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筑波大 数理物質科学研究群 物理学学位プログラム 物理 2020年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問の分野は数学1問、電磁気学・回路1問、熱・統計力学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 数学:線形代数・複素関数・ベクトル解析・微分方程式

問1の別解と検算

余因子展開で逆行列を作ってもよいが、det⁡R=cos⁡2θ+sin⁡2θ=1\det R=\cos^2\theta+\sin^2\theta=1 を先に出し、直交性 tRR=I{}^{t}RR=I を確かめる方が速く、符号ミスも起きない。答えの検算は R−1R=IR^{-1}R=I を直接計算すればよく、(1,1)(1,1) 成分が cos⁡2θ+sin⁡2θ=1\cos^2\theta+\sin^2\theta=1、(1,3)(1,3) 成分が cos⁡θsin⁡θ−sin⁡θcos⁡θ=0\cos\theta\sin\theta-\sin\theta\cos\theta=0 となる。なお回転軸が yy 軸なので、標準的な zz 軸まわりの回転行列と非対角成分の符号の付き方が逆に見える点に注意する。

問2の失点しやすい点

数字が並ぶと反射的に余因子展開を始めてしまうが、この行列は下三角部分がすべて 00 である。三角行列であることを一言書いてから対角成分の積を書けば2行で終わる。符号は (−2)×2=−4(-2)\times 2=-4、−4×(−1)=4-4\times(-1)=4、4×3=124\times 3=12 と順に追えばよい。

問3が試していること

AA はパウリ行列 σy\sigma_y そのもので、A2=IA^2=I を満たす。この性質から exp⁡(θA)=cos⁡θ I+sin⁡θ A\exp(\theta A)=\cos\theta\,I+\sin\theta\,A 型(今回は指数の肩が実数なので cosh⁡,sinh⁡\cosh,\sinh 型)の公式が出る。量子力学のスピン回転演算子 exp⁡(−iθσy/2)\exp(-i\theta\sigma_y/2) と同じ計算であり、級数を項別に足すのではなく2乗を先に調べる、という手筋が身についているかを見ている。検算としては、exp⁡A\exp A の固有値が AA の固有値 ±1\pm1 の指数 e±1e^{\pm1} になるはずで、実際 cosh⁡1±sinh⁡1=e±1\cosh 1\pm\sinh 1=e^{\pm1} で一致する。

設問[B] 複素関数の実部・虚部、周回積分、フーリエ余弦級数(問4〜問6)

問4の書き方

「実部と虚部を計算せよ」なので、ez3e^{z^3} を極形式のまま置いてはいけない。z3z^3 を先に実部と虚部に分け、eu+iv=eu(cos⁡v+isin⁡v)e^{u+iv}=e^u(\cos v+i\sin v) に代入する、という2段構成を明示するのが答案として最も短い。なお u=x3−3xy2u=x^3-3xy^2、v=3x2y−y3v=3x^2y-y^3 は z3z^3 の実部・虚部なので調和関数であり、uxx+uyy=6x−6x=0u_{xx}+u_{yy}=6x-6x=0 で確かめられる。

問5の別解

留数を1つずつ求めなくても、∣z∣=R|z|=R 上で ∣1/(z3−1)∣≤1/(R3−1)|1/(z^3-1)|\le 1/(R^3-1)、周長 2πR2\pi R なので R→∞R\to\infty で積分は 00 に収束する。積分路の外側に極がない以上、∣z∣=2|z|=2 上の積分は ∣z∣=R|z|=R 上の積分と等しく、よって 00 である。一般に有理関数で分母の次数が分子より2以上大きければ、全極を囲む周回積分は 00 になる。この見方を知っていれば計算せずに答えが出る。

問6の検算

x=0x=0 を代入すると f(0)=0f(0)=0 でなければならない。実際 π2−4π∑k: 奇数1k2=π2−4π⋅π28=0 \frac{\pi}{2}-\frac{4}{\pi}\sum_{k:\,\text{奇数}}\frac{1}{k^2} =\frac{\pi}{2}-\frac{4}{\pi}\cdot\frac{\pi^2}{8}=0 となり整合する(奇数の逆2乗和が π2/8\pi^2/8 であることを使った)。x=πx=\pi では cos⁡(kπ)=−1\cos(k\pi)=-1(kk 奇数)なので級数は π/2+(4/π)(π2/8)=π\pi/2+ (4/\pi)(\pi^2/8)=\pi となり、f(π)=πf(\pi)=\pi と一致する。

偶数次が消える理由

kk が偶数のとき Ck=0C_k=0 になるのは偶奇の対称性による。∣x∣|x| は x→π−xx\to\pi-x に対する対称性をもたないが、∫0πxcos⁡(kx)dx\int_0^{\pi}x\cos(kx)dx の部分積分で現れる [cos⁡(kx)/k2]0π[\cos(kx)/k^2]_0^{\pi} が kk 偶数で 1−1=01-1=0 になるためである。答案では (−1)k−1(-1)^k-1 の形をそのまま残しておけば、場合分けの記述漏れによる減点を避けられる。

設問[C] ベクトル解析・微分方程式・重積分(問7〜問10)

問7の要点

∇×r⃗=0⃗\nabla\times\vec r=\vec 0 を成分計算で示してから発散をとってもよいが、∇⋅(∇× )=0\nabla\cdot(\nabla\times\ )=0 は場が何であっても成り立つ恒等式なので、そちらを引く方が一般性がある。実際 ∇×r⃗\nabla\times\vec r の xx 成分は ∂yz−∂zy=0\partial_y z-\partial_z y=0 で、3成分とも 00 である。∇⋅r⃗=3\nabla\cdot\vec r=3 の「33」は空間次元であり、nn 次元なら nn になる。

問8の失点しやすい点

y2/2=x2+C1y^2/2=x^2+C_1 を y=±2x2+Cy=\pm\sqrt{2x^2+C} と平方根の形に直すと、符号と定義域の議論が必要になり、かえって減点されやすい。陰関数のまま y2−2x2=Cy^2-2x^2=C と書くのが安全である。また変数分離の際に y≠0y\neq0 を仮定しているので、その断りを入れておく。検算は両辺を xx で微分して 2yy′−4x=02yy'-4x=0、すなわち y′=2x/yy'=2x/y を確かめればよい。

問9の書く順序

特性方程式・根・一般解の3行で足りる。根が重解や複素数になる場合の扱い(C1+C2xC_1+C_2x 倍、あるいは三角関数)と混同しないよう、判別式 9−8=1>09-8=1>0 で相異なる2実根であることを一言添えると確実である。

問10の別解と検算

直交座標のままでも計算できる。∫0a2−x2y dy=(a2−x2)/2\int_0^{\sqrt{a^2-x^2}}y\,dy=(a^2-x^2)/2 を先に済ませると ∫0ax3(a2−x2)2dx=12(a2a44−a66)=12⋅3a6−2a612=a624 \int_0^{a}\frac{x^3(a^2-x^2)}{2}dx =\frac12\left(\frac{a^2a^4}{4}-\frac{a^6}{6}\right) =\frac12\cdot\frac{3a^6-2a^6}{12}=\frac{a^6}{24} となり一致する。次元の確認も有効で、x3y dxdyx^3y\,dxdy は長さの6乗の次元をもつから答えは a6a^6 に比例しなければならない。なお領域は「x,y>0x,y>0」なので全円ではなく四分円であり、全円と取り違えると被積分関数の対称性から答えが 00 になってしまう。

解答

問1 yy 軸まわりの回転行列の逆行列

与えられた行列を RR とおく。各列ベクトルの大きさは cos⁡2θ+sin⁡2θ=1,1,sin⁡2θ+cos⁡2θ=1 \cos^2\theta+\sin^2\theta=1,\qquad 1,\qquad \sin^2\theta+\cos^2\theta=1 でいずれも 11 であり、第1列と第3列の内積は −cos⁡θsin⁡θ+sin⁡θcos⁡θ=0-\cos\theta\sin\theta+\sin\theta\cos\theta=0、第2列は他の2列と明らかに直交する。よって RR は直交行列であり、 R−1=tR=(cos⁡θ0−sin⁡θ010sin⁡θ0cos⁡θ). R^{-1}={}^{t}R= \begin{pmatrix} \cos\theta & 0 & -\sin\theta\\ 0 & 1 & 0\\ \sin\theta & 0 & \cos\theta \end{pmatrix}. これは RR の θ\theta を −θ-\theta に置き換えたものであり、RR が yy 軸まわりの回転を表すことと整合する。

問2 上三角行列の行列式

与えられた 4×44\times4 行列は第1列の第2成分以下、第2列の第3成分以下、第3列の第4成分がすべて 00 であり、上三角行列である。上三角行列の行列式は対角成分の積に等しいので det⁡=(−2)⋅2⋅(−1)⋅3=12. \det=(-2)\cdot 2\cdot(-1)\cdot 3=12 .

問3 A2=IA^2=I を使った行列の指数関数

A=(0−ii0)A=\begin{pmatrix}0&-i\\ i&0\end{pmatrix} について、まず2乗を計算すると A2=(0−ii0)(0−ii0)=(−i⋅i00i⋅(−i))=(1001)=I. A^2= \begin{pmatrix}0&-i\\ i&0\end{pmatrix} \begin{pmatrix}0&-i\\ i&0\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}-i\cdot i & 0\\ 0 & i\cdot(-i)\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}=I . したがって A2m=IA^{2m}=I、A2m+1=AA^{2m+1}=A であるから、定義級数を偶数次と奇数次に分けて exp⁡A=∑n=0∞Ann!=(∑m=0∞1(2m)!)I+(∑m=0∞1(2m+1)!)A=(cosh⁡1) I+(sinh⁡1) A. \exp A=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{A^n}{n!} =\left(\sum_{m=0}^{\infty}\frac{1}{(2m)!}\right)I +\left(\sum_{m=0}^{\infty}\frac{1}{(2m+1)!}\right)A =(\cosh 1)\,I+(\sinh 1)\,A . 成分で書けば exp⁡A=(cosh⁡1−isinh⁡1isinh⁡1cosh⁡1). \exp A= \begin{pmatrix} \cosh 1 & -i\sinh 1\\ i\sinh 1 & \cosh 1 \end{pmatrix}.

問4 ez3e^{z^3} の実部と虚部

まず指数の肩を展開する。z=x+iyz=x+iy より z3=x3+3x2(iy)+3x(iy)2+(iy)3=(x3−3xy2)+i(3x2y−y3). z^3=x^3+3x^2(iy)+3x(iy)^2+(iy)^3 =(x^3-3xy^2)+i(3x^2y-y^3). 実部を u=x3−3xy2u=x^3-3xy^2、虚部を v=3x2y−y3v=3x^2y-y^3 とおくと、オイラーの公式から ez3=eu+iv=eu(cos⁡v+isin⁡v) e^{z^3}=e^{u+iv}=e^{u}(\cos v+i\sin v) である。u,vu,v はいずれも実数なので、これがそのまま実部・虚部の分解になる。

問5 1/(z3−1)1/(z^3-1) の周回積分

被積分関数の極は z3=1z^3=1 の根、すなわち zk=e2πik/3(k=0,1,2) z_k=e^{2\pi ik/3}\quad(k=0,1,2) の3点であり、∣zk∣=1<2|z_k|=1<2 だからすべて積分路 ∣z∣=2|z|=2 の内部にある。z3−1z^3-1 の零点はいずれも単純零点なので極は1位で、留数は Res⁡z=zk1z3−1=1ddz(z3−1)∣z=zk=13zk2. \operatorname*{Res}_{z=z_k}\frac{1}{z^3-1}=\frac{1}{\left.\frac{d}{dz}(z^3-1)\right|_{z=z_k}}=\frac{1}{3z_k^{2}} . ここで zk3=1z_k^3=1 より 1/zk2=zk1/z_k^2=z_k であるから、留数の総和は ∑k=0213zk2=13∑k=02zk=13(1+e2πi/3+e4πi/3)=0 \sum_{k=0}^{2}\frac{1}{3z_k^{2}}=\frac13\sum_{k=0}^{2}z_k =\frac13\left(1+e^{2\pi i/3}+e^{4\pi i/3}\right)=0 となる(3乗根の和が 00 であることは、z3−1=0z^3-1=0 の解と係数の関係からも直ちに従う)。留数定理より ∮Cdzz3−1=2πi∑kRes⁡z=zk=0. \oint_{C}\frac{dz}{z^3-1}=2\pi i\sum_{k}\operatorname*{Res}_{z=z_k}=0 .

問6 f(x)=∣x∣f(x)=|x| のフーリエ余弦級数の係数

f(x)=∣x∣f(x)=|x| は偶関数なので正弦項は現れず、与えられた展開形でよい。定数項は区間平均であり C0=12π∫−ππ∣x∣ dx=12π⋅2∫0πx dx=1π⋅π22=π2. C_0=\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|x|\,dx =\frac{1}{2\pi}\cdot 2\int_{0}^{\pi}x\,dx =\frac{1}{\pi}\cdot\frac{\pi^2}{2}=\frac{\pi}{2}. k≠0k\neq0 の係数は、cos⁡(kx)\cos(kx) の直交性 ∫−ππcos⁡2(kx)dx=π\int_{-\pi}^{\pi}\cos^2(kx)dx=\pi を用いて Ck=1π∫−ππ∣x∣cos⁡(kx) dx=2π∫0πxcos⁡(kx) dx C_k=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|x|\cos(kx)\,dx =\frac{2}{\pi}\int_{0}^{\pi}x\cos(kx)\,dx である。部分積分により ∫0πxcos⁡(kx) dx=[xsin⁡(kx)k]0π−1k∫0πsin⁡(kx) dx=0+[cos⁡(kx)k2]0π=(−1)k−1k2 \int_{0}^{\pi}x\cos(kx)\,dx =\left[\frac{x\sin(kx)}{k}\right]_0^{\pi}-\frac1k\int_0^{\pi}\sin(kx)\,dx =0+\left[\frac{\cos(kx)}{k^2}\right]_0^{\pi} =\frac{(-1)^k-1}{k^2} であるから Ck=2π⋅(−1)k−1k2={−4πk2(k が奇数),0(k が偶数). C_k=\frac{2}{\pi}\cdot\frac{(-1)^k-1}{k^2} =\begin{cases} \dfrac{-4}{\pi k^2} & (k\ \text{が奇数}),\\[2mm] 0 & (k\ \text{が偶数}). \end{cases}

問7 回転の発散と位置ベクトルの発散

任意のベクトル場について ∇⋅(∇×A⃗)=0\nabla\cdot(\nabla\times\vec A)=0 が恒等的に成り立つ。よって第1項は A⃗=r⃗\vec A=\vec r として 00 である。第2項は ∇⋅r⃗=∂x∂x+∂y∂y+∂z∂z=3. \nabla\cdot\vec r=\frac{\partial x}{\partial x}+\frac{\partial y}{\partial y}+\frac{\partial z}{\partial z}=3 . 発散は線形なので ∇⋅[(∇×r⃗)+r⃗]=∇⋅(∇×r⃗)+∇⋅r⃗=0+3=3. \nabla\cdot\left[(\nabla\times\vec r)+\vec r\right] =\nabla\cdot(\nabla\times\vec r)+\nabla\cdot\vec r=0+3=3 .

問8 変数分離形の1階微分方程式

y≠0y\neq0 の範囲で変数分離すると y dy=2x dx⟹∫y dy=∫2x dx⟹y22=x2+C1. y\,dy=2x\,dx \quad\Longrightarrow\quad \int y\,dy=\int 2x\,dx \quad\Longrightarrow\quad \frac{y^2}{2}=x^2+C_1 . C=2C1C=2C_1 とおいて整理すると一般解は y2−2x2=C(C は任意定数) y^2-2x^2=C\qquad(C\ \text{は任意定数}) である。C>0C>0 なら yy 軸方向に開いた双曲線、C<0C<0 なら xx 軸方向に開いた双曲線、C=0C=0 なら直線 y=±2 xy=\pm\sqrt{2}\,x を表す。

問9 定数係数2階線形方程式

y=eλxy=e^{\lambda x} を代入すると特性方程式 λ2−3λ+2=0⟹(λ−1)(λ−2)=0⟹λ=1, 2 \lambda^2-3\lambda+2=0 \quad\Longrightarrow\quad (\lambda-1)(\lambda-2)=0 \quad\Longrightarrow\quad \lambda=1,\ 2 を得る。相異なる2実根なので、一般解は y=C1ex+C2e2x(C1,C2 は任意定数). y=C_1e^{x}+C_2e^{2x}\qquad(C_1,C_2\ \text{は任意定数}).

問10 四分円上の重積分

領域 RR は x,y>0x,y>0 かつ x2+y2≤a2x^2+y^2\le a^2、すなわち第1象限の四分円である。極座標 x=rcos⁡θx=r\cos\theta、y=rsin⁡θy=r\sin\theta、dxdy=r dr dθdxdy=r\,dr\,d\theta を用いると、RR は 0≤r≤a0\le r\le a、0≤θ≤π/20\le\theta\le\pi/2 に対応し ∬Rx3y dxdy=∫0π/2 ⁣ ⁣∫0a(rcos⁡θ)3(rsin⁡θ) r dr dθ=(∫0ar5dr)(∫0π/2cos⁡3θsin⁡θ dθ). \iint_{R}x^3y\,dxdy =\int_{0}^{\pi/2}\!\!\int_{0}^{a}(r\cos\theta)^3(r\sin\theta)\,r\,dr\,d\theta =\left(\int_{0}^{a}r^5dr\right)\left(\int_{0}^{\pi/2}\cos^3\theta\sin\theta\,d\theta\right). それぞれ ∫0ar5dr=a66,∫0π/2cos⁡3θsin⁡θ dθ=[−cos⁡4θ4]0π/2=14 \int_{0}^{a}r^5dr=\frac{a^6}{6},\qquad \int_{0}^{\pi/2}\cos^3\theta\sin\theta\,d\theta =\left[-\frac{\cos^4\theta}{4}\right]_{0}^{\pi/2}=\frac14 であるから ∬Rx3y dxdy=a66⋅14=a624. \iint_{R}x^3y\,dxdy=\frac{a^6}{6}\cdot\frac14=\frac{a^6}{24}.

最終答

R−1=(cos⁡θ0−sin⁡θ010sin⁡θ0cos⁡θ)R^{-1}=\begin{pmatrix}\cos\theta & 0 & -\sin\theta\\ 0 & 1 & 0\\ \sin\theta & 0 & \cos\theta\end{pmatrix}

1212

exp⁡A=(cosh⁡1)I+(sinh⁡1)A=(cosh⁡1−isinh⁡1isinh⁡1cosh⁡1)\exp A=(\cosh 1)I+(\sinh 1)A=\begin{pmatrix}\cosh 1 & -i\sinh 1\\ i\sinh 1 & \cosh 1\end{pmatrix}

Re⁡ez3=ex3−3xy2cos⁡(3x2y−y3),Im⁡ez3=ex3−3xy2sin⁡(3x2y−y3) \operatorname{Re}e^{z^3}=e^{x^3-3xy^2}\cos(3x^2y-y^3),\qquad \operatorname{Im}e^{z^3}=e^{x^3-3xy^2}\sin(3x^2y-y^3)

00

C0=π2C_0=\dfrac{\pi}{2}、 Ck=2{(−1)k−1}πk2C_k=\dfrac{2\{(-1)^k-1\}}{\pi k^2} (kk 奇数で −4πk2-\dfrac{4}{\pi k^2}、kk 偶数で 00)

33

y2−2x2=Cy^2-2x^2=C(CC は任意定数)

y=C1ex+C2e2xy=C_1e^{x}+C_2e^{2x}

a624\dfrac{a^6}{24}

第2問 — 力学:二体の衝突と剛体、円錐面上の質点のラグランジュ力学

問1で問われている区別

系の全運動エネルギーは「重心運動の分」と「重心系での相対運動の分」の和 K=KG+12μ∣v⃗A−v⃗B∣2K=K_{\mathrm G}+\frac12\mu|\vec v_{\mathrm A}-\vec v_{\mathrm B}|^2(μ=mAmB/M\mu=m_{\mathrm A}m_{\mathrm B}/M は換算質量)に分かれる。設問が求めているのは前者だけなので、相対運動の項を足してはいけない。∣P⃗∣2/2M|\vec P|^2/2M の形で書いておくと、次の問2の運動量保存とつながって見通しがよい。

問2の失点しやすい点

「弾性衝突」と書かれているとエネルギー保存の式を立てたくなるが、v⃗A′\vec v_{\mathrm A}' が与えられている以上、必要なのは運動量保存だけである。エネルギー保存まで連立させると、未知数より式が多い不定な計算に入り込む。検算としては、1次元正面衝突の公式 v⃗A′={(mA−mB)v⃗A+2mBv⃗B}/M\vec v_{\mathrm A}'=\{(m_{\mathrm A}-m_{\mathrm B})\vec v_{\mathrm A}+2m_{\mathrm B}\vec v_{\mathrm B}\}/M を代入すると v⃗B′={(mB−mA)v⃗B+2mAv⃗A}/M\vec v_{\mathrm B}'=\{(m_{\mathrm B}-m_{\mathrm A})\vec v_{\mathrm B}+2m_{\mathrm A}\vec v_{\mathrm A}\}/M が復元される。

問3の前提の明示

K=12Mv2+12Iω2K=\frac12Mv^2+\frac12I\omega^2 と分解できるのは、回転軸が重心を通るときに限る。円柱軸は対称軸なので重心を通り、条件を満たす。もし床を転がる場合のように接触点まわりで考えるなら、平行軸の定理で I+Md2I+Md^2 に置き換える必要がある。また「ω\omega で回転しながら v⃗\vec v で並進」という設定なので、v⃗\vec v と ω\omega を結ぶ拘束(すべらない条件 v=Rωv=R\omega など)は課されていない。

設問[B] 円錐面上を運動する質点

方針

束縛条件 θ=α\theta=\alpha を先に代入して自由度を2に落とすのが要点で、そうすれば拘束力(垂直抗力)を一切書かずに済む。ニュートン方程式で解こうとすると、円錐面の法線方向の抗力を未知数として立てて消去する手間がかかる。ラグランジュ形式の利点がそのまま得点差になる設問である。

問4の有効ポテンシャルによる見方

ℓ\ell を一定に固定した瞬間、問題は動径 rr の1次元運動に化ける。有効ポテンシャル UeffU_{\mathrm{eff}} は r→0r\to0 で遠心障壁により発散し、r→∞r\to\infty で重力項により発散するので、間に必ず1つの極小をもつ。極小点が円軌道であり、極小である以上その近傍の運動は安定な振動になる。答えの Ω2>0\Omega^2>0 はこの図から出発しても予想できる。

図は ℓ\ell を固定したときの有効ポテンシャルの概形である。極小 r0r_0 が円軌道に対応し、EE をわずかに上げると2つの反転点の間で rr が往復する。これが ss の単振動である。

問3の検算

α→π/2\alpha\to\pi/2(円錐が水平面に近づく)では cot⁡α→0\cot\alpha\to0 なので ω→0\omega\to0 となる。水平面上では重力の面内成分がなく、円運動を保つのに向心力が要らないからで、妥当である。逆に α→0\alpha\to0(細い円錐)では ω→∞\omega\to\infty で、これも壁がほぼ鉛直になり、落ちないためには猛烈な回転が要ることに対応する。次元も [g/d]=[時間]−1[\sqrt{g/d}]=[\text{時間}]^{-1} で正しい。

失点しやすい点

最大の落とし穴は dd と rr の取り違えである。dd は「円運動の半径」すなわち軸からの水平距離で、円錐に沿った距離 rr とは d=rsin⁡αd=r\sin\alpha の関係にある。r0=dr_0=d としてしまうと ω2=gcos⁡α/(dsin⁡2α)\omega^{2}=g\cos\alpha/(d\sin^{2}\alpha) となり、示すべき gcot⁡α/dg\cot\alpha/d に一致しない。問3が「示せ」という形式なのは、この換算をしたかどうかを確認するためである。もう一つは問4で φ˙\dot\varphi を定数のまま扱ってしまう誤りで、角運動量が一定なら rr が変われば φ˙\dot\varphi も変わる。φ˙\dot\varphi を消去せずに展開すると係数 33 が 11 になり、安定性の結論は同じでも振動数を誤る。

力学:二体の衝突と剛体、円錐面上の質点のラグランジュ力学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学:規格化・スピン・角運動量代数、磁場中の2次元調和振動子

問1の要点

sin⁡2\sin^2 の積分は半角公式で処理する。区間 [0,L][0,L] は sin⁡(nπx/L)\sin(n\pi x/L) のちょうど半周期の nn 倍なので cos⁡(2nπx/L)\cos(2n\pi x/L) の積分が厳密に 00 になり、平均が 1/21/2 になる。AnA_n が nn に依存しないのはこのためで、答えに nn が残ったら計算違いである。

問2の別解

B⃗\vec B 方向の単位ベクトルを n^\hat n とすると B⃗⋅S⃗=∣B⃗∣ (n^⋅S⃗)\vec B\cdot\vec S=|\vec B|\,(\hat n\cdot\vec S) であり、n^⋅S⃗\hat n\cdot\vec S は任意の方向のスピン射影なので固有値は ±ℏ/2\pm\hbar/2 である。この一言だけで固有値 E=±gμB∣B⃗∣/2E=\pm g\mu_B|\vec B|/2 が出る。行列式を計算する方法と併記しておくと、方向によらずゼーマン分裂の幅が gμB∣B⃗∣g\mu_B|\vec B| であることが明確になる。2×22\times2 でトレースが 00 の行列は固有値が ±−det⁡\pm\sqrt{-\det} になる、という事実は他の設問でも使い回せる。

問3の失点しやすい点

交換子を展開したあと、[AB,CD][AB,CD] の形をそのまま [A,C][B,D][A,C][B,D] のように分配してしまう誤りが多い。可換な因子は交換子の外に出す、という操作を1行ずつ書くのが安全である。答えの iℏLzi\hbar L_z は角運動量代数 [Li,Lj]=iℏϵijkLk[L_i,L_j]=i\hbar\epsilon_{ijk}L_k の一例で、これが成り立つことが「同時対角化できるのは L2L^2 と1成分だけ」という角運動量の量子化の出発点になる。

設問[B] 一様磁場と調和ポテンシャル中の2次元荷電粒子

方針

[B]全体は「一様磁場と等方調和ポテンシャルを同時に受ける2次元荷電粒子」という模型で、フォック・ダーウィン問題として知られる。極座標のハミルトニアンが与えられているので、変数分離して u(r)u(r) の問題に落とし、ガウス型の試行関数を代入して係数を合わせる、という流れをたどればよい。r2r^2 の係数を消す条件が長さスケール ℓB\ell_B を決め、残った定数項がそのまま固有値になる、という構造は調和振動子の基底状態を求めるときと同じである。

E0E_0 の意味と検算

m(ωc2+4Ω2)8r2=12mωeff2r2\dfrac{m(\omega_c^2+4\Omega^2)}{8}r^2=\dfrac12m\omega_{\mathrm{eff}}^2r^2 とおくと ωeff=12ωc2+4Ω2\omega_{\mathrm{eff}}=\frac12\sqrt{\omega_c^2+4\Omega^2} であり、E0=ℏωeffE_0=\hbar\omega_{\mathrm{eff}} となる。これは2次元等方調和振動子の基底エネルギー ℏω(=2×12ℏω)\hbar\omega(=2\times\frac12\hbar\omega) そのもので、零点エネルギーが自由度の数だけ足されている形になっている。極限でも確認できる。B=0B=0 のとき ωc=0\omega_c=0 で E0=ℏΩ⋅1=ℏΩE_0=\hbar\Omega\cdot 1=\hbar\Omega となり、角周波数 Ω\Omega の2次元振動子の基底状態と一致する。逆に Ω=0\Omega=0 のときは E0=ℏωc/2E_0=\hbar\omega_c/2 で、最低ランダウ準位のエネルギーに一致する。ℓB\ell_B も Ω=0\Omega=0 で ℓB2=4ℏ/(mωc)=4ℏ/(qB)\ell_B^2=4\hbar/(m\omega_c)=4\hbar/(qB) となり、磁気長 ℏ/(qB)\sqrt{\hbar/(qB)} の定数倍になる。

問3の物理的な意味

∣M∣|M| を BB の関数として描くと下図のようになる。弱磁場では M≃−ℏq2B/(4m2Ω)M\simeq-\hbar q^2B/(4m^2\Omega) と BB に比例し(ランジュバン反磁性と同じ線形応答)、強磁場では ∣M∣→ℏ∣q∣/(2m)|M|\to\hbar|q|/(2m) に飽和する。飽和値は電荷 qq、質量 mm の粒子がもつ磁気モーメントの自然な単位(ボーア磁子に相当する量)であり、閉じ込めが磁場に負けて軌道がサイクロトロン運動に近づくことを意味する。

問4の失点しやすい点

2次元の期待値なので、体積要素は dx dy=r dr dϕdx\,dy=r\,dr\,d\phi であり、⟨r⟩\langle r\rangle の被積分関数は r⋅∣ψ∣2⋅rr\cdot|\psi|^2\cdot r となって r2r^2 が現れる。rr を1個しか掛けないと ∫r e−2r2/ℓB2dr\int r\,e^{-2r^2/\ell_B^2}dr となり、答えが ℓB\ell_B の1次ではなく別の形になってしまう。検算としては、⟨r⟩/ℓB=2π/4≃0.627\langle r\rangle/\ell_B=\sqrt{2\pi}/4\simeq0.627 が 11 より小さいこと、および ⟨r2⟩=ℓB2/2\langle r^2\rangle=\ell_B^2/2 から ⟨r2⟩=ℓB/2≃0.707 ℓB\sqrt{\langle r^2\rangle}=\ell_B/\sqrt2\simeq0.707\,\ell_B が ⟨r⟩\langle r\rangle より大きいこと(コーシー・シュワルツの不等式 ⟨r⟩≤⟨r2⟩\langle r\rangle\le\sqrt{\langle r^2\rangle})を確かめればよい。

問1で α\alpha が整数になる理由

「一価性」は数学的な要請ではなく、波動関数が空間の各点で一つの値をもつという物理的要請である。ϕ\phi と ϕ+2π\phi+2\pi は同じ点なので e2πiα=1e^{2\pi i\alpha}=1 が必要になる。α\alpha は zz 軸まわりの軌道角運動量の量子数(固有値 ℏα\hbar\alpha)にあたり、問2で α=0\alpha=0 と置くのは角運動量を持たない状態を選ぶという意味である。なお α≠0\alpha\neq0 でも同じガウス型の試行関数に r∣α∣r^{|\alpha|} を掛けた形が解になり、固有値は E=ℏωeff(∣α∣+1)−ℏωcα/2E=\hbar\omega_{\mathrm{eff}}(|\alpha|+1)-\hbar\omega_c\alpha/2 となって磁場による準位の分裂が現れる。

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第4問 — 電磁気学:速度選別・電磁誘導・変位電流、電気双極子の場と双極子間力

問1の検算と背景

v=E/Bv=E/B は電場と磁場の比という形で、次元は [V/m]/[T]=[m/s][\mathrm{V/m}]/[\mathrm{T}]=[\mathrm{m/s}] となり速度の次元をもつ。この装置は速度選別器(ウィーンフィルター)で、質量や電荷によらず特定の速さの粒子だけを通す。質量分析器で入射ビームの速度をそろえるのに使われる。答案では「進行方向が −y-y」まで書くと、y^×z^=x^\hat y\times\hat z=\hat x の向きを正しく扱ったことが示せる。

問2で書くべき水準

「ストークスの定理を示し」とあるので、定理名を挙げるだけでは不十分である。微小長方形の循環が回転の面積分になること、内部の辺が相殺して外周だけが残ること、の2点を書けば導出として通る。最後の「S が任意だから被積分関数が 00」という論法も明示する。ここを省いて積分形から微分形へ飛ぶと減点されやすい。なお時間微分を積分の中へ入れる操作は、積分領域 S が時間変化しない場合に限って許される(動く回路では運動起電力の項が加わる)。

問3が試していること

極板間には伝導電流は流れないが、DD の時間変化が磁場を作る。その大きさが回路を流れる伝導電流 I=C dV/dtI=C\,dV/dt とぴったり一致することを確かめさせるのがこの設問の狙いで、答えが C dV/dtC\,dV/dt の形に書けたときにアンペール・マクスウェルの法則の無矛盾性が見えることになる。位相についても、電流が電圧より π/2\pi/2 進む(sin⁡→cos⁡\sin\to\cos)という交流回路の常識と合っている。

設問[B] 電気双極子の電位・電場と双極子間の相互作用

問1の図示で押さえる点

「概形を図示せよ」なので、次の3点が描けていれば十分である。(i) yy 軸(θ=±π/2\theta=\pm\pi/2)が V=0V=0 の面であること、(ii) +x+x 側が正、−x-x 側が負で、原点に関して符号が反転する反対称な形であること、(iii) 各等電位面が原点で細くすぼまり、xx 軸方向に最も膨らむ葉の形になること。点電荷1個の場合の同心球とは全く違う形になるのが要点で、r∝∣cos⁡θ∣r\propto\sqrt{|\cos\theta|} という角度依存性を式で添えておくと説明が締まる。等電位面と電気力線は直交するので、電気力線は原点付近から出て yy 軸を横切らずに戻る曲線群になる。

問2の別解

VV をベクトル形式 V=p⃗1⋅r^4πε0r2V=\dfrac{\vec p_1\cdot\hat r}{4\pi\varepsilon_0r^2} と書いてから E⃗=3(p⃗1⋅r^)r^−p⃗14πε0r3\vec E=\dfrac{3(\vec p_1\cdot\hat r)\hat r-\vec p_1}{4\pi\varepsilon_0r^3} を使ってもよい。r^\hat r 成分をとると 3cos⁡θ−cos⁡θ=2cos⁡θ3\cos\theta-\cos\theta=2\cos\theta で ErE_r に一致し、θ^\hat\theta 成分は −p⃗1-\vec p_1 の θ^\hat\theta 成分だけが残って +sin⁡θ+\sin\theta となり EθE_\theta に一致する。極座標の勾配の公式を覚えていなくても、この形から復元できる。

問3・問4の検算

θ=0\theta=0 で U=−2kU=-2k(最小)、θ=±π/2\theta=\pm\pi/2 で U=+kU=+k(最大)となり、θ=0\theta=0 で符号が負すなわち束縛的であることが直感と合う。頭と尾が向かい合う配置(θ=0\theta=0)は正電荷と負電荷が近づく配置なので引き合い、横に並ぶ配置(θ=π/2\theta=\pi/2)は同符号が向かい合うので反発する。力が r−4r^{-4} に比例するのは、双極子場が r−3r^{-3}、その勾配が r−4r^{-4} という階層から自然に出る。点電荷どうしの r−2r^{-2}、点電荷と双極子の r−3r^{-3} と並べて覚えておくとよい。

失点しやすい点

問4で「安定」を単に dU/dθ=0dU/d\theta=0 だけで判定してしまう答案が多い。θ=±π/2\theta=\pm\pi/2 も停留点なので、2階微分の符号(または UU の値の比較)まで書かないと安定・不安定を区別したことにならない。また力を求めるとき、UU に θ\theta を代入してから rr で微分する順序を守る。θ\theta を残したまま rr で微分して後から θ=0\theta=0 を入れても同じ答えになるが、θ\theta 方向の力(トルク)と混同しないよう、FF が動径方向の力であることを明記する。

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第5問 — 統計力学:熱力学関数と相転移、固体・気体の2相共存曲線

問1の要点

dF=−S dT−p dVdF=-S\,dT-p\,dV から dGdG を出す操作はルジャンドル変換で、独立変数を VV から pp に取り替えている。p dVp\,dV が消えて V dpV\,dp が現れるという入れ替わりが本質であり、GG が「温度と圧力を制御する実験(大気圧下の測定や相平衡)」に適した熱力学関数である理由でもある。GG を T,pT,p の関数として書けたので、マクスウェルの関係式 (∂S/∂p)T=−(∂V/∂T)p\left(\partial S/\partial p\right)_T=-\left(\partial V/\partial T\right)_p も dGdG が完全微分であることから直ちに従う。

問2の図による理解

下図は2次相転移の前後での SS と CpC_p の振る舞いの概形である。SS は TcT_c で折れ曲がるが値は飛ばない。CpC_p は SS の傾きに比例するので、その折れ曲がりがそのまま飛びとして現れる。

失点しやすい点

1次相転移と混同して「エントロピーは不連続」と答える誤りが多い。1次相転移(融解・蒸発など)では SS と VV が飛び、その飛びが潜熱と体積変化として観測される。2次相転移(超伝導転移や強磁性転移など)で飛ぶのは CpC_p・圧縮率・熱膨張率といった2階微分量である。どちらの問いかを、GG の何階微分かという基準に戻して判定すると間違えない。

設問[B] 理想気体と固体の化学ポテンシャルおよび2相共存曲線

方針

[B]は「2相共存 ⇔\Leftrightarrow 化学ポテンシャルが等しい」という1本の条件に落とすための材料集めである。問1で気体側、問2〜問4で固体側の μ\mu を用意し、問5で等号を立て、問6で近似する。したがって問1〜問4はそれぞれ独立に得点でき、途中で詰まっても後半に進める構成になっている。答案では、各相の μ\mu を TT と pp の関数の形にそろえておくと問6の代入が滑らかになる。

1/N!1/N! を付けるかどうか

この問題の一番の分かれ目は問2である。気体では粒子が空間を自由に動き回って区別できないので Z=zN/N!Z=z^N/N! とし、その結果として式(1)の ln⁡(V/N)+1\ln(V/N)+1 という組み合わせ(スターリング近似の名残)が現れている。一方、固体では原子が格子点に固定されていて「どの原子がどの site にいるか」が意味をもつため区別でき、Z=zNZ=z^N でよい。ここで誤って 1/N!1/N! を付けると μ固体\mu_{\text{固体}} に ln⁡N\ln N 型の項が入り、示量性が壊れて共存曲線が出てこない。

問6の結果の読み方

共存圧力の主要因子は e−ϵ/kBTe^{-\epsilon/k_BT} で、これは「ϵ\epsilon だけのエネルギーを払って原子を固体から引き剥がす」というボルツマン因子そのものである。クラウジウス・クラペイロンの関係 dp/dT=L/(TΔV)dp/dT=L/(T\Delta V) を昇華に適用しても同じ指数関数型が出る。(1−e−ℏω/kBT)3(1-e^{-\hbar\omega/k_BT})^3 は固体側の振動の自由エネルギーから来る因子で、格子が硬い(ω\omega が大きい)ほど固体の自由エネルギーが高くなり、蒸発しやすくなって共存圧力が上がる。高温極限で p∝ω3p\propto\omega^3 と強く効くのはこのためである。

検算

ω→0\omega\to0(振動が極端に柔らかい)で p→0p\to0 となるのは、固体側の振動エントロピーが大きくなり固体が安定化して、気体になりにくいことに対応する。次元も確かめられる。m3/2ω3/kBTm^{3/2}\omega^{3}/\sqrt{k_BT} は kg3/2s−3/(kg1/2m s−1)=kg m−1s−2=Pa\mathrm{kg}^{3/2}\mathrm{s}^{-3}/(\mathrm{kg}^{1/2}\mathrm{m\,s}^{-1})=\mathrm{kg\,m^{-1}s^{-2}}=\mathrm{Pa} となり、圧力の次元をもつ。ℏ\hbar が最終形から消えているのは、高温古典極限では固体の振動が古典的に扱えるようになるからで、これも結果の妥当性を裏づける。

この設問が試していること

統計力学で分配関数から自由エネルギーを作る操作と、熱力学で自由エネルギーから相平衡条件を立てる操作を、同じ問題の中で往復させられるかを見ている。式(1)と式(2)が与えられているので計算量は多くないが、F→G→μF\to G\to\mu という変換の順序、区別できる/できないの判断、近似を入れる場所の3点で差が付く。

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年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(全5問)

    物理数学 / 力学 / 量子力学

  • 2025年度(全5問)

    物理数学 / 力学 / 量子力学

  • 2024年度(全5問)

    物理数学 / 力学 / 量子力学

  • 2023年度(全5問)

    数学:線形代数・複素関数・ベクトル解析 / 力学:万有引力の場の方程式と一様球内の運動 / 量子力学:2スピン系の合成と調和振動子のスクイズド状態

  • 2022年度(全5問)

    数学:線形代数・ベクトル解析・複素関数・微分方程式 / 力学:保存則と剛体球振り子の基準振動 / 量子力学:角運動量の基礎と水素原子の一次シュタルク効果

  • 2020年度(このページ・全5問)

    数学:線形代数・複素関数・ベクトル解析・微分方程式 / 力学:二体の衝突と剛体、円錐面上の質点のラグランジュ力学 / 量子力学:規格化・スピン・角運動量代数、磁場中の2次元調和振動子

2020年度の出題内容

全5問

この5問の分野は数学1問・電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学線形代数・複素関数・ベクトル解析・微分方程式問1の別解と検算 / 問2の失点しやすい点あり
第2問力学二体の衝突と剛体、円錐面上の質点のラグランジュ力学問1で問われている区別 / 問2の失点しやすい点あり
第3問量子力学規格化・スピン・角運動量代数、磁場中の2次元調和振動子問1の要点 / 問2の別解あり
第4問電磁気学・回路速度選別・電磁誘導・変位電流、電気双極子の場と双極子間力問1の検算と背景 / 問2で書くべき水準あり
第5問熱・統計力学熱力学関数と相転移、固体・気体の2相共存曲線問1の要点 / 問2の図による理解あり

2020年度の解説には失点しやすい点3件・検算1件が付いています。

筑波大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2026年度(直近3年分)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
一般入試(8月・2月)の外国語は外部英語試験スコアの提出。
院試hubの最終確認
2026-08-13
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