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広島大 先進理工系科学研究科 情報科学プログラム 専門科目Ⅰ・Ⅱ 一般A(2023年8月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全11問)

全11問の分野は線形代数1問、電磁気学・回路1問、微分積分・解析1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数

使うべき構造

実対称行列であることから,固有値だけでなく固有ベクトルを直交基底に取れる。したがって,問題は成分計算ではなく,直交対角化とトレースの不変性で処理するのが最短である。

二乗和の読み替え

成分の二乗和を直接展開すると煩雑になる。Frobenius ノルム ∥A∥F2=tr(ATA) \|A\|_F^2=\mathrm{tr}(A^{\mathsf T}A) に読み替えると,直交変換で値が変わらないことがすぐに見える。

解答

AA は実対称行列なので,直交行列 Q=(u1,…,un)Q=(u_1,\ldots,u_n) と対角行列 Λ=diag(λ1,…,λn)\Lambda=\mathrm{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n) を用いて A=QΛQT,QTQ=QQT=I A=Q\Lambda Q^{\mathsf T},\qquad Q^{\mathsf T}Q=QQ^{\mathsf T}=I と直交対角化できる。

まずトレースについて,トレースの巡回性から tr(A)=tr(QΛQT)=tr(ΛQTQ)=tr(Λ)=∑i=1nλi \mathrm{tr}(A) =\mathrm{tr}(Q\Lambda Q^{\mathsf T}) =\mathrm{tr}(\Lambda Q^{\mathsf T}Q) =\mathrm{tr}(\Lambda) =\sum_{i=1}^{n}\lambda_i である。

次に成分の二乗和は Frobenius ノルムの二乗であり, ∑i=1n∑j=1naij2=tr(ATA) \sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{n}a_{ij}^{2} =\mathrm{tr}(A^{\mathsf T}A) と書ける。実対称性より AT=AA^{\mathsf T}=A なので tr(ATA)=tr(A2). \mathrm{tr}(A^{\mathsf T}A)=\mathrm{tr}(A^2). 直交対角化を代入すると A2=QΛQTQΛQT=QΛ2QT A^2 =Q\Lambda Q^{\mathsf T}Q\Lambda Q^{\mathsf T} =Q\Lambda^2Q^{\mathsf T} であり,再びトレースの巡回性から tr(A2)=tr(Λ2)=∑i=1nλi2. \mathrm{tr}(A^2) =\mathrm{tr}(\Lambda^2) =\sum_{i=1}^{n}\lambda_i^2. したがって ∑i=1n∑j=1naij2=∑i=1nλi2 \sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{n}a_{ij}^{2} =\sum_{i=1}^{n}\lambda_i^2 が得られる。

最終答

tr(A)=∑i=1nλi,∑i,jaij2=∑i=1nλi2. \mathrm{tr}(A)=\sum_{i=1}^{n}\lambda_i,\qquad \sum_{i,j}a_{ij}^{2}=\sum_{i=1}^{n}\lambda_i^2.

第2問 — 多変数関数

極値判定の初手

e−x2−y2e^{-x^2-y^2} は原点近くで正なので,符号は xyxy が決める。Hesse 行列を見る方法もあるが,2 本の直線上で符号が変わることを示すだけで十分である。

合成後も鞍点である理由

条件 ad−bc≠0ad-bc\ne0 は,2 つの一次形式 au+bvau+bv と cu+dvcu+dv が独立であることを意味する。したがってその積は原点近くで正負の両方を取り,極値にはならない。この一文を書けると,単なる展開計算で終わらない答案になる。

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第3問 — 離散分布

数える対象

YkY_k は「値 kk が何回出たか」を数える確率変数である。1 つの値だけに注目すれば二項分布,複数の値を同時に見ると多項分布になる。

条件付き分布

Y1=ℓY_1=\ell と分かった後は,残りの試行が値 00 と 22 の間で再正規化される。分母が p0+p2p_0+p_2 になる点を落としやすい。

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第4問 — 平面グラフ

極大平面グラフの鍵

「極大」とは,これ以上辺を足せないという意味である。そのため,全ての面が三角形でなければならない。ここを言葉で説明してから 3r=2q3r=2q に入ると,式の意味が明確になる。

必要条件と十分条件

q≤3p−6q\le3p-6 は平面性の必要条件であって十分条件ではない。ただし K5K_5 から 1 辺を除いた場合は,具体的な平面描画があるので平面的である。最後は不等式だけで判断せず,描画可能性を示す。

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第5問 — 符号理論

接頭語条件

瞬時復号可能性を見るときは,符号語の長さよりも「ある符号語が別の符号語の先頭になっていないか」を確認する。今回,00 があるため 00 から始まる 4 ビット語は使えず,1010,110110 から始まる語も避ける。

二次拡大の書き方

二次拡大は新しい符号を設計する問題ではなく,既存符号語を 2 個連結した集合である。cicjc_i c_j と一般形で書いたうえで,必要に応じて具体列を示すとよい。

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第6問 — 反転数とソート

挿入ソートとの対応

挿入ソートで要素が右へ 1 回ずれるたびに,その要素と key の間にあった反転が 1 つ解消される。したがって,反転数は挿入ソートの while ループ回数を測る量になる。

高速化の考え方

全ての組を調べると O(n2)O(n^2) である。マージソートの併合時に「右から先に出た要素は,左に残る要素すべてより小さい」と読むと,まとめて反転数を足せる。

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第7問 — C言語とスタック

top の意味

top\texttt{top} は「次に入れる場所」ではなく「現在入っている最後の要素の添字」として使われている。初期値が −1-1 であることから,push では先に増やし,pop では使った後に減らす。

括弧対応で見る条件

括弧対応の判定では,開き括弧を push,閉じ括弧を pop とする。正しさには,満杯,空,種類違い,最後の余りという 4 条件が必要である。コードがどの条件を検査していないかを,具体例の誤判定と結びつけて説明する。

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第8問 — 2の補数と論理回路

例外値

4 ビット 2 の補数の範囲は −8-8 から 77 までである。したがって −(−8)=8-(-8)=8 だけが表現不能になる。この行を don't care として使うと回路が簡単になる。

カルノー図を使わない確認

カルノー図で簡単化してもよいが,2 の補数の性質を使うと,下位ビットからの規則が見える。答案では表で例外を明示し,その後に論理式を示すと安全である。

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第9問 — 線形回帰

射影行列として見る

HH は XX の列空間への射影行列である。HX=XHX=X を示せば,期待値の計算は一行で済む。

分散の変換公式

確率ベクトル yy に定数行列 HH を掛けると,分散共分散行列は HVar(y)HTH\mathrm{Var}(y)H^{\mathsf T} になる。ここで HH の左右の位置を取り違えないことが重要である。

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第10問 — ソフトマックス

オーバーフロー対策

全成分に同じ値を足し引きしても結果は変わらない。実装では zi←zi−max⁡kzk z_i\leftarrow z_i-\max_k z_k としてから指数を計算すると,最大の指数が e0=1e^0=1 になり,オーバーフローを避けやすい。

温度の意味

大きい温度は分布を平らにし,小さい温度は最大値を強調する。機械学習では,出力確率の鋭さを調整するパラメータとして使われる。

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第11問 — 研究概要・関心テーマ

短い答案で差がつく点

400字程度では,話題を広げるよりも,1つのテーマを深く書く方がよい。方法名を一つ入れ,さらに評価指標や課題を一つ入れるだけで,単なる感想から研究概要に近づく。

よくある失点

題目だけを説明して自分の関心が出ていない答案,社会的意義だけで技術的要点がない答案,研究経験を書くのに自分の担当や結果が書かれていない答案は弱い。最後の1文で「何をさらに調べたいか」を書くと,志望分野との接続が見える。

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年度別の解答例(7年度)

一般A(2023年8月実施)の出題内容

全11問

この11問の分野は線形代数1問・電磁気学・回路1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数—使うべき構造 / 二乗和の読み替えあり
第2問微分積分・解析多変数関数極値判定の初手 / 合成後も鞍点である理由あり
第3問—離散分布数える対象 / 条件付き分布あり
第4問—平面グラフ極大平面グラフの鍵 / 必要条件と十分条件あり
第5問—符号理論接頭語条件 / 二次拡大の書き方あり
第6問—反転数とソート挿入ソートとの対応 / 高速化の考え方あり
第7問—C言語とスタックtop の意味 / 括弧対応で見る条件あり
第8問電磁気学・回路2の補数と論理回路例外値 / カルノー図を使わない確認あり
第9問—線形回帰射影行列として見る / 分散の変換公式あり
第10問—ソフトマックスオーバーフロー対策 / 温度の意味あり
第11問—研究概要・関心テーマ短い答案で差がつく点 / よくある失点あり

前年度(一般B(2023年1月実施))との違い

大問数
一般B(2023年1月実施) 11問 → 一般A(2023年8月実施) 11問
一般B(2023年1月実施)の解答例

広島大学の公式過去問

公開年度範囲
2020〜2026(プログラムにより差あり)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
TOEFL/TOEIC スコア提出。学内英語試験はプログラムにより異なる。
院試hubの最終確認
2026-06-03
広島大学の公式過去問PDF