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北大 総合化学院 総合化学専攻(修士課程) 総合基礎科目(A・B群共通) 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(解説4項目)

解説4項目の分野は化学3項目です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 物理化学:固相の平衡とクラペイロン式

(1) 相律で数える自由度

自由度 FF は、相の数を変えずに独立に選べる示強変数の数である。非反応の CC 成分 PP 相について、温度・圧力の二つと各相の独立組成 C−1C-1 個があり、変数は 2+P(C−1)2+P(C-1)。各成分の化学ポテンシャルが全相で等しいという C(P−1)C(P-1) 個の条件を差し引くと F=C−P+2F=C-P+2 となる。

一成分一相のBでは温度と圧力を独立に選べる。二相のCでは平衡線上にとどまる必要があり、温度を決めると圧力も決まる。三相のAでは両方が固定される。図の点に何本の曲線が接続するかだけでなく、周囲に何種類の相があるかを数える。 固体であることを理由に定圧版の F=C−P+1F=C-P+1 を使うとBの自由度を1と誤る。この図は圧力も軸に含むので、圧力を固定して差し引く条件はない。また結晶形が異なる三固相を「すべて固体だから一相」と数えるとAを2としてしまう。

(2) 三相共存点と四相共存

一成分では各相の組成という変数がない。三相 α,β,γ\alpha,\beta,\gamma の共存条件は μα=μβ\mu_\alpha=\mu_\beta と μβ=μγ\mu_\beta=\mu_\gamma の二つで、調整できる変数 T,pT,p の二つを使い切る。これが三重点が図の孤立点となる理由である。四つ目の相を加えるとさらに独立な化学ポテンシャルの等式が必要になり、二変数では足りなくなる。

自由度0は相の運動や原子の運動が停止する意味ではなく、平衡を維持して動かせる熱力学的条件がないという意味である。例外的な対称性・拘束によって平衡条件の独立性が変わる場合はこの数え方の前提を再検討するが、原題はGibbsの相律に従うと指定している。 「四相なら F=0F=0」と答えるのは、成分数も四つと増やしたり、式の最後を3に変えたりした計算である。水など一成分の固液気が三相で F=0F=0 となる既知の例へ代入すれば、相律の係数を確かめられる。

(3) 化学ポテンシャルの全微分

閉じた単純圧縮系で、膨張仕事以外の仕事を扱わないとき、基本式は dU=TdS−pdV\mathrm dU=T\mathrm dS-p\mathrm dV である。G=U+pV−TSG=U+pV-TS を微分して代入すると、TdST\mathrm dS と pdVp\mathrm dV が消え、 dG=Vdp−SdT\mathrm dG=V\mathrm dp-S\mathrm dT となる。純物質の化学ポテンシャルはモルギブズエネルギーなので、エントロピーと体積もモル量にして上式を得る。

SmS_{\mathrm m} は J K−1 mol−1\mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}}、VmdpV_{\mathrm m}\mathrm dp は m3 mol−1×Pa=J mol−1\mathrm{m^3\,mol^{-1}}\times\mathrm{Pa}=\mathrm{J\,mol^{-1}} で、どちらも dμ\mathrm d\mu と同じ単位である。一定温度なら圧力を上げると、体積の大きい相ほど μ\mu が速く増す。従って高圧では小さいモル体積の相が有利になる。

dμ=+SmdT+Vmdp\mathrm d\mu=+S_{\mathrm m}\mathrm dT+V_{\mathrm m}\mathrm dp とすると、温度上昇で高エントロピー相の μ\mu がより上がることになり、高温でエントロピーの大きい相が安定化する向きと逆になる。温度項の負符号は G=H−TSG=H-TS の定義から保たれる。

(4) 共存線の傾きを導く

二相の μ\mu が等しくなければ、物質が高い μ\mu の相から低い相へ移ることでギブズエネルギーを減らせる。その移動による駆動力が0の線を微小にたどると、温度による μ\mu の変化と圧力による変化が両相でつり合う。これがクラペイロン式の導出であり、固体同士の転移にもそのまま使える。

最後の形は、平衡で ΔGm=ΔHm−TΔSm=0\Delta G_{\mathrm m}=\Delta H_{\mathrm m}-T\Delta S_{\mathrm m}=0 となることによる。近似的に気相の体積を支配的と置くClausius--Clapeyron式と区別し、本問の固相へ気体式を代入しない。単位は (J K−1 mol−1)/(m3 mol−1)=Pa K−1(\mathrm{J\,K^{-1}\,mol^{-1}})/(\mathrm{m^3\,mol^{-1}})=\mathrm{Pa\,K^{-1}} となる。 分子・分母の転移方向を両方逆にしても比は同じである。一方、片側だけ逆にして −ΔS/ΔV-\Delta S/\Delta V とすると、与えられた正の変化量から負の傾きを得て、図の右上がりの境界と合わなくなる。

(5) 相の対応と近傍での測定条件

圧力を増すと dμ=Vmdp\mathrm d\mu=V_{\mathrm m}\mathrm dp により体積の大きい相の方が不利になる。温度を増すと dμ=−SmdT\mathrm d\mu=-S_{\mathrm m}\mathrm dT により高エントロピー相が有利になる。これらの向きと各共存線の傾きの順を合わせれば、単に図の領域の面積を見ずに上の配置を判定できる。図はその対応を示す模式図であり、表示された差から厳密な位置や曲率を再構成したものではない。

測定値は「点A近傍」における各転移の値であり、三組が厳密に同じ温度・圧力で測られたとは示されていない。近傍の異なる共存条件の測定値を、同一点でのエントロピー差として同時に使うことはできない。もし同じ T,pT,p の値なら、状態関数から (Sα−Sβ)+(Sγ−Sα)=Sγ−Sβ (S_\alpha-S_\beta)+(S_\gamma-S_\alpha)=S_\gamma-S_\beta という加算則が必要になる。表示値は 14.59+1.25=15.8414.59+1.25=15.84 と5.88に一致しないが、これだけで異なる測定条件の値を誤りとは判断できない。各相のエントロピーは温度・圧力で変わるためである。ここでは原題の指定どおり各転移の局所的な傾きと順序に用い、同一A点の定量模型を逆算していない。

高圧だから密度が低い γ\gamma と割り当てると、体積 VγV_\gamma が最大という条件に反する。また加算を一致させようと14.59を推測で置き換える必要はない。相名の対応には体積の順と各傾きの順を用い、測定条件が示されていない差の数値を無条件に足さない。

解答

(1) 相律で数える自由度

非反応の系のGibbsの相律は F=C−P+2F=C-P+2。一成分なので C=1C=1 であり、Aは三相、Bは一相、Cは二相が共存する点である。 FA=1−3+2=0,FB=1−1+2=2,FC=1−2+2=1. F_A=1-3+2=0,\quad F_B=1-1+2=2,\quad F_C=1-2+2=1.

(2) 三相共存点と四相共存

Aは三重点である。一成分の四相共存を通常の相律へ代入すると F=1−4+2=−1F=1-4+2=-1 となるため、独立な平衡条件を一般には満たせない。

(3) 化学ポテンシャルの全微分

組成一定の純物質について G=nμG=n\mu、また dG=−S dT+V dp\mathrm dG=-S\,\mathrm dT+V\,\mathrm dp である。一定の物質量 nn で割ると dμ=−Sm dT+Vm dp. \mathrm d\mu=-S_{\mathrm m}\,\mathrm dT+V_{\mathrm m}\,\mathrm dp .

(4) 共存線の傾きを導く

相1・相2の共存線では μ1=μ2\mu_1=\mu_2 であり、線に沿う変化でも dμ1=dμ2\mathrm d\mu_1=\mathrm d\mu_2。前問を代入すると −Sm,1dT+Vm,1dp=−Sm,2dT+Vm,2dp. -S_{{\mathrm m},1}\mathrm dT+V_{{\mathrm m},1}\mathrm dp =-S_{{\mathrm m},2}\mathrm dT+V_{{\mathrm m},2}\mathrm dp . ΔSm=Sm,2−Sm,1\Delta S_{\mathrm m}=S_{{\mathrm m},2}-S_{{\mathrm m},1}、 ΔVm=Vm,2−Vm,1\Delta V_{\mathrm m}=V_{{\mathrm m},2}-V_{{\mathrm m},1} と定め、 ΔVm≠0\Delta V_{\mathrm m}\ne0 の範囲では dpdT=ΔSmΔVm=ΔHmTΔVm. \frac{\mathrm dp}{\mathrm dT}=\frac{\Delta S_{\mathrm m}}{\Delta V_{\mathrm m}} =\frac{\Delta H_{\mathrm m}}{T\Delta V_{\mathrm m}}.

(5) 相の対応と近傍での測定条件

与えられた体積差から Vβ<Vα<VγV_\beta<V_\alpha<V_\gamma。高圧側には最も小さい体積の β\beta、右の高温側にはエントロピーの大きい γ\gamma、残る左下に α\alpha を対応させる。各組の表示値から求めた傾きも mαγ=7.58×106,mβγ=2.83×107,mβα=3.39×108(Pa K−1) m_{\alpha\gamma}=7.58\times10^6,\quad m_{\beta\gamma}=2.83\times10^7,\quad m_{\beta\alpha}=3.39\times10^8\quad(\mathrm{Pa\,K^{-1}}) の順であり、左の緩い枝、右上の中程度の枝、下の急な枝へそれぞれ対応する。

2022年度設問1の条件と解答から独自に作成した補助図1

最終答

A:0,B:2,C:1A:0,\quad B:2,\quad C:1。

Aは三重点。一成分四相の安定共存は通常の相律で自由度が負となり実現しない。

dμ=−Sm dT+Vm dp\mathrm d\mu=-S_{\mathrm m}\,\mathrm dT+V_{\mathrm m}\,\mathrm dp

dp/dT=ΔSm/ΔVm\displaystyle\mathrm dp/\mathrm dT=\Delta S_{\mathrm m}/\Delta V_{\mathrm m}

上側:β\beta、左下:α\alpha、右側:γ\gamma。

第2問 — 無機化学:分子イオン・配位数・結合の分類

結合次数と磁性は分子軌道の占有から求める。固体の配位数は一原子の周囲を数える局所的な量であり、単位胞に含まれる原子数とは異なる。

無機化学:分子イオン・配位数・結合の分類の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 分析化学:弱酸の平衡と緩衝液の精度

活量係数1という指定のもとで濃度を使う。混合による希釈と酸の解離による組成変化は別の操作として扱い、有効数字の指定に対して近似の大きさを確かめる。

分析化学:弱酸の平衡と緩衝液の精度の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 有機化学:生成物から逆算する水和と立体構造

原題のDは不斉中心一つ、Eは二つという条件から、環外二重結合と環内二重結合を区別する。環反転は立体配置を保ってアキシアルとエクアトリアルを交換する。

有機化学:生成物から逆算する水和と立体構造の途中式・最終答をPDFで見る

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年度別の解答例(6年度)

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  • 2022年度(このページ・解説4項目)

    物理化学:固相の平衡とクラペイロン式 / 無機化学:分子イオン・配位数・結合の分類 / 分析化学:弱酸の平衡と緩衝液の精度

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2022年度の出題内容

解説4項目

この4問の分野は化学3問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問化学固相の平衡とクラペイロン式—あり
第2問化学分子イオン・配位数・結合の分類—あり
第3問弱酸の平衡と緩衝液の精度—あり
第4問化学生成物から逆算する水和と立体構造—あり

前年度(2021年度)との違い

大問数
2021年度 4問 → 2022年度 4問
2021年度の解答例

北海道大学の公式過去問

公開年度範囲
2021〜2026年度入学・夏季6回(2020〜2025年実施)
公式の解答例
解答例の掲載なし
院試hubの最終確認
2026-10-22
北海道大学の公式過去問PDF