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東北大 工学研究科 応用物理学専攻 応用物理 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問の分野は電磁気学・回路1問、熱・統計力学1問、量子力学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 力学:逆二乗引力中の軌道方程式と散乱条件

方針

極座標の運動エネルギーは暗記でよいが、答案では x˙,y˙\dot x,\dot y を書き下して2乗和を作る2行を残すと確実である。ハミルトニアンは「H=T+UH=T+U を pp で書き直す」ではなく、定義式 H=∑pq˙−LH=\sum p\dot q-L から出す。今回は結果が一致するが、一致しない例(回転座標系、速度に依存するポテンシャル)があるので、定義に戻る癖をつけたい。

角運動量を早く確定させる

設問(2)は pθ=mr2θ˙p_{\theta}=mr^{2}\dot\theta だけでも答えになるが、pθp_{\theta} が保存量であることと、その値が mv0y0mv_{0}y_{0} であることをここで確定させておくと、設問(5)(6)の計算がすべて pθp_{\theta} の一文字で書ける。y0y_{0} は原点から初速度の直線までの距離、すなわち衝突径数であり、この問題の幾何そのものである。

失点しやすい点

U(r)=−C/rU(r)=-C/r の符号を落として L=T+UL=T+U としてしまう誤りが多い。C>0C>0 は引力なので、LL ではポテンシャルの符号が反転して +C/r+C/r、HH では −C/r-C/r となる。LL と HH で符号が逆になることを確認してから先に進む。

設問(4)(5) 正準方程式と u(θ)u(\theta) の微分方程式

検算:円軌道

u′′=0u''=0 とおくと u=mC/pθ2u=mC/p_{\theta}^{2}、すなわち r=pθ2/(mC)r=p_{\theta}^{2}/(mC) で一定になる。これは半径 rr の等速円運動の条件 mrθ˙2=C/r2m r\dot\theta^{2}=C/r^{2} に pθ=mr2θ˙p_{\theta}=mr^{2}\dot\theta を代入した結果と一致する。定数項が正しく出ているかはここで確かめられる。

変換の意味

u′′+u=一定u''+u=\text{一定} は強制項付きの単振動と同じ形で、解が「定数+余弦」になることが一目で分かる。逆二乗力に限ってこの形になるのは、1/r21/r^{2} の力が uu について u2u^{2}、遠心力項が u3u^{3} となり、共通因子 u2u^{2} が落ちるためである。他のべきのポテンシャルではこの単純化は起きない。

失点しやすい点

r¨\ddot r を求めるときに u2u^{2} を微分の外に出す位置を誤りやすい。d/dt=(pθu2/m) d/dθd/dt=(p_{\theta}u^{2}/m)\,d/d\theta の u2u^{2} は θ\theta の関数なので、r˙\dot r に作用させる段階で微分の外側に置く。先に uu を微分してしまうと余分な項が出る。

設問(6) 円錐曲線の定数と無限遠への散乱

方針

a) は「特解+斉次解」の対応を見るだけで ll が出る。ε\varepsilon は初期条件を代入するだけだが、問われているのは θ0\theta_{0} と θp\theta_{p} を使った表式なので、cos⁡(θ0−θp)\cos(\theta_{0}-\theta_{p}) を分母に残した形で止めてよい。b) は ε\varepsilon とエネルギーを結ぶ関係式 ε2=1+2pθ2E/(mC2)\varepsilon^{2}=1+2p_{\theta}^{2}E/(mC^{2}) を作ることがすべてで、これを導かずに「ε≥1\varepsilon\ge1 は双曲線だから」と書いても点にならない。

別解と整合性の確認

ε2=1+2pθ2E/(mC2)\varepsilon^{2}=1+2p_{\theta}^{2}E/(mC^{2}) に pθ=mv0y0p_{\theta}=mv_{0}y_{0} と E=mv02/2−C/r0E=mv_{0}^{2}/2-C/r_{0} を入れると ε2=1+mv02y02C2(mv02−2Cr0) \varepsilon^{2}=1+\frac{mv_{0}^{2}y_{0}^{2}}{C^{2}} \left(mv_{0}^{2}-\frac{2C}{r_{0}}\right) となり、θp\theta_{p} を使わずに ε\varepsilon が決まる。a) の表式とこの式を等置すれば θp\theta_{p} が決まるので、両者は独立な検算になる。

図で見る ε\varepsilon の意味

共通の ll をもつ円錐曲線を、焦点 O を原点にして重ねると下図になる。ε<1\varepsilon<1 は閉じた楕円(束縛)、ε=1\varepsilon=1 が放物線(境界)、ε>1\varepsilon>1 が開いた双曲線(散乱)である。ε=1\varepsilon=1 が E=0E=0 に対応し、これがちょうど mv02/2=C/r0mv_{0}^{2}/2=C/r_{0} である。

失点しやすい点

pθp_{\theta} の値を mv0r0mv_{0}r_{0} としてしまう誤りが典型である。速度は xx 軸に平行で、位置ベクトルとは平行でないから、角運動量に効くのは原点から速度直線までの垂直距離 y0=r0sin⁡θ0y_{0}=r_{0}\sin\theta_{0} である。また EE を t=0t=0 で評価するとき、U(r0)=−C/r0U(r_{0})=-C/r_{0} の符号を落とすと不等号の向きが逆になる。

解答

(1) 極座標のラグランジアン

位置を x=rcos⁡θx=r\cos\theta、y=rsin⁡θy=r\sin\theta と書くと x˙=r˙cos⁡θ−rθ˙sin⁡θ,y˙=r˙sin⁡θ+rθ˙cos⁡θ \dot x=\dot r\cos\theta-r\dot\theta\sin\theta,\qquad \dot y=\dot r\sin\theta+r\dot\theta\cos\theta であり、両辺を2乗して加えると交差項が消えて v2=x˙2+y˙2=r˙2+r2θ˙2 v^{2}=\dot x^{2}+\dot y^{2}=\dot r^{2}+r^{2}\dot\theta^{2} となる。運動エネルギーは T=m2(r˙2+r2θ˙2)T=\dfrac{m}{2}\left(\dot r^{2}+r^{2}\dot\theta^{2}\right)、 ポテンシャルは U(r)=−C/rU(r)=-C/r だから L(r,r˙,θ,θ˙)=T−U=m2(r˙2+r2θ˙2)+Cr. L(r,\dot r,\theta,\dot\theta)=T-U =\frac{m}{2}\left(\dot r^{2}+r^{2}\dot\theta^{2}\right)+\frac{C}{r}.

(2) 共役運動量

定義どおり偏微分すると pr=∂L∂r˙=mr˙,pθ=∂L∂θ˙=mr2θ˙. p_{r}=\frac{\partial L}{\partial\dot r}=m\dot r, \qquad p_{\theta}=\frac{\partial L}{\partial\dot\theta}=mr^{2}\dot\theta . LL に θ\theta が陽に現れない(θ\theta は循環座標)ので、pθp_{\theta} は運動の間ずっと一定である。その値は初期条件から決まる。t=0t=0 で位置が (x0,y0)(x_{0},y_{0})、速度が (−v0,0)(-v_{0},0) だから pθ=m(xy˙−yx˙)∣t=0=m{x0⋅0−y0⋅(−v0)}=mv0y0=mv0r0sin⁡θ0  (>0). p_{\theta}=m\left(x\dot y-y\dot x\right)\Big|_{t=0} =m\left\{x_{0}\cdot 0-y_{0}\cdot(-v_{0})\right\} =mv_{0}y_{0}=mv_{0}r_{0}\sin\theta_{0}\;(>0).

(3) ハミルトニアン

r˙=pr/m\dot r=p_{r}/m、θ˙=pθ/(mr2)\dot\theta=p_{\theta}/(mr^{2}) を用いてルジャンドル変換すると H=prr˙+pθθ˙−L=pr22m+pθ22mr2−Cr. H=p_{r}\dot r+p_{\theta}\dot\theta-L =\frac{p_{r}^{2}}{2m}+\frac{p_{\theta}^{2}}{2mr^{2}}-\frac{C}{r}. LL が r˙,θ˙\dot r,\dot\theta の2次形式で、座標変換に時間が陽に入らないので H=T+UH=T+U に一致し、HH は全エネルギー EE そのものである。

(4) 正準方程式と動径方向の運動方程式

HH を偏微分して r˙=∂H∂pr=prm,θ˙=∂H∂pθ=pθmr2, \dot r=\frac{\partial H}{\partial p_{r}}=\frac{p_{r}}{m}, \qquad \dot\theta=\frac{\partial H}{\partial p_{\theta}}=\frac{p_{\theta}}{mr^{2}}, p˙r=−∂H∂r=pθ2mr3−Cr2,p˙θ=−∂H∂θ=0. \dot p_{r}=-\frac{\partial H}{\partial r}=\frac{p_{\theta}^{2}}{mr^{3}}-\frac{C}{r^{2}}, \qquad \dot p_{\theta}=-\frac{\partial H}{\partial\theta}=0 . 第4式より pθp_{\theta} は定数である。第1式と第3式から pr=mr˙p_{r}=m\dot r を消去すると mr¨=pθ2mr3−Cr2 m\ddot r=\frac{p_{\theta}^{2}}{mr^{3}}-\frac{C}{r^{2}} を得る。右辺第1項が遠心力、第2項が引力であり、rr だけの1次元問題に帰着している。

(5) u=1/ru=1/r の満たす方程式

時間微分を θ\theta 微分に置き換える。θ˙=pθu2/m\dot\theta=p_{\theta}u^{2}/m なので ddt=θ˙ddθ=pθu2mddθ. \frac{d}{dt}=\dot\theta\frac{d}{d\theta}=\frac{p_{\theta}u^{2}}{m}\frac{d}{d\theta}. これを r=1/ur=1/u に作用させると r˙=pθu2mddθ ⁣(1u)=pθu2m(−1u2dudθ)=−pθmdudθ, \dot r=\frac{p_{\theta}u^{2}}{m}\frac{d}{d\theta}\!\left(\frac{1}{u}\right) =\frac{p_{\theta}u^{2}}{m}\left(-\frac{1}{u^{2}}\frac{du}{d\theta}\right) =-\frac{p_{\theta}}{m}\frac{du}{d\theta}, r¨=pθu2mddθ(−pθmdudθ)=−pθ2u2m2d2udθ2. \ddot r=\frac{p_{\theta}u^{2}}{m}\frac{d}{d\theta} \left(-\frac{p_{\theta}}{m}\frac{du}{d\theta}\right) =-\frac{p_{\theta}^{2}u^{2}}{m^{2}}\frac{d^{2}u}{d\theta^{2}} . u2u^{2} が約分されて r˙\dot r から uu の1次微分だけが残るのがこの変換の要点である。設問(4)の運動方程式に代入すると −pθ2u2md2udθ2=pθ2u3m−Cu2 -\frac{p_{\theta}^{2}u^{2}}{m}\frac{d^{2}u}{d\theta^{2}} =\frac{p_{\theta}^{2}u^{3}}{m}-Cu^{2} となり、両辺を −pθ2u2/m-p_{\theta}^{2}u^{2}/m で割って d2udθ2+u=mCpθ2. \frac{d^{2}u}{d\theta^{2}}+u=\frac{mC}{p_{\theta}^{2}} .

(6)a) 定数 ll と ε\varepsilon

r=l/{1+εcos⁡(θ−θp)}r=l/\{1+\varepsilon\cos(\theta-\theta_{p})\} は u(θ)=1l+εlcos⁡(θ−θp) u(\theta)=\frac{1}{l}+\frac{\varepsilon}{l}\cos(\theta-\theta_{p}) と書ける。第1項は定数、第2項は u′′+u=0u''+u=0 を満たす斉次解だから、設問(5)の方程式に代入すると定数部分だけが残り 1l=mCpθ2⟹l=pθ2mC=mv02y02C=mv02r02sin⁡2θ0C. \frac{1}{l}=\frac{mC}{p_{\theta}^{2}} \quad\Longrightarrow\quad l=\frac{p_{\theta}^{2}}{mC} =\frac{mv_{0}^{2}y_{0}^{2}}{C} =\frac{mv_{0}^{2}r_{0}^{2}\sin^{2}\theta_{0}}{C}. ε\varepsilon は積分定数であり、初期条件 r(θ0)=r0r(\theta_{0})=r_{0} から決まる。 r0=l1+εcos⁡(θ0−θp)⟹ε=1cos⁡(θ0−θp)(lr0−1)=1cos⁡(θ0−θp)(mv02r0sin⁡2θ0C−1). r_{0}=\frac{l}{1+\varepsilon\cos(\theta_{0}-\theta_{p})} \quad\Longrightarrow\quad \varepsilon=\frac{1}{\cos(\theta_{0}-\theta_{p})}\left(\frac{l}{r_{0}}-1\right) =\frac{1}{\cos(\theta_{0}-\theta_{p})} \left(\frac{mv_{0}^{2}r_{0}\sin^{2}\theta_{0}}{C}-1\right).

(6)b) ε≥1\varepsilon\ge1 とエネルギー条件の同値性

エネルギーを uu で書き直す。r˙=−(pθ/m)u′\dot r=-(p_{\theta}/m)u'、rθ˙=pθu/mr\dot\theta=p_{\theta}u/m だから E=m2(r˙2+r2θ˙2)−Cr=pθ22m(u′2+u2)−Cu. E=\frac{m}{2}\left(\dot r^{2}+r^{2}\dot\theta^{2}\right)-\frac{C}{r} =\frac{p_{\theta}^{2}}{2m}\left(u'^{2}+u^{2}\right)-Cu . ここに φ=θ−θp\varphi=\theta-\theta_{p} とおいて u=(1+εcos⁡φ)/lu=(1+\varepsilon\cos\varphi)/l、u′=−(ε/l)sin⁡φu'=-(\varepsilon/l)\sin\varphi を代入すると u′2+u2=1l2(1+ε2+2εcos⁡φ),Cu=Cl(1+εcos⁡φ). u'^{2}+u^{2}=\frac{1}{l^{2}}\left(1+\varepsilon^{2}+2\varepsilon\cos\varphi\right), \qquad Cu=\frac{C}{l}\left(1+\varepsilon\cos\varphi\right). l=pθ2/(mC)l=p_{\theta}^{2}/(mC) より pθ2/(2ml2)=C/(2l)p_{\theta}^{2}/(2ml^{2})=C/(2l) だから E=C2l(1+ε2+2εcos⁡φ)−Cl(1+εcos⁡φ)=C2l(ε2−1). E=\frac{C}{2l}\left(1+\varepsilon^{2}+2\varepsilon\cos\varphi\right) -\frac{C}{l}\left(1+\varepsilon\cos\varphi\right) =\frac{C}{2l}\left(\varepsilon^{2}-1\right). φ\varphi が消えるのは EE が保存量であることの確認になっている。C>0C>0、l>0l>0 だから ε2−1=2lEC=2pθ2EmC2 \varepsilon^{2}-1=\frac{2lE}{C}=\frac{2p_{\theta}^{2}E}{mC^{2}} であり、ε≥0\varepsilon\ge0 としてよいので ε≥1  ⟺  ε2≥1  ⟺  E≥0. \varepsilon\ge1 \iff \varepsilon^{2}\ge1 \iff E\ge0 . 一方 EE は保存量なので t=0t=0 の値で評価してよく、v(0)=v0v(0)=v_{0}、r(0)=r0r(0)=r_{0} から E=12mv02−Cr0. E=\frac{1}{2}mv_{0}^{2}-\frac{C}{r_{0}} . したがって ε≥1  ⟺  12mv02−Cr0≥0  ⟺  mv022≥Cr0. \varepsilon\ge1 \iff \frac{1}{2}mv_{0}^{2}-\frac{C}{r_{0}}\ge0 \iff \frac{mv_{0}^{2}}{2}\ge\frac{C}{r_{0}} . すなわち、無限遠まで散乱される条件は初期の運動エネルギーが初期のポテンシャルの深さ以上であること、という素朴な描像と一致する。

最終答

L=m2(r˙2+r2θ˙2)+CrL=\dfrac{m}{2}(\dot r^{2}+r^{2}\dot\theta^{2})+\dfrac{C}{r}、 pr=mr˙p_{r}=m\dot r、pθ=mr2θ˙=mv0y0p_{\theta}=mr^{2}\dot\theta=mv_{0}y_{0}、 H=pr22m+pθ22mr2−CrH=\dfrac{p_{r}^{2}}{2m}+\dfrac{p_{\theta}^{2}}{2mr^{2}}-\dfrac{C}{r}

正準方程式は r˙=pr/m\dot r=p_{r}/m、θ˙=pθ/(mr2)\dot\theta=p_{\theta}/(mr^{2})、 p˙r=pθ2/(mr3)−C/r2\dot p_{r}=p_{\theta}^{2}/(mr^{3})-C/r^{2}、p˙θ=0\dot p_{\theta}=0。 動径方向は mr¨=pθ2mr3−Cr2m\ddot r=\dfrac{p_{\theta}^{2}}{mr^{3}}-\dfrac{C}{r^{2}}、 軌道は d2udθ2+u=mCpθ2\dfrac{d^{2}u}{d\theta^{2}}+u=\dfrac{mC}{p_{\theta}^{2}}

l=pθ2mC=mv02r02sin⁡2θ0Cl=\dfrac{p_{\theta}^{2}}{mC}=\dfrac{mv_{0}^{2}r_{0}^{2}\sin^{2}\theta_{0}}{C}、 ε=1cos⁡(θ0−θp)(lr0−1)\varepsilon=\dfrac{1}{\cos(\theta_{0}-\theta_{p})}\left(\dfrac{l}{r_{0}}-1\right)。 また ε2=1+2pθ2EmC2\varepsilon^{2}=1+\dfrac{2p_{\theta}^{2}E}{mC^{2}} と E=12mv02−Cr0E=\dfrac{1}{2}mv_{0}^{2}-\dfrac{C}{r_{0}} より ε≥1  ⟺  mv02/2≥C/r0\varepsilon\ge1\iff mv_{0}^{2}/2\ge C/r_{0}

第2問 — 電磁気学:真空中の平面電磁波と境界条件からのスネルの法則

方針

(1) は「回転の回転」を作る定石で、∇⋅E=0\nabla\cdot\boldsymbol E=0 を使う場所を明示することが採点の的である。真空という条件は ε0,μ0\varepsilon_{0},\mu_{0} が定数であること、自由電荷・伝導電流がないことの2点に効いている。(2)(3) は平面波を仮定してよい。∇→ik\nabla\to i\boldsymbol k、∂t→−iω\partial_{t}\to-i\omega の置き換えを1行書いてから使うと、以後の式が短くなる。

どの方程式がどの性質を出すか

横波性は発散の式(∇⋅D=0\nabla\cdot\boldsymbol D=0、∇⋅B=0\nabla\cdot\boldsymbol B=0)だけから出る。E⊥H\boldsymbol E\perp\boldsymbol H は回転の式から出る。この対応を意識せずに4本の式を並べると、(2) と (3) で同じことを繰り返す答案になりやすい。

検算

∣H∣/∣E∣=ε0/μ0|\boldsymbol H|/|\boldsymbol E|=\sqrt{\varepsilon_{0}/\mu_{0}} の次元を確かめる。μ0/ε0\sqrt{\mu_{0}/\varepsilon_{0}} は抵抗の次元をもつ真空のインピーダンス(約 377 Ω377\,\Omega)で、EE が V/m、HH が A/m だから比は Ω−1\Omega^{-1} の次元となり整合する。また S=E×H\boldsymbol S=\boldsymbol E\times\boldsymbol H が k\boldsymbol k と同じ向きになることも、右手系であることの確認に使える。

設問(4)(5) 接続条件とスネルの法則

方針

(5) で使うのは接続条件の「形」だけで、振幅の具体値は要らない。「境界面上のすべての点・すべての時刻で成り立つ」という要請から位相が一致し、その接線成分の一致がスネルの法則になる、という論理を一本の筋で書く。振幅比を求めにいくと計算が膨らむうえ、設問の要求を超える。

位相整合の図

接線方向の波数が3波で共通であることを図にすると、角度の関係が一目で分かる。真空側では ∣k∣|\boldsymbol k| が等しいので入射角と反射角が等しく、媒質側では ∣k∣|\boldsymbol k| が nn 倍大きいぶん sin⁡θ\sin\theta が 1/n1/n 倍になって法線側に折れる。

接続条件の使い分け

法線方向については DnD_{n} と BnB_{n} が連続で、これはガウスの法則を薄い円柱に適用して得る。設問は接線方向だけを問うているので、答案では EtE_{t}、HtH_{t} の2本に絞る。ただし EtE_{t} が連続でも DtD_{t} は連続でないこと(ε\varepsilon が跳ぶため)は混同しやすいので、E\boldsymbol E と H\boldsymbol H について述べていることを明示する。

失点しやすい点

「振動数が3波で共通」を自明として断りなく使う答案が多い。これも位相整合の要請から出る結論なので、ω\omega の一致と k∥\boldsymbol k_{\parallel} の一致を並べて書く。また媒質中の波数を ωεμ\omega\sqrt{\varepsilon\mu} とせず ωε0μ0\omega\sqrt{\varepsilon_{0}\mu_{0}} のままにすると屈折率が出てこない。媒質中でも同じ手順で波動方程式を作り直す一言を添えると安全である。

電磁気学:真空中の平面電磁波と境界条件からのスネルの法則の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学:無限井戸に置いた段差ポテンシャルの摂動論

方針

a)〜d) は互いに独立ではなく、b) の一般解に c) を課して d) が決まる、という一本の流れである。答案でもその順に書き、c) では「無限の壁の外で ψ=0\psi=0、連続性から端点で0」という理由を1行添える。

検算

En(0)E_{n}^{(0)} の次元は ℏ2/(md2)\hbar^{2}/(md^{2}) で、[J s]2/([kg][m2])=J[\mathrm{J\,s}]^{2}/([\mathrm{kg}][\mathrm m^{2}])=\mathrm J となり正しい。また ψn\psi_{n} の節(内部で ψ=0\psi=0 になる点)は n−1n-1 個で、基底状態が節をもたないという一般的性質と合う。

この設問が試していること

無限井戸は結果を暗記している受験者が多いので、問われているのは「どの条件から何が決まるか」を分離して書けるかである。B=0B=0 は左端の条件、αd=nπ\alpha d=n\pi は右端の条件、AA は規格化から、と対応を明示する。

設問(2) 1次の摂動論

検算1:δ=d\delta=d の極限

段差が井戸全体を覆うと、H^p\hat H^{\mathrm p} はただの定数 V0V_{0} で、固有関数は変わらず全準位が V0V_{0} だけ持ち上がるはずである。実際 δ=d\delta=d とすると sin⁡(2nπ)=0\sin(2n\pi)=0 より En(1)=V0E_{n}^{(1)}=V_{0}、また k±nk\pm n が整数なので sin⁡{(k±n)π}=0\sin\{(k\pm n)\pi\}=0 から ck=0c_{k}=0 となり、ψn(1)=0\psi_{n}^{(1)}=0。両方の式が同時に正しい極限を与えるので、係数の取り違えを検出できる。

検算2:δ→0\delta\to0 の振る舞い

sin⁡t≃t−t3/6\sin t\simeq t-t^{3}/6 を使うと En(1)≃2π2n23V0(δd)3 E_{n}^{(1)}\simeq\frac{2\pi^{2}n^{2}}{3}V_{0}\left(\frac{\delta}{d}\right)^{3} で、δ\delta の1次ではなく3次で立ち上がる。これは ψn(0)=0\psi_{n}(0)=0 のため x=0x=0 近傍の存在確率が ∣ψ∣2∝x2|\psi|^{2}\propto x^{2} と小さいことの反映で、∫0δ(2/d)(nπx/d)2dx\int_{0}^{\delta}(2/d)(n\pi x/d)^{2}dx を直接計算しても同じ値になる。段差を左端ではなく井戸の中央に置けば1次で効く、という比較まで書ければ理解が伝わる。

摂動論が使える条件

1次摂動論の妥当性は、補正が元の間隔に比べて小さいこと、すなわち ∣⟨k∣H^p∣n⟩∣≪∣En(0)−Ek(0)∣|\langle k|\hat H^{\mathrm p}|n\rangle|\ll|E_{n}^{(0)}-E_{k}^{(0)}| である。行列要素は高々 V0V_{0} 程度、エネルギー差は最小で ∼π2ℏ2(2n+1)/(2md2)\sim\pi^{2}\hbar^{2}(2n+1)/(2md^{2}) なので、条件は実質 V0≪π2ℏ2/(2md2)V_{0}\ll\pi^{2}\hbar^{2}/(2md^{2}) となる。V0V_{0} が井戸の準位間隔と同程度なら、たとえ δ\delta が小さくても摂動論は使えない。

失点しやすい点

ψn(1)\psi_{n}^{(1)} の分母を Ek(0)−En(0)E_{k}^{(0)}-E_{n}^{(0)} と逆に書く誤りが最も多い。分母は「補正したい状態のエネルギー」から引くので En(0)−Ek(0)E_{n}^{(0)}-E_{k}^{(0)} である。また積分区間を 00 から dd のままにすると直交性で0になってしまう。摂動が効くのは 0≤x≤δ0\le x\le\delta だけであり、積分区間を δ\delta で切ることが行列要素が非零になる理由そのものである。

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第4問 — 統計力学:古典調和振動子と結合した2振動子の相関

方針

分配関数さえ書けば b) は β\beta 微分で終わる。c) は分配関数を経由せず、ガウス積分の比で直接求めるのが速い。⟨x⟩=0\langle x\rangle=0 は対称性から1行で済ませてよい。

検算

⟨x2⟩=kBT/(mω2)\langle x^{2}\rangle=k_{\mathrm B}T/(m\omega^{2}) を使うと平均ポテンシャルは 12mω2⟨x2⟩=kBT/2\frac{1}{2}m\omega^{2}\langle x^{2}\rangle=k_{\mathrm B}T/2 となり、b) の ⟨E⟩=kBT\langle E\rangle=k_{\mathrm B}T の半分にちょうど等しい。等分配則と自己整合している。次元も、kBTk_{\mathrm B}T がエネルギー、mω2m\omega^{2} がばね定数なので比は長さの2乗で正しい。

hh の役割

1/h1/h は位相空間の1状態が占める面積を与える因子で、Z1Z_{1} の絶対値(したがって自由エネルギーの原点)を決める。β\beta に依存しないので ⟨E⟩\langle E\rangle や分散には効かない。答案では付けておくのが安全だが、期待値の計算では消えることを一言添えると理解が伝わる。

設問(2) 結合した2振動子

方針

ε(x1−x2)2\varepsilon(x_{1}-x_{2})^{2} の存在で x1,x2x_{1},x_{2} の積分は絡むが、2\sqrt2 で割った和と差に移ると完全に分離する。2\sqrt2 を入れる理由は、変換を直交行列にしてヤコビアンを1に、かつ運動エネルギーの形を保つためである。単に X=x1+x2X=x_{1}+x_{2}、ξ=x1−x2\xi=x_{1}-x_{2} とするとヤコビアンが2になり、質量も変わって係数を追うのが煩雑になる。

検算:分散と共分散の整合

一般に Var(r)=Var(x1)+Var(x2)−2 Cov(x1,x2)\mathrm{Var}(r)=\mathrm{Var}(x_{1})+\mathrm{Var}(x_{2})-2\,\mathrm{Cov}(x_{1},x_{2}) が成り立つ。ここで Var(x1)=Var(x2)=12(⟨X2⟩+⟨ξ2⟩)\mathrm{Var}(x_{1})=\mathrm{Var}(x_{2})=\frac{1}{2}(\langle X^{2}\rangle+\langle\xi^{2}\rangle) だから右辺は (⟨X2⟩+⟨ξ2⟩)−(⟨X2⟩−⟨ξ2⟩)=2⟨ξ2⟩(\langle X^{2}\rangle+\langle\xi^{2}\rangle)-(\langle X^{2}\rangle-\langle\xi^{2}\rangle)=2\langle\xi^{2}\rangle となり、b) の結果と一致する。b) と c) を別々に出した後、この恒等式で必ず突き合わせておきたい。

⟨E⟩\langle E\rangle が ε\varepsilon によらないこと

a) の結果は一見不思議だが、古典系の等分配則は「ハミルトニアンが正定値の2次形式なら、独立変数1個あたり kBT/2k_{\mathrm B}T/2」としか言わないので、係数がどうであれ総和は変わらない。ε\varepsilon を上げると相対モードは硬くなるが、そのぶん振幅が小さくなり、平均エネルギーは変わらない。エネルギーではなく揺らぎ(分散・共分散)に ε\varepsilon が現れる、という役割分担がこの設問の主題である。

失点しやすい点

b) で r=2 ξr=\sqrt2\,\xi の因子2を落として kBT/(mω−2)k_{\mathrm B}T/(m\omega_{-}^{2}) と書く誤りが多い。ε=0\varepsilon=0 で独立な2変数の分散の和になるか、を必ず確かめる。また ω−2=ω2+4ε/m\omega_{-}^{2}=\omega^{2}+4\varepsilon/m の係数4は、(x1−x2)2=2ξ2(x_{1}-x_{2})^{2}=2\xi^{2} の2と、ばね定数を m2ω−2\frac{m}{2}\omega_{-}^{2} の形に合わせるための2の積である。ここを2や1と間違えると、極限値がすべてずれる。

統計力学:古典調和振動子と結合した2振動子の相関の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 分野:第5問の内容を表す短い見出し

方針

最初の一手とその理由。

検算

数値代入・極限・境界値などによる確認。

失点しやすい点

よくある誤りと、答案に明示すべき前提。

分野:第5問の内容を表す短い見出しの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2025年度(このページ・全5問)

    力学:逆二乗引力中の軌道方程式と散乱条件 / 電磁気学:真空中の平面電磁波と境界条件からのスネルの法則 / 量子力学:無限井戸に置いた段差ポテンシャルの摂動論

  • 2024年度(全5問)

    力学 / 電磁気学 / 量子力学

  • 2023年度(全5問)

    力学:ばねで結ばれた二質点 / 電磁気学:導体球と球殻 / 量子力学:円周上の粒子

  • 2022年度(全5問)

    力学:二輪台車の駆動と荷重移動 / 電磁気学:金属への電磁波の入射と表皮効果 / 量子力学:一次元井戸の束縛状態と二重井戸の準位分裂

  • 2021年度(全5問)

    減衰振動と強制振動 / 回転コイルの起電力 / 調和振動子と摂動

  • 2020年度(全5問)

    量子力学:静磁場中のスピンと期待値の歳差運動 / 力学:台車に吊るされた振り子のラグランジュ形式 / 物理数学:ベクトル解析の遠方展開と拡散方程式のフーリエ解

2025年度の出題内容

全5問

この5問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学逆二乗引力中の軌道方程式と散乱条件角運動量を早く確定させる / 検算:円軌道あり
第2問電磁気学・回路真空中の平面電磁波と境界条件からのスネルの法則どの方程式がどの性質を出すか / 位相整合の図あり
第3問量子力学無限井戸に置いた段差ポテンシャルの摂動論この設問が試していること / 検算1:δ=d の極限あり
第4問熱・統計力学古典調和振動子と結合した2振動子の相関h の役割 / 検算:分散と共分散の整合あり
第5問第5問の内容を表す短い見出し—あり

2025年度の解説には失点しやすい点5件・検算4件が付いています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 5問 → 2025年度 5問
2024年度の解答例

東北大学の公式過去問

公開年度範囲
平成26年〜令和7年(2014〜2025)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
院試hubの最終確認
2026-09-26
東北大学の公式過去問PDF