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筑波大 理工情報生命学術院 数理物質科学研究群 数学学位プログラム 専門科目(数学) 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問の分野は位相・幾何1問、情報1問、線形代数1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 微積分

方針

前半は ∫01xαlog⁡x dx\int_0^1x^\alpha\log x\,dx の標準公式,後半は2次元の動径関数のラプラシアンを使う。公式を丸暗記していない場合でも,∫01xαdx=1/(α+1)\int_0^1x^\alpha dx=1/(\alpha+1) を α\alpha で微分すれば導ける。

検算

Δ(log⁡r)=0\Delta(\log r)=0 は r>0r>0 で成り立つ基本事実である。求めた f(r)f(r) は r=1r=1 で0,r=er=e で 1/(2π)1/(2\pi) になるので境界条件とも合う。

典型ミス

Ωε\Omega_\varepsilon の内半径は ε\varepsilon である。条件が ε2≤x2+y2\varepsilon^2\le x^2+y^2 と書かれているため,極座標で下端を ε2\varepsilon^2 にしてしまうと答えがずれる。

解答

(1) 広義積分

広義積分は原点近くで可積分である。公式 ∫01xαlog⁡x dx=−1(α+1)2(α>−1) \int_0^1 x^\alpha \log x\,dx=-\frac{1}{(\alpha+1)^2} \qquad(\alpha>-1) を使うと lim⁡ε→+0∫ε1(2x3−x)log⁡x dx=2∫01x3log⁡x dx−∫01xlog⁡x dx=2(−116)−(−14)=18. \begin{aligned} \lim_{\varepsilon\to+0}\int_\varepsilon^1(2x^3-x)\log x\,dx &=2\int_0^1x^3\log x\,dx-\int_0^1x\log x\,dx\\ &=2\left(-\frac1{16}\right)-\left(-\frac14\right)=\frac18. \end{aligned}

(2)(a) 動径関数のラプラシアン

r=x2+y2r=\sqrt{x^2+y^2} と書く。連鎖律より Fx=f′(r)xr,Fy=f′(r)yr. F_x=f'(r)\frac{x}{r},\qquad F_y=f'(r)\frac{y}{r}. さらに Fxx=f′′(r)x2r2+f′(r)(1r−x2r3),Fyy=f′′(r)y2r2+f′(r)(1r−y2r3). \begin{aligned} F_{xx} &=f''(r)\frac{x^2}{r^2} +f'(r)\left(\frac1r-\frac{x^2}{r^3}\right),\\ F_{yy} &=f''(r)\frac{y^2}{r^2} +f'(r)\left(\frac1r-\frac{y^2}{r^3}\right). \end{aligned} 足し合わせると ΔF=f′′(r)+1rf′(r) \Delta F=f''(r)+\frac1r f'(r) である。

(2)(b) 境界条件を満たす調和関数

調和条件は f′′(r)+1rf′(r)=0,r>0 f''(r)+\frac1r f'(r)=0,\qquad r>0 であり,これは (rf′(r))′=0(rf'(r))'=0 と同値である。したがって f′(r)=Cr,f(r)=Clog⁡r+D. f'(r)=\frac{C}{r},\qquad f(r)=C\log r+D. 条件 f(1)=0f(1)=0 から D=0D=0,条件 f(e)=1/(2π)f(e)=1/(2\pi) から C=12π C=\frac1{2\pi} である。よって f(r)=log⁡r2π. f(r)=\frac{\log r}{2\pi}.

(3) 極限積分

g(r)=(r2−1)2g(r)=(r^2-1)^2 とおくと g′(r)=4r(r2−1),g′′(r)=12r2−4. g'(r)=4r(r^2-1),\qquad g''(r)=12r^2-4. 前問の動径公式より ΔG=g′′(r)+1rg′(r)=(12r2−4)+(4r2−4)=16r2−8. \Delta G=g''(r)+\frac1r g'(r) =(12r^2-4)+(4r^2-4)=16r^2-8. 極座標で dxdy=r drdθdxdy=r\,drd\theta を用いると lim⁡ε→+0∬ΩεFΔG dxdy=lim⁡ε→+0∫02π∫ε1log⁡r2π(16r2−8)r drdθ=∫01(16r3−8r)log⁡r dr=16(−116)−8(−14)=1. \begin{aligned} \lim_{\varepsilon\to+0}\iint_{\Omega_\varepsilon}F\Delta G\,dxdy &=\lim_{\varepsilon\to+0} \int_0^{2\pi}\int_\varepsilon^1 \frac{\log r}{2\pi}(16r^2-8)r\,drd\theta\\ &=\int_0^1(16r^3-8r)\log r\,dr\\ &=16\left(-\frac1{16}\right)-8\left(-\frac14\right)=1. \end{aligned}

最終答

(1)18. \text{(1)}\quad \frac18. (2)(a)ΔF=f′′(r)+1rf′(r),(2)(b)f(r)=log⁡r2π. \text{(2)(a)}\quad \Delta F=f''(r)+\frac1r f'(r),\qquad \text{(2)(b)}\quad f(r)=\frac{\log r}{2\pi}. (3)lim⁡ε→+0∬ΩεFΔG dxdy=1. \text{(3)}\quad \lim_{\varepsilon\to+0}\iint_{\Omega_\varepsilon}F\Delta G\,dxdy=1.

第2問 — 線形代数

方針

この行列は A3=AA^3=A を満たすので,固有値は 1,−1,01,-1,0 だけである。したがって,±1\pm1 の固有空間と0固有空間をそろえれば対角化まで一気に進む。

検算

v1,v2v_1,v_2 は A2−EA^2-E で消え,v3,v4v_3,v_4 は AA で消える。よって B=A2−EB=A^2-E は v3,v4v_3,v_4 に −1-1 倍で作用し,v1,v2v_1,v_2 に0で作用する。この見方で DD の符号を確認できる。

典型ミス

Im⁡(g)\operatorname{Im}(g) は BB の列空間であって,Ker⁡(g)\operatorname{Ker}(g) ではない。さらに f(Im⁡(g))f(\operatorname{Im}(g)) は部分空間の像なので,ベクトルを1本だけ調べず,基底全体の像を見る必要がある。

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第3問 — 代数学

方針

選択肢Aは「関係式が消えるなら剰余環から写像が降りる」という普遍性を使う。選択肢Bは群論の基本命題を,写像の核や交換子を使って丁寧に示す問題である。

検算

選択肢Aの M2M_2 は次元0になる。ここを見落としやすいが,t2−1=0t^2-1=0 のもとでは t3−t=0t^3-t=0 なので t3−t+1≡1t^3-t+1\equiv1 であり,商は零環になる。

典型ミス

単射性の証明で「パラメータ表示だから明らか」と書くだけでは不足する。剰余環の元を a(X)+b(X)Ya(X)+b(X)Y に正規形化し,偶奇部分を分けて多項式恒等式として処理するのが答案として安定する。

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第4問 — 幾何・位相

方針

選択肢Cは標準トーラスのパラメータ表示をそのまま使う。面積要素 b(a+bcos⁡u)b(a+b\cos u) と曲率 K=cos⁡u/{b(a+bcos⁡u)}K=\cos u/\{b(a+b\cos u)\} の積が cos⁡u\cos u に簡約されるのが計算の核心である。

検算

t=0t=0 なら上下で半分になるので,StS_t の面積は 2π2ab2\pi^2ab。公式も arcsin⁡0=0\arcsin0=0 から同じ値を返す。

典型ミス

境界は1本ではなく2本の円である。内側と外側で半径が a±b1−t2/b2a\pm b\sqrt{1-t^2/b^2} に分かれるため,長さも2つ出す必要がある。

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第5問 — 複素解析・実解析

方針

選択肢Eは上半平面に閉じる留数計算である。t>0t>0 なので上半平面で指数因子が減衰する。選択肢Fは不等式で優関数を作り,優収束定理に接続する。

検算

∫−∞∞eitx/(x2+1) dx\int_{-\infty}^{\infty}e^{itx}/(x^2+1)\,dx は偶実部と奇虚部に分かれる。答え πe−t\pi e^{-t} は実数正値であり,虚部が消えることとも整合する。

典型ミス

半円弧の評価では ∣eitz∣=e−tIm⁡z|e^{itz}|=e^{-t\operatorname{Im}z} を使う。符号を逆にして下半平面へ閉じると,t>0t>0 の減衰方向と合わず評価が破綻する。

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第6問 — 論理・統計・計算機数学

方針

選択問題を分野別に処理した。Gは整列集合の後続区間,Hは対数変換で正規分布,Iは拡張ユークリッド互除法,Jは2階常微分方程式と一次漸化式である。

検算

Jで得た極限関数 1−x21-x^2 は −u′′=2-u''=2,u(1)=0u(1)=0,u(−δ)=1−δ2u(-\delta)=1-\delta^2 を満たす。極限 a=1−δ2a=1-\delta^2 とも整合する。

典型ミス

Hでは XX そのものではなく log⁡X\log X が正規分布になる。密度の 1/x1/x を見落として XX を正規分布として扱うと,推定量も分散も全く違うものになる。

論理・統計・計算機数学の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

2023年度の出題内容

全6問

この6問の分野は位相・幾何1問・情報1問・線形代数1問・代数1問・微分積分・解析1問・複素解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析微積分—あり
第2問線形代数——あり
第3問代数代数学—あり
第4問位相・幾何幾何・位相—あり
第5問複素解析複素解析・実解析—あり
第6問情報論理・統計・計算機数学—あり

2023年度の解説には検算6件・典型ミス6件が付いています。

筑波大学の公式過去問

公開年度範囲
令和4〜令和8年度(8月期・1〜2月期)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEFL/TOEIC/IELTS の外部英語スコア提出が必須(2022年度入試以降)。
院試hubの最終確認
2026-06-03
筑波大学の公式過去問PDF