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北大 理学院 自然史科学専攻 多様性生物学講座(修士課程) 専門科目(多様性生物学) 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(解説5項目)

解説5項目の分野は生物2項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 羊膜類・哺乳類の適応放散・植食・外来種

羊膜類・哺乳類の適応放散・植食・外来種の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 動物の系統樹・形態の識別・学名の組合せ

動物の系統樹・形態の識別・学名の組合せの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 葉緑体の統合・色素・二次共生・消失の証拠

葉緑体の統合・色素・二次共生・消失の証拠の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 島の鳥類・生物学的種概念・種分化の機構

問1 五つの空欄と種概念の適用範囲

適応放散は、共通祖先に由来する系統が、異なる資源や生活条件を利用する形質の違いを伴って多様化することである。島へ到達した祖先が未利用のニッチを利用し、それぞれ異なる環境への適応が進むという原題の筋道に対応する。単に同じ種の個体数が増えることや、島を飛び回って分布を広げることだけを放散と呼ぶわけではない。

Mayrの生物学的種概念は、自然集団の交配関係と他集団からの生殖的隔離によって種を捉える。同じ場所で繁殖の機会がある二集団なら、交配が起きるか、どの段階で妨げられるかを調べられる。一方、遠く離れた集団では、交配をしないという観察だけでは、地理的に接触しないためか、固有の隔離機構があるためかを分けられない。

Mayrの1996年の論文は、同時同所での判定と、地理的に隔離された集団での推定を区別している。後者でも、接触した場合に交配できるかを、近縁群との比較や複数の証拠から推定する。従って、空欄の説明は直接判定のしやすさとして理解する。「異所集団は必ず別種」とするのも、「離れているので生物学的種概念の議論は全て無意味」とするのも、この潜在的な交配の考え方に合わない。

無性生殖だけを行う系統には、交配による遺伝子交流をそのまま基準にできない。稔性のある雑種が頻繁に生じる場合にも、種の境界を単純に二分しにくい。エは生殖様式、オは雑種が子を作る能力を指すので、「無性的」と「不稔性」を逆に入れない。なお一部の雑種ができることと、両集団間で遺伝子交流を制限する仕組みが全くないことも同義ではない。

問2 島で変わる選択の条件

形質の利益は環境に依存する。例えば逃避へ多くの時間を使えば捕食されにくくなるが、その間は採餌や子の世話に使う時間を失う。捕食者が少ない環境では、同じ警戒行動の利益が小さくなり、別の活動へ配分する個体が多く子を残す可能性がある。これは「鳥が安全だと考えて遺伝する形質を変えた」という説明とは異なる。行動の可塑的な変化と、世代を通じる遺伝的な変化も分ける。

競争者が少ない場合には、生態的解放によって、祖先より広い餌の種類や採餌場所を利用できることがある。しかし、島の狭い面積は資源の総量も制限する。同種個体の密度が上がれば同種内競争が強くなり、少ない競争種という条件だけで「競争がなくなる」とは言えない。季節変動が小さく成体の生存率が高い環境では、今の一回の繁殖へ全てを投じるより、成体の維持や一個体の子への投資へ配分する生活史も成立し得る。

物理的な隔離は遺伝子流動も減らす。創始者の少数の個体が持った遺伝子の偏りや、その後の遺伝的浮動が形質へ影響する可能性もあるため、大陸との差を全て適応と決めつけない。共通の環境で飼育する比較や、島の条件と形質の対応を複数系統で調べる方法が、可塑性・歴史・選択の寄与を分ける助けになる。

全島で捕食者が不在とは限らず、台風や旱魃などの資源変動が大きい島もある。例えば「全ての島鳥は飛べなくなる」とすると、海を越えて移動する多数の現生鳥類を説明できない。原題が述べる傾向を、移入の少なさ、種構成、資源と気候という実際の条件から導き、その条件がない場合へは拡張しない。

問3 自然集団の交配関係から種を定義する

この定義でまとまりを作るのは、見た目の似た個体の一覧ではなく、世代を通じて遺伝子を共有する自然集団の関係である。「現実に」は現在接触して交配する場合を含み、「潜在的に」は地理的に離れていても接触すれば交配する可能性を含む。問1で扱ったように、後者の判断には推定が必要になる。

生殖的隔離は、交配やその後の遺伝子交流を制限する形質・過程である。繁殖時期、求愛行動、雑種の生存や稔性など、作用する段階はいくつもある。自然条件という限定も残す。飼育下で人工的に交配させた一例だけでは、自然の交配関係が同じとは言えないからである。

同じ種の全個体が相互に直接交配することを要件にすると、性や年齢の違いだけで一つの種を分けてしまう。また全個体が同じDNA配列を持つという条件を加えると、集団内の対立遺伝子や個体差を認められなくなる。個体一対ではなく自然集団のまとまりとして記述する理由は、こうした誤りを避けることにある。

答案は短くても、「交配する」だけで終えない。まとまりの内側の交流と、外側との隔離という二面を入れる。交配関係を直接調べにくい化石や無性系統の分類では、別の種概念や証拠を用いる必要があり、この定義が全生物の同定を一つの手続きで済ませるわけではない。

問4 交配の前後で作用する隔離

隔離機構を比べるには、どこで繁殖の成功が減るかをたどる。出会い、配偶相手の認識、交配、受精、子の発生、生殖という順に考えれば、作用する段階が分かる。繁殖期が重ならない例では出会いの時点で、求愛信号が認識されない例では相手の選択の時点で、交配の機会が減る。

交配後には、両親の系統で別々に進化した遺伝子の組合せが、雑種ではうまく働かないことがある。雑種が胚の段階で生存できない場合も、成体まで育つが子を残せない場合もある。第一代雑種が正常でも、第二代や戻し交配の組合せで適応度が低下する雑種崩壊も考えられる。従って「雑種が一個体生きていた」だけでは、交配後隔離の全てを否定できない。

用語の区切りにも気をつける。原題は交配前・交配後を用いているが、別の区分である接合前・接合後は受精による接合子の形成を境にする。交配後に精子と卵が適合せず受精しない例は、交配の後であっても接合の前である。二つの区分を無条件に同じものとして扱うと、この例を矛盾して分類してしまう。

答案では、交配前には繁殖期や求愛、交配後には雑種不稔や雑種崩壊という明瞭な例を用いれば区切りが伝わる。地理的に離れていることだけを、両集団に進化した固有の生殖隔離機構と同一視しない。再び接触したときにも交流を制限する形質なのかを、別に調べる必要がある。

問5 地理的分断による種分化

異所的種分化は、地理的な分離で集団間の遺伝子流動が小さくなり、独立した進化の結果として生殖的隔離が成立する過程である。山脈や海峡などで祖先集団の分布が分かれる場合のほか、少数の個体が遠方へ移住して隔離される場合も考えられる。

分断だけで直ちに別種になるわけではない。隔離後の集団では、それぞれの環境で働く選択、突然変異の発生、遺伝的浮動などが異なり、形質や遺伝子頻度が変わる。例えば求愛や繁殖時期の違い、雑種での遺伝子の不適合が進化すれば、地理的な障壁がなくなった後にも交流が制限される可能性がある。障壁による接触の欠如と、進化した生殖的隔離を分けておく。

遺伝子流動を単純な二集団モデルで書けば、移入先の対立遺伝子頻度p1p_1は、移入率mmと移入元の頻度p2p_2に対し p1′=(1−m)p1+mp2 p_1'=(1-m)p_1+mp_2 となる。他の力がなければ、移入は頻度差を縮める方向へ働く。地理的分離でmmが小さくなることは、独立の変化が流動によって消されにくくなる条件の一つである。ただし、m=0m=0だけから隔離機構の完成までは導けない。

「異所」は地理的な状況の分類であり、次の設問の生態的・突然変異順序という機構の分類とは軸が異なる。異所的なら全て浮動だけで起きるとしたり、同所的なら必ず生態的種分化だとしたりせず、どこで分かれるかと何が隔離を進めるかを別々に答える。

問6 異なる選択と同じ選択を区別する

生態学的種分化では、ある形質が集団1の環境では有利でも、集団2の環境では不利になるという適応度の違いが出発点になる。例えば異なる餌資源へ適した形質が、交配する場所や相手選択にも関われば、生態的な分化が遺伝子交流の制限へつながる。環境への適応が、隔離と無関係に起きただけでは種分化の説明にならない。適応の違いから交流が減るまでのつながりを示す。

突然変異順序種分化では、二集団の環境が異なることを原因にする必要がない。共通の祖先型に対して有利な変異AとBがあり、それぞれ単独なら適応度を上げる一方、両者の組合せに不適合がある場合を考える。一方の集団でA、他方でBが先に広がると、各集団は同様の条件へ適応しても、集団間の雑種で適応度が下がり得る。生じる変異の順序と、その時点の遺伝的背景が、異なる到達先をもたらす。

これは「自然選択が働かず、全て中立な変異が偶然固定する」という定義ではない。NosilとFlaxmanの2011年のモデル研究も、有利な変異、不適合、移住、変異の出現時期などの関係を調べている。遺伝子流動が大きければ同じ有利変異が両方へ広がりやすく、異なる固定を保ちにくくなるなど、成立には条件がある。

二つの機構の比較では、選択圧が異なること自体が分岐を促すのか、似た選択圧でも異なる適応の経路へ進むのかを確かめる。前者を「同所」、後者を「異所」と置き換えると、原題が比較している原因が地理的位置の違いへ変わってしまう。場所の区分と機構の区分は、問5と同じく独立に記述する。

解答

問1 五つの空欄と種概念の適用範囲

ア:適応放散、イ:Ernst Mayr、ウ:同所的(同時同所的)、エ:無性的、オ:稔性。 ウは、同じ時代・場所で接触する集団について、生殖的隔離を直接判定する場合として読む。原題の「しか適用できない」を、離れた集団を生物学的種概念で全く扱えないという厳密な主張にはしない。

問2 島で変わる選択の条件

海で隔離された島では、大陸からの移入が少なく、捕食者や競争者の種類が少ない場合がある。そのため、警戒や逃避へ配分する利益、餌を利用できる範囲、同種個体との競争の強さなどが大陸と異なり、行動や生活史に対する選択も変わる。島の面積、利用できる資源、季節変動、気候や攪乱の条件も異なり、少ない子へ多く投資する生活史や飛翔能力の低下などが生じる場合がある。島ごとに条件が異なるため、全ての鳥類が同じ変化を示すとは限らない。

問3 自然集団の交配関係から種を定義する

種は、自然条件で現実に、または潜在的に互いに交配する自然集団のまとまりであり、他のそのようなまとまりから生殖的に隔離されているものと定義する。

問4 交配の前後で作用する隔離

交配前隔離は、生息場所、繁殖時期、求愛信号、交配器官などの違いにより、異なる集団間の交配が成立しにくくなる仕組みである。交配後隔離は、交配が起きても、雑種の生存率や稔性の低下、後代での適応度低下などにより遺伝子交流が制限される仕組みである。

問6 異なる選択と同じ選択を区別する

生態学的種分化では、異なる生態的条件で働く分岐選択が、生殖的隔離の進化をもたらす。突然変異順序種分化では、同じ、または似た選択圧の下でも、異なる有利な突然変異が別々の集団で固定し、それらの不適合などによって生殖的隔離が生じる。

最終答

問5 地理的分断による種分化

異所的種分化。

第5問 — ブラキストン線・移入史・突然変異・集団遺伝

ブラキストン線・移入史・突然変異・集団遺伝の途中式・最終答をPDFで見る

専門科目(多様性生物学)の解答・解説PDF

2022〜2027年度(6年度) · ¥3,200

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年度別の解答例(6年度)

  • 2027年度(解説5項目)

    進化・生態:遺伝子の分化と群集の多様性 / 動物系統・命名:系統群の関係と学名の履歴 / 藻類・共生:酸素発生、三世代交代と葉緑体の由来

  • 2026年度(解説5項目)

    植物の命名・生殖隔離・寄主転換と外来種 / 動物の系統・体制・国際命名規約 / 真核生物の分類・藻類の構造・共生の復元

  • 2025年度(解説5項目)

    生物の進化と生態系:顎、共生、分解と抗生物質 / 動物の系統分類:有根系統樹、命名法と種の同定 / 藻類の系統と細胞:葉緑体の共生起源と機能

  • 2024年度(解説5項目)

    系統推定と集団内の遺伝的多様性 / 動物の系統・門の識別・学名の適格性 / 葉緑体の共生起源と藻類の分類

  • 2023年度(このページ・解説5項目)

    羊膜類・哺乳類の適応放散・植食・外来種 / 動物の系統樹・形態の識別・学名の組合せ / 葉緑体の統合・色素・二次共生・消失の証拠

  • 2022年度(解説5項目)

    種を単位にする理由・学名の同定・種数の地域差 / 十二群の系統樹・三動物門・トドの学名 / 一次植物の起源・色素・二次共生の痕跡

2023年度の出題内容

解説5項目

この5問の分野は生物2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—羊膜類・哺乳類の適応放散・植食・外来種——
第2問—動物の系統樹・形態の識別・学名の組合せ—あり
第3問—葉緑体の統合・色素・二次共生・消失の証拠——
第4問生物島の鳥類・生物学的種概念・種分化の機構—あり
第5問生物ブラキストン線・移入史・突然変異・集団遺伝——

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 5問 → 2023年度 5問
2022年度の解答例

北海道大学の公式過去問

公開年度範囲
2022〜2027年度の夏期問題、2027年度の出題意図と解答例
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
院試hubの最終確認
2026-10-22
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