広島大 先進理工系科学研究科 情報科学プログラム 専門科目Ⅰ・Ⅱ 一般B(2024年1月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全11問)
全11問の分野は微分積分・解析2問、確率・統計1問、情報1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。
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第1問 — 線形代数
像と核の見方
像の次元は行列の階数であり、核の次元は零空間の次元である。今回は が 行列なので、階数が と分かれば階数・退化次数の定理からも と確認できる。
実対称行列であることの使い方
後半では、単に固有値・固有ベクトルが与えられているだけでなく、 が実対称である点が重要である。実対称行列では、異なる固有値に属する固有空間が直交するため、未知の固有ベクトルは既知の2本に直交する方向として求められる。固有ベクトルを正規化してから を用いると、行列 を直接復元できる。
解答
前半の行列を とおく。列ベクトルを と書けば、 は一次独立である。したがって であり、像は 全体である。よって は の基底である。
核は を解けばよい。 とすると である。第2式から 、第1式から となるので したがって は の基底である。
後半では が実対称行列で、固有値が相異なるので、異なる固有値に属する固有ベクトルは互いに直交する。 与えられた は実際に直交している。 に対応する固有ベクトル は を満たせばよい。よって であり、例えば を取れる。
正規直交基底 に関して である。計算すると
最終答
第2問 — 多変数関数
固定する変数の選び方
関数は と の積である。球面条件では が という円上を動くので、まず を固定して の取り得る範囲を見ると計算が短くなる。
等号条件
Cauchy--Schwarz の等号条件は が の定数倍であること、すなわち である。最大値では 、最小値では を選ぶ。境界 では となり関数値は なので、最大・最小ではない。
第3問 — 確率分布
最大値と最小値
最大値の分布関数では「全てが 以下」と言い換える。最小値では「少なくとも1つが 以下」を直接扱うより、補集合の「全てが より大きい」を使う方が簡単である。
指数分布の和
同じ率 をもつ独立な指数分布を2つ足すと、形状母数 、率母数 のガンマ分布になる。密度の形は であり、 で とする点を書き落とさないことが重要である。
第4問 — 集合と同値関係
直積
直積 では、左成分は必ず から、右成分は必ず から選ぶ。したがって要素数は になる。
同値類の基本事実
同値関係は集合を互いに交わらない部分集合へ分割する。この部分集合が同値類である。(A) は「同値な代表元から作った同値類は同じ」という主張、(B) は「異なる同値類は交わらない」という主張である。どちらも反射律・対称律・推移律をそれぞれどこで使うかを明示すると、採点上も確実な証明になる。
第5問 — 情報理論
条件付きエントロピー
入力が でも でも、出力確率の集合は同じである。そのため と が等しくなり、入力確率 は から消える。
容量の直観
消失が起きたとき、その出力は入力の を区別しない。したがって非消失確率 の分だけ有効な2元対称通信路が残り、その中で誤り率が になる。この見方からも が得られる。
第6問 — グラフ彩色
彩色を示すとは
具体的なグラフの彩色可能性は、色の割当表を1つ提示し、全ての辺で両端の色が異なることを述べれば十分である。図を写す必要はなく、頂点番号ごとの色で答案にできる。
貪欲彩色
最大次数が であれば、ある頂点が同時に禁止される色は高々 色である。色が 色あれば必ず1色余る、という数え上げが証明の中心である。
奇数閉路
閉路を2色で交互に塗ると、長さが偶数なら最後に矛盾しないが、奇数なら始点に戻る辺で同じ色が隣接してしまう。このため奇数閉路は2彩色不可能である。
第7問 — C言語とリスト
ループ版の反転
`prev` はすでに反転済みの先頭、`current` はこれから処理する先頭、`next` はリンクを張り替える前に退避しておく次ノードである。`current->next = prev` によって1本ずつ向きを反転する。
再帰版の反転
`reverseListR(head->next)` が、先頭を除いた部分リストを反転して返す。その後 により元の2番目のノードの後ろに元の先頭をつなぎ、 で元の先頭を末尾にする。出力問題では、どの時点で `printf` が呼ばれるかを再帰の戻り順まで追う必要がある。
第8問 — ブール関数
NOR の完全性
NOR は単独で完全系になる。試験では、いきなり「完全系である」と書くより、 の3式を示すと説得力がある。
真理値表から式を作る
値が になる行から DNF を作る方法もあるが、この問題の は値が になる行が3つだけなので、 となる条件を先に書き、その否定を取る方が短くなる。
第9問 — 回帰と検定
回帰係数の意味
この設計では、母集団 の行は説明変数が 、母集団 の行は説明変数が である。したがって は群 の平均、 は群 と群 の平均差を表す。最小二乗推定量でも同じ構造になり、 が得られる。
通常の2標本 z 検定との一致
符号を反対にして と書いても、両側検定では同じである。回帰で導いた統計量は、既知分散・独立2標本の z 検定と一致する。
第10問 — 機械学習
過学習の答案で必要な要素
単に「訓練データを覚えること」と書くだけでは弱い。訓練誤差と汎化誤差の差、モデル容量、データ量、ノイズの関係まで述べると採点しやすい答案になる。
教師あり・教師なしの対比
違いはラベルの有無だけでなく、目的関数の意味にもある。教師あり学習では予測誤差を小さくする。教師なし学習ではクラスタ内距離、再構成誤差、尤度など、データ自身から定義される基準を最適化する。
第11問 — 研究小論述
研究として見える書き方
「何をしたか」だけでなく,「なぜその方法を選んだか」「何で評価したか」を書くと研究らしくなる。異常検知なら再構成誤差,分類なら正解率や F 値,検索なら再現率や適合率のように,評価の軸を一つ入れるとよい。
最近の話題を選ぶとき
新しい話題ほど,利点だけを書くと宣伝文に見える。連合学習なら非独立同分布データ,通信コスト,プライバシー漏洩,RAGなら検索品質や根拠提示のように,技術的な課題も併記すると答案の密度が上がる。
避けたい答案
「AIに興味がある」「セキュリティが重要だと思う」だけでは抽象的である。対象データ,アルゴリズム,評価指標,未解決課題のうち少なくとも二つを入れる。
年度別の解答例(7年度)
線形代数 / 多変数解析 / 正規分布
専門Ⅰ-1 線形代数:ランクと零空間 / 専門Ⅰ-2 微分積分:2変数関数の最小値と重積分 / 専門Ⅰ-3 確率統計:ガンマ分布と裾の重い分布
線形代数 / 重積分 / 確率分布
線形代数 / 多変数解析 / 確率分布
一般B(2024年1月実施)(このページ・全11問)
線形代数 / 多変数関数 / 確率分布
線形代数 / 多変数関数 / 離散分布
線形代数 / 多変数関数 / 確率分布
一般B(2024年1月実施)の出題内容
全11問
この11問の分野は微分積分・解析2問・確率・統計1問・情報1問・線形代数1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 線形代数 | — | 像と核の見方 / 実対称行列であることの使い方 | あり |
| 第2問 | 微分積分・解析 | 多変数関数 | 固定する変数の選び方 / 等号条件 | あり |
| 第3問 | 確率・統計 | 確率分布 | 最大値と最小値 / 指数分布の和 | あり |
| 第4問 | — | 集合と同値関係 | 直積 / 同値類の基本事実 | あり |
| 第5問 | 情報 | 情報理論 | 条件付きエントロピー / 容量の直観 | あり |
| 第6問 | — | グラフ彩色 | 彩色を示すとは / 貪欲彩色 | あり |
| 第7問 | — | C言語とリスト | ループ版の反転 / 再帰版の反転 | あり |
| 第8問 | 微分積分・解析 | ブール関数 | NOR の完全性 / 真理値表から式を作る | あり |
| 第9問 | — | 回帰と検定 | 回帰係数の意味 / 通常の2標本 z 検定との一致 | あり |
| 第10問 | — | 機械学習 | 過学習の答案で必要な要素 / 教師あり・教師なしの対比 | あり |
| 第11問 | — | 研究小論述 | 研究として見える書き方 / 最近の話題を選ぶとき | あり |
前年度(一般A(2023年8月実施))との違い
- 大問数
- 一般A(2023年8月実施) 11問 → 一般B(2024年1月実施) 11問
広島大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 2020〜2026(プログラムにより差あり)
- 公式の解答例
- 一部の年度・科目のみ公開
- 英語の扱い
- TOEFL/TOEIC スコア提出。学内英語試験はプログラムにより異なる。
- 院試hubの最終確認
- 2026-06-03