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埼玉大学 理工学研究科 数理電子情報専攻 数学プログラム 数学 2024年度(2023年8月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問の分野は線形代数2問、微分積分・解析2問、代数1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数:2次形式の対称行列表示と直交変換による標準化

方針

交差項の係数を 22 で割って左右に振り分ける。対称という条件があるので AA は一意に定まる。

検算

txAx=2x2+y2+2z2+2xy+2yz{}^{t}\bm{x}A\bm{x}=2x^2+y^2+2z^2+2xy+2yz を展開して元の FF と一致することを確かめる。xzxz の係数が 2a13=02a_{13}=0 になっている点も確認する。

失点しやすい点

交差項の係数をそのまま非対角成分に入れると AA が FF を再現しない。22 で割ることを忘れない。

設問2 直交行列 PP

方針

実対称行列は直交行列で対角化できる。固有値が相異なる場合は固有ベクトルが自動的に直交するので、正規化するだけで直交行列になり、グラム・シュミットは不要である。

検算

PP の各列の長さが 11、互いの内積が 00 であることを確かめる。また tP=P−1{}^{t}P=P^{-1} なので、APAP の第 jj 列が λj×\lambda_j\times(PP の第 jj 列)になっていることを見れば十分である。

失点しやすい点

「対角化する行列」を求めよではなく「直交行列」を求めよなので、正規化を省くと条件を満たさない。また列の順序と対角成分の順序を対応させる。

設問3 FF の標準形

符号と退化

固有値が 0,2,30,2,3 なので FF は半正定値であり、正の慣性指数 22、退化次数 11 である。XX 方向は FF の値に寄与しないので、F=0F=0 となる点全体は λ=0\lambda=0 の固有ベクトル (1,−2,1)⊤(1,-2,1)^{\top} が張る直線になる。

検算

(x,y,z)=(1,−2,1)(x,y,z)=(1,-2,1) を元の FF に代入すると 2+4+2+2⋅1⋅(−2)+2⋅(−2)⋅1=8−4−4=02+4+2+2\cdot1\cdot(-2)+2\cdot(-2)\cdot1=8-4-4=0 となり、標準形で XX 方向が消えることと合う。

失点しやすい点

変換の向きを取り違えて X=Px\bm{X}=P\bm{x} としてしまうと tPAP{}^{t}PAP ではなく PA tPPA\,{}^{t}P が現れる。直交行列だから同じ形に見えるが、対応する固有値の並びがずれる。設問文の定義をそのまま使う。

解答

係数の読み取り

txAx=∑i,jaijxixj{}^{t}\bm{x}A\bm{x}=\sum_{i,j}a_{ij}x_ix_j で AA が対称なら、xi2x_i^2 の係数が aiia_{ii}、xixjx_ix_j(i≠ji\ne j)の係数が 2aij2a_{ij} になる。 F=2x2+y2+2z2+2xy+2yzF=2x^2+y^2+2z^2+2xy+2yz では xzxz の項がないことに注意して a11=2,a22=1,a33=2,a12=22=1,a23=22=1,a13=0. a_{11}=2,\quad a_{22}=1,\quad a_{33}=2,\quad a_{12}=\frac{2}{2}=1,\quad a_{23}=\frac{2}{2}=1,\quad a_{13}=0 .

固有値

第 11 行で展開して det⁡(A−λI)=(2−λ){(1−λ)(2−λ)−1}−(2−λ)=(2−λ)(λ2−3λ)=−λ(λ−2)(λ−3). \det(A-\lambda I)=(2-\lambda)\bigl\{(1-\lambda)(2-\lambda)-1\bigr\}-(2-\lambda) =(2-\lambda)(\lambda^2-3\lambda)=-\lambda(\lambda-2)(\lambda-3). よって固有値は λ=0,2,3\lambda=0,2,3 で、すべて相異なる。

固有ベクトル

λ=0\lambda=0:2x+y=02x+y=0、y+2z=0y+2z=0 より y=−2xy=-2x、z=xz=x。(1,−2,1)⊤(1,-2,1)^{\top}。

λ=2\lambda=2:A−2I=(0101−11010)A-2I=\begin{pmatrix}0&1&0\\1&-1&1\\0&1&0\end{pmatrix} より y=0y=0、x+z=0x+z=0。(1,0,−1)⊤(1,0,-1)^{\top}。

λ=3\lambda=3:A−3I=(−1101−2101−1)A-3I=\begin{pmatrix}-1&1&0\\1&-2&1\\0&1&-1\end{pmatrix} より y=xy=x、z=yz=y。(1,1,1)⊤(1,1,1)^{\top}。

正規化

AA は実対称なので、相異なる固有値に属する固有ベクトルは自動的に直交する。実際 (1,−2,1)⋅(1,0,−1)=0(1,-2,1)\cdot(1,0,-1)=0、(1,−2,1)⋅(1,1,1)=0(1,-2,1)\cdot(1,1,1)=0、(1,0,−1)⋅(1,1,1)=0(1,0,-1)\cdot(1,1,1)=0 である。 長さは順に 6, 2, 3\sqrt6,\ \sqrt2,\ \sqrt3 だから P=(161213−2601316−1213),tPAP=(000020003). P=\begin{pmatrix} \dfrac{1}{\sqrt6}&\dfrac{1}{\sqrt2}&\dfrac{1}{\sqrt3}\\[6pt] -\dfrac{2}{\sqrt6}&0&\dfrac{1}{\sqrt3}\\[6pt] \dfrac{1}{\sqrt6}&-\dfrac{1}{\sqrt2}&\dfrac{1}{\sqrt3} \end{pmatrix}, \qquad {}^{t}PAP=\begin{pmatrix}0&0&0\\0&2&0\\0&0&3\end{pmatrix}.

変数変換の向き

(XYZ)=tP(xyz)\begin{pmatrix}X\\Y\\Z\end{pmatrix}={}^{t}P\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix} で、PP は直交行列だから tP=P−1{}^{t}P=P^{-1}、したがって (xyz)=P(XYZ)\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}=P\begin{pmatrix}X\\Y\\Z\end{pmatrix} である。

代入

X=(X,Y,Z)⊤\bm{X}=(X,Y,Z)^{\top} とおくと F=txAx=t(PX)A(PX)=tX(tPAP)X=tXdiag⁡(0,2,3)X. F={}^{t}\bm{x}A\bm{x}={}^{t}(P\bm{X})A(P\bm{X})={}^{t}\bm{X}\bigl({}^{t}PAP\bigr)\bm{X} ={}^{t}\bm{X}\operatorname{diag}(0,2,3)\bm{X}.

最終答

A=(210111012)A=\begin{pmatrix}2&1&0\\1&1&1\\0&1&2\end{pmatrix}

上の PP(列は λ=0,2,3\lambda=0,2,3 の順の単位固有ベクトル)に対し tPAP=diag⁡(0,2,3){}^{t}PAP=\operatorname{diag}(0,2,3)

F=2Y2+3Z2F=2Y^2+3Z^2(XX の項は現れない)

第2問 — 線形代数:直交補空間の正規直交基底と鏡映変換

方針

WW の基底を 22 本取ってグラム・シュミットしてもよいが、33 次元では外積を使うと 22 本目が一発で出る。n×u1\bm{n}\times\bm{u}_1 は n\bm{n} とも u1\bm{u}_1 とも直交するので、自動的に WW の中で a1\bm{a}_1 と直交する。

検算

a2\bm{a}_2 が WW に属すること:−3−3+3⋅2=0-3-3+3\cdot2=0。a1\bm{a}_1 と直交すること:−3+3+0=0-3+3+0=0。長さ:9+9+4=229+9+4=22。すべて確認できる。

失点しやすい点

「正規直交基底」なので、直交させるだけでなく長さを 11 にする。また本数は dim⁡W=2\dim W=2 本である。

設問2 鏡映変換の表現行列

検算

法線は反転するはずである。 Rn=111(9−2−18, 2−9+18, −6−6−21)⊤=111(−11,11,−33)⊤=(−1,1,−3)⊤=−nR\bm{n}=\frac1{11}(9-2-18,\ 2-9+18,\ -6-6-21)^{\top}=\frac1{11}(-11,11,-33)^{\top}=(-1,1,-3)^{\top}=-\bm{n}。 WW の元は不変のはずである。R(1,1,0)⊤=111(9+2, 2+9, −6+6)⊤=(1,1,0)⊤R(1,1,0)^{\top}=\frac1{11}(9+2,\ 2+9,\ -6+6)^{\top}=(1,1,0)^{\top}。 どちらも期待どおりである。

行列の性質

RR は対称かつ直交で R2=IR^2=I、det⁡R=−1\det R=-1、固有値は 1,1,−11,1,-1 である。鏡映はこれらの性質で特徴づけられる。tr⁡R=9+9−711=1\operatorname{tr}R=\frac{9+9-7}{11}=1 で、固有値の和 1+1−1=11+1-1=1 と一致する。

別解

(1)の正規直交基底 a1,a2\bm{a}_1,\bm{a}_2 と a3=n/11\bm{a}_3=\bm{n}/\sqrt{11} を並べた直交行列 QQ を作り、 R=Qdiag⁡(1,1,−1) tQR=Q\operatorname{diag}(1,1,-1)\,{}^{t}Q としても同じ行列が得られる。射影を使う方が計算量は少ない。

失点しやすい点

「WW に関する鏡映」は WW を鏡とする変換であって、WW の元を反転させるのではない。反転するのは法線方向である。符号を取り違えると −R-R になる。

線形代数:直交補空間の正規直交基底と鏡映変換の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 微分積分:分数項を含む2変数関数の極値

方針

分数を含むので、まず分母を払って多項式の関係に直す。x≠0x\ne0、y≠0y\ne0 が定義域の条件なので、x2x^2 や y2y^2 を掛ける操作で解が増えることはない。

検算

(1,2)(1,2):fx=−4+2⋅1⋅2=0f_x=-4+2\cdot1\cdot2=0、fy=−4/4+1=0f_y=-4/4+1=0。 (−1,−2)(-1,-2):fx=−4/1+2(−1)(−2)=−4+4=0f_x=-4/1+2(-1)(-2)=-4+4=0、fy=−4/4+1=0f_y=-4/4+1=0。どちらも満たす。

対称性

f(−x,−y)=−4/x−4/y−x2y=−f(x,y)f(-x,-y)=-4/x-4/y-x^2y=-f(x,y) である。ff は原点対称な符号反転をもつので、臨界点も (x,y)↦(−x,−y)(x,y)\mapsto(-x,-y) で対応し、極大と極小が入れ替わる。

失点しやすい点

(xy)2=4(xy)^2=4 から xy=2xy=2 だけを取ると場合分けが不完全になる。xy=−2xy=-2 を検討し、実数解がないことを示す。

設問2 極値

極大値が極小値より小さいこと

極大値 −8-8 は極小値 88 より小さい。定義域が x≠0x\ne0、y≠0y\ne0 で 44 つの連結成分に分かれており、(1,2)(1,2) と (−1,−2)(-1,-2) は別の成分に属するため、この現象は矛盾しない。極値は局所的な性質である。

検算

(1,2)(1,2) の近くで f(1.1,2)=3.636+2+2.42=8.06f(1.1,2)=3.636+2+2.42=8.06、f(0.9,2)=4.444+2+1.62=8.06f(0.9,2)=4.444+2+1.62=8.06 となり、88 より大きい。極小と整合する。

別解

相加・相乗平均でも下からの評価が得られる。x,y>0x,y>0 の領域では 4x+4y+x2y=2x+2x+4y+x2y ≥ 42x⋅2x⋅4y⋅x2y4=4164=8\dfrac4x+\dfrac4y+x^2y=\dfrac2x+\dfrac2x+\dfrac4y+x^2y\ \ge\ 4\sqrt[4]{\dfrac2x\cdot\dfrac2x\cdot\dfrac4y\cdot x^2y}=4\sqrt[4]{16}=8 で、等号は 2x=4y=x2y\dfrac2x=\dfrac4y=x^2y、すなわち (x,y)=(1,2)(x,y)=(1,2) のときに成り立つ。第 11 象限では 88 が最小値である。

失点しやすい点

fxxf_{xx} の 8/x38/x^3 は x=−1x=-1 で −8-8 になる。33 乗なので符号が反転することを見落とすと、(−1,−2)(-1,-2) を極小と誤判定する。

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第4問 — 微分積分:ヤングの不等式の面積による証明と応用

方針

ex−1e^x-1 は [0,∞)[0,\infty) で狭義単調増加かつ [0,∞)[0,\infty) への全射だから逆関数が存在する。定義域と値域を書き添えると(2)の図示で使える。

2つの曲線の関係

s=et−1s=e^{t}-1 と t=log⁡(s+1)t=\log(s+1) は stst 平面で同じ曲線を表す。(2)ではこの曲線が積分領域の境界になる。

失点しやすい点

log⁡\log の中を yy とせず y+1y+1 とする。y=0y=0 のとき x=0x=0 になることで確認できる。

設問2 積分不等式

図の読み方

長方形 RR を曲線 s=et−1s=e^{t}-1 で切ると、曲線の左側の部分は AA に、右側の部分は BB に含まれる。AA と BB はそれぞれ長方形からはみ出す部分をもつので、和は RR より真に大きくなり得る。

等号の条件

A∪BA\cup B が RR に一致し、かつ A∩BA\cap B 上で gg の積分が 00 になるとき等号が成り立つ。曲線が長方形の対角の頂点 (y,x)(y,x) を通るとき、すなわち y=ex−1y=e^{x}-1 のときである。

背景

g≡1g\equiv1 とすると xy≤∫0x(et−1)dt+∫0ylog⁡(s+1)dsxy\le\int_0^x(e^t-1)dt+\int_0^y\log(s+1)ds となり、ヤングの不等式そのものになる。一般の増加関数 φ\varphi とその逆関数 φ−1\varphi^{-1} について同じ形が成り立つ。

失点しやすい点

g≥0g\ge0 を使う箇所を明示する。符号が変わる関数では領域を広げても積分が増えるとは限らない。

設問3 具体的な不等式

gg の見つけ方

右辺の被積分関数を(2)の形と見比べる。右辺第 11 項の et−1+cos⁡(et−1+t)e^{t}-1+\cos(e^{t}-1+t) は、上端 u=et−1u=e^{t}-1 を使って u+cos⁡(u+t)u+\cos(u+t) と書ける。∂∂u{u+cos⁡(u+t)}=1−sin⁡(u+t)\dfrac{\partial}{\partial u}\{u+\cos(u+t)\}=1-\sin(u+t) だから、g(s,t)=1−sin⁡(s+t)g(s,t)=1-\sin(s+t) が候補になる。積分定数のずれ −cos⁡t-\cos t、−cos⁡s-\cos s は最後に sin⁡x\sin x、sin⁡y\sin y として両辺から消える。

g≥0g\ge0 の確認

(2)を使うには非負性が必須である。1−sin⁡(s+t)≥01-\sin(s+t)\ge0 は sin⁡≤1\sin\le1 から従う。1+cos⁡1+\cos や 1−cos⁡1-\cos でも非負だが、それでは右辺の形が合わない。

検算

x=y=0x=y=0 とすると両辺とも 00 で等号が成り立つ。x=yx=y が小さいときは左辺 ≈x2+2x\approx x^2+2x、右辺 ≈∫0x(t+1)dt×2≈x2+2x\approx\int_0^x(t+1)dt\times2\approx x^2+2x で、両辺の主要項が一致する。

失点しやすい点

−cos⁡t-\cos t、−cos⁡s-\cos s の項を落とすと不等式が閉じない。内側の積分を下端 00 まできちんと評価する。

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第5問 — 代数:x^2-c が生成するイデアルの素性

真のイデアルであること

J≠R[x]J\ne R[x] の条件を落とすと R[x]R[x] 自身が素イデアルになってしまう。剰余環 R[x]/JR[x]/J が整域であることと素イデアルであることが同値、という言い換えでもよい(J≠R[x]J\ne R[x] は剰余環が零環でないことに対応する)。

失点しやすい点

22 つ目の条件だけ書いて J≠R[x]J\ne R[x] を落とす答案が多い。定義を問う設問なので両方を明記する。

極大イデアルとの関係

極大イデアルは必ず素イデアルだが逆は成り立たない。R=ZR=\mathbb{Z}、I=(x2−2)I=(x^2-2) は素だが極大でなく、Z[x]/I≅Z[2]\mathbb{Z}[x]/I\cong\mathbb{Z}[\sqrt2] は整域だが体でない。設問4で示すのは素性までである。

設問2 c=d2c=d^2 のとき II が素でないこと

方針

素でないことを示すには定義の 22 つ目の条件を破る具体例を作る。x2−cx^2-c が RR の中で因数分解できるときが最も分かりやすい。

次数の議論が必要な理由

「x−dx-d は ff で割り切れない」ことを次数で押さえる。RR が整域でないと deg⁡(fq)\deg(fq) が下がり得るので、この議論は整域の仮定に依存している。

失点しやすい点

I≠R[x]I\ne R[x] も確認しておくとよい。deg⁡f=2\deg f=2 なので 1∉I1\notin I であり、真のイデアルである。

設問3 積の余り

方針

ff はモニックなので RR が体でなくても割り算ができ、余りは次数 11 以下で一意である。x2≡c(modI)x^2\equiv c\pmod{I} という関係だけ使えばよい。

検算

a1=a2=0a_1=a_2=0 とすると余りは b1b2b_1b_2 で、定数同士の積として正しい。b1=b2=0b_1=b_2=0 とすると a1a2ca_1a_2c で、a1x⋅a2x=a1a2x2≡a1a2ca_1x\cdot a_2x=a_1a_2x^2\equiv a_1a_2c と合う。

失点しやすい点

x2x^2 を cc に置き換える操作を忘れると次数 22 のまま残り、余りにならない。

設問4 II が素イデアルであること

方針

剰余環 R[x]/IR[x]/I の元を ax+ba x+b の形で表し、積の公式(設問3)を使って「積が 00 なら一方が 00」を示す、という流れである。仮定「a2c−b2=0⇒a=b=0a^2c-b^2=0\Rightarrow a=b=0」は、cc が RR の商体で平方数にならないことを意味している。

設問2との関係

c=d2c=d^2 のときは a=1a=1、b=db=d が a2c−b2=d2−d2=0a^2c-b^2=d^2-d^2=0 を満たすので、設問4の仮定が破れる。22 つの設問はちょうど裏表になっている。

具体例

R=ZR=\mathbb{Z}、c=2c=2 とすると a2⋅2=b2a^2\cdot2=b^2 を満たす整数は a=b=0a=b=0 のみ(2\sqrt2 が無理数だから)。したがって (x2−2)(x^2-2) は Z[x]\mathbb{Z}[x] の素イデアルで、Z[x]/(x2−2)≅Z[2]\mathbb{Z}[x]/(x^2-2)\cong\mathbb{Z}[\sqrt2] が整域であることに対応する。

失点しやすい点

a22(b12−a12c)=0a_2^2(b_1^2-a_1^2c)=0 から a2=0a_2=0 の枝を落とさない。整域なので積が 00 なら因子のどちらかが 00 であり、両方の場合を追う必要がある。

代数:x^2-c が生成するイデアルの素性の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 位相:下限位相と連続性の判定

方針

半直線は「上端 aa」だけで決まるので、共通部分は min⁡\min、和集合は sup⁡\sup に対応する。min⁡\min は有限個でしか保証されないが、sup⁡\sup は任意個で取れる。この非対称性が、共通部分が有限個に限られる公理と一致している。

無限個の共通部分が閉じない例

Un=(−∞,1/n)U_n=(-\infty,1/n) とすると ⋂nUn=(−∞,0]\bigcap_n U_n=(-\infty,0] となり、これは O\mathcal{O} に属さない。公理が有限個の共通部分しか要求しない理由がここに現れる。

失点しやすい点

和集合で sup⁡\sup が達成される場合と達成されない場合を分けて書く必要はないが、(−∞,A)(-\infty,A) になること(AA 自身は入らないこと)は確認する。

設問2 ff の連続性

通常の位相との違い

YY を通常の位相をもつ R\mathbb{R} とすると、ff は x=0x=0 と x=1x=1 で不連続である。たとえば f−1((1.5,2.5))={0}f^{-1}\bigl((1.5,2.5)\bigr)=\{0\} は開でない。O\mathcal{O} は通常の位相より粗いので開集合が少なく、逆像として要求される条件が弱まり、連続になる。

なぜ上向きの跳びだけが問題にならないか

O\mathcal{O} の開集合は (−∞,a)(-\infty,a) の形なので、逆像は「ff の値が小さい部分」である。ff が下から近づく側でだけ滑らかであればよく、上向きの跳び(x=0x=0 で値が 22 に跳ね上がる)は {f<a}\{f<a\} を閉じさせない。実際 x=0x=0 は {f<a}\{f<a\} から除かれるだけで、残りは開集合になる。

一般論

この位相は下限位相(左半直線位相)と呼ばれ、f:E→Yf:E\to Y が連続であることは ff が上半連続であることと同値である。本問の ff は各点で上半連続になっている。

失点しやすい点

aa の場合分けで境界の等号(a≤1a\le1 か a<1a<1 か)を丁寧に扱う。a=1a=1 のとき f(x)<1f(x)<1 は f(x)=0f(x)=0 と同値である。

位相:下限位相と連続性の判定の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 複素解析:ガウス積分のフーリエ変換

方針

(x+iξ)2(x+i\xi)^2 を展開して、xx を含む部分と含まない部分に分けるだけである。FF の定義に現れる e−ixξe^{-ix\xi} の形に合わせるために、−2iξx=−ix(2ξ)-2i\xi x=-ix(2\xi) と読み替えるのが要点である。

収束の確認

∣e−(x+iξ)2∣=e−x2+ξ2|e^{-(x+i\xi)^2}|=e^{-x^2+\xi^2} で、ξ\xi を固定すれば xx について急速に減衰するから積分は絶対収束する。

失点しやすい点

(iξ)2=−ξ2(i\xi)^2=-\xi^2 なので、−(x+iξ)2-(x+i\xi)^2 の定数項は +ξ2+\xi^2 になる。符号を間違えると(4)の答えの指数が逆になる。

設問2 縦辺の積分の極限

方針

複素数の絶対値は指数の実部だけで決まる。−R2+t2-R^2+t^2 の −R2-R^2 が R→±∞R\to\pm\infty で支配するので、tt の寄与は有界な定数にとどまる。

RR の符号によらない理由

RR は 22 乗の形でしか現れないので、R→+∞R\to+\infty と R→−∞R\to-\infty で同じ評価が使える。22 つの極限を別々に計算し直す必要はない。

失点しやすい点

∣ez∣=eRe⁡z|e^{z}|=e^{\operatorname{Re}z} を使う。∣e−(R+it)2∣=e−∣R+it∣2|e^{-(R+it)^2}|=e^{-|R+it|^2} としないこと。

設問3 F(0)=πF(0)=\sqrt{\pi}

方針

e−x2e^{-x^2} の原始関数は初等関数で書けないので、11 変数のままでは計算できない。22 乗して重積分にし、極座標で r drr\,dr が e−r2e^{-r^2} の微分に対応することを使うのが標準の手法である。

符号の確定

I2=πI^2=\pi からは I=±πI=\pm\sqrt{\pi} の 22 通りが出る。被積分関数が正であることから正の側を選ぶ、という一行を必ず書く。

失点しやすい点

F(0)F(0) は定義に ξ=0\xi=0 を代入したもので e−ix⋅0=1e^{-ix\cdot0}=1 になる。この確認を省かない。

設問4 F(ξ)F(\xi)

方針

平方完成すると積分路が実軸から Im⁡z=ξ/2\operatorname{Im}z=\xi/2 の水平線へずれる。e−z2e^{-z^2} が整関数で、縦辺の寄与が消えるので、積分路を実軸へ戻してよい。これが「積分路のずらし」の典型である。

検算

ξ=0\xi=0 とすると F(0)=πF(0)=\sqrt{\pi} で設問3と一致する。また F(ξ)F(\xi) は再びガウス型で、e−x2e^{-x^2} のフーリエ変換が自分自身と同じ形になるというよく知られた性質を表している。

設問1の役割

設問1は (∗)(\ast) の右辺の積分が eξ2/4F(ξ)e^{\xi^2/4}F(\xi) に等しいことを示している。設問4はこれを別経路(周回積分)で π\sqrt{\pi} と評価し、両者を突き合わせて F(ξ)F(\xi) を確定させる構成になっている。

失点しやすい点

長方形の 44 辺の向き(周回の向き)を揃えないと符号が合わない。上辺は R+iηR+i\eta から −R+iη-R+i\eta へ向かうので、xx の増加方向に直すとマイナスが付く。

複素解析:ガウス積分のフーリエ変換の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(2026年2月実施)(全7問)

    線形代数:2次行列の対角化と冪 / 線形代数:対称行列の核・像と直交補空間 / 微分積分:連続性・偏微分可能性・全微分可能性の分離

  • 2026年度(2025年8月実施)(全7問)

    線形代数:対称行列の対角化と冪 / 線形代数:直交補空間と正規直交基底 / 微分積分:2変数関数の臨界点と極値判定

  • 2025年度(2025年2月実施)(全7問)

    線形代数:符号付き対角行列が定める線形写像と双1次形式 / 線形代数:重複固有値をもつ行列の冪 / 微分積分:一様連続の定義と距離関数への適用

  • 2025年度(2024年8月実施)(全7問)

    線形代数:固有値分解と冪の漸近方向 / 線形代数:抽象ベクトルを座標に直して調べる線形写像 / 微分積分:min と max で定めた関数の原点における微分可能性

  • 2024年度(2024年2月実施)(全7問)

    線形代数:パラメータつき行列の正則性と対角化可能性 / 線形代数:線形写像の空間と部分空間を保つ写像のなす部分空間 / 微分積分:3次多項式の極値と三角形領域上の最大最小

  • 2024年度(2023年8月実施)(このページ・全7問)

    線形代数:2次形式の対称行列表示と直交変換による標準化 / 線形代数:直交補空間の正規直交基底と鏡映変換 / 微分積分:分数項を含む2変数関数の極値

2024年度(2023年8月実施)の出題内容

全7問

この7問の分野は線形代数2問・微分積分・解析2問・代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数2次形式の対称行列表示と直交変換による標準化符号と退化あり
第2問線形代数直交補空間の正規直交基底と鏡映変換行列の性質あり
第3問微分積分・解析分数項を含む2変数関数の極値対称性 / 極大値が極小値より小さいことあり
第4問微分積分・解析ヤングの不等式の面積による証明と応用2つの曲線の関係 / 図の読み方あり
第5問代数x^2-c が生成するイデアルの素性真のイデアルであること / 極大イデアルとの関係あり
第6問下限位相と連続性の判定無限個の共通部分が閉じない例 / 通常の位相との違いあり
第7問—複素解析:ガウス積分のフーリエ変換収束の確認 / R の符号によらない理由あり

2024年度(2023年8月実施)の解説には失点しやすい点7件・検算6件が付いています。

埼玉大学の公式過去問

公開年度範囲
平成年代からの各回(直近は2024〜2026年度の8月実施・2月実施)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
英語は TOEIC・TOEIC IP のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-05
埼玉大学の公式過去問PDF