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神戸大 理学研究科 物理学専攻 物理 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問の分野は電磁気学・回路2問、熱・統計力学1問、量子力学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 解析力学:最小作用の原理とばねでつながれた質点

q¨\ddot q を含まないこと

ニュートンの運動方程式が 22 階なので、LL が qq と q˙\dot q までを含めば運動が決まる。q¨\ddot q を変数に入れる必要はない。

tt を書く意味

問 33 で「LL が tt をあらわに含まない場合」を扱うので、一般には tt を含みうることをここで明示しておく。

失点しやすい点

tt を落として L(q,q˙)L(q,\dot q) とだけ書かない。問 33 の前提が意味を失う。

設問2 最小作用の原理からの運動方程式

端点条件の役割

部分積分で出る境界項を消すために、端点での変分を 00 とする。これは「t1t_1 と t2t_2 に q1q_1 と q2q_2 にいた」という設問の設定そのものである。

変分法の基本補題

連続関数 f(t)f(t) が任意の δq(t)\delta q(t) に対して ∫fδq dt=0\int f\delta q\,dt=0 を満たすなら f≡0f\equiv0 である。この一言を添えると論理が閉じる。

失点しやすい点

部分積分を経ずに「被積分関数を 00 とおく」と書くと、δq\delta q と δq˙\delta\dot q が独立でないことを見落としたことになる。

設問3 保存量の存在

hh の正体

束縛が時間に依存せず TT が q˙\dot q の 22 次形式なら、q˙∂T∂q˙=2T\dot q\dfrac{\partial T}{\partial\dot q}=2T となるので h=2T−(T−V)=T+Vh=2T-(T-V)=T+V、すなわち力学的エネルギーそのものである。

対称性と保存則

時間並進対称性(LL が tt を含まない)がエネルギー保存を生む。ネーターの定理の最も基本的な例である。

失点しやすい点

「LL が tt を含まないから LL が保存する」とはならない。保存するのは hh であって LL ではない。

設問4 ばねでつながれた質点

d0<dd_0<d が効くところ

x=0x=0 でばねは自然長より d−d0d-d_0 だけ伸びている。この張力のレール方向成分が復元力を生む。もし d0>dd_0>d なら括弧の中が負になり x=0x=0 は不安定な釣り合いになる(両側に 22 つの安定点ができる)。設問が d0<dd_0<d を指定しているのはこのためである。

検算

d0→0d_0\to0(自然長 00 のばね)では ω→k/m\omega\to\sqrt{k/m} となり、xx に比例した復元力そのものになる。d0→dd_0\to d では ω→0\omega\to0 で、復元力が消える。どちらも直感と合う。

別解

ポテンシャルを xx の 22 次まで展開しても同じ結果が出る。 V(x)≃k2(d−d0)2+k2(1−d0d)x2V(x)\simeq\frac k2(d-d_0)^2+\frac k2\left(1-\frac{d_0}{d}\right)x^2 で、x2x^2 の係数の 22 倍が実効ばね定数である。

失点しやすい点

ばねの長さを xx そのものや dd 一定としない。斜めに張られたばねの伸びは x2+d2−d0\sqrt{x^2+d^2}-d_0 である。

解答

定義

ラグランジアンは運動エネルギーと位置エネルギーの差 L=T−VL=T-V である。 TT は一般速度 q˙\dot q(および一般に qq)を通じて、VV は一般座標 qq を通じて決まり、さらに束縛や外場が時間に依存する場合は tt にも陽に依存しうる。したがって L=L(q(t), q˙(t), t) L=L\bigl(q(t),\ \dot q(t),\ t\bigr) すなわち一般座標 qq、一般速度 q˙\dot q、時刻 tt を変数にもつ関数である。

変分

端点を固定した微小変化 q(t)→q(t)+δq(t)q(t)\to q(t)+\delta q(t)(δq(t1)=δq(t2)=0\delta q(t_1)=\delta q(t_2)=0)を考える。作用の変化は δS=∫t1t2(∂L∂qδq+∂L∂q˙δq˙)dt. \delta S=\int_{t_1}^{t_2}\left(\frac{\partial L}{\partial q}\delta q+\frac{\partial L}{\partial\dot q}\delta\dot q\right)dt .

部分積分

δq˙=ddtδq\delta\dot q=\dfrac{d}{dt}\delta q だから第 22 項を部分積分して ∫t1t2∂L∂q˙ddtδq dt=[∂L∂q˙δq]t1t2−∫t1t2ddt(∂L∂q˙)δq dt. \int_{t_1}^{t_2}\frac{\partial L}{\partial\dot q}\frac{d}{dt}\delta q\,dt =\left[\frac{\partial L}{\partial\dot q}\delta q\right]_{t_1}^{t_2} -\int_{t_1}^{t_2}\frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial\dot q}\right)\delta q\,dt . 端点で δq=0\delta q=0 なので第 11 項は消える。よって δS=∫t1t2[∂L∂q−ddt(∂L∂q˙)]δq dt. \delta S=\int_{t_1}^{t_2}\left[\frac{\partial L}{\partial q}-\frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial\dot q}\right)\right]\delta q\,dt .

停留条件

任意の δq\delta q に対して δS=0\delta S=0 となるためには、括弧の中が恒等的に 00 でなければならない(変分法の基本補題)。 ddt(∂L∂q˙)−∂L∂q=0. \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial\dot q}\right)-\frac{\partial L}{\partial q}=0 .

エネルギー関数

h≡q˙∂L∂q˙−L h\equiv\dot q\frac{\partial L}{\partial\dot q}-L とおく。

時間微分

dhdt=q¨∂L∂q˙+q˙ddt(∂L∂q˙)−(∂L∂qq˙+∂L∂q˙q¨+∂L∂t). \frac{dh}{dt}=\ddot q\frac{\partial L}{\partial\dot q}+\dot q\frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial\dot q}\right) -\left(\frac{\partial L}{\partial q}\dot q+\frac{\partial L}{\partial\dot q}\ddot q+\frac{\partial L}{\partial t}\right). q¨\ddot q の項が相殺し dhdt=q˙[ddt(∂L∂q˙)−∂L∂q]−∂L∂t. \frac{dh}{dt}=\dot q\left[\frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial\dot q}\right)-\frac{\partial L}{\partial q}\right]-\frac{\partial L}{\partial t}.

結論

角括弧の中は設問 22 のオイラー・ラグランジュ方程式より 00 である。さらに LL が tt をあらわに含まなければ ∂L∂t=0\dfrac{\partial L}{\partial t}=0 だから dhdt=0, \frac{dh}{dt}=0 , すなわち h=q˙∂L∂q˙−Lh=\dot q\dfrac{\partial L}{\partial\dot q}-L は保存量である。

ばねの長さ

質点はレール上の位置 xx にあり、固定点はレールから距離 dd の位置にある。x=0x=0 でばねの長さが dd になるので、固定点は x=0x=0 の真上(レールに垂直な方向に dd)にある。したがってばねの長さは ℓ(x)=x2+d2. \ell(x)=\sqrt{x^2+d^2}.

ポテンシャルと運動方程式

自然長 d0d_0 のばねの弾性エネルギーは V(x)=k2(x2+d2−d0)2. V(x)=\frac k2\bigl(\sqrt{x^2+d^2}-d_0\bigr)^2 . レールはなめらかなので L=12mx˙2−V(x)L=\dfrac12m\dot x^2-V(x) であり mx¨=−dVdx=−k(x2+d2−d0)⋅xx2+d2=−kx(1−d0x2+d2). m\ddot x=-\frac{dV}{dx}=-k\bigl(\sqrt{x^2+d^2}-d_0\bigr)\cdot\frac{x}{\sqrt{x^2+d^2}} =-kx\left(1-\frac{d_0}{\sqrt{x^2+d^2}}\right).

微小振動

x≪dx\ll d では x2+d2=d1+x2/d2≃d\sqrt{x^2+d^2}=d\sqrt{1+x^2/d^2}\simeq d だから mx¨≃−k(1−d0d)x. m\ddot x\simeq-k\left(1-\frac{d_0}{d}\right)x . d0<dd_0<d より係数は正で、単振動になる。角振動数は ω=km(1−d0d)=k(d−d0)md. \omega=\sqrt{\frac{k}{m}\left(1-\frac{d_0}{d}\right)}=\sqrt{\frac{k(d-d_0)}{md}} .

最終答

一般座標 qq、一般速度 q˙\dot q、時刻 tt の関数 L(q,q˙,t)L(q,\dot q,t)

ddt(∂L∂q˙)−∂L∂q=0\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{\partial L}{\partial\dot q}\right)-\dfrac{\partial L}{\partial q}=0(オイラー・ラグランジュ方程式)

mx¨=−kx(1−d0x2+d2)m\ddot x=-kx\left(1-\dfrac{d_0}{\sqrt{x^{2}+d^{2}}}\right)、ω=k(d−d0)md\omega=\sqrt{\dfrac{k(d-d_0)}{md}}

第2問 — 電磁気学:誘電体を挟んだ同軸円筒コンデンサー

D\bm D を使う利点

D\bm D のガウスの法則には自由電荷だけが現れ、分極電荷を数えなくてよい。誘電体が入る問題では D\bm D から始めるのが定石である。

QQ が単位長さあたりであること

設問文の QQ は単位長さあたりの電荷なので、長さ 11 の円筒を取れば内部の電荷はちょうど QQ になる。

失点しやすい点

球ではなく円筒なのでガウス面の側面積は 2πr×(長さ)2\pi r\times(\text{長さ}) である。4πr24\pi r^2 としない。

設問2 内側円筒の電位と静電容量

グラフで押さえる点

r<ar<a が水平(導体内は等電位)、a<r<ba<r<b が ln⁡(b/r)\ln(b/r) に従う減少、r=br=b で 00。r=ar=a で連続、r=br=b で 00 に達する。

失点しやすい点

円筒では電位が 1/r1/r ではなく対数になる。電場が 1/r1/r なのでその積分が ln⁡\ln になる。

単位長さあたりで考える意味

円筒が十分に長く端の効果を無視できるので、系は軸方向に一様である。長さ 11 の切片だけを考えれば全体が分かり、電荷も静電容量も単位長さあたりで表せる。

設問3 2層誘電体中の電場

境界での跳び

D\bm D の法線成分は連続だが、E\bm E の法線成分は ε\varepsilon に反比例して跳ぶ。比誘電率が 2εr→εr2\varepsilon_r\to\varepsilon_r と半分になるので、EE は r=cr=c で 22 倍になる。

グラフの形

どちらの領域でも 1/r1/r に比例して減るが、r=cr=c で不連続に跳ね上がる。この段差が問 55 の分極電荷に対応する。

失点しやすい点

DD が領域で変わると誤解しない。自由電荷が境界にないので DD は連続である。

設問4 静電容量

直列接続としての見方

22 層の誘電体は 22 つのコンデンサーの直列接続とみなせる。 C1=4πε0εrln⁡(c/a)C_1=\dfrac{4\pi\varepsilon_0\varepsilon_r}{\ln(c/a)}、C2=2πε0εrln⁡(b/c)C_2=\dfrac{2\pi\varepsilon_0\varepsilon_r}{\ln(b/c)} とすると 1C=1C1+1C2\dfrac1C=\dfrac1{C_1}+\dfrac1{C_2} となり、上の式に一致する。

検算

c→ac\to a とすると ln⁡(c/a)→0\ln(c/a)\to0 で C→2πε0εrln⁡(b/a)C\to\dfrac{2\pi\varepsilon_0\varepsilon_r}{\ln(b/a)}、すなわち問 22 の結果に戻る。 c→bc\to b とすると C→4πε0εrln⁡(b/a)C\to\dfrac{4\pi\varepsilon_0\varepsilon_r}{\ln(b/a)} で、全体が比誘電率 2εr2\varepsilon_r の場合になる。

失点しやすい点

22 つの積分の係数が異なる(4π4\pi と 2π2\pi)ので、通分してからまとめる。

設問5 境界の分極電荷

検算:εr=1\varepsilon_r=1 の場合

外側が真空、内側が比誘電率 22 になる。P外=0P_{\text{外}}=0、P内=Q4πcP_{\text{内}}=\dfrac{Q}{4\pi c} だから Qp=Q2Q_p=\dfrac Q2 で、公式の Q2⋅1\dfrac{Q}{2\cdot1} と一致する。

符号の意味

Q>0Q>0 なら Qp>0Q_p>0 である。内側の誘電体のほうが分極が強く、その外表面に正の束縛電荷が余る。この正電荷が r=cr=c の外側で電場を強める向きにはたらき、問 33 で EE が 22 倍に跳ぶことと整合する。

別解

D\bm D と E\bm E の跳びから直接求めてもよい。σp=−ε0(E外−E内)⋅(−1)\sigma_p=-\varepsilon_0\bigl(E_{\text{外}}-E_{\text{内}}\bigr)\cdot(-1) のように書けるが、符号の扱いが紛れやすいので P\bm P の差で計算するほうが安全である。実際 ε0(E外−E内)=ε0Q4πε0εrc=Q4πεrc\varepsilon_0(E_{\text{外}}-E_{\text{内}})=\varepsilon_0\dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0\varepsilon_rc}=\dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_rc} で σp\sigma_p に一致する。

失点しやすい点

P\bm P の定義で (ε−1)(\varepsilon-1) の −1-1 を落とさない。真空(ε=1\varepsilon=1)では分極が 00 になる。

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第3問 — 実験物理:ノギスの読み取りと振り子による重力加速度の測定

副尺の原理

主尺と副尺の 11 目盛の差が最小読取値になる。本問では主尺 22 目盛(2 mm2\,\mathrm{mm})と副尺 11 目盛(1.95 mm1.95\,\mathrm{mm})の差が 0.05 mm0.05\,\mathrm{mm} である。

別の数え方

副尺 00 は主尺の 2828 と 2929 の間にあり、第 55 目盛が一致しているので 28+5×0.05=28.25 mm28+5\times0.05=28.25\,\mathrm{mm} としてもよい。同じ値になる。

失点しやすい点

ラベル 2.52.5 を「第 2.52.5 目盛」と読まない。2020 等分に 00〜1010 のラベルなので、ラベルの 22 倍が目盛番号である。

設問2 周期の最確値と誤差

n−1n-1 で割る理由

平均値を 11 つデータから決めたので自由度が 11 減る。44 個のデータなら 33 で割る。

標準偏差と標準誤差の区別

s≃0.037s\simeq0.037 は 11 回の測定のばらつき、ΔTA≃0.018\Delta T_{\mathrm A}\simeq0.018 は平均値の不確かさである。設問は「最確値の誤差」を問うているので後者を答える。

失点しやすい点

4\sqrt4 で割る操作を忘れない。また「工夫」は理由(一定の押し誤差が nn で割られる)まで書く。

設問3 gg の誤差

べき指数が係数になること

g∝L1T−2g\propto L^1T^{-2} なので、相対誤差には LL の指数 11 と TT の指数 −2-2 の絶対値がそのまま掛かる。TT の項に 22 が付くのはこのためである。

どちらが効くか

本問の数値では ΔTA/TA≃0.018/2.10≃0.86%\Delta T_{\mathrm A}/T_{\mathrm A}\simeq0.018/2.10\simeq0.86\% で、22 倍して 1.7%1.7\% になる。長さの相対誤差がこれより小さければ、周期の測定精度が全体を決める。

失点しやすい点

ΔL/L\Delta L/L と ΔT/T\Delta T/T を単純に足さない。独立な誤差は二乗和の平方根で合成する。

設問4 加重平均

重みの意味

誤差の小さい測定ほど信頼できるので重く扱う。Δg\Delta g が半分なら重みは 44 倍になる。

誤差が単独の測定より小さくなること

Δg′≃0.019\Delta g'\simeq0.019 は最も精度のよい単独測定 0.030.03 より小さい。独立な測定を合わせると精度が上がるという当然の性質を示している。

ばらつきとの整合

44 つの値のばらつき(最大 9.829.82、最小 9.769.76)は、それぞれの誤差 0.030.03〜0.060.06 とおおむね整合する。9.769.76 は g′g' から 2.5σ2.5\sigma 程度離れているが、44 点あることを考えれば異常とまでは言えない。

失点しやすい点

重みを 1/Δgi1/\Delta g_i(11 乗)としない。1/(Δgi)21/(\Delta g_i)^2 である。

設問5 剛体振り子としての補正

補正の大きさ

R≪LR\ll L なら補正項 25(R/L)2\dfrac25(R/L)^2 は小さい。本問の数値でおもりの直径が 28.25 mm28.25\,\mathrm{mm}(R≃14 mmR\simeq14\,\mathrm{mm})、T≃2.1 sT\simeq2.1\,\mathrm{s} から L≃1.1 mL\simeq1.1\,\mathrm{m} とすると 25(R/L)2≃25(0.013)2≃6.6×10−5\dfrac25(R/L)^2\simeq\dfrac25(0.013)^2\simeq6.6\times10^{-5} で、周期への影響は 3×10−53\times10^{-5} 程度、gg には 7×10−57\times10^{-5} 程度しか効かない。問 44 の測定精度 0.019/9.81≃2×10−30.019/9.81\simeq2\times10^{-3} よりずっと小さいので、この実験では単振り子近似で十分である。

単振り子との比較

R→0R\to0 とすれば T=2πL/gT=2\pi\sqrt{L/g} に戻る。設問文の「R≪hR\ll h であれば単振り子とみなせる」という記述と整合する。

針金の質量

針金の質量を無視しているので、慣性モーメントには球の寄与だけを入れる。針金に質量があれば 13m針金h2\frac13m_{\text{針金}}h^2 の項が加わる。

失点しやすい点

平行軸の定理を使うとき、移す距離は L=h+RL=h+R(支点から重心まで)であって hh ではない。

実験物理:ノギスの読み取りと振り子による重力加速度の測定の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 量子力学:ガウス型波束の期待値と位相速度・群速度

eikxe^{ikx} が効かないこと

規格化は ∣ψ∣2|\psi|^2 で決まるので、実数の指数部分だけが残る。kk は AA に影響しない。

位置の広がり

∣ψ∣2∝e−(x−q)2/d2|\psi|^2\propto e^{-(x-q)^2/d^2} はガウス分布で、標準偏差は d/2d/\sqrt2 である。dd が波束の幅を表す。

失点しやすい点

指数の分母が 2d22d^2 から ∣ψ∣2|\psi|^2 では d2d^2 になる(22 乗で 22 倍される)。2π\sqrt{2\pi} 型の公式と混同しない。

設問2 位置と運動量の期待値

kk の意味

波束は平均として運動量 ℏk\hbar k をもつ。eikxe^{ikx} の因子が平面波の運動量を与え、ガウス因子が位置の局在を与える、という役割分担になっている。

検算

⟨p⟩\langle p\rangle は実数でなければならない。−iℏ⋅ik=ℏk-i\hbar\cdot ik=\hbar k で確かに実数になる。第 11 項が残ると純虚数が出てしまうので、消えることが整合性の確認になる。

失点しやすい点

p^\hat p の定義に −iℏ-i\hbar を使う。符号を逆にすると ⟨p⟩=−ℏk\langle p\rangle=-\hbar k になる。

設問3 エネルギーの期待値

第2項の意味

ℏ24md2\dfrac{\hbar^2}{4md^2} は波束が空間的に局在していることによる運動エネルギーである。 Δx=d/2\Delta x=d/\sqrt2、Δp=ℏ/(2 d)\Delta p=\hbar/(\sqrt2\,d) なので Δx Δp=ℏ/2\Delta x\,\Delta p=\hbar/2 となり、ガウス波束が不確定性関係の等号を実現していることが分かる。

d→∞d\to\infty の極限

波束が広がると第 22 項が消え ⟨E⟩→ℏ2k22m\langle E\rangle\to\dfrac{\hbar^2k^2}{2m}、すなわち運動量 ℏk\hbar k の平面波のエネルギーになる。問 44 の設定である。

失点しやすい点

⟨E⟩=⟨p⟩22m\langle E\rangle=\dfrac{\langle p\rangle^2}{2m} としない。⟨p2⟩≠⟨p⟩2\langle p^2\rangle\ne\langle p\rangle^2 であり、その差が分散 (Δp)2(\Delta p)^2 である。

設問4 位相速度と群速度

dd が十分大きいという条件

dd が大きいと波数の広がり Δk=1/(2 d)\Delta k=1/(\sqrt2\,d) が小さく、波束はほぼ単一の波数 kk でできている。したがって ω(k)\omega(k) を kk のまわりで 11 次まで展開する扱いが正当化され、群速度が波束の移動速度になる。

群速度が古典速度に一致すること

v群=ℏkm=⟨p⟩mv_{\text{群}}=\dfrac{\hbar k}{m}=\dfrac{\langle p\rangle}{m} で、古典粒子の速度と同じである。波束の中心が古典的な軌道に従って動く(エーレンフェストの定理)ことに対応する。

位相速度が半分になること

非相対論的自由粒子では v位相=v群/2v_{\text{位相}}=v_{\text{群}}/2 である。位相速度は観測可能な粒子の移動速度ではないので、これは矛盾ではない。

失点しやすい点

ω=E/ℏ\omega=E/\hbar で E=ℏ2k2/(2m)E=\hbar^2k^2/(2m) を使う。ω=ck\omega=ck のような線形分散を仮定すると両者が一致してしまい、本問の要点が消える。

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第5問 — 統計力学:結晶中のフレンケル欠陥

独立に選べること

「どの格子点から抜けてどの格子間位置に移るか」の対応は問わない(原子が区別できない)ので、22 つの選択は独立で積になる。対応まで区別するなら n!n! 倍する必要があるが、本問の設定では不要である。

失点しやすい点

片方だけ((Nn)\binom Nn のみ)としない。空孔の位置と侵入位置の両方が独立な自由度である。

nn の範囲

1≪n≪N1\ll n\ll N かつ 1≪n≪M1\ll n\ll M が仮定されている。前者はスターリングの公式を使うため、後者は問 33 で N−n≃NN-n\simeq N と近似するために必要である。

失点しやすい点

22 つの二項係数の積であることを明示する。空孔の配置と侵入原子の配置を別々に数える。

設問2 エントロピーと自由エネルギー

格子振動を含めないこと

本問では配置の乱れだけを数えている。実際の結晶には格子振動によるエントロピーもあるが、nn に依存する部分だけが平衡条件に効くので、この扱いで欠陥濃度は正しく求まる。

失点しやすい点

F=U−TSF=U-TS の符号を落とさない。エントロピー項が大きいほど自由エネルギーは下がる。

なぜ自由エネルギーを最小にするか

温度と体積が一定の熱平衡では、ヘルムホルツの自由エネルギーが最小になる。欠陥を作るとエネルギーは上がるがエントロピーも増えるので、その釣り合いで nn が決まる。

設問3 平衡での欠陥数

指数の分母の 22

nn が 22 乗で現れるため、平方根を取る段階で指数の肩が半分になる。フレンケル欠陥の活性化エネルギーが w/2w/2 に見えるのはこのためで、空孔と侵入原子が対で生成することの反映である。

検算

T→0T\to0 で n→0n\to0、T→∞T\to\infty で n→NMn\to\sqrt{NM} に近づく。低温で欠陥が凍りつき、高温で増えるという振る舞いと合う。

失点しやすい点

ln⁡W\ln W の微分で −1-1 と +1+1 が相殺することを確認する。スターリングの −x-x の項が効いている。

設問4 比熱

ショットキー型の振る舞い

低温では指数因子が効いて C→0C\to0、高温では T−2T^{-2} が効いて再び小さくなる。中間の温度に山をもつ。欠陥生成にともなう比熱の異常として観測される。

格子比熱との比較

デバイ模型の格子比熱は室温付近で 3NkB3Nk_{\mathrm B} 程度である。w/kB=104 Kw/k_{\mathrm B}=10^4\,\mathrm{K} なら室温で e−w/(2kBT)∼e−17∼10−8e^{-w/(2k_{\mathrm B}T)}\sim e^{-17}\sim10^{-8} となり、欠陥の寄与は格子比熱に埋もれる。高温でようやく観測にかかる。

失点しやすい点

e−w/(2kBT)e^{-w/(2k_{\mathrm B}T)} を TT で微分するとき、指数の中の 1/T1/T の微分から +w/(2kBT2)+w/(2k_{\mathrm B}T^2) が出る。符号に注意する。

設問5 w/kBw/k_{\mathrm B} の実験的な求め方

2つの条件が果たす役割

1 は「高温の状態を低温で観測できる」ことを保証し、2 は「観測量が欠陥濃度に比例する」ことを保証する。どちらが欠けても ww は求まらない。

測定温度の目安

w/kB=104 Kw/k_{\mathrm B}=10^4\,\mathrm{K} なら T=1000 KT=1000\,\mathrm{K} で e−5≃7×10−3e^{-5}\simeq7\times10^{-3}、T=500 KT=500\,\mathrm{K} で e−10≃5×10−5e^{-10}\simeq5\times10^{-5} である。この範囲で RR が 22 桁変わるので、直線の傾きを精度よく決められる。

比例定数が不要なこと

R=αnR=\alpha n の α\alpha が未知でも、対数を取れば定数項に入るだけで傾きには効かない。w/kBw/k_{\mathrm B} だけを求めるなら α\alpha を知る必要がない。

失点しやすい点

傾きから直接 w/kBw/k_{\mathrm B} としない。指数の肩が w/(2kBT)w/(2k_{\mathrm B}T) なので 22 倍が要る。

統計力学:結晶中のフレンケル欠陥の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 電磁気学:ベクトルポテンシャルと一様磁場

∇⋅B=0\nabla\cdot\bm B=0 が自動的に成り立つこと

回転の発散は恒等的に 00 なので、B=∇×A\bm B=\nabla\times\bm A と書けばマクスウェル方程式の 11 つが自動的に満たされる。ベクトルポテンシャルを導入する理由である。

ゲージ変換

A→A+∇χ\bm A\to\bm A+\nabla\chi としても B\bm B は変わらない。この自由度を使って問 22 ではクーロンゲージ ∇⋅A=0\nabla\cdot\bm A=0 を課す。

失点しやすい点

成分の巡回の順序(x→y→z→xx\to y\to z\to x)を守る。ByB_y の符号を取り違えやすい。

設問2 クーロンゲージでの方程式

ポアソン方程式の形

これは静電場の ∇2ϕ=−ρ/ε0\nabla^2\phi=-\rho/\varepsilon_0 と同じ形である。したがって解も同じ形 A(r)=μ04π∫J(r′)∣r−r′∣d3r′\bm A(\bm r)=\dfrac{\mu_0}{4\pi}\displaystyle\int\frac{\bm J(\bm r')}{|\bm r-\bm r'|}d^3r' で与えられる。

ゲージ条件が課せる理由

任意の A\bm A に対し ∇2χ=−∇⋅A\nabla^2\chi=-\nabla\cdot\bm A を満たす χ\chi を取れば、A+∇χ\bm A+\nabla\chi はクーロンゲージを満たす。したがってこの条件は常に課せる。

失点しやすい点

恒等式の符号 ∇×(∇×A)=∇(∇⋅A)−∇2A\nabla\times(\nabla\times\bm A)=\nabla(\nabla\cdot\bm A)-\nabla^2\bm A を落とさない。−∇2-\nabla^2 のマイナスが最終形の符号を決める。

設問3 磁束密度の大きさ

物理的な描像

内部は一様磁場、外部は磁場なし、という配置は無限に長いソレノイドと同じである。r=ar=a の円筒面に zz 軸まわりの表面電流が流れている状況に対応する。

A≠0\bm A\ne0 なのに B=0\bm B=0

外部では A\bm A が 00 でないのに B\bm B が 00 になる。これはアハラノフ・ボーム効果の舞台となる状況で、古典電磁気学では観測に効かないが、量子力学では位相を通じて効く。

検算

r=ar=a の内外で A\bm A が連続していることを確かめる。r=ar=a では a2/r2=1a^2/r^2=1 となり両式が一致する。一方 B\bm B は r=ar=a で不連続に跳び、これが表面電流に対応する。

失点しやすい点

∂Ax/∂y\partial A_x/\partial y の計算で外側にマイナスが付いていることを忘れない。22 つの項が打ち消し合うのではなく足し合わさって 00 になる構造である。

設問4 ラプラス方程式

見通しのよい説明

22 次元では ln⁡r\ln r が調和関数(r≠0r\ne0)である。yr2=∂∂yln⁡r\dfrac{y}{r^2}=\dfrac{\partial}{\partial y}\ln r、xr2=∂∂xln⁡r\dfrac{x}{r^2}=\dfrac{\partial}{\partial x}\ln r であり、調和関数の偏導関数はまた調和関数だから、直接計算しなくても 00 が分かる。

r=ar=a を除く理由

r=ar=a には表面電流があり J≠0\bm J\ne0 なので、そこでは ∇2A=−μ0J≠0\nabla^2\bm A=-\mu_0\bm J\ne\bm0 である。設問が r≠ar\ne a と限定しているのはこのためである。

ゲージ条件の確認

∇⋅Aout=μ0a2I2(∂∂x−yr2+∂∂yxr2)=μ0a2I2(2xyr4−2xyr4)=0\nabla\cdot\bm A_{\text{out}}=\dfrac{\mu_0a^2I}{2}\left(\dfrac{\partial}{\partial x}\dfrac{-y}{r^2}+\dfrac{\partial}{\partial y}\dfrac{x}{r^2}\right) =\dfrac{\mu_0a^2I}{2}\left(\dfrac{2xy}{r^4}-\dfrac{2xy}{r^4}\right)=0 でクーロンゲージを満たしている。問 22 の設定と整合する。

失点しやすい点

∂2∂y2yr2\dfrac{\partial^2}{\partial y^2}\dfrac{y}{r^2} の計算で 1/r21/r^2 の微分から出る項を落とさない。−6y/r4-6y/r^4 の係数を −2y/r4-2y/r^4 と誤りやすい。

電磁気学:ベクトルポテンシャルと一様磁場の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2025年度(このページ・全6問)

    解析力学:最小作用の原理とばねでつながれた質点 / 電磁気学:誘電体を挟んだ同軸円筒コンデンサー / 実験物理:ノギスの読み取りと振り子による重力加速度の測定

  • 2024年度(全6問)

    力学:単振り子とパラメトリック励振 / 電磁気学:平行二線(レッヘル線)の特性インピーダンス / 熱物理・実験:半無限体の熱伝導とサーミスタ

  • 2023年度(全6問)

    力学:ジャイロスコープの歳差運動 / 電磁気学:マクスウェル方程式・ポインティングの定理・平面波 / 実験物理:陽電子とシンチレータによる同時計測

  • 2022年度(全6問)

    力学:中心力場での平面運動と有効ポテンシャル / 電磁気学:一様帯電球殻の電場と回転球殻が作る磁場 / 光学:マイケルソン干渉計による表面形状の計測

  • 2021年度(全6問)

    力学:剛体振り子と回転座標系・フーコー振り子 / 電磁気学:並進する2電荷間の静電気力と磁気力 / 熱力学:気体分子運動論と断熱大気の温度・密度分布

  • 2020年度(全6問)

    力学:穴を通した棒の剛体振り子と周期の最小化 / 電磁気学:同心円形回路の相互インダクタンスと磁場のエネルギー / 波動:張られた弦の波動方程式とピアノの打弦点

2025年度の出題内容

全6問

この6問の分野は電磁気学・回路2問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学最小作用の原理とばねでつながれた質点\ddot q を含まないこと / t を書く意味あり
第2問電磁気学・回路誘電体を挟んだ同軸円筒コンデンサー\bm D を使う利点 / Q が単位長さあたりであることあり
第3問ノギスの読み取りと振り子による重力加速度の測定副尺の原理 / 別の数え方あり
第4問量子力学ガウス型波束の期待値と位相速度・群速度e^ikx が効かないこと / 位置の広がりあり
第5問熱・統計力学結晶中のフレンケル欠陥独立に選べること / n の範囲あり
第6問電磁気学・回路ベクトルポテンシャルと一様磁場∇·\bm B=0 が自動的に成り立つこと / ゲージ変換あり

2025年度の解説には失点しやすい点6件・検算5件が付いています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 6問 → 2025年度 6問
2024年度の解答例

神戸大学の公式過去問

公開年度範囲
2013〜2025年の物理I・物理II(実施年で表記)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
2022年実施分より英語は外部試験(TOEFL iBT)に切り替わり、英語問題の掲載はない。2021年以前の英語問題は著作権の都合で来訪閲覧のみ。
院試hubの最終確認
2026-09-05
神戸大学の公式過去問PDF