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北大 理学院 数学専攻(博士後期課程) 数学 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(解説4項目)

解説4項目の分野は微分積分・解析2項目、線形代数1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 非実固有値を持つ実二次行列

設問(1) 共役な固有値と行列式の符号

正方行列の固有値とは、非零ベクトル zz に対して Az=λzAz=\lambda z となる数である。これは (λE−A)z=0(\lambda E-A)z=0 が非零解を持つ条件であり、行列式が0になることに等しい。本問は実行列だが、固有値と固有ベクトルを複素数まで広げて考えている。実数成分だけに制限すると非実固有値を扱えない。

実係数多項式で根が共役な対をなすのは、複素共役が加法・乗法を保ち、実係数を変えないためである。係数を cj∈Rc_j\in\mathbb R とすれば ∑jcjλj‾=∑jcjλ‾ j \overline{\sum_jc_j\lambda^j}=\sum_jc_j\overline\lambda^{\,j} となる。零の共役も零なので、一方の根から他方が得られる。b≠0b\ne0 が二根を異なるものにし、二次多項式の根をこれで全て列挙できる。

行列式は固有値の積になるが、その性質を暗記していなくても、特性多項式の定数項を比較すればよい。二次行列では det⁡(−A)=(−1)2det⁡A\det(-A)=(-1)^2\det A である。a2+b2a^2+b^2 は非実固有値の絶対値の二乗 ∣λ∣2|\lambda|^2 に等しい。非実である以上 b2>0b^2>0 だから、正の符号は aa の符号によらない。

例えば A=(0−220)A=\begin{pmatrix}0&-2\\2&0\end{pmatrix} は固有値 2i,−2i2i,-2i を持ち、行列式は4である。二根の積を λ2=(2i)2=−4\lambda^2=(2i)^2=-4 とするのは誤りで、一方を共役にしなければ符号が逆になる。また det⁡A>0\det A>0 から実対称行列の正定値性は結論できない。この例の固有値は実数でなく、正定値性に必要な対称性もない。

設問(2) 実ベクトルが固有ベクトルになれない理由

複素ベクトルの等式は、各成分で実部と虚部がそれぞれ等しいという意味を持つ。実行列を実ベクトルに作用させれば出力も実ベクトルになる。しかし非実数を非零実ベクトルに掛けると、少なくとも一つの成分に非零の虚部が生じる。この二つが同じ出力にはなれないことを使った。

零ベクトルは例外的に A0=λ0A0=\lambda0 をどの λ\lambda に対しても満たす。固有ベクトルから零を除くのは、この例外を除いて行列の作用する方向を表すためである。証明では v=0v=0 に到達した時点で「解がある」とせず、非零という定義と照合する。

前小問の行列なら、v=(s,t)T∈R2v=(s,t)^{\mathsf T}\in\mathbb R^2 に対する Av=2ivAv=2iv は −2t=2is,2s=2it -2t=2is,\qquad 2s=2it となる。実虚を比べると s=t=0s=t=0 だけである。一方、複素ベクトル z=(1,−i)Tz=(1,-i)^{\mathsf T} は実際に Az=2izAz=2iz を満たす。結論は固有ベクトルが存在しないことではなく、非実固有値に対しては実数成分だけに選べないことである。

実部だけを取って Av=avAv=av とし、aa を実固有値だとするのも誤りである。複素固有方程式のベクトル自体が複素数なら、実部を取る際に虚部同士の積も入る。次小問の Au=au−bwAu=au-bw が正しい等式であり、−bw-bw を落とすと、例えば上の回転行列に実固有値0があるという誤った結論になる。実際の行列式4とは両立しない。

設問(3) 固有ベクトルの実部と虚部を基底にする

実数上の基底変換とは、同じ線形写像を別の実基底で表すことである。PP の各列を新しい基底とすれば、新しい座標 ξ\xi のベクトルは元の座標で PξP\xi。作用後は APξAP\xi となり、新しい座標へ戻すと P−1APξP^{-1}AP\xi になる。相似変換の P−1P^{-1} を左側に置く理由がここにある。

基底候補の独立性には注意を要する。u≠0,w≠0u\ne0,w\ne0 だけでは二本が基底とは限らない。本解答は、従属なら u=αr,w=βru=\alpha r,w=\beta r、α,β∈R\alpha,\beta\in\mathbb R と書き、z=(α+iβ)rz=(\alpha+i\beta)r が実固有ベクトルを生むことを示した。z≠0z\ne0 なので α+iβ≠0\alpha+i\beta\ne0。割り算の条件も満たす。

新しい行列の第1列は Au=au−bwAu=au-bw の座標、第2列は Aw=bu+awAw=bu+aw の座標である。従って左下は −b-b、右上は bb になる。実虚分離を行として並べて (a−bba)\begin{pmatrix}a&-b\\b&a\end{pmatrix} とするのは、この基底の並びでは誤りである。P=(u −w)P=(u\ {-w}) と基底を同時に変えればその形にもなるが、式(1)と列の取り方を一致させる必要がある。

結果の特性多項式は (t−a)2+b2(t-a)^2+b^2、行列式は a2+b2a^2+b^2 で、設問(1)と一致する。この行列は a2+b2\sqrt{a^2+b^2} 倍と回転を組み合わせた作用として読める。ただし元の座標からの変換 PP は一般に直交行列ではない。例えば A=(0−21/20)A=\begin{pmatrix}0&-2\\1/2&0\end{pmatrix} では z=(1,−i/2)Tz=(1,-i/2)^{\mathsf T}、P=diag⁡(1,−1/2)P=\operatorname{diag}(1,-1/2) を使えるが PTP≠EP^{\mathsf T}P\ne E。任意の実行列に直交変換で同じ形を要求すると、この例を扱えなくなる。

解答

設問(1) 共役な固有値と行列式の符号

非実固有値を λ=a+ib\lambda=a+ib、a,b∈Ra,b\in\mathbb R、b≠0b\ne0 と置く。実行列の特性多項式 p(t)=det⁡(tE−A)p(t)=\det(tE-A) は実係数である。従って p(λ‾)=p(λ)‾=0. p(\overline\lambda)=\overline{p(\lambda)}=0. 二次で最高次係数が1なので、二つの異なる根を使って p(t)=(t−λ)(t−λ‾)=t2−2at+(a2+b2) p(t)=(t-\lambda)(t-\overline\lambda) =t^2-2at+(a^2+b^2) と書ける。p(0)=det⁡(−A)=det⁡Ap(0)=\det(-A)=\det A より

設問(2) 実ベクトルが固有ベクトルになれない理由

非零の実ベクトル v∈R2v\in\mathbb R^2 が Av=λvAv=\lambda v を満たすと仮定する。A,vA,v の成分は実数だから AvAv の虚部は零。一方、λ=a+ib\lambda=a+ib より右辺の虚部は bvbv である。従って bv=0. bv=0. b≠0b\ne0 だから v=0v=0 となり、仮定に反する。

設問(3) 固有ベクトルの実部と虚部を基底にする

Az=λzAz=\lambda z を満たす非零複素ベクトルを z=u+iwz=u+iw、u,w∈R2u,w\in\mathbb R^2 と表す。実部と虚部の比較により Au=au−bw,Aw=bu+aw.(1) Au=au-bw,\qquad Aw=bu+aw. \tag{1} u,wu,w が実数上で従属なら、ある非零実ベクトル rr と非零複素数 cc によって z=crz=cr と書ける。A(cr)=λcrA(cr)=\lambda cr の両辺を cc で割ると Ar=λrAr=\lambda r となり、設問(2)に反する。従って u,wu,w は実数上で独立である。

実正則行列 P=(u w)P=(u\ w) を取ると、(1)から AP=(Au Aw)=(u w)(ab−ba). AP=(Au\ Aw)=(u\ w)\begin{pmatrix}a&b\\-b&a\end{pmatrix}.

最終答

det⁡A=a2+b2>0\det A=a^2+b^2>0。特に AA は正則である。

非実固有値 λ\lambda に属する固有ベクトルは、非零の実ベクトルとしては取れない。

P−1AP=(ab−ba)P^{-1}AP=\begin{pmatrix}a&b\\-b&a\end{pmatrix} となる実正則行列 PP が存在する。

第2問 — 対数関数列の一様収束と積分の極限

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第3問 — 自然数の初期区間が定める位相

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第4問 — 虚部から正則関数を復元し留数を計算する

虚部から正則関数を復元し留数を計算するの途中式・最終答をPDFで見る

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年度別の解答例(6年度)

  • 2027年度(解説4項目)

    実行列の固有値と不変な直線・平面 / 境界へ集中する関数列と一様収束 / 閉包の一点を加えた集合と振動するグラフ

  • 2026年度(このページ・解説4項目)

    非実固有値を持つ実二次行列 / 対数関数列の一様収束と積分の極限 / 自然数の初期区間が定める位相

  • 2025年度(解説4項目)

    基底で指定する線形写像と階数の評価 / 振動を伴う関数の連続性と微分可能性 / 稠密な部分集合を一点に縮める商空間

  • 2024年度(解説4項目)

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  • 2023年度(解説4項目)

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  • 2022年度(解説4項目)

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2026年度の出題内容

解説4項目

この4問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数非実固有値を持つ実二次行列—あり
第2問微分積分・解析対数関数列の一様収束と積分の極限—あり
第3問—自然数の初期区間が定める位相—あり
第4問微分積分・解析虚部から正則関数を復元し留数を計算する—あり

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 4問 → 2026年度 4問
2025年度の解答例

北海道大学の公式過去問

公開年度範囲
2020〜2027年度(博士後期課程)
公式の解答例
解答例の掲載なし
院試hubの最終確認
2026-10-22
北海道大学の公式過去問PDF