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神戸大 理学研究科 物理学専攻 物理 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問の分野は電磁気学・回路2問、熱・統計力学1問、量子力学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 力学:単振り子とパラメトリック励振

周期

T=2πℓ/gT=2\pi\sqrt{\ell/g} で、振幅 θ0\theta_0 にも質量 mm にもよらない(微小振動の範囲)。

失点しやすい点

初期速度が 00 なので cos⁡\cos 型になる。sin⁡\sin 型にすると t=0t=0 で θ=0\theta=0 になり条件に合わない。

糸の長さが一定であること

問 11〜33 では長さ ℓ\ell を固定して扱う。問 44 以降で ℓ\ell を変える操作が入るので、ここまでの結果は「長さ一定のときの基準」として使われる。

設問2 エネルギーのグラフ

θ\theta を横軸にすること

時間ではなく θ\theta の関数として描くよう指示されている。11 周期の間に同じ θ\theta を 22 回通るので、グラフは往路と復路で重なる。

失点しやすい点

Ep(0)=0E_{\mathrm p}(0)=0 の指定に合わせて基準を最下点に取る。支点基準にすると定数がずれる。

振幅の意味

θ0\theta_0 は運動の全エネルギーを決める量である。E=12mgℓθ02E=\frac12mg\ell\theta_0^2 で、問 44 ではこれを Ep(−θ0)E_{\mathrm p}(-\theta_0) と書き換える。

設問3 糸の張力

張力の変化

最下点(θ=0\theta=0)で T≃mg(1+θ02)T\simeq mg(1+\theta_0^2) と最大、両端(θ=±θ0\theta=\pm\theta_0)で T≃mg(1−θ02/2)=mgcos⁡θ0T\simeq mg(1-\theta_0^2/2)=mg\cos\theta_0 と最小になる。この差が問 44 の正味の仕事を生む。

失点しやすい点

遠心力の項を落とさない。張力は重力の糸方向成分だけでは決まらない。

張力の測定量としての意味

張力は糸が切れるかどうかを決める量でもある。最下点で最大 mg(1+θ02)mg(1+\theta_0^2) になるので、大きく振らせるほど糸への負担が増える。

設問4 糸がした仕事の和

正味の仕事が正になる理由

張力が小さい端で糸を伸ばし(損失が小さい)、張力が大きい最下点で縮める(利得が大きい)。この非対称性のために 11 往復あたり正のエネルギーが系に入る。ブランコで立ち座りするタイミングと同じ原理である。

検算

θ0→0\theta_0\to0 とすると W→0W\to0 で、振れていない振り子では糸の伸縮で正味の仕事が入らない。実際 T(0)=T(±θ0)=mgT(0)=T(\pm\theta_0)=mg で対称になる。

失点しやすい点

W1W_1 の符号を正にしない。糸を伸ばすときは張力に逆らっておもりが外へ動くので、糸がする仕事は負である。

設問5 繰り返した場合の周期と振幅

パラメトリック励振

外力を加えるのではなく、系のパラメータ(糸の長さ)を固有周期の 22 倍の振動数で変調している。これがパラメトリック共鳴で、ブランコを漕ぐ、あるいは香炉を揺らす仕組みと同じである。

増幅が止まる理由

実際には空気抵抗や支点の摩擦によるエネルギー損失があり、11 周期あたりの利得 6Δℓ/ℓ6\Delta\ell/\ell と損失が釣り合うところで振幅が頭打ちになる。

失点しやすい点

「エネルギーが一定量ずつ増える」ではなく「現在のエネルギーに比例して増える」点が要点である。だからこそ指数関数的な成長になる。

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第2問 — 電磁気学:平行二線(レッヘル線)の特性インピーダンス

無限遠を基準に取れない理由

無限に長い線電荷では r→∞r\to\infty で電位が発散する。有限の基準点 r0r_0 を取る必要があり、設問がそれを指定している。

符号

λ>0\lambda>0 で r<r0r<r_0 なら V>0V>0 である。正電荷に近づくほど電位が高いという性質と合う。

失点しやすい点

ln⁡(r0/r)\ln(r_0/r) と ln⁡(r/r0)\ln(r/r_0) を取り違えない。積分の向きから決まる。

設問2 2導線間の電位差と静電容量

基準点 r0r_0 が消えること

22 本の電荷が符号違いで同じ大きさなので、ln⁡r0\ln r_0 の項が打ち消し合う。中性の系では基準の取り方によらない電位差が定まる。

表面電荷が一様という仮定

厳密には向かい合う側に電荷が偏るが、d≫ad\gg a ではその補正は小さい。設問が「導線の表面の電荷密度は一定と仮定してよい」と断っている。

失点しやすい点

VA−VBV_{\mathrm A}-V_{\mathrm B} は VAV_{\mathrm A} の 22 倍である。片方だけで CC を作らない。

設問3 磁束とインダクタンス

22 つの寄与が足し算になること

電流が逆向きなので、22 本の間の領域では磁場の向きが揃う。外側では打ち消し合うため、遠方への漏れが小さい。これが平行二線が伝送線として使える理由である。

導線内部の磁束

設問文が無視してよいと指定している。厳密には μ0/(8π)\mu_0/(8\pi) 程度の付加項(内部インダクタンス)が加わる。

失点しやすい点

積分範囲を 00 から dd にしない。導線の内部は除くので aa から d−ad-a である。

設問4 特性インピーダンス

LCLC の積

LC=μ0ε0LC=\mu_0\varepsilon_0 となり、対数が消える。これは伝送線上の信号速度が 1/LC=c1/\sqrt{LC}=c、すなわち真空中の光速になることを意味する。導体の形によらない普遍的な関係である。

μ0/ε0\sqrt{\mu_0/\varepsilon_0} の値

これは真空の特性インピーダンス Z0=μ0/ε0=μ0c≃377 ΩZ_0=\sqrt{\mu_0/\varepsilon_0}=\mu_0c\simeq377\,\Omega である。ZZ はこれに幾何学的な因子 1πln⁡d−aa\frac1\pi\ln\frac{d-a}{a} を掛けた形になる。

失点しやすい点

LL と CC の対数が ZZ では約分されず、22 乗根を通じて 11 乗で残る。ln⁡⋅ln⁡=ln⁡\sqrt{\ln\cdot\ln}=\ln である。

設問5 インピーダンスの値

d=(e2+1)ad=(e^2+1)a という設定の意味

d−aa\dfrac{d-a}{a} がちょうど e2e^2 になるように選ばれている。問 22・問 33 で d−a≃dd-a\simeq d と近似せず厳密形を保っておくと、対数が 22 ちょうどになって計算がきれいに閉じる。近似 ln⁡(d/a)=ln⁡8.39≃2.13\ln(d/a)=\ln8.39\simeq2.13 を使うと 2.6×102 Ω2.6\times10^2\,\Omega となり、有効数字 22 桁で結果が変わってしまう。

π\pi の相殺

Z=2πμ0c=2π×4π×10−7c=8×10−7c=8×10−7×3.00×108=240 ΩZ=\dfrac{2}{\pi}\mu_0c=\dfrac{2}{\pi}\times4\pi\times10^{-7}c=8\times10^{-7}c=8\times10^{-7}\times3.00\times10^8=240\,\Omega と、π\pi を約分すれば電卓なしで求まる。

実用との対応

市販の平行フィーダー(テレビ用の平行二線)の特性インピーダンスは 300 Ω300\,\Omega 程度で、同じ桁である。同軸ケーブルの 50 Ω50\,\Omega や 75 Ω75\,\Omega と比べて大きいのは、導線の間隔が半径に比べて大きいためである。

失点しやすい点

μ0=4π×10−7\mu_0=4\pi\times10^{-7} の 4π4\pi を落とさない。また有効数字 22 桁で答えるよう指示されている。

解答

電場

半径 rr、長さ 11 の同軸円筒をガウス面に取ると E(r)⋅2πr=λε0 ⟹ E(r)=λ2πε0r(r>a). E(r)\cdot2\pi r=\frac{\lambda}{\varepsilon_0} \ \Longrightarrow\ E(r)=\frac{\lambda}{2\pi\varepsilon_0 r}\qquad(r>a).

電位

r=r0r=r_0 を基準とすると V(r)=∫rr0E(r′) dr′=λ2πε0ln⁡r0r. V(r)=\int_r^{r_0}E(r')\,dr'=\frac{\lambda}{2\pi\varepsilon_0}\ln\frac{r_0}{r}.

重ね合わせ

導線 A(線密度 λ\lambda)と導線 B(線密度 −λ-\lambda)の作る電位を足す。導線 A の表面上の点は、A の中心から aa、B の中心から d−ad-a 離れている。 VA=λ2πε0ln⁡r0a+−λ2πε0ln⁡r0d−a=λ2πε0ln⁡d−aa. V_{\mathrm A}=\frac{\lambda}{2\pi\varepsilon_0}\ln\frac{r_0}{a} +\frac{-\lambda}{2\pi\varepsilon_0}\ln\frac{r_0}{d-a} =\frac{\lambda}{2\pi\varepsilon_0}\ln\frac{d-a}{a}. 同様に導線 B の表面では VB=−λ2πε0ln⁡d−aaV_{\mathrm B}=-\dfrac{\lambda}{2\pi\varepsilon_0}\ln\dfrac{d-a}{a} である。

電位差

VA−VB=λπε0ln⁡d−aa≃λπε0ln⁡da(d≫a). V_{\mathrm A}-V_{\mathrm B}=\frac{\lambda}{\pi\varepsilon_0}\ln\frac{d-a}{a} \simeq\frac{\lambda}{\pi\varepsilon_0}\ln\frac da\qquad(d\gg a).

静電容量

単位長さあたりでは C=λVA−VB=πε0ln⁡d−aa≃πε0ln⁡(d/a). C=\frac{\lambda}{V_{\mathrm A}-V_{\mathrm B}}=\frac{\pi\varepsilon_0}{\ln\dfrac{d-a}{a}} \simeq\frac{\pi\varepsilon_0}{\ln(d/a)} .

磁束密度

導線 A から距離 xx の点(22 本を結ぶ線上、a<x<d−aa<x<d-a)では、A の作る磁場が μ0I2πx\dfrac{\mu_0I}{2\pi x}、B の作る磁場が μ0I2π(d−x)\dfrac{\mu_0I}{2\pi(d-x)} である。逆向きの電流なので 22 導線の間では両者が同じ向きに重なる。

単位長さあたりの磁束

22 導線を横切る面(長さ 11、幅 aa から d−ad-a)を貫く磁束は Φ=∫ad−a[μ0I2πx+μ0I2π(d−x)]dx=μ0I2π[ln⁡d−aa+ln⁡d−aa]=μ0Iπln⁡d−aa. \Phi=\int_a^{d-a}\left[\frac{\mu_0I}{2\pi x}+\frac{\mu_0I}{2\pi(d-x)}\right]dx =\frac{\mu_0I}{2\pi}\left[\ln\frac{d-a}{a}+\ln\frac{d-a}{a}\right] =\frac{\mu_0I}{\pi}\ln\frac{d-a}{a}.

インダクタンス

L=ΦI=μ0πln⁡d−aa≃μ0πln⁡da. L=\frac{\Phi}{I}=\frac{\mu_0}{\pi}\ln\frac{d-a}{a} \simeq\frac{\mu_0}{\pi}\ln\frac da .

代入

Z=LC=μ0πln⁡d−aaπε0ln⁡d−aa=1πμ0ε0 ln⁡d−aa. Z=\sqrt{\frac LC} =\sqrt{\frac{\dfrac{\mu_0}{\pi}\ln\dfrac{d-a}{a}}{\dfrac{\pi\varepsilon_0}{\ln\dfrac{d-a}{a}}}} =\frac{1}{\pi}\sqrt{\frac{\mu_0}{\varepsilon_0}}\,\ln\frac{d-a}{a}.

対数の値

d=(e2+1)ad=(e^2+1)a より d−aa=(e2+1)a−aa=e2 ⟹ ln⁡d−aa=2. \frac{d-a}{a}=\frac{(e^2+1)a-a}{a}=e^2 \ \Longrightarrow\ \ln\frac{d-a}{a}=2 .

真空の特性インピーダンス

c=1/ε0μ0c=1/\sqrt{\varepsilon_0\mu_0} より μ0ε0=μ0c\sqrt{\dfrac{\mu_0}{\varepsilon_0}}=\mu_0c である。 μ0c=4π×10−7×3.00×108=1.2π×102≃3.77×102 Ω. \mu_0c=4\pi\times10^{-7}\times3.00\times10^{8} =1.2\pi\times10^{2}\simeq3.77\times10^{2}\ \Omega .

結果

Z=1π×3.77×102×2=2π×3.77×102≃2.4×102 Ω. Z=\frac{1}{\pi}\times3.77\times10^2\times2=\frac{2}{\pi}\times3.77\times10^2 \simeq2.4\times10^{2}\ \Omega .

最終答

V(r)=λ2πε0ln⁡r0rV(r)=\dfrac{\lambda}{2\pi\varepsilon_0}\ln\dfrac{r_0}{r}

VA−VB=λπε0ln⁡d−aaV_{\mathrm A}-V_{\mathrm B}=\dfrac{\lambda}{\pi\varepsilon_0}\ln\dfrac{d-a}{a}、C=πε0ln⁡((d−a)/a)C=\dfrac{\pi\varepsilon_0}{\ln\bigl((d-a)/a\bigr)}

Φ=μ0Iπln⁡d−aa\Phi=\dfrac{\mu_0I}{\pi}\ln\dfrac{d-a}{a}、L=μ0πln⁡d−aaL=\dfrac{\mu_0}{\pi}\ln\dfrac{d-a}{a}

Z=1πμ0ε0ln⁡d−aaZ=\dfrac{1}{\pi}\sqrt{\dfrac{\mu_0}{\varepsilon_0}}\ln\dfrac{d-a}{a}

Z≃2.4×102 ΩZ\simeq2.4\times10^{2}\ \Omega(約 240 Ω240\,\Omega)

第3問 — 熱物理・実験:半無限体の熱伝導とサーミスタ

式(1)からも読める

erf\mathrm{erf} の引数 x2αt\dfrac{x}{2\sqrt{\alpha t}} は無次元でなければならない。[αt]=[長さ][\sqrt{\alpha t}]=[\text{長さ}] より同じ結論になる。

代表的な値

銅で α≃1×10−4 m2/s\alpha\simeq1\times10^{-4}\,\mathrm{m^2/s}、水で 1.4×10−71.4\times10^{-7}、プラスチックで 10−710^{-7} 程度である。

失点しやすい点

熱伝導率 λ\lambda(W/(m⋅K)\mathrm{W/(m\cdot K)})と混同しない。α=λ/(ρc)\alpha=\lambda/(\rho c) の関係にある。

設問2 誤差関数の値と概形

erf(1)\mathrm{erf}(1) の値

erf(1)≃0.84\mathrm{erf}(1)\simeq0.84、erf(2)≃0.995\mathrm{erf}(2)\simeq0.995 である。x=2x=2 でほぼ飽和する。問 44 で「熱が届いた深さ」を評価するときの目安になる。

規格化因子

2/π2/\sqrt\pi は erf(∞)=1\mathrm{erf}(\infty)=1 となるように付けられている。

失点しやすい点

erf(−∞)=−1\mathrm{erf}(-\infty)=-1 も含めて描く。設問は (−∞,∞)(-\infty,\infty) の区間を指定している。

設問3 熱伝導方程式の確認

境界条件の確認

x=0x=0 で u=0u=0、erf(0)=0\mathrm{erf}(0)=0 より T(0,t)=T0T(0,t)=T_0 で熱浴の温度に一致する。 x→∞x\to\infty で u→∞u\to\infty、erf→1\mathrm{erf}\to1 より T→TiT\to T_i で初期温度に戻る。 t→0+t\to0^+ では x>0x>0 の任意の点で u→∞u\to\infty となり T→TiT\to T_i、初期条件も満たす。

相似変数

TT が xx と tt に別々に依存せず、組み合わせ u=x/(2αt)u=x/(2\sqrt{\alpha t}) だけを通じて依存する。これを相似解といい、半無限領域という特徴的な長さのない問題に固有の構造である。

失点しやすい点

∂u/∂t\partial u/\partial t の計算で t−3/2t^{-3/2} の微分から −u/(2t)-u/(2t) が出る。符号と係数を丁寧に追う。

設問4 温度分布の時間発展

図に書き込むべき値

x=0x=0 での値 T0T_0、遠方の TiT_i、そして各時刻の浸透深さ 2αt2\sqrt{\alpha t} の比を示す。設問が「定量的にわかるよう値を記入」と求めているのはこの 33 点である。

t\sqrt t 則の意味

拡散では距離が時間の平方根でしか進まない。深さを 22 倍にするには 44 倍の時間が要る。熱処理や焼き入れの時間見積もりに直結する性質である。

失点しやすい点

時刻ごとに分布の形が変わると描かない。形は同じで横軸のスケールだけが変わる。

設問5 熱伝導率の大小

おおよその値

銅 400400、ステンレス 1616、プラスチック 0.2 W/(m⋅K)0.2\ \mathrm{W/(m\cdot K)} 程度で、33 桁にわたって違う。

日常の実感との対応

同じ室温でも金属のドアノブは冷たく感じ、プラスチックの取っ手はそう感じない。これは熱拡散率の違いで、手から熱が奪われる速さが違うためである。

失点しやすい点

「理由を述べよ」なので、自由電子の有無と合金の散乱という 22 段の説明を書く。順序だけでは不足である。

設問6 サーミスタ定数 BB の決定

グラフ用紙の選び方

RR が 20002000〜50000 Ω50000\,\Omega と 11 桁以上変わるので縦軸は対数目盛、横軸は 1/T1/T を線形目盛に取る。「配布したグラフ用紙のうち適当なもの」を選ぶという指示は、片対数用紙を選ぶことを求めている。

R0R_0 と TaT_a が不要なこと

切片には R0R_0 と TaT_a が入るが、BB は傾きだけで決まる。11 つの定数を求めるのに全部を知る必要はない。

サーミスタの特徴

B≃1.9×103 KB\simeq1.9\times10^3\,\mathrm K は市販のサーミスタの典型値(30003000〜4000 K4000\,\mathrm K)よりやや小さい。抵抗が温度上昇とともに減る(負の温度係数)のは半導体の性質で、白金測温抵抗体とは逆である。

失点しやすい点

自然対数と常用対数を取り違えない。指数が ee の肩なので、log⁡10\log_{10} でプロットしたときの傾きには log⁡10e=0.434\log_{10}e=0.434 が掛かる。最後にこれで割る。

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第4問 — 量子力学:二重井戸ポテンシャルとトンネル分裂

ポテンシャルの形

V(x)=mω28a2(x2−a2)2V(x)=\dfrac{m\omega^2}{8a^2}(x^2-a^2)^2 と書ける。x=±ax=\pm a で 00(最小)、x=0x=0 で mω2a28\dfrac{m\omega^2a^2}{8} の山をもつ左右対称な二重井戸である。

a≫ℏ/(mω)a\gg\sqrt{\hbar/(m\omega)} の意味

右辺は調和振動子の特性長である。井戸の間隔がそれよりずっと大きいので、22 つの井戸はほぼ独立とみなせる。この条件が問 22 の近似と問 33 の ∫ψ+ψ−≪1\int\psi_+\psi_-\ll1 を正当化する。

失点しやすい点

VV の係数 mω28a2\dfrac{m\omega^2}{8a^2} をそのまま書く。展開して整理する必要はない。

設問2 各井戸の基底状態

調和振動子の基底状態

得られた形は角振動数 ω\omega の調和振動子の基底状態そのもので、中心が x=±ax=\pm a に移っただけである。零点エネルギー ℏω/2\hbar\omega/2 も一致する。

E+=E−E_+=E_- であること

22 つの井戸は形も深さも同じなので、独立に扱う限りエネルギーは縮退する。この縮退が問 33・問 44 でトンネル効果によって解ける。

失点しやすい点

規格化の指数が −2B(x−a)2-2B(x-a)^2(∣ψ∣2|\psi|^2 なので 22 倍)になる。π/(2B)\sqrt{\pi/(2B)} の 22 を落とさない。

設問3 偶関数と奇関数の構成

SS の大きさ

S=exp⁡(−mωa2ℏ)S=\exp\left(-\dfrac{m\omega a^2}{\hbar}\right) と計算でき、a≫ℏ/(mω)a\gg\sqrt{\hbar/(m\omega)} の条件下では指数的に小さい。したがって 2(1±S)≃2\sqrt{2(1\pm S)}\simeq\sqrt2 としてよい。

どちらが基底状態か

偶関数 ψ0\psi_0 は節をもたず、奇関数 ψ1\psi_1 は x=0x=0 に節をもつ。節の少ないほうがエネルギーが低いので ψ0\psi_0 が基底状態、ψ1\psi_1 が第 11 励起状態である。

失点しやすい点

規格化因子を 11 にしない。22 つの関数の和なので 1/21/\sqrt2 が要る。

設問4 エネルギー差

符号

V−V−V-V_- は 22 つの井戸の間(∣x∣<a|x|<a 付近)で負であり、ψ+ψ−>0\psi_+\psi_->0 だから積分は負、すなわち E0<E1E_0<E_1 である。偶関数が基底状態という問 33 の結論と整合する。

トンネル分裂

ψ+ψ−\psi_+\psi_- は 22 つのガウス関数の積で、井戸の間の領域でのみ有意な値をもつ。その大きさは e−mωa2/ℏe^{-m\omega a^2/\hbar} に比例するので、分裂は井戸の間隔とともに指数関数的に小さくなる。これがトンネル効果によるエネルギー分裂である。

アンモニア分子との対応

NH3\mathrm{NH_3} の窒素原子が水素の平面の上下に位置する 22 つの状態は、まさにこの二重井戸で記述される。分裂の大きさに対応する周波数 23.9 GHz23.9\,\mathrm{GHz} がアンモニアメーザーの遷移である。

失点しやすい点

E0−E1E_0-E_1 を H+−H_{+-} の 11 倍としない。22 倍である。また ψ±\psi_\pm が H^\hat H の固有関数ではない(V±V_\pm の固有関数である)点に注意する。

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第5問 — 統計力学:鎖状分子のゴム弾性

向きが 22 通りしかないこと

各分子は A か B のどちらかで、長さへの寄与は aa か bb である。分子の並ぶ順序は長さに影響しない。

失点しやすい点

N−NaN-N_a が状態 B の個数である。NaN_a だけで書かない。

エネルギーが向きによらないこと

設問文が「系のエネルギーは分子の向きには依存しない」と明記している。したがって内部エネルギーは配置によらず一定で、以降の議論はすべてエントロピーだけで決まる。

設問2 状態 A の割合

取りうる範囲

0≤Na/N≤10\le N_a/N\le1 より L/NL/N は bb と aa の間(a>ba>b なら b≤L/N≤ab\le L/N\le a)に限られる。全部 B なら最短 NbNb、全部 A なら最長 NaNa である。

失点しやすい点

a−ba-b の符号に注意する。a>ba>b を仮定して以下を進めるが、a<ba<b でも式の形は変わらない。

LL と NaN_a が 11 対 11 であること

問 11 の式は NaN_a について解けるので、LL を指定することと NaN_a を指定することは同じである。問 33 で「LL を固定したとき」の場合の数が組み合わせで書けるのはこのためである。

設問3 場合の数

分子が区別できること

鎖の中で分子は位置によって区別されるので、どの位置が A かを選ぶ組み合わせになる。位置を区別しなければ場合の数は 11 になってしまう。

失点しやすい点

2N2^N としない。LL(すなわち NaN_a)を固定した条件つきの場合の数である。

最大の配置数

Na=N/2N_a=N/2 のとき WW が最大になる。二項係数の性質そのもので、問 55 で張力が 00 になる長さと対応する。

設問4 1分子あたりのエントロピー

最大値

x=1/2x=1/2 で S/N=kBln⁡2S/N=k_{\mathrm B}\ln2 と最大になる。x=0x=0 や x=1x=1(すべて同じ状態)では S=0S=0 である。鎖が最も伸びた状態や最も縮んだ状態はエントロピーが小さい。

混合エントロピーの形

−kB[xln⁡x+(1−x)ln⁡(1−x)]-k_{\mathrm B}[x\ln x+(1-x)\ln(1-x)] は 22 成分の混合エントロピーそのもので、22 値を取る自由度の系に普遍的に現れる。

失点しやすい点

スターリングの公式の −x-x の項が相殺することを確認する。N−Na+Na=NN-N_a+N_a=N なので、−N-N の項が消える。

設問5 張力が0になる長さ

エントロピー弾性

張力がエネルギーではなくエントロピーから生じている。鎖を伸ばすと xx が 1/21/2 から離れて配置数が減り、エントロピーが下がる。それに逆らう向きに張力がはたらく。ゴムを引っ張ると縮もうとするのはこの機構による。

温度依存性

f∝Tf\propto T である。ゴムは温度が上がるほど強く縮もうとする。金属ばねが温度上昇で軟らかくなるのと逆の振る舞いで、エントロピー弾性の特徴である。

L0L_0 が平均長さになること

L0/N=(a+b)/2L_0/N=(a+b)/2 は 22 状態の長さの平均である。外力がなければ分子は A と B を等確率で取るので、平均長さになるのは自然である。

失点しやすい点

f=−T∂S/∂Lf=-T\partial S/\partial L の符号を落とさない。F=U−TSF=U-TS を LL で微分するときの符号である。

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第6問 — 電磁気学・宇宙物理:マイクロ波の性質と応用

電子レンジの構造との関係

波長 12 cm12\,\mathrm{cm} は庫内の寸法と同程度なので、庫内には定在波ができて加熱むらが生じる。ターンテーブルやスターラー(撹拌翼)はこれを均すための工夫である。

2.45 GHz2.45\,\mathrm{GHz} が選ばれる理由

水分子の共鳴周波数ではなく、産業科学医療用に割り当てられた周波数帯であること、および誘電損失が適度で食品の内部まで届く深さになることによる。

失点しやすい点

GHz=109 Hz\mathrm{GHz}=10^9\,\mathrm{Hz} を正しく使う。

設問2 マイクロ波が漏れない理由

導波管の遮断周波数との関係

穴を短い導波管とみなすと、直径が波長の半分より小さい穴は遮断周波数以下で波を通さない。減衰は穴の奥行きに対して指数関数的である。

失点しやすい点

「金属だから反射する」だけでは説明が足りない。窓については「穴が波長より小さい」という寸法の比較が要点である。

電磁波の遮蔽の一般則

波長より小さい開口は電磁波をほとんど通さない。これは電子レンジの窓に限らず、シールドルームやケーブルの編組シールドにも共通する原理である。

設問3 放射時の宇宙の温度

物理的な意味

3000 K3000\,\mathrm K は水素原子が電離と再結合の境目にある温度である。この温度より高いと宇宙は電離したプラズマで光が自由に進めず、下がると中性水素になって光が直進できるようになる。宇宙背景放射はこの「晴れ上がり」の瞬間の光であり、宇宙誕生から約 3838 万年後という時期と対応する。

現在の温度

波長が 10001000 倍に伸びたので温度は 1/10001/1000 になり、T現在∼3 KT_{\text{現在}}\sim3\,\mathrm K である。実測値 2.725 K2.725\,\mathrm K とよく合う。

見積もりの粗さ

厳密にはウィーンの変位則のピークは hν≃2.82kBTh\nu\simeq2.82k_{\mathrm B}T なので、2.822.82 で割ると 1.0×103 K1.0\times10^3\,\mathrm K になる。設問が「見積もりなさい」としているので、桁が合っていればよい。

失点しやすい点

波長が伸びる=周波数が下がるので、放射時の周波数は現在より 10001000 倍高い。逆にしない。

設問4 黒体輻射スペクトルの近似と概形

紫外破綻

レイリー・ジーンズ則をすべての ν\nu に使うと ∫f dν\int f\,d\nu が発散する。プランクが hh を導入して高周波側を指数関数で抑えたことで有限になった。量子論の出発点である。

宇宙背景放射との対応

問 33 の 60 GHz60\,\mathrm{GHz} は現在の温度 2.7 K2.7\,\mathrm K でのピーク(約 160 GHz160\,\mathrm{GHz})と同じ桁である。観測されたスペクトルがプランク分布に極めてよく一致することが、ビッグバン模型の強い証拠になっている。

失点しやすい点

低周波側で hh が消える。古典論だけで導けるのがレイリー・ジーンズ則である、という事実の反映である。

設問5 1\,W の無線給電の応用

有人環境という条件

1 W1\,\mathrm W という上限は、人体への電波防護指針を満たすために設けられている。人がいる空間で使えることが、この方式の価値である。

答案の組み立て

「何ができるか」だけでなく「何ができないか」を電力の桁で示すと、定量的な検討として評価される。

失点しやすい点

用途を列挙するだけで終わらない。1 W1\,\mathrm W という数値と機器の消費電力を比べる。

設問6 S/c\bm S/c の意味

S/c2\bm S/c^2 との違い

もう 11 回 cc で割った S/c2\bm S/c^2 は運動量密度(kg/(m2⋅s)\mathrm{kg/(m^2\cdot s)})になる。光が圧力を及ぼすこと(放射圧)の根拠である。cc で何回割るかで意味が変わるので、次元を確かめて区別する。

B\bm B ではなく H\bm H を使う理由

E×H\bm E\times\bm H が W/m2\mathrm{W/m^2} になるのに対し、E×B\bm E\times\bm B は μ0\mu_0 の分だけ次元がずれる。ポインティングベクトルの定義に H\bm H が現れるのはこのためである。

失点しやすい点

V⋅A=W\mathrm{V\cdot A}=\mathrm W を使う。電圧と電流の積が電力であることが次元解析の要である。

電磁気学・宇宙物理:マイクロ波の性質と応用の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2025年度(全6問)

    解析力学:最小作用の原理とばねでつながれた質点 / 電磁気学:誘電体を挟んだ同軸円筒コンデンサー / 実験物理:ノギスの読み取りと振り子による重力加速度の測定

  • 2024年度(このページ・全6問)

    力学:単振り子とパラメトリック励振 / 電磁気学:平行二線(レッヘル線)の特性インピーダンス / 熱物理・実験:半無限体の熱伝導とサーミスタ

  • 2023年度(全6問)

    力学:ジャイロスコープの歳差運動 / 電磁気学:マクスウェル方程式・ポインティングの定理・平面波 / 実験物理:陽電子とシンチレータによる同時計測

  • 2022年度(全6問)

    力学:中心力場での平面運動と有効ポテンシャル / 電磁気学:一様帯電球殻の電場と回転球殻が作る磁場 / 光学:マイケルソン干渉計による表面形状の計測

  • 2021年度(全6問)

    力学:剛体振り子と回転座標系・フーコー振り子 / 電磁気学:並進する2電荷間の静電気力と磁気力 / 熱力学:気体分子運動論と断熱大気の温度・密度分布

  • 2020年度(全6問)

    力学:穴を通した棒の剛体振り子と周期の最小化 / 電磁気学:同心円形回路の相互インダクタンスと磁場のエネルギー / 波動:張られた弦の波動方程式とピアノの打弦点

2024年度の出題内容

全6問

この6問の分野は電磁気学・回路2問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学単振り子とパラメトリック励振周期 / 糸の長さが一定であることあり
第2問電磁気学・回路平行二線(レッヘル線)の特性インピーダンス無限遠を基準に取れない理由 / 符号あり
第3問半無限体の熱伝導とサーミスタ式(1)からも読める / 代表的な値あり
第4問量子力学二重井戸ポテンシャルとトンネル分裂ポテンシャルの形 / a\gg\sqrt{\hbar/(mω)} の意味あり
第5問熱・統計力学鎖状分子のゴム弾性向きが 2 通りしかないこと / エネルギーが向きによらないことあり
第6問電磁気学・回路マイクロ波の性質と応用電子レンジの構造との関係 / 2.45 GHz が選ばれる理由あり

2024年度の解説には失点しやすい点6件・検算1件が付いています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 6問 → 2024年度 6問
2023年度の解答例

神戸大学の公式過去問

公開年度範囲
2013〜2025年の物理I・物理II(実施年で表記)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
2022年実施分より英語は外部試験(TOEFL iBT)に切り替わり、英語問題の掲載はない。2021年以前の英語問題は著作権の都合で来訪閲覧のみ。
院試hubの最終確認
2026-09-05
神戸大学の公式過去問PDF