性を定義するが、定義の形は同じである。

設問2 コーシー・リーマンの関係式

方針

「方向によらない」という正則性の定義を、最も扱いやすい 22 方向(実軸と虚軸)に適用して式を取り出す。1/i=−i1/i=-i の処理だけ注意すればよい。

検算

f(z)=z2f(z)=z^2 では u=x2−y2u=x^2-y^2、v=2xyv=2xy で、ux=2x=vyu_x=2x=v_y、uy=−2y=−vxu_y=-2y=-v_x となり関係式を満たす。一方 f(z)=zˉf(z)=\bar z は u=xu=x、v=−yv=-y で ux=1≠−1=vyu_x=1\ne-1=v_y となり、正則でないことが確認できる。

失点しやすい点

h=ith=it のとき分母が itit であることを忘れて tt で割ると、符号と実虚の入れ替えが起こらない。

設問3 調和関数の定義

失点しやすい点

Δg=0\Delta g=0 だけ書いて C2C^2 級の仮定を落とすと、22 階偏微分が存在する保証がない。定義に微分可能性の条件を含める。

正則関数との関係

設問2で示したように、正則関数の実部 uu と虚部 vv はそれぞれ調和である。逆に領域が単連結なら、任意の調和関数は何らかの正則関数の実部として表せる。

失点しやすい点

変数名を (x,y)(x,y) のままにすると、設問4で gg の変数と hh の変数が混ざる。gg の変数を (s,t)(s,t) と別に置く。

設問4 h=g(u,v)h=g(u,v) が調和であること

方針

連鎖律で出る項を「gg の 22 階偏微分に掛かる係数」と「gg の 11 階偏微分に掛かる係数」に分けて整理するのが要点である。前者はコーシー・リーマンで ∣f′∣2|f'|^2 と 00 に、後者は u,vu,v の調和性で消える。

∣f′∣2|f'|^2 が出る意味

∣f′∣2|f'|^2 は正則写像 ff のヤコビ行列式であり、ff による面積の拡大率である。正則写像は等角写像なので、ラプラシアンはスカラー倍を除いて保たれる。この事実がポテンシャル問題を等角写像で解く手法の根拠になっている。

f′=0f'=0 の点

f′(z)=0f'(z)=0 となる点では Δh=0\Delta h=0 が自明に成り立つので、結論に影響しない。∣f′∣2|f'|^2 で割る操作をしていないため、場合分けは不要である。

失点しやすい点

hxxh_{xx} の展開で gsuxx+gtvxxg_su_{xx}+g_tv_{xx} の項を落とす誤りが最も多い。gsg_s は定数ではなく (x,y)(x,y) の関数なので、積の微分が二重に効く。

複素解析:正則関数と調和関数の合成の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(2026年2月実施)(全7問)

    線形代数:2次行列の対角化と冪 / 線形代数:対称行列の核・像と直交補空間 / 微分積分:連続性・偏微分可能性・全微分可能性の分離

  • 2026年度(2025年8月実施)(全7問)

    線形代数:対称行列の対角化と冪 / 線形代数:直交補空間と正規直交基底 / 微分積分:2変数関数の臨界点と極値判定

  • 2025年度(2025年2月実施)(このページ・全7問)

    線形代数:符号付き対角行列が定める線形写像と双1次形式 / 線形代数:重複固有値をもつ行列の冪 / 微分積分:一様連続の定義と距離関数への適用

  • 2025年度(2024年8月実施)(全7問)

    線形代数:固有値分解と冪の漸近方向 / 線形代数:抽象ベクトルを座標に直して調べる線形写像 / 微分積分:min と max で定めた関数の原点における微分可能性

  • 2024年度(2024年2月実施)(全7問)

    線形代数:パラメータつき行列の正則性と対角化可能性 / 線形代数:線形写像の空間と部分空間を保つ写像のなす部分空間 / 微分積分:3次多項式の極値と三角形領域上の最大最小

  • 2024年度(2023年8月実施)(全7問)

    線形代数:2次形式の対称行列表示と直交変換による標準化 / 線形代数:直交補空間の正規直交基底と鏡映変換 / 微分積分:分数項を含む2変数関数の極値

2025年度(2025年2月実施)の出題内容

全7問

この7問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問・代数1問・複素解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—線形代数:符号付き対角行列が定める線形写像と双1次形式なぜ c^2 で済むかあり
第2問線形代数重複固有値をもつ行列の冪対角化できないこと / 別の導き方あり
第3問微分積分・解析一様連続の定義と距離関数への適用各点連続との違い / 定義域が非有界であることの意味—
第4問微分積分・解析回転放物面と球面で囲まれた立体の体積—あり
第5問代数有限群の位数、巡回性、指数2の部分群有限性の前提 / 記号あり
第6問完全不連結性選び方 / 連結成分の定義の確認あり
第7問複素解析正則関数と調和関数の合成実微分との違い / 正則の範囲—

2025年度(2025年2月実施)の解説には失点しやすい点7件・検算5件・答案の書き方1件が付いています。

前年度(2025年度(2024年8月実施))との違い

大問数
2025年度(2024年8月実施) 7問 → 2025年度(2025年2月実施) 7問
2025年度(2024年8月実施)の解答例

埼玉大学の公式過去問

公開年度範囲
平成年代からの各回(直近は2024〜2026年度の8月実施・2月実施)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
英語は TOEIC・TOEIC IP のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-05
埼玉大学の公式過去問PDF