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北大 理学院 数学専攻(博士後期課程) 数学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(解説4項目)

解説4項目の分野は微分積分・解析2項目、線形代数1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 基底で指定する線形写像と階数の評価

設問(1) 座標を列に並べて独立性を調べる

ベクトルの組が基底であるとは、任意の元をその組の線形結合としてただ一通りに表せることである。三次元空間に三本のベクトルを取った場合、生成性と独立性は同値になり、座標行列の正則性で判定できる。

係数を c=(c1,c2,c3)Tc=(c_1,c_2,c_3)^{\mathsf T} とすれば、∑jcjuj\sum_jc_ju_j の元の基底での座標は McMc である。全ての座標に対して Mc=vMc=v が一意に解けることが、正則性の意味に当たる。行列式が0でないとき逆行列で c=M−1vc=M^{-1}v と求まり、0のときは核に非零の係数があるため一意性が壊れる。

本問で e1,e2,e3e_1,e_2,e_3 が直交しているか、長さが1かを調べる必要はない。独立な基底で座標を取ったという事実だけを使っている。三ベクトルの長さや角度が不明でも、上の判定は変わらない。

係数の確認として、a=0a=0 では行列式は −6≠0-6\ne0 となる。a=3a=3 では三列について u1−u2+u3=0u_1-u_2+u_3=0 が実際に成り立つ。a=−2/3a=-2/3 では 16u1−5u2−17u3=016u_1-5u_2-17u_3=0 となり、どちらも非自明な関係式が現れる。この二つの値を除いた条件と、具体的な独立性の破れが対応している。

第1行展開の符号は +,−,++,-,+ である。中央の項を +3+3 にしてしまうと、正しい中央項 6a2−66a^2-6 が −6a2+6-6a^2+6 に変わる。例えば a=0a=0 で誤った行列式は6となり、直接計算の −6-6 と一致しない。条件だけでなく途中の多項式を確かめるには、このように一つの数値を代入する方法が使える。

設問(2) 基底の像から写像を定める

線形写像は基底の行き先を決めると一意に決まる。任意のベクトルが基底の線形結合として一意に表され、その係数を使って像の線形結合を取ればよいからである。ここでは入力座標を基底係数へ戻す操作が M−1M^{-1}、係数から出力を組み立てる操作が NN に当たる。

存在と一意性を分けて確認した。任意の候補は線形性から NM−1NM^{-1} に等しいため、候補は高々一つ。逆にこの積で定めれば T(Mc)=NcT(Mc)=Nc となり、各標準単位係数を代入して指定した像を満たすので、少なくとも一つ存在する。入力が基底でない場合は、依存関係に合わない出力を指定すると存在しないこともある。

階数は像の次元である。右から正則行列を掛けても、入力が全空間を動くため像は変わらない。従って大きな逆行列を全て計算せずに NN の階数を調べられる。階数が2以上であることは二次小行列式で、3未満であることは三次行列式で挟んだ。

核の計算でも確認できる。Nc=0Nc=0 を解くと c=t(−3,1,1)Tc=t(-3,1,1)^{\mathsf T} だから ker⁡T=span⁡{M(−3,1,1)T}=span⁡{(3,19,1)T}. \ker T=\operatorname{span}\{M(-3,1,1)^{\mathsf T}\} =\operatorname{span}\{(3,19,1)^{\mathsf T}\}. この非零ベクトルが一本で核を生成し、次元1と一致する。階数・退化次数の定理は、核の基底を入力全体の基底へ拡張すると、追加基底の像が像空間の基底になることから得られる。本問では 3=1+23=1+2 という分解になる。

T=MN−1T=MN^{-1} と逆に書くのは誤りである。NN は階数2なので逆行列自体が存在しない。また ker⁡N\ker N の係数ベクトル (−3,1,1)T(-3,1,1)^{\mathsf T} を、そのまま元の入力空間の核ベクトルとすることもできない。入力の基底行列 MM を掛けて初めて (3,19,1)T(3,19,1)^{\mathsf T} へ戻る。

設問(3) 像の包含から階数を評価する

部分空間の和 U+VU+V は、u∈U,v∈Vu\in U,v\in V を独立に選んで作る和 u+vu+v の集合である。本問の (A+B)w(A+B)w は同じ入力 ww から AwAw と BwBw を作るため、その集合は im⁡A+im⁡B\operatorname{im}A+\operatorname{im}B の中に入る。像の包含が次元の不等式へつながる。

有限次元の部分空間についての公式 dim⁡(U+V)=dim⁡U+dim⁡V−dim⁡(U∩V) \dim(U+V)=\dim U+\dim V-\dim(U\cap V) は、共通部分の基底を UU の基底、VV の基底へそれぞれ拡張して示せる。共通基底を一度だけ取り、両方の追加基底を合わせると和空間の基底になる。二つの次元を単に足すと二重に数える部分があるので、その次元を引く。

より弱い評価だけなら、UU と VV の基底を全て合わせた組が U+VU+V を生成するため、次元がその本数以下だとしてもよい。原題の不等式には、この生成系による導出でも十分である。

最初の包含を常に等号とするのは誤りである。例えば A=EA=E、B=−EB=-E なら A+B=0A+B=0 なので左の像は {0}\{0\} だが、右の和は Rn\mathbb R^n。階数も 0<n+n0<n+n となる。同じ入力に対して二つの出力が打ち消し合うためである。逆に B=0B=0 なら階数の不等式は等号になる。A,BA,B の正方性や可逆性を仮定しなかったことも、長方形の原題に適した証明になっている。

解答

設問(1) 座標を列に並べて独立性を調べる

指定された基底 (e1,e2,e3)(e_1,e_2,e_3) で三ベクトルの座標を列に並べると M=(231a−1a+1a−1a+22−a). M=\begin{pmatrix}2&3&1\\a-1&a+1&a-1\\a+2&2&-a\end{pmatrix}. u1,u2,u3u_1,u_2,u_3 が基底になる条件は det⁡M≠0\det M\ne0。第1行で展開して det⁡M=2{−a(a+1)−2(a−1)}−3{−a(a−1)−(a−1)(a+2)}+{2(a−1)−(a+1)(a+2)}=(−2a2−6a+4)+(6a2−6)+(−a2−a−4)=3a2−7a−6=(3a+2)(a−3).\begin{align*} \det M &=2\{-a(a+1)-2(a-1)\} -3\{-a(a-1)-(a-1)(a+2)\}\\ &\hspace{1em}+\{2(a-1)-(a+1)(a+2)\}\\ &=(-2a^2-6a+4)+(6a^2-6)+(-a^2-a-4)\\ &=3a^2-7a-6=(3a+2)(a-3). \end{align*}

設問(2) 基底の像から写像を定める

入力と出力の三列をそれぞれ M=(245−7−3102−1),N=(242311−21−14) M=\begin{pmatrix}2&4&5\\-7&-3&1\\0&2&-1\end{pmatrix},\qquad N=\begin{pmatrix}2&4&2\\3&11&-2\\1&-1&4\end{pmatrix} と置く。det⁡M=−96≠0\det M=-96\ne0 なので、入力三ベクトルは基底である。任意の vv は v=Mcv=Mc と一意に表される。線形性から T(v)=Nc=NM−1v T(v)=Nc=NM^{-1}v でなければならず、この式で定めた写像は実際に指定された三つの像を満たす。従って TT は一意である。

M−1M^{-1} は全射なので im⁡T=im⁡N\operatorname{im}T=\operatorname{im}N。det⁡N=0\det N=0 だが、左上の二次小行列式は 22−12=10≠022-12=10\ne0 であり、rank⁡N=2\operatorname{rank}N=2。階数・退化次数の定理を使うと

設問(3) 像の包含から階数を評価する

A,BA,B を Rm\mathbb R^m から Rn\mathbb R^n への線形写像とみなす。任意の v∈Rmv\in\mathbb R^m に対して (A+B)v=Av+Bv∈im⁡A+im⁡B (A+B)v=Av+Bv\in\operatorname{im}A+\operatorname{im}B なので im⁡(A+B)⊆im⁡A+im⁡B\operatorname{im}(A+B)\subseteq\operatorname{im}A+\operatorname{im}B。従って rank⁡(A+B)≤dim⁡(im⁡A+im⁡B)=rank⁡A+rank⁡B−dim⁡(im⁡A∩im⁡B)≤rank⁡A+rank⁡B.\begin{align*} \operatorname{rank}(A+B) &\le\dim(\operatorname{im}A+\operatorname{im}B)\\ &=\operatorname{rank}A+\operatorname{rank}B -\dim(\operatorname{im}A\cap\operatorname{im}B)\\ &\le\operatorname{rank}A+\operatorname{rank}B. \end{align*}

最終答

a≠3a\ne3、かつ a≠−2/3a\ne-2/3。

dim⁡im⁡T=2\dim\operatorname{im}T=2、dim⁡ker⁡T=3−2=1\dim\ker T=3-2=1。

rank⁡(A+B)≤rank⁡A+rank⁡B\operatorname{rank}(A+B)\le\operatorname{rank}A+\operatorname{rank}B。

第2問 — 振動を伴う関数の連続性と微分可能性

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第3問 — 稠密な部分集合を一点に縮める商空間

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第4問 — 座標変換による調和性と二重積分

座標変換による調和性と二重積分の途中式・最終答をPDFで見る

数学の解答・解説PDF

2022〜2027年度(6年度) · ¥3,200

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年度別の解答例(6年度)

  • 2027年度(解説4項目)

    実行列の固有値と不変な直線・平面 / 境界へ集中する関数列と一様収束 / 閉包の一点を加えた集合と振動するグラフ

  • 2026年度(解説4項目)

    非実固有値を持つ実二次行列 / 対数関数列の一様収束と積分の極限 / 自然数の初期区間が定める位相

  • 2025年度(このページ・解説4項目)

    基底で指定する線形写像と階数の評価 / 振動を伴う関数の連続性と微分可能性 / 稠密な部分集合を一点に縮める商空間

  • 2024年度(解説4項目)

    内積に関する対称性と像・核の分解 / 有界係数の冪級数と一様な尾部の評価 / コンパクト性と連結性の開集合による証明

  • 2023年度(解説4項目)

    線形写像の座標と行列の可換条件 / コンパクト距離空間の可算性と一様連続性 / 正項級数の比による比較と条件収束

  • 2022年度(解説4項目)

    像と核が等しい線形写像の基底 / 原点の極限・積分の極限・対数の級数 / 補有限位相の連結性・コンパクト性・稠密性

2025年度の出題内容

解説4項目

この4問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数基底で指定する線形写像と階数の評価—あり
第2問微分積分・解析振動を伴う関数の連続性と微分可能性—あり
第3問—稠密な部分集合を一点に縮める商空間—あり
第4問微分積分・解析座標変換による調和性と二重積分—あり

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 4問 → 2025年度 4問
2024年度の解答例

北海道大学の公式過去問

公開年度範囲
2020〜2027年度(博士後期課程)
公式の解答例
解答例の掲載なし
院試hubの最終確認
2026-10-22
北海道大学の公式過去問PDF