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北大 理学院 数学専攻(博士後期課程) 数学 2027年度 院試 過去問 解答例・解説(解説4項目)

解説4項目の分野は線形代数1項目、微分積分・解析1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 実行列の固有値と不変な直線・平面

設問(1) 奇数次の特性多項式

固有値は、非零ベクトルの方向を保って作用する倍率である。定義 Av=λvAv=\lambda v は (λE−A)v=0,v≠0⟺ker⁡(λE−A)≠{0} (\lambda E-A)v=0,\quad v\ne0 \quad\Longleftrightarrow\quad \ker(\lambda E-A)\ne\{0\} と書ける。正方行列では、最後の条件は行列式が0となることに等しい。v=0v=0 は全ての λ\lambda で等式を満たすので、固有ベクトルの定義から除く。行列式の零点を探す議論と、非零の核ベクトルがあるという結論を結び付ける。

中間値の定理は、閉区間上で連続な実数値関数が両端の値の間を全て取るという定理である。ここでは連続なスカラー関数 pp の符号を調べた。最高次係数が1なので、p(t)/t3→1p(t)/t^3\to1。ある RR より外ではこの比が正となり、p(t)p(t) は t3t^3 と同符号になる。係数を全て計算したり、三次方程式の解の公式を使ったりせずに実根の存在を得られる。

保証したのは実固有値が少なくとも一つあることで、三つとも実数とは限らない。例えば A0=(0−10100002),det⁡(tE−A0)=(t2+1)(t−2) A_0=\begin{pmatrix}0&-1&0\\1&0&0\\0&0&2\end{pmatrix},\qquad \det(tE-A_0)=(t^2+1)(t-2) では実固有値は2だけである。「実行列だから全固有値が実数」とすると、t2+1=0t^2+1=0 の二根 ±i\pm i を説明できない。実対称行列の固有値が全て実数になる定理には対称性という追加条件がある。

次数も条件に含まれる。この例の左上の二次行列だけなら p(t)=t2+1p(t)=t^2+1 は常に正である。一般の奇数次実行列には上と同じ符号の議論を使えるが、偶数次へは移せない。三次であることを最初に用いた箇所が、無限遠での符号の違いである。

設問(2) 固有ベクトルが張る直線

部分空間 LL が不変とは A(L)⊆LA(L)\subseteq L、すなわちその中のどのベクトルも作用後に外へ出ないことである。Aw=wAw=w を要求する条件ではない。また、像が LL 全体に一致する必要もない。固有値0の直線は全て0へ送られるが、0は直線に属するので不変性を満たす。

直線では生成ベクトル一つの行き先を確かめれば十分である。線形性により一般の元への作用が A(cv)=cAvA(cv)=cAv に決まるからである。固有方程式は生成ベクトルが同じ直線へ送られる条件そのものになっている。cc や λ\lambda が負でも、向きが反転するだけで直線からは出ない。

任意に選んだベクトルでよいわけではない。例えば A=diag⁡(1,2,3)A=\operatorname{diag}(1,2,3)、v=(1,1,0)Tv=(1,1,0)^{\mathsf T} とすると Av=(1,2,0)TAv=(1,2,0)^{\mathsf T}。これを cvcv と書くには第1成分から c=1c=1、第2成分から c=2c=2 が必要となり、両立しない。この直線は不変でない。前問で得た「固有」ベクトルを選ぶことが必要である。

逆方向も確かめられる。実直線 LL が不変なら、その生成ベクトル v≠0v\ne0 に対して Av∈LAv\in L なので Av=λvAv=\lambda v となる実数がある。従って実一次元不変部分空間の存在と、実固有値の存在が対応する。高次元では内部で方向が混ざってもよく、全ての元が固有ベクトルになる必要はない。後の平面の構成ではこの違いを用いる。

設問(3) 核の次元から平面を取る

線形写像の核は0へ送られるベクトルの集合、像は出力として得られるベクトルの集合である。階数は像の次元であり、核の次元そのものではない。有限次元の定理は入力空間の次元が「核の次元+像の次元」に分かれるという主張で、本問では核の次元が 3−1=23-1=2 になる。

定理を基底から導いておく。核の基底 k1,…,krk_1,\ldots,k_r を入力空間の基底へ拡張し、追加したベクトルを u1,…,u3−ru_1,\ldots,u_{3-r} とする。任意の入力をこの基底で表せば、核の成分は作用後に消えるので、NujNu_j は像を生成する。もし ∑jcjNuj=0\sum_j c_jNu_j=0 なら ∑jcjuj\sum_j c_ju_j が核に入り、ある係数で kik_i の結合とも表せる。拡張した基底の独立性から全ての cjc_j が0となる。従って NujNu_j は像の基底で、rank⁡N=3−r\operatorname{rank}N=3-r を得る。

次元だけでなく、元の AA に関する不変性も確かめる。核の定義 (λE−A)w=0(\lambda E-A)w=0 はそのまま Aw=λwAw=\lambda w へ移せる。作用後も同じ核の中に留まり、さらにこの平面上では AA はスカラー λ\lambda 倍として作用する。

例えば λ=2\lambda=2、A=diag⁡(2,2,5)A=\operatorname{diag}(2,2,5) なら N=diag⁡(0,0,−3)N=\operatorname{diag}(0,0,-3)。核は第3成分が0の平面で、(x,y,0)T(x,y,0)^{\mathsf T} は (2x,2y,0)T(2x,2y,0)^{\mathsf T} へ移る。階数と核の次元を取り違えて「核は一次元」とすると、(1,0,0)T(1,0,0)^{\mathsf T} と (0,1,0)T(0,1,0)^{\mathsf T} の二本が独立に核へ入る事実と矛盾する。

設問(4) 像を使えば固有ベクトル二本は不要

二つの線形写像が可換、すなわち AN=NAAN=NA なら、NN の像は AA で不変になる。出力 NuNu に AA を作用させたものを、入力を AuAu に変えた NN の出力として書けるからである。本問の NN は AA の一次多項式なので可換性が成り立つ。行列の積は一般に可換ではないが、同じ一つの行列の多項式同士は可換である。

核を使う前小問の方法をそのまま続けると、階数2では核の次元は1となり、平面を得られない。ここでは入力側で消える方向から、出力側の二次元の広がりへ切り替えた。AA の実対角化や別の実固有値の存在は仮定しない。

例えば J=(010001000),A=λE−J J=\begin{pmatrix}0&1&0\\0&0&1\\0&0&0\end{pmatrix},\qquad A=\lambda E-J では N=JN=J の核は span⁡{e1}\operatorname{span}\{e_1\}、像は span⁡{e1,e2}\operatorname{span}\{e_1,e_2\}。像の中では Ae1=λe1Ae_1=\lambda e_1、Ae2=λe2−e1Ae_2=\lambda e_2-e_1 となり、e2e_2 が固有ベクトルでなくても平面は不変である。「二次元不変部分空間には独立な固有ベクトルが二本必要」とすると、この例を除いてしまう。

可換性を省いて任意の像が不変とするのも誤りである。N=diag⁡(1,1,0)N=\operatorname{diag}(1,1,0) の像に e1e_1 は入るが、Ae1=e3Ae_1=e_3 とする行列では像の外へ送られる。本問で N=λE−AN=\lambda E-A という関係を使った箇所が、AN=NAAN=NA の等式である。

固有値 λ\lambda に対して NN は特異なので階数3はない。階数0なら A=λEA=\lambda E で任意の平面が不変となる。階数1、2をそれぞれ核と像で扱えば、実三次行列には実不変直線と実不変平面がともに存在すると分かる。

解答

設問(1) 奇数次の特性多項式

実数 tt に対し p(t)=det⁡(tE−A)p(t)=\det(tE-A) と置く。実係数多項式で、最高次の項は t3t^3 だから lim⁡t→+∞p(t)=+∞,lim⁡t→−∞p(t)=−∞. \lim_{t\to+\infty}p(t)=+\infty,\qquad \lim_{t\to-\infty}p(t)=-\infty. 十分大きい R>0R>0 では p(−R)<0<p(R)p(-R)<0<p(R)。多項式の連続性と中間値の定理から、p(λ)=0p(\lambda)=0 となる実数 λ\lambda が存在する。実行列 λE−A\lambda E-A は特異なので、核に非零の実ベクトル vv を取れる。

設問(2) 固有ベクトルが張る直線

前問の非零実固有ベクトル vv に対し L={cv:c∈R}L=\{cv:c\in\mathbb R\} と置く。v≠0v\ne0 だから dim⁡L=1\dim L=1。任意の w=cv∈Lw=cv\in L に対し Aw=cAv=cλv∈L. Aw=cAv=c\lambda v\in L.

設問(3) 核の次元から平面を取る

N=λE−AN=\lambda E-A と置く。実数上の階数・退化次数の定理から dim⁡ker⁡N+rank⁡N=3. \dim\ker N+\operatorname{rank}N=3. 本小問では階数1なので K=ker⁡NK=\ker N は二次元。w∈Kw\in K なら Nw=0Nw=0、従って Aw=λw∈KAw=\lambda w\in K である。

設問(4) 像を使えば固有ベクトル二本は不要

今度は W=im⁡NW=\operatorname{im}N、N=λE−AN=\lambda E-A と置く。階数2の条件により dim⁡W=2\dim W=2。また AN=A(λE−A)=λA−A2=(λE−A)A=NA. AN=A(\lambda E-A)=\lambda A-A^2=(\lambda E-A)A=NA. 任意の w∈Ww\in W を w=Nuw=Nu と表せば Aw=ANu=NAu=N(Au)∈im⁡N=W. Aw=ANu=NAu=N(Au)\in\operatorname{im}N=W.

最終答

Av=λvAv=\lambda v、v≠0v\ne0 を満たす実数 λ\lambda が存在し、これが実固有値である。

L=span⁡R{v}L=\operatorname{span}_{\mathbb R}\{v\} が一次元の AA 不変部分空間である。

K=ker⁡(λE−A)K=\ker(\lambda E-A) が二次元の AA 不変部分空間となる。

W=im⁡(λE−A)W=\operatorname{im}(\lambda E-A) が求める二次元不変部分空間である。

第2問 — 境界へ集中する関数列と一様収束

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第3問 — 閉包の一点を加えた集合と振動するグラフ

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第4問 — 連続写像の貼り合わせと直積・道の関係

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年度別の解答例(6年度)

  • 2027年度(このページ・解説4項目)

    実行列の固有値と不変な直線・平面 / 境界へ集中する関数列と一様収束 / 閉包の一点を加えた集合と振動するグラフ

  • 2026年度(解説4項目)

    非実固有値を持つ実二次行列 / 対数関数列の一様収束と積分の極限 / 自然数の初期区間が定める位相

  • 2025年度(解説4項目)

    基底で指定する線形写像と階数の評価 / 振動を伴う関数の連続性と微分可能性 / 稠密な部分集合を一点に縮める商空間

  • 2024年度(解説4項目)

    内積に関する対称性と像・核の分解 / 有界係数の冪級数と一様な尾部の評価 / コンパクト性と連結性の開集合による証明

  • 2023年度(解説4項目)

    線形写像の座標と行列の可換条件 / コンパクト距離空間の可算性と一様連続性 / 正項級数の比による比較と条件収束

  • 2022年度(解説4項目)

    像と核が等しい線形写像の基底 / 原点の極限・積分の極限・対数の級数 / 補有限位相の連結性・コンパクト性・稠密性

2027年度の出題内容

解説4項目

この4問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数実行列の固有値と不変な直線・平面—あり
第2問微分積分・解析境界へ集中する関数列と一様収束—あり
第3問—閉包の一点を加えた集合と振動するグラフ—あり
第4問—連続写像の貼り合わせと直積・道の関係—あり

前年度(2026年度)との違い

大問数
2026年度 4問 → 2027年度 4問
2026年度の解答例

北海道大学の公式過去問

公開年度範囲
2020〜2027年度(博士後期課程)
公式の解答例
解答例の掲載なし
院試hubの最終確認
2026-10-22
北海道大学の公式過去問PDF