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広島大 先進理工系科学研究科 情報科学プログラム 専門科目Ⅰ・Ⅱ 一般B(2023年1月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全11問)

全11問の分野は確率・統計1問、情報1問、線形代数1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数

階数で場合分けする理由

連立一次方程式は、係数行列が正則なら必ず一意解をもつ。特異な場合には、係数行列の行の従属関係が右辺にも同じように成り立つかを調べる。ここでは第3行が第1行と第2行の和になるため、右辺でも b3=b1+b2b_3=b_1+b_2 となるかだけを見ればよい。

対称成分と交代成分

(M+tM)/2(M+{}^tM)/2 は行列の対称成分、(M−tM)/2(M-{}^tM)/2 は交代成分である。この分解は任意の正方行列で使えるので、個別に成分を連立して求めるより確実である。

奇数次交代行列の行列式

det⁡(−B)=(−1)mdet⁡B\det(-B)=(-1)^m\det B の mm は行列の次数である。次数が奇数のときだけ符号が反転するため、det⁡B=−det⁡B\det B=-\det B となり、行列式が0に限られる。

解答

  1. 係数行列を M=(11721a2+13217),b=(−76a11) M=\begin{pmatrix} 1&1&7\\ 2&1&a^2+1\\ 3&2&17 \end{pmatrix},\qquad b=\begin{pmatrix}-7\\6a\\11\end{pmatrix} とおく。行列式は det⁡M=∣11721a2+13217∣=1{17−2(a2+1)}−1{34−3(a2+1)}+7(4−3)=a2−9 \begin{aligned} \det M &= \begin{vmatrix} 1&1&7\\ 2&1&a^2+1\\ 3&2&17 \end{vmatrix} \\ &=1\{17-2(a^2+1)\}-1\{34-3(a^2+1)\}+7(4-3)\\ &=a^2-9 \end{aligned} である。したがって、ただ一つの解をもつのは a≠±3 a\ne \pm 3 のときである。

    a=±3a=\pm 3 の場合を調べる。係数行列はどちらの場合も第3行が第1行と第2行の和である。 ab1+b2b33−7+18=1111−3−7−18=−2511 \begin{array}{c|c|c} a & b_1+b_2 & b_3\\ \hline 3 & -7+18=11 & 11\\ -3 & -7-18=-25 & 11 \end{array} よって a=−3a=-3 では拡大係数行列の第3行が矛盾し、解をもたない。一方、a=3a=3 では 係数行列と拡大係数行列の階数がともに 22 なので、無限に多くの解をもつ。

    a=3a=3 のとき、第1、2式から {x1+x2+7x3=−7,2x1+x2+10x3=18 \begin{cases} x_1+x_2+7x_3=-7,\\ 2x_1+x_2+10x_3=18 \end{cases} である。第2式から第1式を引くと x1+3x3=25 x_1+3x_3=25 となる。x3=tx_3=t とおくと x1=25−3t,x2=−32−4t x_1=25-3t,\qquad x_2=-32-4t である。

    任意の正方行列は M=M+tM2+M−tM2 M=\frac{M+{}^tM}{2}+\frac{M-{}^tM}{2} と分解できる。したがって P=M+tM2=(1325321a2+325a2+3217), P=\frac{M+{}^tM}{2} = \begin{pmatrix} 1&\frac32&5\\ \frac32&1&\frac{a^2+3}{2}\\ 5&\frac{a^2+3}{2}&17 \end{pmatrix}, Q=M−tM2=(0−122120a2−12−21−a220). Q=\frac{M-{}^tM}{2} = \begin{pmatrix} 0&-\frac12&2\\ \frac12&0&\frac{a^2-1}{2}\\ -2&\frac{1-a^2}{2}&0 \end{pmatrix}. このとき tP=P, tQ=−Q{}^tP=P,\ {}^tQ=-Q であり、M=P+QM=P+Q を満たす。

    1. tA=A{}^tA=A かつ AA が正則とする。積の転置と逆行列の一意性から t(A−1)=(tA)−1=A−1. {}^t(A^{-1})=({}^tA)^{-1}=A^{-1}. よって A−1A^{-1} は対称行列である。

    2. BB が (2n+1)(2n+1) 次の交代行列なら tB=−B{}^tB=-B である。行列式について det⁡B=det⁡(tB)=det⁡(−B)=(−1)2n+1det⁡B=−det⁡B \det B=\det({}^tB)=\det(-B)=(-1)^{2n+1}\det B=-\det B が成り立つ。したがって 2det⁡B=02\det B=0、すなわち det⁡B=0 \det B=0 である。

最終答

a≠±3a\ne\pm3 で一意解、a=−3a=-3 で解なし、a=3a=3 で (x1,x2,x3)=(25−3t,−32−4t,t)(x_1,x_2,x_3)=(25-3t,-32-4t,t)。また P=(M+tM)/2, Q=(M−tM)/2P=(M+{}^tM)/2,\ Q=(M-{}^tM)/2。

第2問 — 多変数関数

回転座標を使う利点

分子は x+yx+y、分母は x2+y2+1x^2+y^2+1 である。分母の二乗和は回転しても変わらないので、x+yx+y の方向を1変数 uu に集約すると、2変数問題が1変数の最大化になる。

極限が0になる理由

最大点で微分可能な関数は、一次の変化率がすべて0である。つまり、最大点から距離 rr だけ動いたときの関数値の変化は一次の rr ではなく二次の r2r^2 から始まる。分母は距離 rr なので、商は O(r)O(r) となり0に収束する。

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第3問 — 確率分布

指数分布の積分

∫0∞xmλe−λx dx\int_0^\infty x^m\lambda e^{-\lambda x}\,dx はガンマ積分で計算できる。特に E[X]=1/λE[X]=1/\lambda、E[X2]=2/λ2E[X^2]=2/\lambda^2 は頻出なので、分散を 2/λ2−1/λ22/\lambda^2-1/\lambda^2 として出す。

畳み込みの範囲

指数分布は非負の値だけをとるため、X+Y=sX+Y=s となる積分範囲は 0≤x≤s0\le x\le s である。s<0s<0 では密度が0になることも答案に書くと、支持の扱いが明確になる。

同一パラメータの場合

λ1=λ2\lambda_1=\lambda_2 の式にそのまま代入すると分母が0になる。同一パラメータの場合は別に積分するか、極限を取る必要がある。結果は形状2のガンマ分布である。

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第4問 — 群

全単射の確認

有限集合の写像では、単射でないことを示すには「異なる2元が同じ値に写る」例を1つ挙げれば十分である。今回の写像は値域の全要素を取っているので全射ではあるが、単射でないため全単射ではない。

群での消去法則

群では逆元が存在するため、g⋅a=g⋅bg\cdot a=g\cdot b から左に g−1g^{-1} を掛けて a=ba=b を導ける。これは群の基本的な消去法則であり、左移動写像・右移動写像が全単射になる理由である。

部分群としての見方

3Z3\mathbb Z は Z\mathbb Z の部分集合であり、加法について閉じ、0を含み、逆元を含む。したがって Z\mathbb Z の加法群の部分群になっている、と見れば簡潔に証明できる。

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第5問 — 情報理論

通信路行列の向き

通信路行列は、行を入力、列を出力に取る約束で書いた。別の約束で転置して書く場合もあるため、答案では「行と列が何を表すか」を明記すると誤解されにくい。

相互情報量の求め方

同時確率の総和から直接計算してもよいが、この通信路では x2x_2 の出力が決定的なので、H(Y)−H(Y∣X)H(Y)-H(Y\mid X) が短い。H(Y∣X=x2)=0H(Y\mid X=x_2)=0 と書けることが計算量を減らすポイントである。

対数の底

情報量をビットで表すなら log⁡2\log_2 を用いる。自然対数を用いた場合は単位がナットになり、値は定数倍だけ変わる。入試答案では底を明記しておくのが安全である。

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第6問 — 文字列照合

Naive法の比較

Naive法は、開始位置を1つずつずらして毎回パターン全体との一致を調べる。したがって、疑似コードの単位で数えるなら比較回数は開始位置の個数 n−m+1n-m+1 である。一方、実装レベルで文字比較を数える場合は、不一致で途中終了するかどうかで回数が変わる。

接頭辞関数の意味

π[q]\pi[q] は「長さ qq まで読んだとき、次に再利用できる一致長」である。たとえば aab\texttt{aab} の長さ2の接頭部分 aa\texttt{aa} では、接頭辞 a\texttt{a} と接尾辞 a\texttt{a} が一致するので π[2]=1\pi[2]=1 となる。

Prefix法の計算量

while文があるため一見 O(nm)O(nm) に見えるが、qq が戻る回数は、過去に qq が増えた回数を超えない。各文字についての増減を全体でならして見ると線形時間になる。

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第7問 — 組合せ

配列添字と組合せの対応

Listingの出力は1行目が n=0n=0、2行目が n=1n=1 に対応している。配列では0始まりなので、nCk{}_nC_k はそのまま tp[n][k]tp[n][k] に入る。行番号と nn を混同しないことが重要である。

部分生成の考え方

nCk{}_nC_k を求めるだけなら、nn 行目より下は不要であり、また kk 列より右も不要である。パスカルの漸化式で kk 列目を計算するには前行の k−1k-1 列と kk 列があれば足りるので、列数を k+1k+1 にしても計算できる。

再帰の停止条件

再帰関数では停止条件を書かないと無限に呼び出しが続く。組合せでは左端と右端、すなわち k=0k=0 と k=nk=n が必ず1になるため、これを停止条件にする。

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第8問 — 論理回路

論理式の読み取り

00 から 88 までは出力0、99 から 1515 までは出力1である。4ビットでは 8=10008=1000 なので、単に x3=1x_3=1 では不十分であり、下位3ビットのどれかが1である条件も必要になる。これが x3(x2+x1+x0)x_3(x_2+x_1+x_0) である。

NAND変換

積和形 AB+AC+ADAB+AC+AD は、ド・モルガンの法則により AB‾ AC‾ AD‾‾\overline{\overline{AB}\,\overline{AC}\,\overline{AD}} と書ける。各 AB‾\overline{AB} はNAND一つで作れるため、NANDのみの回路にしやすい。

全加算器による比較

しきい値判定 X≥9X\ge9 は、定数7を加えたときに4ビットからあふれるかどうかで判定できる。8+7=158+7=15 では桁上がりなし、9+7=169+7=16 から桁上がりありになるので、境界がちょうど一致する。

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第9問 — 線形回帰

正則性の確認

rank⁡(X)=p\operatorname{rank}(X)=p なら、任意の v≠0v\ne0 に対して Xv≠0Xv\ne0 である。したがって vTXTXv=∥Xv∥2>0 v^TX^TXv=\|Xv\|^2>0 となり、XTXX^TX は正定値、特に正則である。これにより正規方程式を解ける。

不偏性に必要な条件

不偏性の計算で使っているのは E[ε]=0E[\varepsilon]=0 である。誤差が正規分布であることは、不偏性そのものには不要で、推定量の分布を詳しく述べるときに効いてくる。

不均一分散の影響

不均一分散があると、OLS推定量は平均0の誤差のもとでは不偏のままだが、通常の σ2(XTX)−1\sigma^2(X^TX)^{-1} という分散式は使えない。標準誤差や検定を行うには、Σ\Sigma を考慮した分散推定が必要になる。

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第10問 — 機械学習

オーバーフロー対策

指数関数は入力が大きいとすぐに計算機の表現範囲を超える。最大値を引くと最大成分は0になり、他の成分は0以下になるため、exp⁡\exp の入力が正の巨大値にならない。確率値は不変なので、数値計算上は必ずこの形で実装する。

k近傍法の本質

kk 近傍法は「近いデータは同じラベルを持ちやすい」という仮定に基づく。モデルのパラメータを明示的に学習する方法ではなく、予測時に訓練データを参照するため、遅延学習とも呼ばれる。

kの選び方

k=1k=1 は訓練データを細かく反映するが外れ値に弱い。大きな kk はノイズに強くなるが、少数派クラスや細かい境界を見落としやすい。実用上は検証データで kk と距離尺度を選ぶ。

機械学習の途中式・最終答をPDFで見る

第11問 — 研究概要・関心テーマ

採点要素

評価されやすいのは,題名の珍しさではなく,内容が検証可能に書かれているかである。研究概要なら対象データ,アルゴリズム,評価指標,得られた知見を入れる。最近の話題なら,技術の仕組み,利点,未解決課題,興味を持った理由を接続する。

抽象答案を避ける

「AI は便利で社会に役立つ」「データ分析に興味がある」だけでは情報科学の答案になりにくい。例えばコード生成なら,誤生成,テスト,静的解析,脆弱性検出のように,どこに技術的課題があるかまで書く。

400字程度への圧縮

400字程度では,背景を長く書きすぎない。第1文でテーマを特定し,第2文で課題,第3文から第5文で方法と意義,最後に自分の関心または今後の課題を書くと収まりやすい。

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年度別の解答例(7年度)

一般B(2023年1月実施)の出題内容

全11問

この11問の分野は確率・統計1問・情報1問・線形代数1問・電磁気学・回路1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数—階数で場合分けする理由 / 対称成分と交代成分あり
第2問微分積分・解析多変数関数回転座標を使う利点 / 極限が0になる理由あり
第3問確率・統計確率分布指数分布の積分 / 畳み込みの範囲あり
第4問—群全単射の確認 / 群での消去法則あり
第5問情報情報理論通信路行列の向き / 相互情報量の求め方あり
第6問—文字列照合Naive法の比較 / 接頭辞関数の意味あり
第7問—組合せ配列添字と組合せの対応 / 部分生成の考え方あり
第8問電磁気学・回路論理回路論理式の読み取り / NAND変換あり
第9問—線形回帰正則性の確認 / 不偏性に必要な条件あり
第10問—機械学習オーバーフロー対策 / k近傍法の本質あり
第11問—研究概要・関心テーマ採点要素 / 抽象答案を避けるあり

広島大学の公式過去問

公開年度範囲
2020〜2026(プログラムにより差あり)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
TOEFL/TOEIC スコア提出。学内英語試験はプログラムにより異なる。
院試hubの最終確認
2026-06-03
広島大学の公式過去問PDF