広島大 先進理工系科学研究科 情報科学プログラム 専門科目Ⅰ・Ⅱ 一般B(2025年1月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全11問)
全11問の分野は確率・統計1問、線形代数1問、微分積分・解析1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。
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第1問 — 線形代数
固有値を先に見る
この行列は「対角成分だけが ,非対角成分がすべて 」という形なので, 成分和の方向と,成分和が になる部分空間に分けるのが最短である。 行基本変形で行列式を計算することもできるが,固有値が一度分かれば階数,行列式, 正定値条件がまとめて得られる。
正定値条件と二次形式
実対称行列では「固有値がすべて正」と「正定値」は同値である。したがって の仮定のもとで が成り立つなら,正定値性から と結論できる。ここで や のような境界を混ぜると,零固有値や 負の固有値が現れるので,(5) では必ず (4) の条件を使う。
解答
全成分が の 次正方行列を とおくと,この行列は と書ける。 は を満たし,また 上では である。したがって の固有値は である。
のとき固有値は であり, は固有値でない。 よって である。
のとき固有値は である。
行列式は固有値の積だから である。展開すれば である。
固有値がすべて正である条件は であり,必要十分条件は である。
のとき は正定値である。よって任意の について であるから, を満たすのは のみである。
最終答
。。。。 のみ。
第2問 — 重積分
変化する境界だけを積分する
領域は長方形を双曲線 で切った形である。 なので,右上角は 切り落とされている。したがって 方向の増分では右端のうち を満たす 部分だけが増え, 方向の増分では上端のうち を満たす部分だけが増える。 この見方をすると,二重積分を完全に計算しなくても偏導関数が求まる。
極限で効くのは面積の一次成長部分
では が大きく, に依存する補正項は で割ると消える。 したがって極限は に関する増加率 だけで決まる。
第3問 — 確率分布
対称性を使う
この分布は平均 のラプラス分布であり,密度が偶関数である。そのため奇数次モーメントは 積分を計算する前に と分かる。偶数次では正の半直線の積分だけを見ればよく, ガンマ積分 に帰着する。
二乗変換では二つの根を足す
の密度を求めるとき, だけでなく も同じ に写る。 この二つの寄与を足すことと,ヤコビアン を掛けることが採点上の要点である。
第4問 — 述語論理
含意と連言の違い
は「 ならば 」であり, でない人については条件を課していない。 一方, は「 かつ 」なので,全称量化すると定義域の全員が二つの性質を 同時に持つことになる。この差を日本語で明確に書けるかが問われている。
否定の作り方
の否定は,存在記号を全称記号に替え,中身を否定して とする。ド・モルガンの法則で となり,これは と同値である。
第5問 — ハミング符号
シンドロームの意味
符号語 は を満たす。受信語が なら となるので,シンドロームは誤り位置の列をそのまま示す。 この対応を列ベクトルで照合するだけで,1ビット誤り訂正ができる。
2ビット誤りを訂正できない理由
(7,4) ハミング符号は1ビット誤り訂正用の符号である。2ビット誤りのシンドロームは 二つの列の和になり,それが別の1列と同じ値になるため,通常の復号手順は誤った1ビット訂正をしてしまう。 「誤りが1ビット以下」という仮定が解答の前提であることを明記するとよい。
第6問 — ハッシュ表
開番地法の見方
衝突が起きたら と増やして次の候補を調べる。 で刻み幅が の場合, と は互いに素なので,最大10回のプローブで全スロットを巡回できる。 一方,刻み幅が だと2個の添字を往復するだけになり,探索範囲が表全体にならない。
探索の終了条件
探索では目的の値を見つければその添字を返し, に出会えば未挿入と判断して を返す。したがって は最初に調べる添字 が であるため, それ以降の位置を調べない。
第7問 — Cプログラム
ポインタ演算で配列アクセスしている
arr[i] は *(arr + i) と同じ意味である。読み込みでは
scanf に格納先アドレスを渡すため arr + i,出力や比較では値を読むため
*(arr + i) を使う。この区別を押さえると空欄 5,7,9 が自然に決まる。
重複削除の添字
ソート済み配列では,同じ値は隣り合う。したがって「最後に確定した重複なし要素」
は添字 unique\_count - 1 にある。現在値がそれと異なるときだけ,
現在値を添字 unique\_count に書き込み,個数を1増やす。
計算量
入力,重複削除,出力はいずれも であるが,バブルソートは比較回数が となるため である。よって全体も になる。
第8問 — 浮動小数点
通常のIEEE形式ではない
この形式では,指数部がすべて の場合やすべて の場合にも特別な意味を与えない。 したがって はゼロではなく を表す。IEEE 754 の非正規数や無限大の規則を 持ち込まないことが重要である。
仮数部の刻み
同じ指数 の中では, が1増えるごとに値は ずつ増える。 付近では なので刻みは であり, と を比較すれば最近値が決まる。
第9問 — 独立性検定
期待度数の作り方
独立性の検定では,行合計と列合計は観測されたまま固定し,「もし独立なら各セルに何人入るか」 を期待度数として計算する。 表では自由度が1になるため,与えられた臨界値のうち 自由度1の を使う。
検定結果の言い方
棄却できるのは「独立である」という帰無仮説であって,「強い因果関係がある」とまでは言えない。 この問題では,観測度数が独立仮定から見て十分ずれているため,5\%水準では独立とは考えにくい, と述べるのが適切である。
第10問 — ロジスティック回帰
交差エントロピーとシグモイドの組合せ
交差エントロピーの微分では分母に が出る。一方,ロジスティックシグモイドの微分は である。連鎖律で掛け合わせるとこの因子が打ち消し合い, 勾配が という非常に簡単な形になる。
符号の確認
のとき,予測確率が目標より大きいので,勾配の係数 は正になる。 勾配降下法では からこの勾配方向を引くため,予測を下げる向きに更新される。 符号を確認することで,微分計算のミスを見つけやすい。
第11問 — 研究概要記述
空欄式の答案にしない
旧来の「対象を入れる」「方法を入れる」という型だけでは,購入者が実際に書く答案の密度を判断しにくい。答案例では,データ,特徴量,手法,結果,限界を具体語で示すとよい。
一貫性
背景で述べた課題と,最後の関心が対応していることが重要である。ログ分析なら利用者支援,RAGなら根拠提示や回答保留のように,最初の問題意識へ戻る形で締める。
短くする方法
字数が超える場合は,社会的意義よりも技術的要点を優先する。方法名と課題が入っていれば,背景説明は1文で十分である。
年度別の解答例(7年度)
線形代数 / 多変数解析 / 正規分布
専門Ⅰ-1 線形代数:ランクと零空間 / 専門Ⅰ-2 微分積分:2変数関数の最小値と重積分 / 専門Ⅰ-3 確率統計:ガンマ分布と裾の重い分布
一般B(2025年1月実施)(このページ・全11問)
線形代数 / 重積分 / 確率分布
線形代数 / 多変数解析 / 確率分布
線形代数 / 多変数関数 / 確率分布
線形代数 / 多変数関数 / 離散分布
線形代数 / 多変数関数 / 確率分布
一般B(2025年1月実施)の出題内容
全11問
この11問の分野は確率・統計1問・線形代数1問・微分積分・解析1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 線形代数 | — | 固有値を先に見る / 正定値条件と二次形式 | あり |
| 第2問 | 微分積分・解析 | 重積分 | 変化する境界だけを積分する / 極限で効くのは面積の一次成長部分 | あり |
| 第3問 | 確率・統計 | 確率分布 | 対称性を使う / 二乗変換では二つの根を足す | あり |
| 第4問 | — | 述語論理 | 含意と連言の違い / 否定の作り方 | あり |
| 第5問 | — | ハミング符号 | シンドロームの意味 / 2ビット誤りを訂正できない理由 | あり |
| 第6問 | — | ハッシュ表 | 開番地法の見方 / 探索の終了条件 | あり |
| 第7問 | — | Cプログラム | ポインタ演算で配列アクセスしている / 重複削除の添字 | あり |
| 第8問 | — | 浮動小数点 | 通常のIEEE形式ではない / 仮数部の刻み | あり |
| 第9問 | — | 独立性検定 | 期待度数の作り方 / 検定結果の言い方 | あり |
| 第10問 | — | ロジスティック回帰 | 交差エントロピーとシグモイドの組合せ / 符号の確認 | あり |
| 第11問 | — | 研究概要記述 | 空欄式の答案にしない / 一貫性 | あり |
前年度(一般A(2024年8月実施))との違い
- 大問数
- 一般A(2024年8月実施) 11問 → 一般B(2025年1月実施) 11問
広島大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 2020〜2026(プログラムにより差あり)
- 公式の解答例
- 一部の年度・科目のみ公開
- 英語の扱い
- TOEFL/TOEIC スコア提出。学内英語試験はプログラムにより異なる。
- 院試hubの最終確認
- 2026-06-03