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広島大 先進理工系科学研究科 情報科学プログラム 専門科目Ⅰ・Ⅱ 一般A(2025年8月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全11問)

全11問の分野は線形代数1問、電磁気学・回路1問、微分積分・解析1問です。解説は10問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数

共通の構造を見る

この問題の要点は、AA が全成分 11 の行列 JJ であり、BB が 3I−J3I-J と書けることである。JJ は 1\mathbf{1} 方向だけを残し、その直交補空間を 00 に送る階数 11 の行列なので、固有値計算を直接の行基本変形で行うよりも短く確実に解ける。

逆行列の固有値

可逆行列 BB に対して Bv=λvBv=\lambda v かつ λ≠0\lambda\ne 0 なら、B−1v=λ−1vB^{-1}v=\lambda^{-1}v である。したがって逆行列の固有値は元の固有値の逆数になる。行列式も固有値の積として確認できる。

冪の処理

AB=−AAB=-A まで分かれば、あとは A2=4AA^2=4A を用いるだけでよい。Ak=4k−1AA^k=4^{k-1}A は k=1k=1 でも成り立つため、問題の条件 k≥1k\ge 1 にそのまま対応している。

解答

1=(1,1,1,1)T,J=11T \mathbf{1}=(1,1,1,1)^{\mathsf T},\qquad J=\mathbf{1}\mathbf{1}^{\mathsf T} とおくと、与えられた行列は A=J,B=3I−J A=J,\qquad B=3I-J と表せる。J1=41J\mathbf{1}=4\mathbf{1} であり、また W={v∈R4∣1Tv=0} W=\{v\in\mathbb{R}^4\mid \mathbf{1}^{\mathsf T}v=0\} に属する任意の vv について Jv=0Jv=0 である。したがって、R4\mathbb{R}^4 は span⁡{1}⊕W\operatorname{span}\{\mathbf{1}\}\oplus W に分解できる。

まず A=JA=J について、 A1=41,Av=0(v∈W) A\mathbf{1}=4\mathbf{1},\qquad Av=0\quad (v\in W) であるから、固有値は 4(1重),0(3重) 4\quad(1重),\qquad 0\quad(3重) である。非零固有値の個数から rank⁡A=1 \operatorname{rank}A=1 である。

次に B=3I−JB=3I-J について、 B1=31−41=−1,Bv=3v(v∈W) B\mathbf{1}=3\mathbf{1}-4\mathbf{1}=-\mathbf{1},\qquad Bv=3v\quad (v\in W) である。よって、固有値は −1(1重),3(3重) -1\quad(1重),\qquad 3\quad(3重) であり、00 が固有値でないため rank⁡B=4 \operatorname{rank}B=4 である。

BB の固有値がすべて非零なので BB は可逆である。逆行列の固有値は BB の固有値の逆数であるから、 B−1 の固有値は  −1(1重),13(3重) B^{-1}\text{ の固有値は }\ -1\quad(1重),\qquad \frac13\quad(3重) である。また det⁡B=(−1)⋅33=−27 \det B=(-1)\cdot 3^3=-27 より det⁡B−1=1det⁡B=−127. \det B^{-1}=\frac{1}{\det B}=-\frac{1}{27}.

最後に、 AB=J(3I−J)=3J−J2. AB=J(3I-J)=3J-J^2. J2=(11T)(11T)=1(1T1)1T=4JJ^2=(\mathbf{1}\mathbf{1}^{\mathsf T})(\mathbf{1}\mathbf{1}^{\mathsf T}) =\mathbf{1}(\mathbf{1}^{\mathsf T}\mathbf{1})\mathbf{1}^{\mathsf T} =4J なので AB=3J−4J=−J. AB=3J-4J=-J. 同様に BA=(3I−J)J=3J−J2=−J BA=(3I-J)J=3J-J^2=-J であり、AB=BAAB=BA が成り立つ。さらに AB=−AAB=-A であり、A2=J2=4J=4AA^2=J^2=4J=4A だから、k≥1k\ge 1 に対して Ak=4k−1A. A^k=4^{k-1}A. したがって (AB)k=(−A)k=(−1)kAk=(−1)k4k−1A. (AB)^k=(-A)^k=(-1)^k A^k=(-1)^k4^{k-1}A.

最終答

rank⁡A=1,Spec⁡(A)={4,0,0,0}, \operatorname{rank}A=1,\quad \operatorname{Spec}(A)=\{4,0,0,0\}, rank⁡B=4,Spec⁡(B)={−1,3,3,3}, \operatorname{rank}B=4,\quad \operatorname{Spec}(B)=\{-1,3,3,3\}, det⁡B−1=−127,Spec⁡(B−1)={−1,13,13,13}, \det B^{-1}=-\frac{1}{27},\quad \operatorname{Spec}(B^{-1})=\left\{-1,\frac13,\frac13,\frac13\right\}, AB=BA=−A,(AB)k=(−1)k4k−1A. AB=BA=-A,\qquad (AB)^k=(-1)^k4^{k-1}A.

第2問 — 多変数解析

合成関数として見る

FF は ff を上端にもつ積分であるが、g(u)=∫0ue−t2 dtg(u)=\int_0^u e^{-t^2}\,dt とおけば単なる合成関数 g∘fg\circ f になる。g(u)g(u) のテイラー展開は uu から始まり、次に現れる項は u3u^3 である。したがって f(0,0)=0f(0,0)=0 の下では、2次までの展開には gg の非線形項は現れない。

極限の見方

(2) は ff 自身が r2r^2 と同じ主要項をもつため、F/r2F/r^2 は 11 に近づく。(3) は ff が全方向で r2/2r^2/2 以上に発散するため、FF は有限値 π/2\sqrt{\pi}/2 に収束し、それを rr で割れば 00 になる。方向によって値が変わらないことを不等式で押さえるのが重要である。

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第3問 — 正規分布

標準化

Z=(X−μ)/σZ=(X-\mu)/\sigma は、平均を 00 に移し、標準偏差で割って分散を 11 にする変換である。正規分布はこの標準化によって標準正規分布になる。

対称性の使いどころ

P(∣Z∣≤z)P(|Z|\le z) は中央の確率である。標準正規分布では左側確率と右側確率が対称なので、F(−z)=1−F(z)F(-z)=1-F(z) を使うと 2p−12p-1 がすぐに得られる。ただしこの式は z≥0z\ge 0、すなわち p≥1/2p\ge 1/2 の文脈で用いる。

二乗変換

Z2Z^2 は自由度 11 のカイ二乗分布である。変数変換を直接行うなら、z=±wz=\pm\sqrt{w} の2つの根があることに注意する。片方だけを使うと係数が半分になってしまう。

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第4問 — 述語論理

量化の順序

単射性では「同じ値を取る任意の2点は同じ点である」と読むため、∀x∀y\forall x\forall y で始まる。全射性では「任意の値 yy に対して、それを与える入力 xx が存在する」と読むため、∀y∃x\forall y\exists x で始まる。ここを逆にすると意味が変わる。

例の選び方

(b) では、単射だけ失敗する例、全射だけ失敗する例、両方失敗する例を分けると説明しやすい。特に f2(n)=n+1f_2(n)=n+1 は N\mathbb{N} 上では単射だが 00 を取り逃がすので、全射性の失敗を明確に示せる。

全単射の否定

全単射性は「単射性かつ全射性」である。したがって、どちらか一方でも失敗すれば全単射ではない。f3(n)=0f_3(n)=0 は両方失敗するため、論理式中の2つの括弧の両方が成り立たないことを具体的な値で示せる。

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第5問 — 符号理論

最小距離と訂正能力

最小距離が dmin⁡d_{\min} の符号では、半径 tt のハミング球が互いに重ならないために 2t+1≤dmin⁡2t+1\le d_{\min} が必要である。これを満たす最大の tt が ⌊(dmin⁡−1)/2⌋\lfloor(d_{\min}-1)/2\rfloor である。

生成行列の自由度

検査行列が 3×63\times 6 で階数 33 なので、符号の次元は 6−3=36-3=3 である。生成行列は一意ではなく、HcT=0Hc^{\mathsf T}=0 の解空間の基底を行に並べればよい。

シンドロームの意味

線形符号では、符号語部分 cc は検査行列で消える。そのためシンドロームには誤り ee の情報だけが残る。これがシンドローム復号の基本原理である。

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第6問 — 二分探索木

挿入の追跡

挿入では根から大小比較を繰り返すだけでよい。1313 と 1515 はどちらも 1616 より小さく、1111 より大きいので、左側の枝の中で右方向に伸びる形になる。

回転の本質

木の回転は高さを調整する局所操作であり、キーの昇順列は変えない。答案では、変化した局所部分だけでなく、親との接続がどう変わるかを書くと誤解が少ない。

高さの数え方

高さを辺数で数える流儀なら 4→4→34\to4\to3、節点数で数える流儀なら 5→5→45\to5\to4 である。どちらの流儀でも変化量は −1-1 で一致する。

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第7問 — 挿入ソート

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第8問 — 組合せ回路

半加算器と全加算器

S(2,2)S(2,2) は半加算器そのもので、和の下位ビットが XOR、桁上がりが AND である。S(3,2)S(3,2) は3つの1ビット値を足す全加算器に相当し、2個の半加算器と1個の OR で作れる。

ブロックの数え方

ゲート数はブロックを展開して数える。したがって、S(4,3)S(4,3) の中で使った A(2)A(2) は7個のゲートとして数え、S(8,4)S(8,4) の中で使った S(4,3)S(4,3) はそれぞれ11個として数える。

加算器としての見方

S(n,m)S(n,m) は「1の個数を足し合わせる」回路なので、入力を小さな束に分けて数え、その結果を加算器 A(m)A(m) で足す、という分割統治の構成になる。この見方を使うと、図を書かなくても接続関係とゲート数を一貫して説明できる。

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第9問 — 最尤推定

対数尤度を使う理由

尤度は積の形なので、そのまま微分すると扱いにくい。対数を取ると和に変わり、最大化する点は変わらないため、最尤推定では対数尤度を最大化するのが標準的である。

指数分布の平均

このパラメータ表示では、指数分布の平均が θ\theta である。そのため最尤推定量が標本平均 yˉ\bar y になるのは自然である。密度を λe−λy\lambda e^{-\lambda y} と書く流儀では、最尤推定量は λ^=1/yˉ\hat\lambda=1/\bar y になるので、パラメータの置き方を取り違えないことが重要である。

最大値の代入

最後の最大尤度は推定量そのものではなく、尤度関数の値である。θ=yˉ\theta=\bar y を L(θ)L(\theta) に代入して、指数部が e−ne^{-n} になるところまで計算する。

最尤推定の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — 分類評価

混同行列の配置

この問題では、行列の左上が真陰性、右上が偽陽性、左下が偽陰性、右下が真陽性である。一般的な表と配置が違う場合もあるので、問題文で定義された添字に従って読むことが大切である。

評価指標の意味

正解率は全体のうち正しく分類した割合である。適合率は「陽性と予測したもののうち本当に陽性だった割合」、再現率は「本当に陽性だったもののうち陽性と予測できた割合」である。今回の例では偽陰性が多いため、再現率が特に低い。

F値

F 値は適合率と再現率の調和平均である。算術平均ではなく調和平均を使うため、どちらか一方が小さいと値が強く下がる。今回のように再現率が小さい場合、適合率がある程度あっても F 値は低くなる。

分類評価の途中式・最終答をPDFで見る

第11問 — 研究概要・関心テーマ

評価されやすい答案

専門用語を多く並べるよりも,問題設定から方法までの因果関係が分かる答案が強い。学習ログなら特徴量と評価対象,生成AIなら根拠文書との整合性のように,何を測るかを明確にする。

最近の話題で注意する点

流行語だけを選ぶと抽象的になりやすい。大規模言語モデルを書くなら,生成,検索,評価,根拠提示,回答保留のうち一つに焦点を絞ると,短い答案でも技術的な中身が出る。

400字へのまとめ方

第1文でテーマ,第2文で問題点,第3文で方法,第4文で評価または課題,第5文で自分の関心を書く。各文が長くなったら,背景説明を削って方法と課題を残す。

研究概要・関心テーマの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(7年度)

一般A(2025年8月実施)の出題内容

全11問

この11問の分野は線形代数1問・電磁気学・回路1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数—共通の構造を見る / 逆行列の固有値あり
第2問微分積分・解析多変数解析合成関数として見る / 極限の見方あり
第3問—正規分布標準化 / 対称性の使いどころあり
第4問—述語論理量化の順序 / 例の選び方あり
第5問—符号理論最小距離と訂正能力 / 生成行列の自由度あり
第6問—二分探索木挿入の追跡 / 回転の本質あり
第7問—挿入ソート—あり
第8問電磁気学・回路組合せ回路半加算器と全加算器 / ブロックの数え方あり
第9問—最尤推定対数尤度を使う理由 / 指数分布の平均あり
第10問—分類評価混同行列の配置 / 評価指標の意味あり
第11問—研究概要・関心テーマ評価されやすい答案 / 最近の話題で注意する点あり

前年度(2026年度(2026年1月実施))との違い

大問数
2026年度(2026年1月実施) 11問 → 一般A(2025年8月実施) 11問
2026年度(2026年1月実施)の解答例

広島大学の公式過去問

公開年度範囲
2020〜2026(プログラムにより差あり)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
TOEFL/TOEIC スコア提出。学内英語試験はプログラムにより異なる。
院試hubの最終確認
2026-06-03
広島大学の公式過去問PDF