院試hub

北大 総合化学院 総合化学専攻(修士課程) 総合基礎科目(A・B群共通) 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(解説4項目)

解説4項目の分野は化学3項目、熱・統計力学1項目です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 物理化学:光子・物質波・運動量の重ね合わせ

(1) 紫外線光子のモルエネルギー

振動数は一秒あたりの波の回数、波長は一周期の距離である。真空中では λν=c\lambda\nu=c なので、Planckの関係 E=hνE=h\nu に代入すると波長の逆数に比例する。モル量へ変えるときは、個々の光子の値にAvogadro定数を掛ける。

単位は J s×m s−1/m=J\mathrm{J\,s}\times\mathrm{m\,s^{-1}}/\mathrm m=\mathrm J、さらに mol−1\mathrm{mol^{-1}} を掛け、最後に1000で割ってkJとする。原題の定数が2桁なので最終表示も2桁とし、未丸めの594を途中に残した。波長を400\,nmへ二倍にすればモルエネルギーは297\,kJ/molへ半減するので、紫外線の方が高エネルギーであることとも合う。 200\,nmを 200×10−6200\times10^{-6}\,mと変換すると594\,J/molになり千倍小さい。またAvogadro定数で割る式は一光子の値よりさらに小さくなり、一モルの光子へ足し上げる操作と逆になる。

(2) 電子のドブロイ波長

波数を k=2π/λk=2\pi/\lambda とすると、物質波と粒子を結ぶ関係は p=ℏkp=\hbar k であり、h=2πℏh=2\pi\hbar を用いて λ=h/p\lambda=h/p となる。ここで pp は進行方向を除いた運動量の大きさ、vv も速さである。電子を粒子か波のどちらか一方だけと見なす式ではなく、同じ状態を二つの量で表す対応である。

J s/(kg m s−1)=m\mathrm{J\,s}/(\mathrm{kg\,m\,s^{-1}})=\mathrm m なので長さが得られる。同じ質量で速さを二倍にすると波長は半分となる。vvが光速に近いときは p=γmevp=\gamma m_{\mathrm e}v に替える必要があり、この分母 mevm_{\mathrm e}v を全速度へ拡張しない。 λ=ℏ/(mev)\lambda=\hbar/(m_{\mathrm e}v) とすると必要な 2π2\pi を失い、波長を約6.28分の1にする。また h/(mev2)h/(m_{\mathrm e}v^2) は秒の単位を持ち、波長にならない。運動量と運動エネルギーを分母で取り違えない。

(3) ア 二つの進行波に共通のエネルギー

自由粒子とは位置に依存するポテンシャルを受けず、本問のエネルギーの原点で U=0U=0 とする粒子である。Hamilton演算子は −ℏ2d2/(2medx2)-\hbar^2\mathrm d^2/(2m_{\mathrm e}\mathrm dx^2) で、二階微分では +ik+ik も −ik-ik も同じ −k2-k^2 を生む。そのため任意の定数 A,BA,B の重ね合わせが同じエネルギー固有値を持つ。

古典的な関係 E=p2/(2me)E=p^2/(2m_{\mathrm e}) へ ∣p∣=h/λ|p|=h/\lambda を代入しても同じ式になる。符号が逆の運動量の二状態が縮退しているため、進行方向を指定しなくてもエネルギーは一つに決まる。λ→∞\lambda\to\infty で運動量とエネルギーが0へ近づく極限も合う。 ψ′′=+k2ψ\psi''=+k^2\psi として E<0E<0 を出すと、虚数単位の二乗 i2=−1i^2=-1 を落としている。また E=h/(2mλ)E=h/(2m\lambda) は運動量を二乗しておらず、エネルギーの次元を持たない。原題の丸められた h,ℏh,\hbar は、数式上の定義 h=2πℏh=2\pi\hbar で結び、近似数値を別々に代入して差を作らない。

(3) イ 確定する運動量の大きさと測定値

一階微分は進行波の位相の符号を保つので、二階微分で同じエネルギーになる二成分でも運動量の固有値は逆になる。B=0B=0なら p=+h/λp=+h/\lambda、A=0A=0なら負の固有値に確定する。一般の重ね合わせへ p^ψ=pψ\hat p\psi=p\psi と一つの数を置くことは、二成分の固有値が異なるためできない。

周期境界の箱などで二つの進行波を直交規格化して比較する場合、測定確率は P+=∣A∣2/(∣A∣2+∣B∣2)P_+=|A|^2/(|A|^2+|B|^2)、P−=∣B∣2/(∣A∣2+∣B∣2)P_-=|B|^2/(|A|^2+|B|^2) であり、 ⟨p⟩=∣A∣2−∣B∣2∣A∣2+∣B∣2hλ. \langle p\rangle=\frac{|A|^2-|B|^2}{|A|^2+|B|^2}\frac h\lambda. 無限空間の単独平面波は通常の二乗可積分な波ではないため、期待値の式にはこの規格化条件を付ける。

例えば A=B≠0A=B\ne0 の定在波では ⟨p⟩=0\langle p\rangle=0 でも、測定値は二つの非零の値で、⟨p2⟩=h2/λ2\langle p^2\rangle=h^2/\lambda^2 である。平均を運動エネルギーへ直接入れて ⟨p⟩2/(2m)=0\langle p\rangle^2/(2m)=0 とすると、前問の正のエネルギーと矛盾する。係数未指定のまま正符号だけを確定答案にすることもできない。

解答

(1) 紫外線光子のモルエネルギー

光子一つのエネルギーは E=hν=hc/λE=h\nu=hc/\lambda である。200\,nmを 2.00×10−72.00\times10^{-7}\,mへ直し、 Emol=6.6×10−34×3.0×108200×10−9×6.0×1023=5.94×105 J mol−1=594 kJ mol−1. E_{\mathrm{mol}}= \frac{6.6\times10^{-34}\times3.0\times10^8}{200\times10^{-9}} \times6.0\times10^{23} =5.94\times10^5\ \mathrm{J\,mol^{-1}} =594\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}}.

(2) 電子のドブロイ波長

物質波の関係は λ=h/p\lambda=h/p。電子の速さを vv とし、v≪cv\ll c の非相対論的範囲では p=mevp=m_{\mathrm e}v なので、

(3) ア 二つの進行波に共通のエネルギー

k=2π/λk=2\pi/\lambda として、与えられた ψ=Aeikx+Be−ikx\psi=Ae^{ikx}+Be^{-ikx} を二回微分すると ψ′′=−k2(Aeikx+Be−ikx)=−k2ψ. \psi''=-k^2(Ae^{ikx}+Be^{-ikx})=-k^2\psi. 従って自由粒子のSchrödinger方程式から E=ℏ2k22me=2π2ℏ2meλ2=h22meλ2. E=\frac{\hbar^2k^2}{2m_{\mathrm e}} =\frac{2\pi^2\hbar^2}{m_{\mathrm e}\lambda^2} =\frac{h^2}{2m_{\mathrm e}\lambda^2}.

(3) イ 確定する運動量の大きさと測定値

運動量演算子 p^=−iℏ d/dx\hat p=-i\hbar\,\mathrm d/\mathrm dx を各項へ作用させると p^(Aeikx)=ℏk Aeikx,p^(Be−ikx)=−ℏk Be−ikx. \hat p(Ae^{ikx})=\hbar k\,Ae^{ikx},\qquad \hat p(Be^{-ikx})=-\hbar k\,Be^{-ikx}. 従って可能な運動量測定値は +h/λ+h/\lambda と −h/λ-h/\lambda であり、一定なのはその大きさである。A≠0A\ne0 かつ B≠0B\ne0 なら、単一の運動量固有状態ではない。

最終答

Emol≃5.9×102 kJ mol−1E_{\mathrm{mol}}\simeq5.9\times10^2\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}}

λ=hmev\displaystyle\lambda=\frac{h}{m_{\mathrm e}v}

E=h2/(2meλ2)E=h^2/(2m_{\mathrm e}\lambda^2)

∣p∣=h/λ,p=±h/λ|p|=h/\lambda,\qquad p=\pm h/\lambda(測定値)。

第2問 — 無機化学:平均酸化数・分子の形・ケイ素結晶

平均酸化数は同じ元素の原子を一括して数える形式量であり、非等価な原子が同じ電荷を持つ意味ではない。分子全体の形と中心原子の局所的な配位も分けて答える。

無機化学:平均酸化数・分子の形・ケイ素結晶の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 熱力学:ブレイトンサイクルの仕事と熱効率

断熱圧縮・等圧加熱・断熱膨張・等圧冷却を一巡する。理想気体でも熱容量は励起される分子運動の自由度によって変わるため、振動を含める条件を明示する。

熱力学:ブレイトンサイクルの仕事と熱効率の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 有機化学:幾何異性・求電子付加・立体反転

出発アルケンの安定性、水素化で出る熱、HBr付加の速度を別々に考える。生成した不斉炭素のR/Sは、原子の優先順位と空間配置から確認する。

有機化学:幾何異性・求電子付加・立体反転の途中式・最終答をPDFで見る

総合基礎科目(A・B群共通)の解答・解説PDF

2021〜2026年度(6年度) · ¥3,200

解答PDFの商品ページへ

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(解説4項目)

    原子スペクトル:系列・ボーア模型・定数の決定 / 分子と結晶:ルイス構造・電子対反発・氷の密度 / 溶液平衡:活量・イオン強度・難溶塩・弱塩基

  • 2025年度(解説4項目)

    量子化学:無限井戸の境界条件と共役ポリエン / 無機化学:電子配置・分子軌道・七つの晶系 / 分析化学:混合溶液・二段解離・選択沈殿

  • 2024年度(解説4項目)

    原子と原子核:質量欠損・円軌道・物質波 / 無機化学:電子対・分子の形と極性・結晶の空孔 / 酸塩基:電子対供与・共役対・両性イオン

  • 2023年度(解説4項目)

    物理化学:結合エネルギー・反応の条件・束一的性質 / 無機化学:分子軌道とイオン結晶の静電エネルギー / 分析化学:活量・pH・緩衝液の物質収支

  • 2022年度(解説4項目)

    物理化学:固相の平衡とクラペイロン式 / 無機化学:分子イオン・配位数・結合の分類 / 分析化学:弱酸の平衡と緩衝液の精度

  • 2021年度(このページ・解説4項目)

    物理化学:光子・物質波・運動量の重ね合わせ / 無機化学:平均酸化数・分子の形・ケイ素結晶 / 熱力学:ブレイトンサイクルの仕事と熱効率

2021年度の出題内容

解説4項目

この4問の分野は化学3問・熱・統計力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問化学光子・物質波・運動量の重ね合わせ—あり
第2問化学平均酸化数・分子の形・ケイ素結晶—あり
第3問熱・統計力学ブレイトンサイクルの仕事と熱効率—あり
第4問化学幾何異性・求電子付加・立体反転—あり

北海道大学の公式過去問

公開年度範囲
2021〜2026年度入学・夏季6回(2020〜2025年実施)
公式の解答例
解答例の掲載なし
院試hubの最終確認
2026-10-22
北海道大学の公式過去問PDF