院試hub

神戸大 理学研究科 物理学専攻 物理 2020年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問の分野は力学2問、電磁気学・回路1問、熱・統計力学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 力学:穴を通した棒の剛体振り子と周期の最小化

平行軸の定理による検算

重心は端から ℓ/2\ell/2、支点から d=ℓ2−ad=\dfrac{\ell}{2}-a の位置にある。重心まわりの慣性モーメントは 112mℓ2\dfrac{1}{12}m\ell^{2} だから I=112mℓ2+m(ℓ2−a)2=m(ℓ212+ℓ24−ℓa+a2)=m3(ℓ2−3ℓa+3a2). I=\frac{1}{12}m\ell^{2}+m\left(\frac{\ell}{2}-a\right)^{2} =m\left(\frac{\ell^{2}}{12}+\frac{\ell^{2}}{4}-\ell a+a^{2}\right) =\frac{m}{3}\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right). 一致する。

特別な場合

a=0a=0(端で吊るす)で I=13mℓ2I=\frac13m\ell^{2}、a=ℓ/2a=\ell/2(重心で吊るす)で I=112mℓ2I=\frac{1}{12}m\ell^{2}。どちらもよく知られた値と一致する。

失点しやすい点

積分の下端は −a-a である。支点が棒の内部にあるので、ss は負の値も取る。00 から ℓ\ell までとすると別の量になる。

設問2 位置エネルギーと重力のモーメント

UU と NN の関係

N=−d(ΔU)dθ=−mgdsin⁡θN=-\dfrac{d\left(\Delta U\right)}{d\theta}=-mgd\sin\theta。負号は復元的であることを表す。「大きさ」を問われているので絶対値で答えてよいが、向きは書き添える。

0≤a<ℓ/20\le a<\ell/2 の意味

この範囲では d>0d>0 で、支点が重心より上にあるので鉛直下向きが安定な釣り合いになる。a=ℓ/2a=\ell/2 ちょうどでは d=0d=0 となって復元力が消え、棒はどの角度でも静止する(中立平衡)。

微小角での形

1−cos⁡θ≃θ221-\cos\theta\simeq\frac{\theta^{2}}{2}、sin⁡θ≃θ\sin\theta\simeq\theta。それぞれ調和振動子の位置エネルギーと復元力の形になり、設問 44 につながる。

設問3 運動エネルギー

並進と回転に分ける見方

重心の速さは dθ˙d\dot\theta なので K=12m(dθ˙)2+12IGθ˙2K=\frac12m\left(d\dot\theta\right)^{2}+\frac12I_{\mathrm G}\dot\theta^{2} としてもよい。平行軸の定理により、これは 12Iθ˙2\frac12I\dot\theta^{2} と同じである。

全エネルギー

設問 22 と合わせると E=12Iθ˙2+mgd(1−cos⁡θ)E=\frac12I\dot\theta^{2}+mgd\left(1-\cos\theta\right) が保存する。この EE を時間微分すれば設問 44 の運動方程式が直接得られる。

失点しやすい点

12mv2\frac12mv^{2} の形で書こうとしない。剛体の各部分で速さが異なるので、慣性モーメントを使う形に集約する。

設問4 微小振動の周期

相当単振り子の長さ

T=2πℓeq/gT=2\pi\sqrt{\ell_{\mathrm{eq}}/g} と書くと ℓeq=Imd=2(ℓ2−3ℓa+3a2)3(ℓ−2a). \ell_{\mathrm{eq}}=\frac{I}{md}=\frac{2\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right)}{3\left(\ell-2a\right)} . この長さの単振り子と同じ周期をもつ、という意味である。設問 55 はこの ℓeq\ell_{\mathrm{eq}} を最小にする問題に等しい。

両端での振る舞い

a=0a=0 で ℓeq=23ℓ\ell_{\mathrm{eq}}=\frac23\ell。a→ℓ/2a\to\ell/2 で分母が 00 に近づき ℓeq→∞\ell_{\mathrm{eq}}\to\infty、周期は無限大に発散する。重心で吊るすと復元力が消えるからである。したがって TT は a=0a=0 と a=ℓ/2a=\ell/2 の間のどこかで最小値をとる。

失点しやすい点

質量 mm が約分されて消える。剛体振り子の周期が質量に依らないのは、単振り子と同じ性質である。

設問5 周期が最短になる支点の位置

最小周期の値

このとき ℓ−2a=33ℓ\ell-2a=\dfrac{\sqrt3}{3}\ell、D=ℓ22D=\dfrac{\ell^{2}}{2} となるので f=233ℓf=\dfrac{2\sqrt3}{3\ell}、 ω2=3g2⋅233ℓ=3 gℓ,Tmin⁡=2πℓ3 g. \omega^{2}=\frac{3g}{2}\cdot\frac{2\sqrt3}{3\ell}=\frac{\sqrt3\,g}{\ell}, \qquad T_{\min}=2\pi\sqrt{\frac{\ell}{\sqrt3\,g}} . 相当単振り子の長さは ℓeq=ℓ3≃0.577ℓ\ell_{\mathrm{eq}}=\dfrac{\ell}{\sqrt3}\simeq0.577\ell である。

重心からの距離で見る

d=ℓ2−a=ℓ2−(3−3)ℓ6=3 ℓ6=ℓ23d=\dfrac{\ell}{2}-a=\dfrac{\ell}{2}-\dfrac{\left(3-\sqrt3\right)\ell}{6}=\dfrac{\sqrt3\,\ell}{6}=\dfrac{\ell}{2\sqrt3}。 一方 IG/m=ℓ2/12=ℓ23\sqrt{I_{\mathrm G}/m}=\sqrt{\ell^{2}/12}=\dfrac{\ell}{2\sqrt3}。すなわち「支点から重心までの距離が回転半径に等しいとき周期が最短になる」。ℓeq=d+IG/md\ell_{\mathrm{eq}}=d+\dfrac{I_{\mathrm G}/m}{d} を相加相乗平均で評価すれば、この条件が一般の剛体振り子でも成り立つことが分かる。

カテル振り子との関係

ℓeq\ell_{\mathrm{eq}} が同じ値になる aa が一般に 22 つあり、その 22 点は「共役点」と呼ばれる。この性質を使って gg を精密に測るのがカテルの可逆振り子である。最短周期の点は、その 22 点が一致する特別な位置にあたる。

失点しやすい点

22 次方程式の 22 根のうち、条件 0≤a<ℓ/20\le a<\ell/2 を満たすのは小さい方だけである。両方を答えにすると誤りになる。

解答

定義に従う積分

線密度は mℓ\dfrac{m}{\ell} である。支点を原点にとり、棒に沿った座標を ss とすると、棒は s=−as=-a から s=ℓ−as=\ell-a まで伸びている。回転軸は糸の方向(棒に垂直)なので、軸からの距離は ∣s∣|s| である。したがって I=∫−aℓ−as2 mℓ ds=mℓ[s33]−aℓ−a=m3ℓ[(ℓ−a)3+a3]. I=\int_{-a}^{\ell-a}s^{2}\,\frac{m}{\ell}\,ds =\frac{m}{\ell}\left[\frac{s^{3}}{3}\right]_{-a}^{\ell-a} =\frac{m}{3\ell}\left[\left(\ell-a\right)^{3}+a^{3}\right].

整理

(ℓ−a)3=ℓ3−3ℓ2a+3ℓa2−a3\left(\ell-a\right)^{3}=\ell^{3}-3\ell^{2}a+3\ell a^{2}-a^{3} だから a3a^{3} が打ち消え I=m3ℓ(ℓ3−3ℓ2a+3ℓa2)=m3(ℓ2−3ℓa+3a2). I=\frac{m}{3\ell}\left(\ell^{3}-3\ell^{2}a+3\ell a^{2}\right) =\frac{m}{3}\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right).

重心の上昇

支点から重心までの距離は d=ℓ2−ad=\dfrac{\ell}{2}-a。棒を鉛直から θ\theta 傾けると、重心は支点を中心とする半径 dd の円弧上を動き、高さは d(1−cos⁡θ)d\left(1-\cos\theta\right) だけ上がる。

位置エネルギー

ΔU=mgd(1−cos⁡θ)=mg(ℓ2−a)(1−cos⁡θ). \Delta U=mgd\left(1-\cos\theta\right) =mg\left(\frac{\ell}{2}-a\right)\left(1-\cos\theta\right).

力のモーメント

重力 mgmg は重心に鉛直下向きに働き、支点からの腕の長さは dsin⁡θd\sin\theta である。したがってモーメントの大きさは N=mgdsin⁡θ=mg(ℓ2−a)sin⁡θ N=mgd\sin\theta=mg\left(\frac{\ell}{2}-a\right)\sin\theta で、向きは θ\theta を減らす向き(復元的)である。

剛体の回転の運動エネルギー

棒は支点を通る糸を軸として角速度 θ˙\dot\theta で回転する。軸から距離 ∣s∣|s| の質量要素の速さは ∣s∣θ˙|s|\dot\theta だから K=∫12(∣s∣θ˙)2dm=12θ˙2∫s2dm=12Iθ˙2. K=\int\frac12\left(|s|\dot\theta\right)^{2}dm =\frac12\dot\theta^{2}\int s^{2}dm=\frac12I\dot\theta^{2}.

設問1を代入

K=12⋅m3(ℓ2−3ℓa+3a2)θ˙2=m6(ℓ2−3ℓa+3a2)θ˙2. K=\frac12\cdot\frac{m}{3}\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right)\dot\theta^{2} =\frac{m}{6}\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right)\dot\theta^{2}.

運動方程式

支点まわりの回転の運動方程式は Iθ¨=−mgdsin⁡θ≃−mgd θ(d=ℓ2−a). I\ddot\theta=-mgd\sin\theta\simeq-mgd\,\theta \qquad\left(d=\frac{\ell}{2}-a\right).

角振動数

ω2=mgdI=mg(ℓ2−a)m3(ℓ2−3ℓa+3a2)=3g(ℓ−2a)2(ℓ2−3ℓa+3a2). \omega^{2}=\frac{mgd}{I} =\frac{mg\left(\dfrac{\ell}{2}-a\right)}{\dfrac{m}{3}\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right)} =\frac{3g\left(\ell-2a\right)}{2\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right)} .

周期

T=2πω=2π2(ℓ2−3ℓa+3a2)3g(ℓ−2a). T=\frac{2\pi}{\omega} =2\pi\sqrt{\frac{2\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right)}{3g\left(\ell-2a\right)}} .

最大化すべき量

TT が最小 ⟺\Longleftrightarrow ω2\omega^{2} が最大。設問 44 より ω2=3g2f(a),f(a)=ℓ−2aℓ2−3ℓa+3a2. \omega^{2}=\frac{3g}{2}f(a), \qquad f(a)=\frac{\ell-2a}{\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}} . f(a)f(a) を 0≤a<ℓ/20\le a<\ell/2 で最大にする。

微分

分母を D(a)=ℓ2−3ℓa+3a2D(a)=\ell^{2}-3\ell a+3a^{2} とすると D′=−3ℓ+6aD'=-3\ell+6a。 f′(a)=−2D−(ℓ−2a)D′D2. f'(a)=\frac{-2D-\left(\ell-2a\right)D'}{D^{2}} . 分子を展開すると −2(ℓ2−3ℓa+3a2)−(ℓ−2a)(−3ℓ+6a)=−2ℓ2+6ℓa−6a2+3ℓ2−6ℓa−6ℓa+12a2=ℓ2−6ℓa+6a2.\begin{align*} -2\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right)-\left(\ell-2a\right)\left(-3\ell+6a\right) &=-2\ell^{2}+6\ell a-6a^{2}+3\ell^{2}-6\ell a-6\ell a+12a^{2}\\ &=\ell^{2}-6\ell a+6a^{2}. \end{align*}

停留点

6a2−6ℓa+ℓ2=06a^{2}-6\ell a+\ell^{2}=0 を解いて a=6ℓ±36ℓ2−24ℓ212=6ℓ±23 ℓ12=(3±3)ℓ6. a=\frac{6\ell\pm\sqrt{36\ell^{2}-24\ell^{2}}}{12} =\frac{6\ell\pm2\sqrt3\,\ell}{12} =\frac{\left(3\pm\sqrt3\right)\ell}{6} . (3+3)ℓ6≃0.789ℓ\dfrac{\left(3+\sqrt3\right)\ell}{6}\simeq0.789\ell は a<ℓ/2a<\ell/2 を満たさないので不適。したがって a=(3−3)ℓ6≃0.211 ℓ. a=\frac{\left(3-\sqrt3\right)\ell}{6}\simeq0.211\,\ell .

最大であることの確認

f′f' の分子 6a2−6ℓa+ℓ26a^{2}-6\ell a+\ell^{2} は a=0a=0 で ℓ2>0\ell^{2}>0、a=ℓ/2a=\ell/2 で 32ℓ2−3ℓ2+ℓ2=−12ℓ2<0\frac32\ell^{2}-3\ell^{2}+\ell^{2}=-\frac12\ell^{2}<0。aa の増加とともに正から負に変わるので、この停留点は ff の極大、すなわち TT の極小である。

最終答

I=m3(ℓ2−3ℓa+3a2)\displaystyle I=\frac{m}{3}\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right)(証明終わり)

ΔU=mg(ℓ2−a)(1−cos⁡θ)\displaystyle \Delta U=mg\left(\frac{\ell}{2}-a\right)\left(1-\cos\theta\right)、 N=mg(ℓ2−a)sin⁡θ\displaystyle N=mg\left(\frac{\ell}{2}-a\right)\sin\theta(復元方向)

K=12Iθ˙2=m6(ℓ2−3ℓa+3a2)θ˙2\displaystyle K=\frac12I\dot\theta^{2} =\frac{m}{6}\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right)\dot\theta^{2}

T=2π2(ℓ2−3ℓa+3a2)3g(ℓ−2a)\displaystyle T=2\pi\sqrt{\frac{2\left(\ell^{2}-3\ell a+3a^{2}\right)}{3g\left(\ell-2a\right)}}

a=(3−3)ℓ6≃0.211 ℓ\displaystyle a=\frac{\left(3-\sqrt3\right)\ell}{6}\simeq0.211\,\ell

第2問 — 電磁気学:同心円形回路の相互インダクタンスと磁場のエネルギー

中心の磁場の由来

ビオ・サバールの法則で軸上 z=0z=0 とした結果である。B=μ0IR22(R2+z2)3/2B=\dfrac{\mu_0IR^{2}}{2\left(R^{2}+z^{2}\right)^{3/2}} に z=0z=0、R=a1R=a_1 を代入すればよい。

12\frac12 の意味

電流を 00 から I1I_1 まで立ち上げる間、逆起電力 L1 di/dtL_1\,di/dt に抗して電源が行う仕事は ∫0I1L1i di=12L1I12\int_0^{I_1}L_1i\,di=\frac12L_1I_1^{2}。12\frac12 はこの積分から出る。設問 44 で同じ手順を繰り返すので、ここで確認しておく。

失点しやすい点

中心の磁束密度の分母は 2a12a_1 であって 4πa14\pi a_1 ではない。円周にわたる積分で 2π2\pi が出ることを思い出す。

設問2 相互インダクタンス

相反性

MM は「回路 22 に電流を流して回路 11 を貫く磁束を測った」場合にも同じ値になる(M12=M21M_{12}=M_{21})。ただしその向きの計算は、回路 22 が作る磁気双極子場を回路 11 の全面にわたって積分する必要があり、はるかに面倒である。a1≫a2a_1\gg a_2 という条件のおかげで、易しい方の順序を選べる。

結合係数

k=ML1L2k=\dfrac{M}{\sqrt{L_1L_2}} は ∣k∣≤1|k|\le1 を満たす。設問 55 の数値では L1L2=1.0×10−4×1.0×10−8=1.0×10−6 H\sqrt{L_1L_2}=\sqrt{1.0\times10^{-4}\times1.0\times10^{-8}}=1.0\times10^{-6}\,\mathrm H で k=5.0×10−6/1.0×10−6=5k=5.0\times10^{-6}/1.0\times10^{-6}=5 となり 11 を超える。設問 55 の値は物理的に実現しない仮想的な数値であることが分かる。

失点しやすい点

a1≫a2a_1\gg a_2 を使うことを明記する。この近似がなければ、楕円積分が現れて閉じた形にならない。

設問3 磁束と誘導起電力

回路1にも起電力が生じること

回路 11 の電流は一定でも、回路 22 の電流変化が回路 11 に起電力を誘導する。これを打ち消して I1I_1 を保つには、回路 11 の電源が仕事をしなければならない。設問 44 の MI1I2MI_1I_2 の項はここから出る。

符号の意味

負号はレンツの法則、すなわち磁束の変化を妨げる向きに起電力が生じることを表す。エネルギー保存の要請でもある。

失点しやすい点

V1V_1 に L1 dI1/dtL_1\,dI_1/dt の項を書かない。I1I_1 が一定という条件を使う。

設問4 磁場のエネルギー

交差項に 12\frac12 が付かない理由

自己項では電流が 00 から立ち上がる間に平均 12\frac12 の効果しか出ないが、交差項では回路 11 の電流が最初から I1I_1 の一定値である。よって 12\frac12 が付かない。ここが最も間違えやすい。

順序を逆にしても同じ

回路 22 を先に立ち上げると 12L2I22\frac12L_2I_2^{2}、次に回路 11 を立ち上げるときに 12L1I12+MI1I2\frac12L_1I_1^{2}+MI_1I_2 が出て、合計は変わらない。UU が状態量であることの確認になる。

正定値性

U=12L1I12+MI1I2+12L2I22U=\frac12L_1I_1^{2}+MI_1I_2+\frac12L_2I_2^{2} が任意の I1I_1、I2I_2 に対して非負であるためには M2≤L1L2M^{2}\le L_1L_2 が必要である。相互インダクタンスに上限があるのはこの理由による。

失点しやすい点

W12W_{12} を落とすと U=12L1I12+12L2I22U=\frac12L_1I_1^{2}+\frac12L_2I_2^{2} となって交差項が現れない。回路 11 の電源の役割を必ず数える。

設問5 数値計算

交差項が支配的であること

33 項のうち MI1I2MI_1I_2 が 5.0×10−10 J5.0\times10^{-10}\,\mathrm J で全体の 83%83\% を占める。自己項は II の 22 乗で効くので、片方の電流が小さいと寄与も小さい。交差項は 22 つの電流の積なので、片方が小さくてももう片方が大きければ生き残る。

電圧に直すと

V=Q/C=2.4×10−8/5.0×10−7=4.9×10−2 VV=Q/C=2.4\times10^{-8}/5.0\times10^{-7}=4.9\times10^{-2}\,\mathrm V。約 50 mV50\,\mathrm{mV} で、扱いやすい大きさである。

6.0×10−16\sqrt{6.0\times10^{-16}} の計算

6.0=2.449\sqrt{6.0}=2.449、10−16=10−8\sqrt{10^{-16}}=10^{-8}。指数を偶数にしてから開くと計算が速い。

失点しやすい点

mH\mathrm{mH}、μH\mu\mathrm H、mA\mathrm{mA}、μF\mu\mathrm F が混在している。すべて SI 基本単位に直してから代入する。とくに L2=1.0×10−2 μH=10−8 HL_2=1.0\times10^{-2}\,\mu\mathrm H=10^{-8}\,\mathrm H の 22 段階の換算に注意する。

電磁気学:同心円形回路の相互インダクタンスと磁場のエネルギーの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 波動:張られた弦の波動方程式とピアノの打弦点

xx 成分が意味すること

θ≪1\theta\ll1 では cos⁡θ≃1−θ22\cos\theta\simeq1-\frac{\theta^{2}}{2} なので、この式は θ\theta の 22 次までは自動的に満たされる。すなわち横振動の 11 次の近似では、張力の水平成分は弦に沿って一定である。TT を定数として扱えるのはこのためである。

張力が一定という仮定

問題文の「変位は微小で λ\lambda や TT の変化は無視できる」という条件がここに効く。実際には振動によって弦がわずかに伸び、張力が変化する。大振幅では非線形効果として現れ、音程がわずかに上がる原因になる。

失点しやすい点

A\mathrm A 端の張力は −x-x 方向を向くので符号が逆になる。22 端の寄与の差を取ることを明示する。

設問2 波動方程式と波の速さ

次元の確認

[T/λ]=Nkg/m=kg⋅m/s2kg/m=m/s\left[\sqrt{T/\lambda}\right]=\sqrt{\dfrac{\mathrm N}{\mathrm{kg/m}}}=\sqrt{\dfrac{\mathrm{kg\cdot m/s^{2}}}{\mathrm{kg/m}}}=\mathrm{m/s}。速さの次元になっている。

一般解

波動方程式の一般解はダランベールの形 y=f(x−vt)+g(x+vt)y=f(x-vt)+g(x+vt) で、右向きと左向きの進行波の重ね合わせである。設問 33 の定在波の級数は、両端固定という境界条件のもとでこれを書き直したものにあたる。

ピアノの弦での値

T≃700 NT\simeq700\,\mathrm N、λ≃6×10−3 kg/m\lambda\simeq6\times10^{-3}\,\mathrm{kg/m} 程度なら v≃340 m/sv\simeq340\,\mathrm{m/s}。長さ 0.6 m0.6\,\mathrm m の弦の基本振動数は v/(2ℓ)≃280 Hzv/(2\ell)\simeq280\,\mathrm{Hz} で、中央のドの付近になる。

失点しやすい点

右辺の括弧が 22 階微分になることを、11 階微分の差として明示する。Δx\Delta x が両辺で約分されることを確認する。

設問3 固有振動数

倍音列

fn=nf1f_n=nf_1 と整数倍に並ぶ。この整数比が、弦楽器の音が「一つの高さの音」として聞こえる理由である。11 次元の弦に特有の性質で、太鼓の膜(22 次元)では固有振動数が整数比にならず、音高が定まりにくい。

n=0n=0 を除く理由

n=0n=0 では k0=0k_0=0 で y≡0y\equiv0、振動が存在しない。負の nn は AnA_n の符号を変えるだけで新しい解を与えない。

音程の調整

f1∝Tf_1\propto\sqrt{T} なので、調律は張力を変えて行う。11 半音(21/12=1.062^{1/12}=1.06 倍)上げるには張力を 1.121.12 倍にする必要がある。

設問4 初期条件から定まる AnA_n と ϕn\phi_n

1/n1/n の減衰

高次の倍音ほど振幅が小さくなる(An∝1/nA_n\propto1/n)。それでも減り方は緩やかで、多くの倍音が励起される。撃力(デルタ関数)という「あらゆる空間周波数を含む」初期条件を与えたためである。

弾く場合との違い

弦をつまんで離す(初期変位が三角形、初速 00)場合は ϕn=π/2\phi_n=\pi/2、An∝1/n2A_n\propto1/n^{2} となり、倍音の減り方がずっと速い。ピアノ(打弦)とギター(撥弦)の音色の違いは、この初期条件の違いに由来する。

デルタ関数の扱い

∫δ(x−a)f(x)dx=f(a)\int\delta(x-a)f(x)dx=f(a) を使うだけで積分が終わる。実際のハンマーは有限の幅 ww をもつので、n≳ℓ/wn\gtrsim\ell/w の倍音はさらに抑えられる。

失点しやすい点

ϕn\phi_n を先に決めてから AnA_n を求める。順序を逆にすると連立が解けない。また規格化因子 2/ℓ2/\ell を落とさない。

設問5 腹と節の位置、打弦点の違い

ピアノの打弦点

実際のピアノでは、弦の端から 17\dfrac{1}{7} から 19\dfrac{1}{9} の位置を打つよう設計されている。a=ℓ/7a=\ell/7 なら n=7,14,…n=7,14,\dots の倍音が消える。第 77 倍音は基音に対する周波数比が 77 で、平均律の音階から大きく外れて濁って聞こえる。これを消すために打弦点が選ばれている。

中央を打たない理由

a=ℓ/2a=\ell/2 は基音(n=1n=1)の腹なので基音は最大に励起されるが、偶数次の倍音がすべて消えて音がやせる。クラリネットのような閉管楽器の音色(奇数倍音のみ)に近くなる。豊かな音を得るには、中央を避けつつ特定の高次倍音だけを落とす位置が望ましい。

エネルギーの配分

nn 次モードのエネルギーは ∝ωn2An2∝sin⁡2(nπa/ℓ)\propto\omega_n^{2}A_n^{2}\propto\sin^{2}\left(n\pi a/\ell\right) で、nn に依らない一定の重みをもつ。撃力は各モードに等しくエネルギーを配る(節を除く)ことが分かる。

失点しやすい点

腹の位置を x=jℓ2nx=\dfrac{j\ell}{2n} とまとめない。奇数の 2j−12j-1 が入ることを確認する。また jj の範囲を明示すると答案が正確になる。

波動:張られた弦の波動方程式とピアノの打弦点の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 量子力学:2つのデルタ関数井戸の束縛状態

振動解にならない理由

E<0E<0、V=0V=0 の領域は古典的に禁止された領域である。したがって解は振動する e±ikxe^{\pm ikx} ではなく、指数関数的に増減する e±κxe^{\pm\kappa x} になる。束縛状態を扱うときの出発点である。

どちらの組を使うか

∣x∣>a|x|>a の外側領域では、無限遠で ψ→0\psi\to0 を要求するので e∓κxe^{\mp\kappa x} の片方だけが許される。−a<x<a-a<x<a の内側領域では両方が許されるが、偶奇性を使うと cosh⁡\cosh または sinh⁡\sinh のどちらか一方に絞れる。目的に応じて基底を選ぶ。

κ\kappa の意味

1/κ1/\kappa は波動関数が外側で減衰する長さ(局在長)である。束縛が浅い(∣E∣|E| が小さい)ほど κ\kappa が小さく、粒子は広く広がる。

設問2 偶関数ポテンシャルと波動関数の偶奇

パリティ演算子による言い換え

P^ψ(x)=ψ(−x)\hat P\psi(x)=\psi(-x) と定義すると、VV が偶関数のとき [H^,P^]=0\left[\hat H,\hat P\right]=0。可換な演算子は同時固有状態をもち、P^2=1\hat P^{2}=1 から P^\hat P の固有値は ±1\pm1 に限られる。本解の議論はこれを具体的に書き下ろしたものである。

縮退がないことの重要性

縮退があると、同じ EE の解の 11 次結合が自由に作れてしまい、偶奇の断定ができなくなる。33 次元の中心力場では ℓ\ell に対する (2ℓ+1)(2\ell+1) 重の縮退があるが、その場合も球面調和関数がパリティ (−1)ℓ(-1)^{\ell} の固有状態として選べる。

散乱状態への注意

E>0E>0 の散乱状態は連続スペクトルで 22 重に縮退している。したがってこの議論はそのままでは適用できず、偶奇の解を独立に構成する形をとる。

失点しやすい点

「ψ(−x)\psi(-x) が解である」ことと「ψ\psi 自身が偶または奇である」ことは別である。縮退の非存在という前提を経由する必要がある。

設問3 x=±ax=\pm a での接続条件

跳びの符号

引力(V0>0V_0>0、ポテンシャルは −V0δ-V_0\delta)なので右辺は負、すなわち井戸を通過すると傾きが減る。波動関数が井戸の位置で上に尖った形になり、両側へ減衰していく描像に対応する。

2mV0/ℏ22mV_0/\hbar^{2} の次元

V0V_0 は[エネルギー×長さ]の次元をもつ(δ\delta が[長さ−1^{-1}]だから)。したがって 2mV0/ℏ22mV_0/\hbar^{2} は[長さ−1^{-1}]で、κ\kappa と同じ次元になる。以下ではこれを Λ≡2mV0ℏ2\Lambda\equiv\dfrac{2mV_0}{\hbar^{2}} と書く。

失点しやすい点

連続なのは ψ\psi、不連続なのは ψ′\psi' である。逆にすると以降がすべて狂う。

設問4 偶関数解の書き下ろしと関係式

x=−ax=-a の条件が自動的に満たされること

偶関数として構成したので、x=−ax=-a での連続条件と跳びの条件は x=ax=a のものと同一である。独立な条件は 22 本だけで、未知数は BB、CC、κ\kappa の 33 つ。全体の定数倍は自由なので、κ\kappa を決める式が 11 本残る。これが設問 55 の式である。

eκae^{\kappa a} を使った同値な形

cosh⁡κa+sinh⁡κa=eκa\cosh\kappa a+\sinh\kappa a=e^{\kappa a} だから、関係式は κeκa=Λcosh⁡κa\kappa e^{\kappa a}=\Lambda\cosh\kappa a とも書ける。こちらの形も同じくらい扱いやすい。

奇関数解

内側を Bsinh⁡κxB\sinh\kappa x、外側を ±Ce∓κx\pm Ce^{\mp\kappa x} とすると、同じ手順で κ(1+coth⁡κa)=Λ\kappa\left(1+\coth\kappa a\right)=\Lambda が得られる。設問 55 の議論と比較すると差がはっきりする。

失点しやすい点

内側で eκxe^{\kappa x} と e−κxe^{-\kappa x} を独立に置くと未知数が増えるだけで、偶奇性の情報を捨てることになる。cosh⁡\cosh にまとめる。

設問5 束縛状態が必ず1つ存在すること

22 つの極限

κa≫1\kappa a\gg1(井戸が十分離れている、または束縛が深い)では tanh⁡→1\tanh\to1 で κ≃Λ2=mV0ℏ2\kappa\simeq\dfrac{\Lambda}{2}=\dfrac{mV_0}{\hbar^{2}}、 E≃−mV022ℏ2. E\simeq-\frac{mV_0^{2}}{2\hbar^{2}} . これは単独の井戸の束縛エネルギーに一致する。22 つの井戸が独立に働く極限である。 逆に κa≪1\kappa a\ll1(井戸が近い)では tanh⁡κa≃κa\tanh\kappa a\simeq\kappa a で κ≃Λ\kappa\simeq\Lambda、 E≃−2mV02ℏ2. E\simeq-\frac{2mV_0^{2}}{\hbar^{2}} . これは強さ 2V02V_0 の単独の井戸の結果に等しく、22 つの井戸が合体して見える極限である。

奇関数解との対比

奇関数解の方程式は Fodd(κ)=κ(1+coth⁡κa)=ΛF_{\mathrm{odd}}(\kappa)=\kappa\left(1+\coth\kappa a\right)=\Lambda である。κ→0\kappa\to0 で κcoth⁡κa→1a\kappa\coth\kappa a\to\dfrac1a だから Fodd(0+)=1a>0F_{\mathrm{odd}}(0^{+})=\dfrac1a>0。したがって解が存在するのは Λ>1a⟺V0>ℏ22ma \Lambda>\frac1a \quad\Longleftrightarrow\quad V_0>\frac{\hbar^{2}}{2ma} のときに限る。奇関数の束縛状態は「井戸が十分強いか、十分離れているとき」にだけ現れる。偶関数が常に存在するのと対照的で、この 22 状態の分裂が化学結合(水素分子イオン)の結合性・反結合性軌道に対応する。

基底状態が偶関数であること

偶関数解は節をもたず、奇関数解は x=0x=0 に節を 11 つもつ。11 次元では節の少ない状態ほどエネルギーが低いので、常に存在する偶関数解が基底状態である。

失点しやすい点

「解が存在する」だけでなく「ただ 11 つ」まで示す。単調性を述べれば両方が同時に言える。

量子力学:2つのデルタ関数井戸の束縛状態の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 統計力学:3準位系(2重縮退)の熱力学とショットキー比熱

準位と状態を区別する

比が e−D/kTe^{-D/kT} ではなく 2e−D/kT2e^{-D/kT} になるのは、E1E_1 に属する「状態」が 22 つあるからである。ボルツマン因子は状態ごとに掛かり、縮退度は状態数として数える。

特徴的な温度

n1/n0=1n_1/n_0=1 となるのは e−D/kT=1/2e^{-D/kT}=1/2、すなわち T=Dkln⁡2≃1.44DkT=\dfrac{D}{k\ln2}\simeq1.44\dfrac{D}{k}。この付近が「励起が起こり始める」温度の目安になる。

失点しやすい点

高温極限で 11 ではなく 22 になる。縮退を落とすと以降の ln⁡3\ln3 や比熱の値がすべてずれる。

設問2 分配関数と自由エネルギー

独立粒子の分配関数が積になること

全系のエネルギーが各粒子のエネルギーの和 E=∑iϵiE=\sum_i\epsilon_i で書けるとき、Z=∑全配置e−βEZ=\sum_{\text{全配置}}e^{-\beta E} は各粒子についての和の積に分解する。相互作用がないことが本質である。

N!N! で割らない理由

理想気体では同種粒子の不可弁別性から N!N! で割るが、ここでは粒子が空間的に区別できる(不純物や格子欠陥のような描像)と考える。割ると示量性が壊れるので、問題の設定に合わせる。

FF の極限

T→0T\to0 で F→0F\to0、T→∞T\to\infty で F→−NkTln⁡3F\to-NkT\ln3。後者は 3N3^{N} 個の等確率な状態に対応する自由エネルギー −kTln⁡3N-kT\ln3^{N} に一致する。

設問3 エントロピー

熱力学第3法則

T→0T\to0 で S→0S\to0 となるのは、基底状態が縮退していないためである。もし E0E_0 が g0g_0 重に縮退していれば S→Nkln⁡g0S\to Nk\ln g_0 の残留エントロピーが残る。氷の残留エントロピーはこの型の例である。

別の求め方

S=−Nk∑ipiln⁡piS=-Nk\sum_i p_i\ln p_i(pip_i は各状態の占有確率)からも同じ結果が出る。p0=1/zp_0=1/z、p1=p2=e−D/kT/zp_1=p_2=e^{-D/kT}/z を代入すればよい。統計的な意味が見えるので、余裕があれば併記するとよい。

単調性

SS は TT の単調増加関数で、00 から Nkln⁡3Nk\ln3 まで増える。増加が最も急なのは、次の設問で見る比熱が最大になる温度付近である。

設問4 内部エネルギーと比熱

UU の極限

T→0T\to0 で U→0U\to0(全員が基底状態)、T→∞T\to\infty で U→2ND3U\to\dfrac{2ND}{3}。後者は 33 つの状態が等確率のときの平均エネルギー 0+D+D3×N=2ND3\dfrac{0+D+D}{3}\times N=\dfrac{2ND}{3} に一致する。上限があるのが有限準位系の特徴である。

CC の無次元表示

x=D/(kT)x=D/(kT) を使うと C=2Nk x2ex(ex+2)2. C=2Nk\,\frac{x^{2}e^{x}}{\left(e^{x}+2\right)^{2}} . TT と DD が xx という組み合わせでしか現れないので、C/(Nk)C/(Nk) を kT/DkT/D の関数として描けば普遍的な曲線になる。設問 66 で使う。

検算

U=∂∂βU=\dfrac{\partial}{\partial\beta} の関係の代わりに U=F+TSU=F+TS を使ってもよい。設問 22・33 の結果を代入すると同じ式になり、33 つの設問の整合が確認できる。

設問5 比熱の2つの極限

高温で 00 になる理由

こちらも一言添えるとよい。kT≫DkT\gg D ではすでに 33 つの状態がほぼ等確率に占められており、これ以上温度を上げても分布が変わらない。内部エネルギーが飽和値 2ND/32ND/3 に近づくので dU/dT→0dU/dT\to0 となる。上限のあるエネルギースペクトルに特有の振る舞いで、調和振動子(準位が無限に続く)では高温で C→NkC\to Nk に落ち着き 00 にはならない。

22 つのゼロの違い

低温側は指数的、高温側は冪的である。実験的には、低温側の傾きの対数プロットから準位間隔 DD を読み取ることができる。

失点しやすい点

「両極限とも 00」で終わらず、温度依存性の形(e−D/kTe^{-D/kT} と 1/T21/T^{2})を示す。設問が「温度依存性を示して説明」と要求している。

設問6 比熱の温度依存性のグラフ

ショットキー異常

有限個の準位からなる系に特有のこの山は「ショットキー異常」と呼ばれる。結晶中の不純物イオンの基底多重項、核スピン系、二準位系などで実際に観測される。比熱の測定から準位間隔 DD と縮退度を決める標準的な手段である。

縮退度が形に及ぼす影響

縮退がない 22 準位系(g1=1g_1=1)では C=Nkx2ex(ex+1)2C=Nk\dfrac{x^{2}e^{x}}{\left(e^{x}+1\right)^{2}} で、極大は x≃2.4x\simeq2.4、Cmax⁡≃0.44NkC_{\max}\simeq0.44Nk。本問の 22 重縮退があると山が高く、位置がやや低温側にずれる。上の準位の状態数が多いほど励起が起こりやすいためである。

格子比熱との区別

実際の固体では格子振動の比熱(低温で T3T^{3})が背景にある。ショットキー成分は特定の温度域に山として現れるので、両者を分離して解析できる。

失点しやすい点

グラフは「立ち上がり・山・減衰」の 33 つの特徴を持たせる。単調増加や単調減少に描くと、設問 55 で示した両極限がゼロという結果と矛盾する。

統計力学:3準位系(2重縮退)の熱力学とショットキー比熱の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 力学:逆二乗力とルンゲ・レンツベクトル

符号と力の性質

α>0\alpha>0 なら力は r⃗\vec r と同じ向き、すなわち斥力である(クーロン反発)。α<0\alpha<0 なら引力で、α=−GMm\alpha=-GMm と置けば万有引力になる。以下の議論はどちらでも成り立つ。

11 階形にする利点

r⃗\vec r と p⃗\vec p を対等に扱う形にしておくと、設問 33 でルンゲ・レンツベクトルを時間微分するときに代入が機械的になる。

∇(1/r)\nabla\left(1/r\right)

∇1r=−r⃗r3\nabla\dfrac{1}{r}=-\dfrac{\vec r}{r^{3}} は頻出の公式である。∂r∂x=xr\dfrac{\partial r}{\partial x}=\dfrac{x}{r} から導ける。

設問2 運動が平面内に限られる理由

L⃗=0⃗\vec L=\vec 0 の場合

初速度が動径方向のときは L⃗=0⃗\vec L=\vec 0 で、上の議論は平面を決めない。しかしこのとき運動は原点を通る直線上に限られるので、やはり(無数にある)ある平面内の運動である。答案では一言触れておくとよい。

中心力一般で成り立つこと

使ったのは「力が r⃗\vec r に平行」ということだけで、1/r21/r^{2} という具体形は使っていない。したがって任意の中心力で平面運動になる。

対称性との対応

角運動量保存は回転対称性の帰結である(ネーターの定理)。UU が rr のみの関数であることが回転対称性にあたる。

設問3 ルンゲ・レンツベクトルの保存

1/r1/r に特有であること

第 11 項の計算で 1r3\dfrac{1}{r^{3}} という指数がちょうど効いて、第 22 項と打ち消し合った。U∝1/rnU\propto1/r^{n} で n≠1n\neq1 ならこの相殺は起こらず、A⃗\vec A は保存しない。逆二乗力に固有の「隠れた対称性」である。

幾何学的な意味

軌道が楕円のとき、A⃗\vec A は近点(原点に最も近い点)から遠点へ向かう向きを指し、大きさは離心率に比例する。A⃗\vec A が保存することは、楕円の向きが変わらない、すなわち軌道が閉じることを意味する。水星の近日点移動は一般相対論の効果でこの保存が破れるためである。

r⃗⋅v⃗=rr˙\vec r\cdot\vec v=r\dot r の導出

r2=r⃗⋅r⃗r^{2}=\vec r\cdot\vec r を微分して 2rr˙=2r⃗⋅v⃗2r\dot r=2\vec r\cdot\vec v。この関係は中心力の計算で繰り返し使う。

失点しやすい点

L⃗\vec L が定数であることを先に断ってから微分する。p⃗×dL⃗dt\vec p\times\dfrac{d\vec L}{dt} の項を残すと計算が終わらない。

設問4 直交性と A2A^{2} の関係式

離心率との関係

軌道の離心率は e=Am∣α∣e=\dfrac{A}{m|\alpha|} で与えられる。上の関係式を代入すると e2=1+2EL2mα2 e^{2}=1+\frac{2EL^{2}}{m\alpha^{2}} となり、E<0E<0 で e<1e<1(楕円)、E=0E=0 で e=1e=1(放物線)、E>0E>0 で e>1e>1(双曲線)という軌道の分類がそのまま出る。円軌道は A=0A=0、すなわち E=−mα22L2E=-\dfrac{m\alpha^{2}}{2L^{2}} のときである。

A⃗\vec A が軌道平面内にあること

A⃗⊥L⃗\vec A\perp\vec L は、A⃗\vec A が運動の起こる平面の中に横たわることを意味する。33 次元のベクトルでありながら、実質的には平面内の 22 成分しか自由度をもたない。

軌道方程式の導出

A⃗⋅r⃗=Arcos⁡θ\vec A\cdot\vec r=A r\cos\theta を直接計算すると A⃗⋅r⃗=L2+mαr\vec A\cdot\vec r=L^{2}+m\alpha r、 これを解いて r=L2/(m∣α∣)±1+ecos⁡θr=\dfrac{L^{2}/(m|\alpha|)}{\pm1+e\cos\theta} という円錐曲線の式が出る。ルンゲ・レンツベクトルを使うと、微分方程式を解かずに軌道が求まる。

失点しやすい点

∣p⃗×L⃗∣2=p2L2\left|\vec p\times\vec L\right|^{2}=p^{2}L^{2} とできるのは p⃗⊥L⃗\vec p\perp\vec L だからである。一般には ∣a⃗×b⃗∣2=a2b2−(a⃗⋅b⃗)2\left|\vec a\times\vec b\right|^{2}=a^{2}b^{2}-\left(\vec a\cdot\vec b\right)^{2} で、この場合に第 22 項が消える。

設問5 独立な保存量の個数

55 が意味すること

33 次元の 11 質点の運動は 66 次元の位相空間 (r⃗,p⃗)\left(\vec r,\vec p\right) で記述される。独立な保存量が 55 個あると、運動は 6−5=16-5=1 次元の曲線に完全に閉じ込められる。すなわち軌道が閉じた曲線になる。これがケプラー問題で軌道が閉じる理由である。

最大超可積分性

一般の中心力では保存量は EE と L⃗\vec L の 44 個で、軌道は 22 次元の面(トーラス)を埋め尽くし、近点が回る。逆二乗力と 33 次元等方調和振動子だけが 55 個の保存量をもつ「最大超可積分系」で、ベルトランの定理が保証する 22 つの例外にあたる。

量子論での対応

量子力学では L⃗\vec L と A⃗\vec A が SO(4)\mathrm{SO}(4) という隠れた対称性の生成子をなす。水素原子のエネルギー準位が nn だけで決まり、ℓ\ell に対して n2n^{2} 重に縮退するのはこの対称性による。パウリはシュレディンガー方程式を解く前に、この代数だけから水素原子のスペクトルを導いた。

失点しやすい点

77 個と答えて終わらない。設問が「問 33 と問 44 の結果をもとに」と指定しているのは、設問 44 の 22 本の関係式を拘束条件として数えさせるためである。

力学:逆二乗力とルンゲ・レンツベクトルの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2025年度(全6問)

    解析力学:最小作用の原理とばねでつながれた質点 / 電磁気学:誘電体を挟んだ同軸円筒コンデンサー / 実験物理:ノギスの読み取りと振り子による重力加速度の測定

  • 2024年度(全6問)

    力学:単振り子とパラメトリック励振 / 電磁気学:平行二線(レッヘル線)の特性インピーダンス / 熱物理・実験:半無限体の熱伝導とサーミスタ

  • 2023年度(全6問)

    力学:ジャイロスコープの歳差運動 / 電磁気学:マクスウェル方程式・ポインティングの定理・平面波 / 実験物理:陽電子とシンチレータによる同時計測

  • 2022年度(全6問)

    力学:中心力場での平面運動と有効ポテンシャル / 電磁気学:一様帯電球殻の電場と回転球殻が作る磁場 / 光学:マイケルソン干渉計による表面形状の計測

  • 2021年度(全6問)

    力学:剛体振り子と回転座標系・フーコー振り子 / 電磁気学:並進する2電荷間の静電気力と磁気力 / 熱力学:気体分子運動論と断熱大気の温度・密度分布

  • 2020年度(このページ・全6問)

    力学:穴を通した棒の剛体振り子と周期の最小化 / 電磁気学:同心円形回路の相互インダクタンスと磁場のエネルギー / 波動:張られた弦の波動方程式とピアノの打弦点

2020年度の出題内容

全6問

この6問の分野は力学2問・電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学穴を通した棒の剛体振り子と周期の最小化平行軸の定理による検算 / 特別な場合あり
第2問電磁気学・回路同心円形回路の相互インダクタンスと磁場のエネルギー中心の磁場の由来 / \frac12 の意味あり
第3問—波動:張られた弦の波動方程式とピアノの打弦点x 成分が意味すること / 張力が一定という仮定あり
第4問量子力学2つのデルタ関数井戸の束縛状態振動解にならない理由 / どちらの組を使うかあり
第5問熱・統計力学3準位系(2重縮退)の熱力学とショットキー比熱準位と状態を区別する / 特徴的な温度あり
第6問力学逆二乗力とルンゲ・レンツベクトル符号と力の性質 / 1 階形にする利点あり

2020年度の解説には失点しやすい点6件・検算1件が付いています。

神戸大学の公式過去問

公開年度範囲
2013〜2025年の物理I・物理II(実施年で表記)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
2022年実施分より英語は外部試験(TOEFL iBT)に切り替わり、英語問題の掲載はない。2021年以前の英語問題は著作権の都合で来訪閲覧のみ。
院試hubの最終確認
2026-09-05
神戸大学の公式過去問PDF