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広島大 先進理工系科学研究科 情報科学プログラム 専門科目Ⅰ・Ⅱ 一般A(2024年8月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全11問)

全11問の分野は情報2問、確率・統計1問、線形代数1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数

直交対角化を見抜く

この行列は「回転行列 RR で対角行列 DD をはさんだ形」である。したがって成分を直接展開して固有方程式を解くより、A=RDRTA=RDR^{\mathsf T} を使う方が短く確実である。

正定値性の示し方

xTAx>0x^{\mathsf T}Ax>0 は、対角成分が正の対角行列へ座標変換して示すのが標準的である。直交行列による変換では x≠0x\ne0 が RTx≠0R^{\mathsf T}x\ne0 に保たれるので、最後に 2y12+3y22>02y_1^2+3y_2^2>0 と書けば十分である。

解答

R=(cos⁡θ−sin⁡θsin⁡θcos⁡θ),D=(2003) R= \begin{pmatrix} \cos\theta&-\sin\theta\\ \sin\theta& \cos\theta \end{pmatrix},\qquad D=\begin{pmatrix}2&0\\0&3\end{pmatrix} とおくと、RR は直交行列であり A=RDRT A=RDR^{\mathsf T} である。

  1. det⁡A=det⁡Rdet⁡Ddet⁡RT=1⋅6⋅1=6. \det A=\det R\det D\det R^{\mathsf T}=1\cdot 6\cdot 1=6.

  2. 直交相似変換なので、固有値は DD の対角成分である。第1列、第2列がそれぞれ対応する単位固有ベクトルになるから λ1=2,v1=(cos⁡θsin⁡θ),λ2=3,v2=(−sin⁡θcos⁡θ). \lambda_1=2,\quad v_1= \begin{pmatrix}\cos\theta\\ \sin\theta\end{pmatrix}, \qquad \lambda_2=3,\quad v_2= \begin{pmatrix}-\sin\theta\\ \cos\theta\end{pmatrix}. 固有ベクトルは符号を反転しても同じ固有空間を表す。

  3. 任意の x≠0x\ne 0 に対して y=RTxy=R^{\mathsf T}x とおく。RR は正則なので y≠0y\ne 0 である。したがって xTAx=xTRDRTx=yTDy=2y12+3y22>0. x^{\mathsf T}Ax =x^{\mathsf T}RDR^{\mathsf T}x =y^{\mathsf T}Dy =2y_1^2+3y_2^2>0.

  4. θ=π/4\theta=\pi/4 のときも A=RDRTA=RDR^{\mathsf T} であるため An=RDnRT=R(2n003n)RT. A^n=RD^nR^{\mathsf T} =R \begin{pmatrix}2^n&0\\0&3^n\end{pmatrix} R^{\mathsf T}. cos⁡(π/4)=sin⁡(π/4)=1/2\cos(\pi/4)=\sin(\pi/4)=1/\sqrt2 より An=12(2n+3n2n−3n2n−3n2n+3n). A^n= \frac12 \begin{pmatrix} 2^n+3^n&2^n-3^n\\ 2^n-3^n&2^n+3^n \end{pmatrix}.

最終答

det⁡A=6,(λ1,v1)=(2,(cos⁡θsin⁡θ)),(λ2,v2)=(3,(−sin⁡θcos⁡θ)), \det A=6,\quad (\lambda_1,v_1)= \left(2,\begin{pmatrix}\cos\theta\\ \sin\theta\end{pmatrix}\right),\quad (\lambda_2,v_2)= \left(3,\begin{pmatrix}-\sin\theta\\ \cos\theta\end{pmatrix}\right), xTAx>0 (x≠0),θ=π4 ではAn=12(2n+3n2n−3n2n−3n2n+3n). x^{\mathsf T}Ax>0\ (x\ne0),\qquad \theta=\frac{\pi}{4}\ \text{では}\quad A^n=\frac12 \begin{pmatrix} 2^n+3^n&2^n-3^n\\ 2^n-3^n&2^n+3^n \end{pmatrix}.

第2問 — 多変数解析

原点近くの評価

log⁡(1/r)\log(1/r) は r→0r\to0 で発散するが、rlog⁡(1/r)→0r\log(1/r)\to0 である。対数発散より一次の rr の減少が強いため、原点での連続値は 00 になる。

最大値は境界方向で起こる

関数は x=rcos⁡ϕx=r\cos\phi に比例するので、同じ半径なら xx 軸方向、すなわち ϕ=0\phi=0 が最大である。あとは1変数関数 2rlog⁡(1/r)2r\log(1/r) の最大化に帰着する。

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第3問 — 確率分布

母関数から和の分布も読める

ポアソン分布では確率母関数が eλ(z−1)e^{\lambda(z-1)} になる。独立な和の確率母関数は積なので、 eλ1(z−1)eλ2(z−1)=e(λ1+λ2)(z−1) e^{\lambda_1(z-1)}e^{\lambda_2(z-1)} =e^{(\lambda_1+\lambda_2)(z-1)} となり、和がパラメータ λ1+λ2\lambda_1+\lambda_2 のポアソン分布であることも確認できる。

条件付き分布は二項分布

和 X1+X2=nX_1+X_2=n を固定すると、nn 個の発生がどちらのポアソン過程に由来するかを分ける形になり、成功確率 λ1/(λ1+λ2)\lambda_1/(\lambda_1+\lambda_2) の二項分布になる。この見方を使うと(4)を短く導ける。

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第4問 — グラフ理論

第1小問の例

「位数6」とあるので連結グラフに限定されていない。K4K_4 は平面的かつ彩色数4の最小例であり、孤立頂点を足すだけで位数を6に調整できる。連結例を求められた場合は、孤立頂点を K4K_4 のいずれかの頂点へ木状につなげても彩色数は4のままである。

5色定理の帰納法の一部

(2) は「次数5以下の頂点」の存在、(4) は「次数4以下ならすぐ拡張できる」ことを示している。次数5の頂点を扱うには隣接頂点の同一色化など追加の議論が必要であり、この小問ではそこまでは要求されていない。

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第5問 — 情報理論

ハフマン長の確認

確率が 1/4,1/8,1/161/4,1/8,1/16 のように2のべきで表されているため、理想長 −log⁡2p-\log_2 p が整数になる。この場合、ハフマン符号の平均長はエントロピー H(S2)=2H(S)=3H(S^2)=2H(S)=3 に一致する。

瞬時復号と一意復号の違い

瞬時復号では、受信したビット列を先読みなしに区切れる必要がある。ある符号語が別の符号語の接頭語になると、たとえば先頭の 00 を見た時点でそこで区切るべきか、次のビットを待つべきか判断できない。

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第6問 — アルゴリズム

累積和配列の意味

出現回数の C[i]C[i] を累積和に変えると、C[i]C[i] は「値 ii の要素を置ける最後の位置」になる。要素を置くたびに C[i]C[i] を1減らすことで、同じ値の次の要素を1つ前の空き位置へ入れられる。

後ろから走査する理由

入力を後ろから前に走査すると、同じ値について後に現れた要素が先に後ろ側の位置へ置かれる。その後、前に現れた要素がその前の位置へ置かれるので、入力順が保存される。これがカウントソートの安定性の核心である。

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第7問 — C言語

ポインタ渡しの意図

`addElement' と `removeElement' は配列そのものだけでなく、現在の要素数 `size' を更新する必要がある。そのため引数は `int *size' であり、呼び出し側では `\&size' を渡す。関数内で現在値を読むときは `*size'、更新するときは `(*size)++' や `(*size)--' と書く。

削除処理の添字

削除位置 `index' の後ろにある要素を1つずつ前へ詰めるので、代入は `list[i] = list[i + 1]' である。最後に読む添字が `*size - 1' までなので、ループ条件は i<∗size−1i<*size-1 になる。

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第8問 — 論理回路

最小個数の考え方

NOR 1個だけでは出力に必ず否定がかかるため、OR そのものは作れない。したがって a∨b∨ca\vee b\vee c には、まず NOR で否定を作り、それをもう一度 NOR(1) で反転する2個が必要である。

関数完全性

論理回路で「任意の論理関数を作れる」ことを示す定番の方法は、NOT、AND、OR が作れることを示すことである。真理値表から選言標準形を作れるため、この3種類がそろえば十分である。

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第9問 — 統計推定

既知分散の場合の最尤推定

σ2\sigma^2 が既知なので、μ\mu に依存する部分は −∑i(xi−μ)2/(2σ2)-\sum_i(x_i-\mu)^2/(2\sigma^2) だけである。結局、二乗誤差和を最小にする値を求める問題になり、標本平均が得られる。

特性関数の微分

φX(t)=E[eitX]\varphi_X(t)=\mathbb E[e^{itX}] なので、微分して t=0t=0 を代入すると φX′(0)=E[iX]=iE[X]\varphi_X'(0)=\mathbb E[iX]=i\mathbb E[X] となる。最後に ii で割る点を忘れない。

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第10問 — 機械学習

評価用データを分ける理由

機械学習で知りたいのは訓練データをどれだけ覚えたかではなく、未知データにどれだけ対応できるかである。交差検証は、データを有効活用しながら未知データに対する性能を近似的に測る方法である。

活性化関数の要点

活性化関数の説明では、単に名前を列挙するだけでなく「非線形性を入れるため」と書くことが重要である。この理由がないと、ニューラルネットワークでなぜ必要なのかの説明として不十分になりやすい。

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第11問 — 研究概要・関心テーマ

構成を先に固定する

400字程度では,最初に構成を決めてから書く方が安定する。第1文でテーマ,第2文で背景と課題,第3文と第4文で方法と結果,第5文で今後の課題または興味を持った理由を書く。

技術的な中身を入れる

「画像認識」「AI」「セキュリティ」などの大きな語だけでは不足する。畳み込みニューラルネットワーク,データ拡張,特徴量の寄与度,異常スコアのように,方法や評価に関わる語を一つ入れると情報科学の答案になる。

研究経験がない場合

最近の話題を選んでもよいが,ニュースの紹介で終わらせない。仕組み,利点,限界,自分が調べたい点を接続して書くと,志望分野との関係が見えやすい。

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年度別の解答例(7年度)

一般A(2024年8月実施)の出題内容

全11問

この11問の分野は情報2問・確率・統計1問・線形代数1問・電磁気学・回路1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数—直交対角化を見抜く / 正定値性の示し方あり
第2問微分積分・解析多変数解析原点近くの評価 / 最大値は境界方向で起こるあり
第3問確率・統計確率分布母関数から和の分布も読める / 条件付き分布は二項分布あり
第4問—グラフ理論第1小問の例 / 5色定理の帰納法の一部あり
第5問情報情報理論ハフマン長の確認 / 瞬時復号と一意復号の違いあり
第6問情報アルゴリズム累積和配列の意味 / 後ろから走査する理由あり
第7問—C言語ポインタ渡しの意図 / 削除処理の添字あり
第8問電磁気学・回路論理回路最小個数の考え方 / 関数完全性あり
第9問—統計推定既知分散の場合の最尤推定 / 特性関数の微分あり
第10問—機械学習評価用データを分ける理由 / 活性化関数の要点あり
第11問—研究概要・関心テーマ構成を先に固定する / 技術的な中身を入れるあり

前年度(一般B(2024年1月実施))との違い

大問数
一般B(2024年1月実施) 11問 → 一般A(2024年8月実施) 11問
一般B(2024年1月実施)の解答例

広島大学の公式過去問

公開年度範囲
2020〜2026(プログラムにより差あり)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
TOEFL/TOEIC スコア提出。学内英語試験はプログラムにより異なる。
院試hubの最終確認
2026-06-03
広島大学の公式過去問PDF