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東北大 工学研究科 応用物理学専攻 応用物理 2020年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問の分野は微分積分・解析1問、量子力学1問、力学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 量子力学:静磁場中のスピンと期待値の歳差運動

方針

ハミルトニアンが対角なので(1)は行列を掛けるだけで済む。答案では固有方程式を立てるより、実際に作用させて固有値が読み取れることを1行で示すほうが速い。(2)(3)は sxs_x が非対角なので固有方程式に戻る。

検算

sx2=(ℏ2)2Is_x^{2}=\left(\dfrac{\hbar}{2}\right)^{2}I であるから、sxs_x の固有値 λ\lambda は λ2=(ℏ/2)2\lambda^{2}=(\hbar/2)^{2} を満たさなければならない。(2)の結果はこれと整合する。同じ関係は sys_y、szs_z にも成り立ち、スピン 1/21/2 の測定値が必ず ±ℏ/2\pm\hbar/2 になることを表している。

失点しやすい点

固有ベクトルは全体の位相 eiγe^{i\gamma} だけ任意性が残る。問題が「規格化すること」としか言っていない以上、位相の取り方を1行で断っておくと減点されない。また ∣x+⟩|x_{+}\rangle は szs_z の固有状態ではないので、この状態で szs_z を測ると ±ℏ/2\pm\hbar/2 が等確率で出ることも押さえておく。

設問(4) スピン期待値の時間発展

方針

e−iHt/ℏe^{-i\mathcal Ht/\hbar} を行列のまま展開する必要はない。H\mathcal H が対角なので、エネルギー固有状態に展開してから各成分に位相因子を掛けるのが最短で、答案でもこの一手を明示すればよい。∣x+⟩|x_{+}\rangle が H\mathcal H の固有状態ではないからこそ期待値が動く、という点も一言添えると理解が伝わる。

別解(Heisenberg 描像)

演算子の運動方程式 dsidt=iℏ[H,si]\dfrac{d s_i}{dt}=\dfrac{i}{\hbar}[\mathcal H,s_i] に H=ωsz\mathcal H=\omega s_z を入れると d⟨sx⟩dt=−ω⟨sy⟩,d⟨sy⟩dt=+ω⟨sx⟩,d⟨sz⟩dt=0 \frac{d\langle s_x\rangle}{dt}=-\omega\langle s_y\rangle,\qquad \frac{d\langle s_y\rangle}{dt}=+\omega\langle s_x\rangle,\qquad \frac{d\langle s_z\rangle}{dt}=0 となる。これは zz 軸まわりの回転の方程式そのもので、期待値だけを問われている設問なら状態を書き下さずに解ける。

検算

得られた期待値は ⟨sx⟩2+⟨sy⟩2+⟨sz⟩2=(ℏ2)2 \langle s_x\rangle^{2}+\langle s_y\rangle^{2}+\langle s_z\rangle^{2} =\left(\frac{\hbar}{2}\right)^{2} を満たす。純粋状態のスピン 1/21/2 では期待値ベクトルの長さが常に ℏ/2\hbar/2(Bloch 球面上)になるので、これは強い検算になる。また t=0t=0 で ⟨sx⟩=ℏ/2\langle s_x\rangle=\hbar/2、⟨sy⟩=⟨sz⟩=0\langle s_y\rangle=\langle s_z\rangle=0 となり、初期状態が sxs_x の固有状態であることと整合する。

失点しやすい点

上向き成分の位相は e−iE↑t/ℏ=e−icBt/ℏe^{-iE_{\uparrow}t/\hbar}=e^{-icBt/\hbar} であって e+icBt/ℏe^{+icBt/\hbar} ではない。ここで符号を取り違えると ⟨sy⟩\langle s_y\rangle の符号、すなわち歳差の向きが逆になる。回転の向きは ⟨sx⟩\langle s_x\rangle と ⟨sy⟩\langle s_y\rangle の位相差で決まるので、両方を同じ規約で計算し切ることが大切である。

設問(5) 指定した方向を向くスピン状態

方針

「方向を指定する」条件は3成分の期待値の条件だが、規格化と全体位相の自由度を引くと独立な実パラメータは2つしかない。⟨sy⟩=0\langle s_y\rangle=0 で位相を落とし、⟨sz⟩\langle s_z\rangle で振幅比を決め、⟨sx⟩\langle s_x\rangle で符号を決める、という順に書くと過不足がない。

検算

θ=0\theta=0 で ∣χ⟩=∣ ⁣↑⟩|\chi\rangle=|\!\uparrow\rangle、θ=π\theta=\pi で ∣χ⟩=∣ ⁣↓⟩|\chi\rangle=|\!\downarrow\rangle となり、zz 軸の正負を向く状態に一致する。θ=π/2\theta=\pi/2 では ∣χ⟩=(∣ ⁣↑⟩+∣ ⁣↓⟩)/2=∣x+⟩|\chi\rangle=(|\!\uparrow\rangle+|\!\downarrow\rangle)/\sqrt2=|x_{+}\rangle で、設問(3)の結果と一致する。設問どうしがつながることを本文で一言指摘しておくとよい。

背景

一般には cos⁡(θ/2)∣ ⁣↑⟩+eiϕsin⁡(θ/2)∣ ⁣↓⟩\cos(\theta/2)|\!\uparrow\rangle+e^{i\phi}\sin(\theta/2)|\!\downarrow\rangle が方向 (sin⁡θcos⁡ϕ,sin⁡θsin⁡ϕ,cos⁡θ)(\sin\theta\cos\phi,\sin\theta\sin\phi,\cos\theta) を向く状態であり、(θ,ϕ)(\theta,\phi) が Bloch 球の極座標に対応する。本問は ϕ=0\phi=0 の場合にあたる。設問(4)の結果は、この描像では θ=π/2\theta=\pi/2 の点が球の赤道上を角速度 ω\omega で走ることに相当する。

失点しやすい点

半角 θ/2\theta/2 を θ\theta と書いてしまう誤りが多い。スピノルの回転角が実空間の回転角の半分になるのはスピン 1/21/2 の本質的な性質で、θ\theta のまま書くと θ=π/2\theta=\pi/2 で ∣x+⟩|x_{+}\rangle を再現できない。検算でここを必ず確かめたい。

解答

(1) ハミルトニアンの固有値

H=cB(100−1)\mathcal H=cB\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix} は対角行列なので、標準基底のベクトルがそのまま固有ベクトルになる。実際 H∣ ⁣↑⟩=cB(100−1)(10)=cB(10)=cB ∣ ⁣↑⟩, \mathcal H|\!\uparrow\rangle =cB\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix} =cB\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix} =cB\,|\!\uparrow\rangle, H∣ ⁣↓⟩=cB(100−1)(01)=−cB(01)=−cB ∣ ⁣↓⟩. \mathcal H|\!\downarrow\rangle =cB\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix} =-cB\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix} =-cB\,|\!\downarrow\rangle . したがって固有値は E↑=+cBE_{\uparrow}=+cB、E↓=−cBE_{\downarrow}=-cB である。

(2) sxs_x の固有値

sx=ℏ2(0110)s_x=\dfrac{\hbar}{2}\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix} の固有方程式は det⁡ ⁣(sx−λI)=∣−λℏ/2ℏ/2−λ∣=λ2−(ℏ2)2=0 \det\!\left(s_x-\lambda I\right) =\begin{vmatrix}-\lambda&\hbar/2\\ \hbar/2&-\lambda\end{vmatrix} =\lambda^{2}-\left(\frac{\hbar}{2}\right)^{2}=0 であるから λ=±ℏ2. \lambda=\pm\frac{\hbar}{2}.

(3) 正の固有値に対応する固有ベクトル

∣x+⟩=α∣ ⁣↑⟩+β∣ ⁣↓⟩|x_{+}\rangle=\alpha|\!\uparrow\rangle+\beta|\!\downarrow\rangle とおくと、sx∣x+⟩=ℏ2∣x+⟩s_x|x_{+}\rangle=\dfrac{\hbar}{2}|x_{+}\rangle は ℏ2(0110)(αβ)=ℏ2(βα)=ℏ2(αβ) \frac{\hbar}{2}\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix} \begin{pmatrix}\alpha\\ \beta\end{pmatrix} =\frac{\hbar}{2}\begin{pmatrix}\beta\\ \alpha\end{pmatrix} =\frac{\hbar}{2}\begin{pmatrix}\alpha\\ \beta\end{pmatrix} となり、α=β\alpha=\beta を与える。規格化条件 ∣α∣2+∣β∣2=1|\alpha|^{2}+|\beta|^{2}=1 より ∣α∣=1/2|\alpha|=1/\sqrt2 であり、全体の位相を実正にとれば ∣x+⟩=12(∣ ⁣↑⟩+∣ ⁣↓⟩)=12(11). |x_{+}\rangle=\frac{1}{\sqrt2}\bigl(|\!\uparrow\rangle+|\!\downarrow\rangle\bigr) =\frac{1}{\sqrt2}\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}.

a) 時刻 tt の状態

∣ ⁣↑⟩|\!\uparrow\rangle、∣ ⁣↓⟩|\!\downarrow\rangle はエネルギー固有状態なので、時間発展はそれぞれ位相因子 e−iEt/ℏe^{-iE t/\hbar} を掛けるだけでよい。∣ψ(0)⟩=∣x+⟩|\psi(0)\rangle=|x_{+}\rangle より ∣ψ(t)⟩=e−iHt/ℏ∣x+⟩=12(e−icBt/ℏ∣ ⁣↑⟩+e+icBt/ℏ∣ ⁣↓⟩)=12(e−iωt/2e+iωt/2), |\psi(t)\rangle =e^{-i\mathcal Ht/\hbar}|x_{+}\rangle =\frac{1}{\sqrt2}\left( e^{-icBt/\hbar}|\!\uparrow\rangle +e^{+icBt/\hbar}|\!\downarrow\rangle\right) =\frac{1}{\sqrt2}\begin{pmatrix}e^{-i\omega t/2}\\[2pt] e^{+i\omega t/2}\end{pmatrix}, ここで ω=2cB/ℏ\omega=2cB/\hbar である。

b) sxs_x の期待値

∣ψ(t)⟩=12(a, b)T|\psi(t)\rangle=\dfrac{1}{\sqrt2}(a,\,b)^{\mathsf T}、a=e−iωt/2a=e^{-i\omega t/2}、b=e+iωt/2b=e^{+i\omega t/2} と書くと ⟨sx⟩=ℏ2⋅12(a∗b∗)(0110)(ab)=ℏ4(a∗b+b∗a)=ℏ4(eiωt+e−iωt), \langle s_x\rangle =\frac{\hbar}{2}\cdot\frac12 \begin{pmatrix}a^{*}&b^{*}\end{pmatrix} \begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix} \begin{pmatrix}a\\ b\end{pmatrix} =\frac{\hbar}{4}\left(a^{*}b+b^{*}a\right) =\frac{\hbar}{4}\left(e^{i\omega t}+e^{-i\omega t}\right), すなわち ⟨sx⟩=ℏ2cos⁡ωt=ℏ2cos⁡ ⁣(2cBtℏ). \langle s_x\rangle=\frac{\hbar}{2}\cos\omega t =\frac{\hbar}{2}\cos\!\left(\frac{2cBt}{\hbar}\right).

c) sys_y と szs_z の期待値

同じ書き方で ⟨sy⟩=ℏ4(−i a∗b+i b∗a)=ℏ4(−ieiωt+ie−iωt)=ℏ4⋅2sin⁡ωt=ℏ2sin⁡ωt, \langle s_y\rangle =\frac{\hbar}{4}\left(-i\,a^{*}b+i\,b^{*}a\right) =\frac{\hbar}{4}\left(-i e^{i\omega t}+i e^{-i\omega t}\right) =\frac{\hbar}{4}\cdot 2\sin\omega t =\frac{\hbar}{2}\sin\omega t, ⟨sz⟩=ℏ4(∣a∣2−∣b∣2)=0. \langle s_z\rangle =\frac{\hbar}{4}\left(|a|^{2}-|b|^{2}\right)=0 .

d) 期待値の運動

期待値ベクトルは大きさ ℏ/2\hbar/2 を保ったまま xyxy 面内にとどまり、zz 軸のまわりを角振動数 2cB/ℏ2cB/\hbar で回転する(Larmor 歳差)。

期待値の方向が (sin⁡θ,0,cos⁡θ)(\sin\theta,0,\cos\theta) になる状態を ∣χ⟩=α∣ ⁣↑⟩+β∣ ⁣↓⟩,∣α∣2+∣β∣2=1 |\chi\rangle=\alpha|\!\uparrow\rangle+\beta|\!\downarrow\rangle, \qquad |\alpha|^{2}+|\beta|^{2}=1 とおく。まず ⟨sy⟩=ℏ2(−iα∗β+iβ∗α)=ℏ Im ⁣(β∗α)=0 \langle s_y\rangle=\frac{\hbar}{2}\left(-i\alpha^{*}\beta+i\beta^{*}\alpha\right) =\hbar\,\mathrm{Im}\!\left(\beta^{*}\alpha\right)=0 を要求すると β∗α\beta^{*}\alpha は実数であり、全体の位相を選んで α,β\alpha,\beta をともに実数にとれる。このとき ⟨sz⟩=ℏ2(α2−β2)=ℏ2cos⁡θ,α2+β2=1 \langle s_z\rangle=\frac{\hbar}{2}\left(\alpha^{2}-\beta^{2}\right) =\frac{\hbar}{2}\cos\theta, \qquad \alpha^{2}+\beta^{2}=1 から α2=1+cos⁡θ2=cos⁡2θ2,β2=1−cos⁡θ2=sin⁡2θ2 \alpha^{2}=\frac{1+\cos\theta}{2}=\cos^{2}\frac{\theta}{2}, \qquad \beta^{2}=\frac{1-\cos\theta}{2}=\sin^{2}\frac{\theta}{2} が決まる。さらに ⟨sx⟩=ℏ αβ=ℏ2sin⁡θ⟹αβ=12sin⁡θ=sin⁡θ2cos⁡θ2 \langle s_x\rangle=\hbar\,\alpha\beta=\frac{\hbar}{2}\sin\theta \quad\Longrightarrow\quad \alpha\beta=\frac{1}{2}\sin\theta=\sin\frac{\theta}{2}\cos\frac{\theta}{2} であり、0≤θ≤π0\le\theta\le\pi では右辺が非負なので α,β\alpha,\beta は同符号にとる。正の側を選ぶと ∣χ⟩=cos⁡θ2 ∣ ⁣↑⟩+sin⁡θ2 ∣ ⁣↓⟩. |\chi\rangle=\cos\frac{\theta}{2}\,|\!\uparrow\rangle +\sin\frac{\theta}{2}\,|\!\downarrow\rangle .

最終答

E↑=+cBE_{\uparrow}=+cB、E↓=−cBE_{\downarrow}=-cB。 sxs_x の固有値は ±ℏ/2\pm\hbar/2。 ∣x+⟩=12(∣ ⁣↑⟩+∣ ⁣↓⟩)|x_{+}\rangle=\dfrac{1}{\sqrt2}\bigl(|\!\uparrow\rangle+|\!\downarrow\rangle\bigr)。

∣ψ(t)⟩=12(e−icBt/ℏ∣ ⁣↑⟩+eicBt/ℏ∣ ⁣↓⟩)|\psi(t)\rangle=\dfrac{1}{\sqrt2}\bigl(e^{-icBt/\hbar}|\!\uparrow\rangle+e^{icBt/\hbar}|\!\downarrow\rangle\bigr)、 ⟨sx⟩=ℏ2cos⁡ωt\langle s_x\rangle=\dfrac{\hbar}{2}\cos\omega t、 ⟨sy⟩=ℏ2sin⁡ωt\langle s_y\rangle=\dfrac{\hbar}{2}\sin\omega t、 ⟨sz⟩=0\langle s_z\rangle=0(ω=2cB/ℏ\omega=2cB/\hbar)。 期待値は xyxy 面内で zz 軸まわりに角振動数 ω\omega で歳差する。

∣χ⟩=cos⁡θ2 ∣ ⁣↑⟩+sin⁡θ2 ∣ ⁣↓⟩|\chi\rangle=\cos\dfrac{\theta}{2}\,|\!\uparrow\rangle+\sin\dfrac{\theta}{2}\,|\!\downarrow\rangle(0≤θ≤π0\le\theta\le\pi、全体の位相は実正にとった)

第2問 — 力学:台車に吊るされた振り子のラグランジュ形式

方針

一般化座標を (q,θ)(q,\theta) にとり、質点の位置を qq と θ\theta で書いてから微分する、という順序を崩さない。ひもが伸び縮みしないという条件はこの座標の取り方の中にすでに入っているので、束縛力(張力・垂直抗力)は最後まで一度も現れない。これがラグランジュ形式を使う利点で、答案の冒頭に一言書いておくと方針が伝わる。

検算

pp の表式で x˙=q˙+lθ˙cos⁡θ\dot x=\dot q+l\dot\theta\cos\theta を使うと p=Mq˙+mx˙p=M\dot q+m\dot x となり、水平方向の全運動量そのものである。ラグランジアンから機械的に出てきた量が力学的に意味のある量に一致することは、TT の交差項を正しく書けたことの確認になる。m→0m\to0 とすれば p=Mq˙p=M\dot q、M→∞M\to\infty の極限では台車が動かず q˙→0\dot q\to0 となり、単振り子に帰着する。

失点しやすい点

質点の速度の xx 成分に台車の速度 q˙\dot q を足し忘れ、交差項 mlq˙θ˙cos⁡θml\dot q\dot\theta\cos\theta を落とすのが最も多い誤りである。この項が消えると設問(3)以降がすべて崩れる。また設問(2)で「エネルギーも保存する」と書くのは正しいが、問われているのは運動量なので、循環座標であることを根拠として明示する必要がある。

設問(4) 静止状態から放した後の運動

方針

a) は「p=0p=0 を1回積分して qq を θ\theta で消す」だけで終わる。運動方程式を解く必要はない。b) は微小振動なので、ラグランジアンを θ\theta、θ˙\dot\theta、q˙\dot q の2次形式に切り詰めてから変分するのが安全である。cos⁡θ\cos\theta を展開する前に運動方程式を作ると、後で落とすべき高次項の判断が難しくなる。

2つの結果の整合

a) の楕円の水平半軸は Ml/(M+m)Ml/(M+m)、b) の周期は長さ leff=Ml/(M+m)l_{\mathrm{eff}}=Ml/(M+m) の単振り子の周期 2πleff/g2\pi\sqrt{l_{\mathrm{eff}}/g} と同じ形である。すなわち、台車が動けることの効果は「有効的なひもの長さが Ml/(M+m)Ml/(M+m) に縮む」と読める。独立に導いた2つの結果が同じ長さを与えることは強い検算になる。

極限による確認

M→∞M\to\infty では Tosc→2πl/gT_{\mathrm{osc}}\to2\pi\sqrt{l/g} となり、台車が固定された単振り子に一致する。楕円も xx 半軸が ll に近づいて円(振り子の円弧)になる。逆に M→0M\to0 では Tosc→0T_{\mathrm{osc}}\to0、楕円は鉛直線に潰れる。これは軽い台車が質点の水平運動を打ち消すように動き、質点がほぼ真上下にしか動けなくなることを表す。

失点しやすい点

b) で p=0p=0 の条件を使わずに2本の運動方程式を連立し、基準振動を求めようとすると計算が長くなる。この系は Ω=0\Omega=0(全体の一様並進)と Ω2=(M+m)g/(Ml)\Omega^{2}=(M+m)g/(Ml) の2つの基準振動をもち、静止から放した初期条件は前者を励起しない。答案では「p=0p=0 より重心が静止しているので、残るのは相対運動の1自由度だけ」と書いてから代入するとよい。

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第3問 — 物理数学:ベクトル解析の遠方展開と拡散方程式のフーリエ解

近似の根拠を書く

a) では「a/ra/r が小さいから展開する」だけでは不十分で、展開の変数 ε\varepsilon が実際に小さいこと、および a2/r2a^{2}/r^{2} の項が求める次数より高次であることを示す必要がある。a⃗⋅r⃗\vec a\cdot\vec r は a⃗\vec a の向きによって符号が変わるが、大きさは arar 以下なので ε\varepsilon の評価は向きによらない。ここを1行入れておくと「近似の根拠を書け」型の採点で満点になる。

物理的な意味

ϕ\phi は a⃗\vec a の位置にある単位点電荷(1/4πε01/4\pi\varepsilon_{0} を省いた形)の作るポテンシャルである。展開の第1項は原点に置いた点電荷、第2項は大きさ a⃗\vec a の双極子に対応し、これが多重極展開の最初の2項にあたる。c) で得た式に −1-1 を掛けたものが双極子の作る電場 E⃗={3(p⃗⋅r^)r^−p⃗}/r3\vec E=\{3(\vec p\cdot\hat r)\hat r-\vec p\}/r^{3} の形(r^=r⃗/r\hat r=\vec r/r)になっていることを確認しておくとよい。

検算

c) の結果を r⃗\vec r と a⃗\vec a が平行な場合(a⃗=ar^\vec a=a\hat r)で見ると、 a⃗/r3−3ar⃗/r4⋅(1/r)⋅r=−2ar^/r3\vec a/r^{3}-3a\vec r/r^{4}\cdot(1/r)\cdot r=-2a\hat r/r^{3} となり、(a⃗⋅r⃗)/r3=a/r2(\vec a\cdot\vec r)/r^{3}=a/r^{2} を rr で微分した −2a/r3-2a/r^{3} と一致する。次元も、grad\mathrm{grad} が長さの逆数を1つ増やすので [a/r3]=[a]/[r]3[a/r^{3}]=[a]/[r]^{3} で整合する。

失点しやすい点

b) を −1/r2-1/r^{2} と書いてベクトルにし忘れる誤りが多い。勾配はベクトルなので向き r^=r⃗/r\hat r=\vec r/r を必ず付ける。c) では grad(a⃗⋅r⃗)=a⃗\mathrm{grad}(\vec a\cdot\vec r)=\vec a が定ベクトルゆえに成り立つことを断らずに使うと、a⃗\vec a が場所によることを想定した採点で減点されうる。

設問(2) 拡散方程式のフーリエ変換による解

方針

拡散方程式は xx について定数係数なので、フーリエ変換で ∂x→ik\partial_{x}\to ik と置き換えると偏微分方程式が kk ごとの常微分方程式になる。答案では「2回の部分積分で (ik)2(ik)^{2} が出る」ことと「境界項が落ちるのは与えられた減衰条件のため」を明示することが求められている。ここを ∂x→ik\partial_x\to ik と書くだけで済ませると、示せという指示に答えたことにならない。

検算(規格化と極限)

得られた uu は分散 2Dt2Dt のガウス分布であり、 ∫−∞∞u dx=1\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}u\,dx=1 が任意の t>0t>0 で成り立つ。これは F(0,t)=∫u dx=F(0,0)e0=1F(0,t)=\int u\,dx=F(0,0)e^{0}=1 からも直ちに分かり、拡散では全量が保存することに対応する。t→+0t\to+0 では幅 2Dt→0\sqrt{2Dt}\to0、高さ →∞\to\infty で面積1のままなので、初期条件 δ(x)\delta(x) に戻る。

次元による確認

[D]=L2T−1[D]=\mathrm{L^{2}T^{-1}} なので x2/(4Dt)x^{2}/(4Dt) は無次元、1/4πDt1/\sqrt{4\pi Dt} は L−1\mathrm{L^{-1}} の次元をもつ。uu は δ(x)\delta(x) から出発したので L−1\mathrm{L^{-1}} でなければならず、整合している。拡散の広がりが Dt\sqrt{Dt}、すなわち時間の平方根でしか広がらないことも、この式から読み取れる。

失点しやすい点

逆変換の 1/2π1/2\pi を落とすと係数が 2π2\pi 倍ずれる。定義 F=∫ue−ikxdxF=\int u e^{-ikx}dx を採用した以上、逆変換は u=12π∫Feikxdku=\frac{1}{2\pi}\int Fe^{ikx}dk でなければならない。また平方完成のあと、積分路を複素平面上でずらしてよいかを気にする受験生がいるが、本問は公式が与えられているのでそのまま適用してよい。a=Dta=Dt が正であること(t>0t>0)だけは明記する。

物理数学:ベクトル解析の遠方展開と拡散方程式のフーリエ解の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 分野:第4問の内容を表す短い見出し

方針

最初の一手とその理由。

検算

数値代入・極限・境界値などによる確認。

失点しやすい点

よくある誤りと、答案に明示すべき前提。

分野:第4問の内容を表す短い見出しの途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 分野:第5問の内容を表す短い見出し

方針

最初の一手とその理由。

検算

数値代入・極限・境界値などによる確認。

失点しやすい点

よくある誤りと、答案に明示すべき前提。

分野:第5問の内容を表す短い見出しの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2025年度(全5問)

    力学:逆二乗引力中の軌道方程式と散乱条件 / 電磁気学:真空中の平面電磁波と境界条件からのスネルの法則 / 量子力学:無限井戸に置いた段差ポテンシャルの摂動論

  • 2024年度(全5問)

    力学 / 電磁気学 / 量子力学

  • 2023年度(全5問)

    力学:ばねで結ばれた二質点 / 電磁気学:導体球と球殻 / 量子力学:円周上の粒子

  • 2022年度(全5問)

    力学:二輪台車の駆動と荷重移動 / 電磁気学:金属への電磁波の入射と表皮効果 / 量子力学:一次元井戸の束縛状態と二重井戸の準位分裂

  • 2021年度(全5問)

    減衰振動と強制振動 / 回転コイルの起電力 / 調和振動子と摂動

  • 2020年度(このページ・全5問)

    量子力学:静磁場中のスピンと期待値の歳差運動 / 力学:台車に吊るされた振り子のラグランジュ形式 / 物理数学:ベクトル解析の遠方展開と拡散方程式のフーリエ解

2020年度の出題内容

全5問

この5問の分野は微分積分・解析1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問量子力学静磁場中のスピンと期待値の歳差運動別解(Heisenberg 描像)あり
第2問力学台車に吊るされた振り子のラグランジュ形式2つの結果の整合 / 極限による確認あり
第3問微分積分・解析ベクトル解析の遠方展開と拡散方程式のフーリエ解近似の根拠を書く / 検算(規格化と極限)あり
第4問第4問の内容を表す短い見出し—あり
第5問第5問の内容を表す短い見出し—あり

2020年度の解説には検算5件・失点しやすい点5件が付いています。

東北大学の公式過去問

公開年度範囲
平成26年〜令和7年(2014〜2025)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
院試hubの最終確認
2026-09-26
東北大学の公式過去問PDF