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北大 理学院 数学専攻(博士後期課程) 数学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(解説4項目)

解説4項目の分野は微分積分・解析2項目、位相・幾何1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 内積に関する対称性と像・核の分解

設問(1) 像と核の共通部分

線形写像 T:V→VT:V\to V の像と核は、それぞれ im⁡T={Tx:x∈V},ker⁡T={z∈V:Tz=0} \operatorname{im}T=\{Tx:x\in V\},\qquad \ker T=\{z\in V:Tz=0\} で定義される部分空間である。共通部分の元には、像の表示 z=Txz=Tx と核の式 Tz=0Tz=0 を同時に使える。この二つを内積の両側へ組み込むのが、本問の仮定を使う場所になる。

実内積の正定値性は、(z,z)≥0(z,z)\ge0、かつ等号が z=0z=0 のときに限るという性質である。従って任意に取った共通部分の元の長さの二乗を0と示せば、共通部分に非零ベクトルがないことを証明できる。α\alpha で割らなかったため、α=0\alpha=0 も同じ証明に含まれる。

より広く w∈ker⁡Tw\in\ker T、v=Tx∈im⁡Tv=Tx\in\operatorname{im}T と取ると (w,v)=(w,Tx)=α(Tw,x)=0. (w,v)=(w,Tx)=\alpha(Tw,x)=0. つまり像と核は直交する。直交する二つの部分空間の共通部分に zz があれば、zz は自分自身にも直交し、∥z∥2=0\|z\|^2=0 となる。上の解答はこの性質を共通部分の元に直接適用した形である。

一般の線形写像についても像と核の共通部分は0だ、とするのは誤りである。例えば標準内積を持つ R2\mathbb R^2 の行列 J=(0100) J=\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix} では im⁡J=ker⁡J=span⁡{(1,0)T}\operatorname{im}J=\ker J=\operatorname{span}\{(1,0)^{\mathsf T}\}。共通部分は一次元になる。この行列は本問の内積関係を満たさない。実際 x=e1,y=e2x=e_1,y=e_2 では (x,Jy)=1(x,Jy)=1 なのに、α(Jx,y)=0\alpha(Jx,y)=0 であり、どの α\alpha でも矛盾する。像と核の結論には仮定が働いている。

設問(2) 二回作用させたときの核

合成写像 T2=T∘TT^2=T\circ T の核は、二回作用させると0になるベクトルの集合である。一回で0になるベクトルは必ず二回でも0になるので、一方向の包含は全ての線形写像で成り立つ。逆方向には本問の内積関係から得た結論が要る。

二回で0になる条件を読む際は、中間のベクトル TxTx を取り出す。そのベクトルは一回目の出力なので像に入り、次の作用で0になるので核にも入る。共通部分が0という設問(1)が、中間ベクトルそのものを0と決める。

T2x=0T^2x=0 を数の積のように扱って、ただちに Tx=0Tx=0 と約分することはできない。前問の行列 JJ は J2=0J^2=0 だが Je2=e1≠0Je_2=e_1\ne0。従って一般には ker⁡J2=R2\ker J^2=\mathbb R^2、ker⁡J=span⁡{e1}\ker J=\operatorname{span}\{e_1\} と異なる。本問ではこのような、像の非零ベクトルが核へ落ちる挙動を内積関係が排除している。

確認の例として T=diag⁡(2,0)T=\operatorname{diag}(2,0)、α=1\alpha=1 を取ると、T2=diag⁡(4,0)T^2=\operatorname{diag}(4,0) で、どちらの核も第二座標軸になる。T=0T=0 の場合は両方の核が全空間となり、同じ結論が成り立つ。非零写像や可逆写像という追加条件は置いていない。

設問(3) 二回作用させたときの像

階数・退化次数の定理は、有限次元空間からの線形写像について dim⁡V=dim⁡ker⁡T+dim⁡im⁡T \dim V=\dim\ker T+\dim\operatorname{im}T と述べる。核の基底を VV の基底へ拡張すると、追加した基底ベクトルの像が像空間の基底になるため、この本数の関係が得られる。T,T2T,T^2 の定義域が同じ VV で、核の次元も同じなので、像の次元が一致する。

包含する二部分空間 U⊆WU\subseteq W が有限で同じ次元なら U=WU=W。もし w∈W∖Uw\in W\setminus U があれば、UU の基底に ww を加えた組は独立になり、dim⁡W≥dim⁡U+1\dim W\ge\dim U+1 と矛盾する。次元の式だけでなく、最初の像の包含もこの段階で使っている。

別の導出として、設問(1)と階数・退化次数の定理から V=ker⁡T⊕im⁡TV=\ker T\oplus\operatorname{im}T と分解できる。任意の TxTx に対して x=k+Tux=k+Tu と書けば、Tk=0Tk=0 だから Tx=T2uTx=T^2u。従って逆の包含も直接得られる。どちらの証明にも有限次元という条件を残してある。

同じ次元だから像が等しい、と包含を示さずに結ぶのは誤りである。R2\mathbb R^2 の二つの座標軸はどちらも一次元だが等しくない。また一般の写像では、前の反例 JJ について im⁡J2={0}\operatorname{im}J^2=\{0\} と im⁡J=span⁡{e1}\operatorname{im}J=\operatorname{span}\{e_1\} が異なる。核の一致を通して仮定を反映させた点が、この反例との違いになる。

解答

設問(1) 像と核の共通部分

z∈im⁡T∩ker⁡Tz\in\operatorname{im}T\cap\ker T とする。像に属するので、ある xx を用いて z=Txz=Tx と書ける。核に属する条件は Tz=0Tz=0 である。仮定の内積関係に z,xz,x を代入すると ∥z∥2=(z,Tx)=α(Tz,x)=α(0,x)=0. \|z\|^2=(z,Tx)=\alpha(Tz,x)=\alpha(0,x)=0. 内積の正定値性から z=0z=0。逆に零ベクトルは像と核の両方に入るので

設問(2) 二回作用させたときの核

x∈ker⁡Tx\in\ker T なら Tx=0Tx=0 なので T2x=T0=0T^2x=T0=0。従って ker⁡T⊆ker⁡T2\ker T\subseteq\ker T^2 である。

逆に x∈ker⁡T2x\in\ker T^2 とすると T(Tx)=0T(Tx)=0 であり、Tx∈ker⁡TTx\in\ker T。一方、TxTx は定義から im⁡T\operatorname{im}T に属する。設問(1)を適用して Tx=0Tx=0、すなわち x∈ker⁡Tx\in\ker T を得る。両包含を合わせると

設問(3) 二回作用させたときの像

T2x=T(Tx)T^2x=T(Tx) は TT の出力なので、im⁡T2⊆im⁡T\operatorname{im}T^2\subseteq\operatorname{im}T。dim⁡V=n<∞\dim V=n<\infty とすると、階数・退化次数の定理と前問の核の一致より dim⁡im⁡T2=n−dim⁡ker⁡T2=n−dim⁡ker⁡T=dim⁡im⁡T. \dim\operatorname{im}T^2 =n-\dim\ker T^2 =n-\dim\ker T =\dim\operatorname{im}T. 有限次元部分空間について、包含と次元の一致から等号を得る。

最終答

im⁡T∩ker⁡T={0}\operatorname{im}T\cap\ker T=\{0\}。

ker⁡T2=ker⁡T\ker T^2=\ker T。

im⁡T2=im⁡T\operatorname{im}T^2=\operatorname{im}T。

第2問 — 有界係数の冪級数と一様な尾部の評価

有界係数の冪級数と一様な尾部の評価の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — コンパクト性と連結性の開集合による証明

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第4問 — 最小二乗関数の勾配と二階微分

最小二乗関数の勾配と二階微分の途中式・最終答をPDFで見る

数学の解答・解説PDF

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年度別の解答例(6年度)

  • 2027年度(解説4項目)

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  • 2026年度(解説4項目)

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  • 2025年度(解説4項目)

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  • 2024年度(このページ・解説4項目)

    内積に関する対称性と像・核の分解 / 有界係数の冪級数と一様な尾部の評価 / コンパクト性と連結性の開集合による証明

  • 2023年度(解説4項目)

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  • 2022年度(解説4項目)

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2024年度の出題内容

解説4項目

この4問の分野は微分積分・解析2問・位相・幾何1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—内積に関する対称性と像・核の分解—あり
第2問微分積分・解析有界係数の冪級数と一様な尾部の評価—あり
第3問位相・幾何コンパクト性と連結性の開集合による証明—あり
第4問微分積分・解析最小二乗関数の勾配と二階微分—あり

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 4問 → 2024年度 4問
2023年度の解答例

北海道大学の公式過去問

公開年度範囲
2020〜2027年度(博士後期課程)
公式の解答例
解答例の掲載なし
院試hubの最終確認
2026-10-22
北海道大学の公式過去問PDF