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筑波大 理工情報生命学術院 数理物質科学研究群 数学学位プログラム 専門科目(数学) 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問の分野は位相・幾何1問、代数1問、微分積分・解析1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 漸近展開と極限積分

方針

第1小問は対数のテイラー展開を xx で割るだけでよい。第2小問は,指数関数を通して (1+x)1/x=exp⁡(log⁡(1+x)x) (1+x)^{1/x}=\exp\left(\frac{\log(1+x)}{x}\right) と見るのが安全である。第3小問では極座標に移すと,主要項 f(r)r2∼−e2r \frac{f(r)}{r^2}\sim -\frac{e}{2r} の対数積分だけが有限な極限として残る。

OO 項の扱い

f(r)=−(e/2)r+O(r2)f(r)=-(e/2)r+O(r^2) をそのまま代入すると O(r2)r2=O(1) \frac{O(r^2)}{r^2}=O(1) である。この O(1)O(1) は区間 [t,2t][t,2t] 上で積分されるため寄与は O(t)O(t) にすぎず,極限では消える。ここを ∫t2tO(1) dr=O(1) \int_t^{2t}O(1)\,dr=O(1) のように評価してしまうと,極限値を確定できなくなる。

検算

tt が小さいとき f(r)f(r) の主要項は負であり,積分核は正なので極限が負になることは符号の確認になる。また,環状領域の半径は tt から 2t2t までなので,主要項の積分は ∫t2tdrr=log⁡2 \int_t^{2t}\frac{dr}{r}=\log2 となる。

典型ミス

極座標の範囲を決めるときは,半径 rr ではなく r2r^2 に関する条件として読んでから平方根を取る。ここでは r2=x2+y2r^2=x^2+y^2 なので t≤r≤2tt\le r\le2t である。また,第1小問の式は (1+x)1/x(1+x)^{1/x} の対数であり,対数を取ってから 1/x1/x 乗しているわけではない。

解答

  1. まず log⁡((1+x)1/x)=log⁡(1+x)x \log\bigl((1+x)^{1/x}\bigr)=\frac{\log(1+x)}{x} である。x→0x\to0 において log⁡(1+x)=x−x22+x33+O(x4) \log(1+x)=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}+O(x^4) だから,両辺を xx で割って log⁡((1+x)1/x)=1−x2+x23+O(x3)=1−x2+O(x2). \log\bigl((1+x)^{1/x}\bigr) =1-\frac{x}{2}+\frac{x^2}{3}+O(x^3) =1-\frac{x}{2}+O(x^2).

  2. u(x)=log⁡(1+x)1/x−1 u(x)=\log (1+x)^{1/x}-1 とおくと,第1小問より u(x)=−x2+O(x2) u(x)=-\frac{x}{2}+O(x^2) である。したがって (1+x)1/x=exp⁡{1+u(x)}=eexp⁡u(x)=e{1+u(x)+O(u(x)2)}. \begin{aligned} (1+x)^{1/x} &=\exp\{1+u(x)\} \\ &=e\exp u(x) \\ &=e\{1+u(x)+O(u(x)^2)\}. \end{aligned} ここで u(x)=O(x)u(x)=O(x) なので O(u(x)2)=O(x2)O(u(x)^2)=O(x^2) であり, (1+x)1/x=e(1−x2+O(x2)). (1+x)^{1/x} =e\left(1-\frac{x}{2}+O(x^2)\right). よって f(x)=(1+x)1/x−e=−e2x+O(x2)(x→0) f(x)=(1+x)^{1/x}-e =-\frac{e}{2}x+O(x^2) \qquad (x\to0) である。

  3. r=x2+y2r=\sqrt{x^2+y^2} とおく。極座標では積分領域は t≤r≤2t,0≤θ≤2π t\le r\le 2t,\qquad 0\le\theta\le2\pi であり,dxdy=r drdθdxdy=r\,drd\theta であるから I(t)=2π∫t2tf(r)r2 dr. I(t) =2\pi\int_t^{2t}\frac{f(r)}{r^2}\,dr. 第2小問の漸近展開を f(r)=−e2r+r2η(r) f(r)=-\frac{e}{2}r+r^2\eta(r) と書く。ただし η(r)\eta(r) は r=0r=0 の近くで有界である。このとき I(t)=2π∫t2t(−e2r+η(r)) dr=−πelog⁡2+2π∫t2tη(r) dr. \begin{aligned} I(t) &=2\pi\int_t^{2t} \left(-\frac{e}{2r}+\eta(r)\right)\,dr \\ &=-\pi e\log2 +2\pi\int_t^{2t}\eta(r)\,dr. \end{aligned} η\eta は有界で,積分区間の長さは tt だから ∫t2tη(r) dr=O(t)(t→+0) \int_t^{2t}\eta(r)\,dr=O(t)\qquad(t\to+0) である。したがって lim⁡t→+0I(t)=−πelog⁡2 \lim_{t\to+0} I(t)=-\pi e\log2 を得る。

最終答

漸近展開は log⁡(1+x)1/x=1−x2+O(x2)\log (1+x)^{1/x}=1-\frac{x}{2}+O(x^2),f(x)=−e2x+O(x2)f(x)=-\frac{e}{2}x+O(x^2)。また lim⁡t→+0I(t)=−πelog⁡2\displaystyle \lim_{t\to+0}I(t)=-\pi e\log2。

第2問 — 対角化と反交換

方針

この行列は第1成分と第3成分を入れ替える対称性を持つ。そこで (1,0,−1)T,(1,−2,1)T,(1,1,1)T (1,0,-1)^T,\quad (1,-2,1)^T,\quad (1,1,1)^T という互いに直交する3方向に分けると,固有値が一度に読める。対称行列なので,固有ベクトルによる対角化を先に済ませると,後半の行列空間の問題も成分計算だけになる。

反交換条件の見方

対角行列 D=diag⁡(d1,d2,d3)D=\operatorname{diag}(d_1,d_2,d_3) に対して DY+YD DY+YD の (i,j)(i,j) 成分は (di+dj)yij(d_i+d_j)y_{ij} である。交換子 DY−YDDY-YD なら差 di−djd_i-d_j が出るが,本問は反交換なので和 di+djd_i+d_j が出る。この違いが SS の次元を決める核心である。

像の次元の別確認

Φ\Phi も同じ対角化座標で見ると,成分 yijy_{ij} に係数 di+djd_i+d_j を掛ける対角的な線形写像になる。係数が0になるのは (1,2),(2,1),(3,3)(1,2),(2,1),(3,3) の3箇所だけなので,残り6成分が像に現れる。したがって dim⁡T=6\dim T=6 は階数・退化次数の定理だけでなく,対角化後の成分表示からも直接検算できる。

検算

a=−1a=-1 のとき固有値は −3,3,0-3,3,0 であり,非零固有値が2個なので階数は2である。第3小問の基底行列についても,例えば A(uvT)+(uvT)A=(−3+3)uvT=0 A(uv^T)+(uv^T)A=(-3+3)uv^T=0 となる。同様に vuTvu^T も固有値の和が 3+(−3)=03+(-3)=0,wwTww^T も 0+0=00+0=0 なので条件を満たす。

典型ミス

det⁡A=0\det A=0 だけから a=2a=2 と a=−1a=-1 を同列に採用してはいけない。a=2a=2 では零固有値が2つ出るため階数は1である。また,PP の列は固有ベクトルであればよいが,対角化の式は P−1APP^{-1}AP であり,正規直交化していない PP に対して PTAPP^TAP と書くと別の行列になる。

対角化と反交換の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 単元群と合同式

方針

核心は,条件 xy≡1xy\equiv1 から x≡yx\equiv y が出ることを「単元群のすべての元が自分自身を逆元にもつ」と読み替える点である。つまり単元群の指数が2以下であることを判定している。

検算

N=24N=24 の単元は 1,5,7,11,13,17,19,23 1,5,7,11,13,17,19,23 の8個であり,いずれも2乗すると 1(mod24)1\pmod{24} になる。たとえば 52=25≡15^2=25\equiv1,72=49≡17^2=49\equiv1 である。この直接確認は,群同型の結論と一致している。

典型ミス

N∣24N\mid24 の場合に,xy≡1(modN)xy\equiv1\pmod N から xy≡1(mod24)xy\equiv1\pmod{24} としてはいけない。合同式の法を大きくする方向の推論は一般には成り立たない。正しくは,NN の素冪因子が 2,4,8,32,4,8,3 の範囲に限られることを使って,各法で単元の2乗を調べる。

答案で書くべき点

(4)(4) は必要十分条件なので,許される場合と許されない場合の両方を書く必要がある。特に 16∣N16\mid N,9∣N9\mid N,または p≥5p\ge5 の素因子をもつ場合には,それぞれ 33 または 22 という具体的な反例単元を出すと,減点されにくい答案になる。

中国剰余定理での持ち上げ

「素冪因子で反例があるから NN でも反例」と書くだけでは,答案としては少し弱い。例えば pa∣Np^a\mid N で単元 uˉ\bar u が u2≢1(modpa)u^2\not\equiv1\pmod {p^a} を満たすなら,他の素冪成分では 11 を指定してCRTで UU を取る。すると UU は NN の単元であり,U2≡u2≢1(modpa)U^2\equiv u^2\not\equiv1\pmod {p^a} だから U2≢1(modN)U^2\not\equiv1\pmod N である。この一文を入れると,必要性の証明が完全になる。

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第4問 — 多様体とグラフ

選択肢Aの方針

最初の山場は,dFdF の2つの行が常に直交していることに気づく点である。これにより階数落ちの判定が一気に簡単になり,臨界点は原点だけだと分かる。原点が零点集合に入らないことを確認すれば,正則値定理をそのまま適用できる。

選択肢Aの検算

指定点での接空間は TqM={(a,b,0,0)∣a,b∈R} T_qM=\{(a,b,0,0)\mid a,b\in\mathbb R\} である。制限関数は ww 座標を見る関数なので,この接空間方向では一次変化しない。したがって臨界点であるという結論と一致する。

選択肢Bの方針

グラフの閉性は「グラフの外の点を開近傍で分離する」方法で示す。射影が閉写像であることは一般には成り立たず,ここでは YY のコンパクト性で無限個の近傍条件を有限個に減らすのが本質である。

典型ミス

選択肢Aでは,FF の臨界点と f∣Mf|_M の臨界点を混同しやすい。前者は dFdF の階数,後者は dfdf を TqMT_qM に制限したものを見る。選択肢Bでは,(3)(3) で点列を使った証明を書いてしまうと一般位相空間では不十分になることがある。閉集合と射影の閉写像性だけで証明するのが安全である。

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第5問 — 複素積分と関数列

選択肢Cの方針

有理関数の実軸積分は,上半円で閉じて留数定理を使う標準形である。ここでは z4+1z^4+1 の上半平面の2根の留数が実数で互いに打ち消し合い,最終的には z=iz=i の留数だけが積分値に寄与する。この打ち消しを見落とすと,答えに不要な 2\sqrt2 の項が残る。

留数計算の検算

z4+1z^4+1 の根 ρ\rho では Res⁡z=ρf(z)=1(ρ2+1)4ρ3 \operatorname*{Res}_{z=\rho}f(z) = \frac{1}{(\rho^2+1)4\rho^3} である。単純極では「他方の因子をそのまま代入し,零になる因子だけ微分する」と覚えるとよい。実軸上の被積分関数は正なので,最終結果が正の π/2\pi/2 になることも符号の検算になる。

選択肢Dの方針

点wise 極限では xx の符号で e−nxe^{-nx} の挙動が変わる。積分極限は優収束定理でも処理できるが,本問では 11+e−a+11+ea=1 \frac{1}{1+e^{-a}}+\frac{1}{1+e^a}=1 という恒等式により,対称区間上の積分が正確に半分のガウス積分へ落ちる。

典型ミス

x=0x=0 の点wise 極限は 1/21/2 であり,左右の極限値とは異なる。ただし1点の値は積分値には影響しない。また,[−n,n][-n,n] という積分区間が nn とともに広がるため,単に固定区間の極限として扱わず,対称性または全実線上の可積分な優関数を使って処理する必要がある。

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第6問 — 集合・統計・代数・補間

選択肢Eの構成

ポイントは,有限個の無限2進列を十分長い初期部分で分離できることである。各 t∈St\in S は有限個の入力に対する真理値表なので,分離された有限個の点にだけ値を指定し,残りを任意に埋めればよい。この「任意に埋める余地」があるため,条件を満たす tt を無限に作れる。

選択肢Fの検算

YY そのものではなく Y−1Y-1 を最大値統計量として扱うと計算が短い。M/θM/\theta は [0,1][0,1] 上で分布関数 yny^n を持つので,平均が n/(n+1)n/(n+1),2乗平均が n/(n+2)n/(n+2) になる。縮小推定量は分散を小さくする一方でバイアスを持つため,MSEの比較では両方を足す必要がある。

選択肢Gの次数評価

次数評価では等号を無理に示す必要はない。差の次数は各項の次数の最大以下であり,最高次項が打ち消される可能性もあるからである。答案では deg⁡0=−∞\deg 0=-\infty の約束により,s1=0s_1=0 の基底段階も自然に処理できる。

選択肢Hの注意

与えられた節点 −h,0,h-h,0,h と表示 p(x)=p0+p1x+p2x2p(x)=p_0+p_1x+p_2x^2 からは,係数 p1,p2p_1,p_2 は 00 中心の差分係数になる。したがって hh における導関数を O(h2)O(h^2) 精度で近似するという結論は一般には出ない。試験答案でこのような不整合に遭遇した場合は,まず係数計算を確定し,次に単純な反例で印刷通りの主張が使えないことを示し,最後に成立する中心差分評価を併記するのが最も防御的である。

集合・統計・代数・補間の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

2024年度の出題内容

全6問

この6問の分野は位相・幾何1問・代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析漸近展開と極限積分O 項の扱いあり
第2問—対角化と反交換反交換条件の見方 / 像の次元の別確認あり
第3問—単元群と合同式答案で書くべき点 / 中国剰余定理での持ち上げあり
第4問位相・幾何多様体とグラフ選択肢Aの方針 / 選択肢Aの検算あり
第5問—複素積分と関数列選択肢Cの方針 / 留数計算の検算あり
第6問代数集合・統計・代数・補間選択肢Eの構成 / 選択肢Fの検算あり

2024年度の解説には典型ミス5件・検算3件が付いています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 6問 → 2024年度 6問
2023年度の解答例

筑波大学の公式過去問

公開年度範囲
令和4〜令和8年度(8月期・1〜2月期)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEFL/TOEIC/IELTS の外部英語スコア提出が必須(2022年度入試以降)。
院試hubの最終確認
2026-06-03
筑波大学の公式過去問PDF