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東大 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 専門科目 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(解説39項目)

解説39項目の分野は制御工学3項目、電磁気学・回路1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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午前 流体力学 第1問 — 一様吸い込みによる下流の境界層

設問1 十分下流での速度分布

定常であっても流体は壁へ向かって移動するので、壁に垂直な移流項 VUyVU_y は0ではない。流れが xx に依存しなくなったという条件は V=0V=0 を意味しない。連続式 Ux+Vy=0U_x+V_y=0 は VV の yy 依存性だけを0にし、残る定数を壁の吸い込みで決める。

U′U' に対する一階式は dU′/dy=−(V0/ν)U′dU'/dy=-(V_0/\nu)U'。従って速度勾配は長さ ℓ=ν/V0\ell=\nu/V_0 を尺度として指数的に減る。吸い込みは高速流体を壁の近くへ運び、粘性が横へ運動量を拡散する効果と釣り合って、下流へ厚くなり続けない境界層を作る。

V0>0,ν>0V_0>0,\nu>0 なら 0≤U<U∞0\le U<U_\infty、U′>0U'>0、U′′<0U''<0。式を二回微分して代入すれば、−V0U′=νU′′-V_0U'=\nu U'' が厳密に成り立つ。y=ℓy=\ell では U/U∞=1−e−1≃0.63212U/U_\infty=1-e^{-1}\simeq0.63212、y=3ℓy=3\ell では0.95021となる。

吸い込みの符号を反転して U/U∞=1−e+V0y/νU/U_\infty=1-e^{+V_0y/\nu} とする誤りでは、y=ℓy=\ell で 1−e≃−1.718281-e\simeq-1.71828 となり外縁条件も満たさない。また V0→0V_0\to0 で式が一様な Blasius 分布へ直ちに変わるわけではない。尺度 ℓ\ell が発散し、十分下流で xx 依存を無視できるという近似の成立範囲自体が変わるためである。

設問2 排除厚さと壁面せん断応力

排除厚さは、速度欠損によって失われた流量を、一様流を壁からどれだけずらせば補えるかという長さである。U∞δ∗=∫0∞(U∞−U)dyU_\infty\delta^*=\int_0^\infty(U_\infty-U)dy から定義を理解できる。速度が主流の一定割合に達する高さとは異なる。例えば99\%の高さは y99=ℓln⁡100≃4.60517ℓy_{99}=\ell\ln100\simeq4.60517\ell で、δ∗=ℓ\delta^*=\ell の約4.6倍となる。

Newton 流体のせん断応力は μUy\mu U_y、動粘性係数は ν=μ/ρ\nu=\mu/\rho だから ρνUy\rho\nu U_y と書ける。本問では二次元境界層近似を用い、壁に沿う速度勾配が支配的である。U′(0)=U∞V0/νU'(0)=U_\infty V_0/\nu を代入すると ν\nu が消えるが、速度分布が粘性に無関係になったという意味ではない。

説明用に ν=10−5 m2/s,V0=0.01 m/s,U∞=10 m/s,ρ=1 kg/m3\nu=10^{-5}\,\mathrm{m^2/s},V_0=0.01\,\mathrm{m/s},U_\infty=10\,\mathrm{m/s},\rho=1\,\mathrm{kg/m^3} なら、排除厚さ1mm、壁応力0.1Paとなる。τ=ρνU∞\tau=\rho\nu U_\infty とする誤りは壁勾配の長さ ℓ\ell を落とし、10−410^{-4} を応力と読むことになるが単位も Pa m\mathrm{Pa\,m} で一致しない。積分は長さを作り、微分は速度を長さで割ることを確認する。

解答

設問1 十分下流での速度分布

十分下流では ∂xU=0\partial_xU=0 とする。連続式から ∂yV=0\partial_yV=0、壁条件から全域で V=−V0V=-V_0。圧力勾配0の境界層方程式は νU′′+V0U′=0. \nu U''+V_0U'=0. 積分して U=C1+C2e−V0y/νU=C_1+C_2e^{-V_0y/\nu}。U(0)=0U(0)=0 と U(∞)=U∞U(\infty)=U_\infty から

設問2 排除厚さと壁面せん断応力

排除厚さの定義と Newton 流体の粘性せん断応力を使う。 δf∗=∫0∞(1−UU∞)dy=∫0∞e−V0y/νdy,(τf)0=ρνU′(0). \delta_f^*=\int_0^\infty\left(1-\frac U{U_\infty}\right)dy =\int_0^\infty e^{-V_0y/\nu}dy, \qquad (\tau_f)_0=\rho\nu U'(0).

ここでのせん断応力は正の速度勾配に対応する大きさであり、壁に対する流体の抗力は主流方向となる。

最終答

U(y)U∞=1−e−V0y/ν.\displaystyle \frac{U(y)}{U_\infty}=1-e^{-V_0y/\nu}.

δf∗=νV0,(τf)0=ρU∞V0.\displaystyle \delta_f^*=\frac\nu{V_0},\qquad (\tau_f)_0=\rho U_\infty V_0.

午前 流体力学 第2問 — 壁面で満たす一次・二次速度勾配の関係

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午前 流体力学 第3問 — 二つの速度分布を補間する吸い込みパラメータ

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午前 固体力学 第1問 — 球対称のひずみ適合条件

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午前 固体力学 第2問 — 球対称 Hooke 則と応力一般解の適合

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午前 固体力学 第3問 — 球形空孔の弾性応力と初期降伏

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午前 固体力学 第4問 — 弾塑性境界における半径応力

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午前 固体力学 第5問 — 内圧が降伏応力に等しいときの塑性域

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午前 固体力学 第6問 — 内圧を除いた後に残る応力

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午前 固体力学 第7問 — 球対称状態での Tresca と Mises の一致

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午前 航空宇宙システム学 第1問 — 円軌道の速度・周期と比軌道エネルギー

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午前 航空宇宙システム学 第2問 — 微小推力を一周加えた後の軌道

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午前 航空宇宙システム学 第3問 — 準円軌道のスパイラル上昇に必要な増速量

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午前 航空宇宙システム学 第4問 — 低推力と瞬間増速による脱出の比較

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午前 推進工学 第1問 — 撃力を加えた直後に滑らず転がる高さ

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午前 推進工学 第2問 — 滑りの向きが変わる撃力後の運動

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午前 推進工学 第3問 — 段差の角への衝突と乗り越え条件

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午後 流体力学 第1問 — 移動する衝撃波に固定した速度

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午後 流体力学 第2問 — 圧力比で表す垂直衝撃波の密度比

圧力比で表す垂直衝撃波の密度比の途中式・最終答をPDFで見る

午後 流体力学 第3問 — ピストン速度と衝撃波 Mach 数の対応

ピストン速度と衝撃波 Mach 数の対応の途中式・最終答をPDFで見る

午後 流体力学 第4問 — 壁で反射した衝撃波の速度変換

壁で反射した衝撃波の速度変換の途中式・最終答をPDFで見る

午後 流体力学 第5問 — 反射波による二度目の圧力上昇

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午後 固体力学 第1問 — 引張データから弾性率と引張強さを求める

引張データから弾性率と引張強さを求めるの途中式・最終答をPDFで見る

午後 固体力学 第2問 — 母板の正味断面とボルトの二面せん断

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午後 固体力学 第3問 — 継手で別に確認する三つの破壊様式

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午後 固体力学 第4問 — 二つの破壊限界を釣り合わせるボルト間隔

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午後 航空宇宙システム学 第1問 — 粘性抵抗を受ける回転体の運動

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午後 航空宇宙システム学 第2問 — トルクから角速度への伝達関数

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午後 航空宇宙システム学 第3問 — 一階系とその微分のベクトル軌跡

一階系とその微分のベクトル軌跡の途中式・最終答をPDFで見る

午後 航空宇宙システム学 第4問 — 比例速度制御の閉ループと段階応答

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午後 航空宇宙システム学 第5問 — 積分速度制御の応答と必要トルク

積分速度制御の応答と必要トルクの途中式・最終答をPDFで見る

午後 航空宇宙システム学 第6問 — 電機子回路と回転体を合わせた伝達関数

電機子回路と回転体を合わせた伝達関数の途中式・最終答をPDFで見る

午後 航空宇宙システム学 第7問 — 電圧を積分制御するときの安定限界

電圧を積分制御するときの安定限界の途中式・最終答をPDFで見る

午後 推進工学 第1問 — 可逆断熱圧縮の温度比と圧力比

可逆断熱圧縮の温度比と圧力比の途中式・最終答をPDFで見る

午後 推進工学 第2問 — 三段目圧縮後の温度

三段目圧縮後の温度の途中式・最終答をPDFで見る

午後 推進工学 第3問 — タービン出口の温度

タービン出口の温度の途中式・最終答をPDFで見る

午後 推進工学 第4問 — 中間冷却サイクルの正味の比仕事

中間冷却サイクルの正味の比仕事の途中式・最終答をPDFで見る

午後 推進工学 第5問 — 三つの圧縮比と全圧力比の仕事最適化

三つの圧縮比と全圧力比の仕事最適化の途中式・最終答をPDFで見る

午後 推進工学 第6問 — 最大比仕事の条件での熱効率

最大比仕事の条件での熱効率の途中式・最終答をPDFで見る

専門科目の解答・解説PDF

2022〜2026年度(5年度) · ¥2,880

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年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(解説16項目)

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  • 2025年度(解説14項目)

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  • 2024年度(解説44項目)

    乱流境界層の積分法:厚さの変数を取り替える / 形状が一定の境界層:積分因子による厚さの計算 / エネルギー厚さ:壁面外への流出を残して積分する

  • 2023年度(解説29項目)

    一定水頭から流出する定常速度 / 非定常 Bernoulli 式と速度ポテンシャル / 管内流速の立ち上がり

  • 2022年度(このページ・解説39項目)

    一様吸い込みによる下流の境界層 / 壁面で満たす一次・二次速度勾配の関係 / 二つの速度分布を補間する吸い込みパラメータ

2022年度の出題内容

解説39項目

この39問の分野は制御工学3問・電磁気学・回路1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
午前 流体力学 第1問—一様吸い込みによる下流の境界層—あり
午前 流体力学 第2問—壁面で満たす一次・二次速度勾配の関係—あり
午前 流体力学 第3問—二つの速度分布を補間する吸い込みパラメータ—あり
午前 固体力学 第1問—球対称のひずみ適合条件—あり
午前 固体力学 第2問—球対称 Hooke 則と応力一般解の適合—あり
午前 固体力学 第3問—球形空孔の弾性応力と初期降伏—あり
午前 固体力学 第4問—弾塑性境界における半径応力—あり
午前 固体力学 第5問—内圧が降伏応力に等しいときの塑性域—あり
午前 固体力学 第6問—内圧を除いた後に残る応力—あり
午前 固体力学 第7問—球対称状態での Tresca と Mises の一致—あり
午前 航空宇宙システム学 第1問—円軌道の速度・周期と比軌道エネルギー—あり
午前 航空宇宙システム学 第2問—微小推力を一周加えた後の軌道—あり
午前 航空宇宙システム学 第3問—準円軌道のスパイラル上昇に必要な増速量—あり
午前 航空宇宙システム学 第4問—低推力と瞬間増速による脱出の比較—あり
午前 推進工学 第1問—撃力を加えた直後に滑らず転がる高さ—あり
午前 推進工学 第2問—滑りの向きが変わる撃力後の運動—あり
午前 推進工学 第3問—段差の角への衝突と乗り越え条件—あり
午後 流体力学 第1問—移動する衝撃波に固定した速度—あり
午後 流体力学 第2問—圧力比で表す垂直衝撃波の密度比—あり
午後 流体力学 第3問—ピストン速度と衝撃波 Mach 数の対応—あり
午後 流体力学 第4問—壁で反射した衝撃波の速度変換—あり
午後 流体力学 第5問—反射波による二度目の圧力上昇—あり
午後 固体力学 第1問—引張データから弾性率と引張強さを求める—あり
午後 固体力学 第2問—母板の正味断面とボルトの二面せん断—あり
午後 固体力学 第3問—継手で別に確認する三つの破壊様式—あり
午後 固体力学 第4問—二つの破壊限界を釣り合わせるボルト間隔—あり
午後 航空宇宙システム学 第1問—粘性抵抗を受ける回転体の運動—あり
午後 航空宇宙システム学 第2問—トルクから角速度への伝達関数—あり
午後 航空宇宙システム学 第3問—一階系とその微分のベクトル軌跡—あり
午後 航空宇宙システム学 第4問制御工学比例速度制御の閉ループと段階応答—あり
午後 航空宇宙システム学 第5問制御工学積分速度制御の応答と必要トルク—あり
午後 航空宇宙システム学 第6問電磁気学・回路電機子回路と回転体を合わせた伝達関数—あり
午後 航空宇宙システム学 第7問制御工学電圧を積分制御するときの安定限界—あり
午後 推進工学 第1問—可逆断熱圧縮の温度比と圧力比—あり
午後 推進工学 第2問—三段目圧縮後の温度—あり
午後 推進工学 第3問—タービン出口の温度—あり
午後 推進工学 第4問—中間冷却サイクルの正味の比仕事—あり
午後 推進工学 第5問—三つの圧縮比と全圧力比の仕事最適化—あり
午後 推進工学 第6問—最大比仕事の条件での熱効率—あり

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2022〜2026(専門科目の公開筆記問題)
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
専門科目の過去問を扱う。英語の受験方法とスコア要件は当該年度の募集要項で確認。
院試hubの最終確認
2026-10-20
東京大学の公式過去問PDF