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大阪公立大 理学研究科 物理学専攻 物理 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野は電磁気学・回路1問、熱・統計力学1問、量子力学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 力学:円筒座標系と放物面上の質点

方針

r^,φ^\hat r,\hat\varphi が位置に依存することを最初に明示し、r^˙=φ˙φ^\dot{\hat r}=\dot\varphi\hat\varphi、φ^˙=−φ˙r^\dot{\hat\varphi}=-\dot\varphi\hat r の二本を導いてから機械的に微分するのが最短である。基底の微分を書かずに結果だけを並べると、示せという指示に対して途中が抜けたと見なされる。

φ^\hat\varphi 成分の二つの書き方

2r˙φ˙+rφ¨2\dot r\dot\varphi+r\ddot\varphi の形は、コリオリ項 2r˙φ˙2\dot r\dot\varphi と接線加速度 rφ¨r\ddot\varphi の和として力の分解に使いやすい。一方 1rddt(r2φ˙)\frac1r\frac{d}{dt}(r^2\dot\varphi) の形は、mr2φ˙m r^2\dot\varphi が zz 軸まわりの角運動量そのものなので、方位角方向の力が 00 のときに角運動量が保存することが一目で読み取れる。設問(4)以降ではこちらの表式が効く。

検算

等速円運動 r=constr=\text{const}、φ˙=const\dot\varphi=\text{const} とすると a⃗=−rφ˙2r^\vec a=-r\dot\varphi^2\hat r となり、大きさ v2/rv^2/r の向心加速度に一致する。また φ=const\varphi=\text{const} とすれば a⃗=r¨ r^+z¨ z^\vec a=\ddot r\,\hat r+\ddot z\,\hat z で、平面極座標を含む二次元の直線運動に帰着する。

設問(3) 高さを保つ円運動の速さ

方針

拘束面上の運動では、抗力の大きさを未知数 NN のまま残して二成分の式を立て、NN を消去するのが定石である。ここでは z^\hat z 成分から N/1+4a2r02=mgN/\sqrt{1+4a^2r_0^2}=mg が直ちに出るので、1+4a2r02\sqrt{1+4a^2r_0^2} という面倒な因子は最終結果に残らない。

別解

面の傾き角を α\alpha とすると tan⁡α=dz/dr=2ar0\tan\alpha=dz/dr=2ar_0 である。円錐振り子と同じ力の釣り合いから vc2/r0=gtan⁡αv_c^2/r_0=g\tan\alpha が成り立ち、vc2=2agr02=2gz0v_c^2=2agr_0^2=2gz_0 が一行で出る。答案では法線ベクトルを使う方法を書き、この見方を検算として添えるとよい。

検算と物理的な意味

vc=2gz0v_c=\sqrt{2gz_0} は、高さ z0z_0 を自由落下したときに得る速さに等しく、放物面の定数 aa を含まない。放物面では復元力が変位に比例するため、鉛直方向の角振動数 2ag\sqrt{2ag} が半径によらず一定になり、その結果として周期 2π/2ag2\pi/\sqrt{2ag} も z0z_0 によらない。これは放物面が等時性をもつことの表れである。

失点しやすい点

「水平方向の初速度」を与えるという条件から、円運動の速度が φ^\hat\varphi 方向であることを確認せずに vcv_c を求めると、z˙=0\dot z=0 の根拠が示されない。また n^\hat n の規格化因子を落とすと r^\hat r 成分と z^\hat z 成分で係数がずれ、aa が残った誤答になる。

設問(4)〜(6) 角運動量とエネルギーによる最下点

有効ポテンシャルとしての見方

z˙=0\dot z=0 とおいた式 E=Ueff(z)E=U_{\mathrm{eff}}(z)、 Ueff(z)=ah22mz+mgz U_{\mathrm{eff}}(z)=\frac{ah^2}{2mz}+mgz は、動径方向の運動を一次元問題に読み替えたときの有効ポテンシャルである。第1項は角運動量による遠心力障壁、第2項は重力である。UeffU_{\mathrm{eff}} は z→0z\to0 と z→∞z\to\infty で発散する下に凸な関数なので、EE が最小値より大きければ折り返し点はちょうど二つあり、質点はその間を往復する。

検算

v0→vc=2gz0v_0\to v_c=\sqrt{2gz_0} の極限で zmin⁡=v02/(2g)→z0z_{\min}=v_0^2/(2g)\to z_0 となり、二つの折り返し点が一致して設問(3)の等高円運動に戻る。逆に v0→0v_0\to0 では zmin⁡→0z_{\min}\to0 で、質点は頂点まで落ちる。また zmin⁡=v02/(2g)z_{\min}=v_0^2/(2g) は z0z_0 にも aa にも依らず、初速度だけで決まるという簡潔な形になっている。

失点しやすい点

r˙\dot r と z˙\dot z は拘束で結ばれているので独立ではない。運動エネルギーを m2(r˙2+r2φ˙2+z˙2)\frac{m}{2}(\dot r^2+r^2\dot\varphi^2+\dot z^2) と書いたまま r˙\dot r を残すと、指定どおり hh と円筒座標だけの表式にならない。z˙=2arr˙\dot z=2ar\dot r を使って一方を消すことを本文に明記する。また、二次方程式の二つの根のうちどちらが最下点かは、v0<vcv_0<v_c という条件から判定する必要がある。

設問(7)〜(10) 未定乗数を用いた定式化

方針

未定乗数法では拘束を最後まで代入せず、rr と zz を独立変数として扱ったうえで λ\lambda を未知数に加える。そのぶん式は増えるが、λ\lambda が抗力そのものを与えるという利点がある。λ\lambda を求めるときは、zz の式で λ\lambda を表し、rr の式で r¨\ddot r を消し、最後にエネルギー保存で r˙2\dot r^2 を消す、という順序が確実である。

λ\lambda の意味と検算

設問(3)の等高円運動で確かめる。vc2=2agr02v_c^2=2agr_0^2、z0=ar02z_0=ar_0^2 より h2=m2vc2r02=2agm2r04h^2=m^2v_c^2r_0^2=2agm^2r_0^4 であり、 E=ah22mz0+mgz0=amgr02+amgr02=2amgr02 E=\frac{ah^2}{2mz_0}+mgz_0=amgr_0^2+amgr_0^2=2amgr_0^2 となる。これを λ\lambda の分子に入れると mg+4aE+8a3h2m=mg(1+8a2r02+16a4r04)=mg(1+4a2r02)2 mg+4aE+\frac{8a^3h^2}{m} =mg\bigl(1+8a^2r_0^2+16a^4r_0^4\bigr) =mg\bigl(1+4a^2r_0^2\bigr)^2 であるから λ=mg\lambda=mg を得る。拘束力ベクトルは λ∇f=λ(−2arr^+z^)\lambda\nabla f=\lambda(-2ar\hat r+\hat z) で、その大きさは λ1+4a2r02\lambda\sqrt{1+4a^2r_0^2} である。設問(3)で得た抗力 N=mg1+4a2r02N=mg\sqrt{1+4a^2r_0^2} と一致し、λ\lambda が拘束力の強さを表す量であることが確認できる。

二通りの解法の使い分け

設問(4)〜(6)は保存量だけを使う初等的な解法で、答えを出す速さでは圧倒的に有利である。設問(7)〜(10)はあえて未定乗数を導入し、抗力を陽に求めながら同じ結論に到達する。試験としては「保存則で解ける問題を解析力学の言葉で書き直せるか」を見ているので、設問(10)では「z˙=0\dot z=0 から r˙=0\dot r=0 が従う」ことを一行書いて、設問(6)と同じ方程式に落ちたことを明示するとよい。

失点しやすい点

未定乗数法の右辺の符号は +λ ∂f/∂q+\lambda\,\partial f/\partial q と決めておかないと、λ\lambda の符号が逆になる。また ∂f/∂r=−2ar\partial f/\partial r=-2ar の −- を落とすと rr の式の拘束力項の向きが反転し、φ˙2=2ag\dot\varphi^2=2ag が導けない。λ\lambda の最終形では 1+4a2r2=1+4az1+4a^2r^2=1+4az と書き替えられることに触れておくと、拘束面の傾きが大きいほど拘束力が急速に小さくなる(分母が2乗で効く)ことが読み取りやすい。

解答

(1) 速度

円筒座標の基底ベクトルを直交座標成分で書くと r^=(cos⁡φ, sin⁡φ, 0),φ^=(−sin⁡φ, cos⁡φ, 0),z^=(0, 0, 1) \hat r=(\cos\varphi,\ \sin\varphi,\ 0),\qquad \hat\varphi=(-\sin\varphi,\ \cos\varphi,\ 0),\qquad \hat z=(0,\ 0,\ 1) であり、これらは φ\varphi だけの関数で dr^dφ=φ^,dφ^dφ=−r^,dz^dφ=0 \frac{d\hat r}{d\varphi}=\hat\varphi,\qquad \frac{d\hat\varphi}{d\varphi}=-\hat r,\qquad \frac{d\hat z}{d\varphi}=0 を満たす。質点とともに動く基底の時間微分は連鎖律により r^˙=φ˙ φ^,φ^˙=−φ˙ r^,z^˙=0 \dot{\hat r}=\dot\varphi\,\hat\varphi,\qquad \dot{\hat\varphi}=-\dot\varphi\,\hat r,\qquad \dot{\hat z}=0 となる。位置ベクトル s⃗=rr^+zz^\vec s=r\hat r+z\hat z を時間で微分すれば v⃗=r˙ r^+r r^˙+z˙ z^=r˙ r^+rφ˙ φ^+z˙ z^ \vec v=\dot r\,\hat r+r\,\dot{\hat r}+\dot z\,\hat z =\dot r\,\hat r+r\dot\varphi\,\hat\varphi+\dot z\,\hat z を得る。

(2) 加速度

v⃗\vec v をもう一度微分し、基底の時間微分を代入すると a⃗=r¨ r^+r˙ r^˙+(r˙φ˙+rφ¨)φ^+rφ˙ φ^˙+z¨ z^ \vec a=\ddot r\,\hat r+\dot r\,\dot{\hat r} +(\dot r\dot\varphi+r\ddot\varphi)\hat\varphi +r\dot\varphi\,\dot{\hat\varphi}+\ddot z\,\hat z =r¨ r^+r˙φ˙ φ^+(r˙φ˙+rφ¨)φ^−rφ˙2 r^+z¨ z^ =\ddot r\,\hat r+\dot r\dot\varphi\,\hat\varphi +(\dot r\dot\varphi+r\ddot\varphi)\hat\varphi -r\dot\varphi^2\,\hat r+\ddot z\,\hat z すなわち a⃗=(r¨−rφ˙2)r^+(2r˙φ˙+rφ¨)φ^+z¨ z^. \vec a=\bigl(\ddot r-r\dot\varphi^2\bigr)\hat r +\bigl(2\dot r\dot\varphi+r\ddot\varphi\bigr)\hat\varphi +\ddot z\,\hat z . さらに 1rddt(r2φ˙)=1r(2rr˙φ˙+r2φ¨)=2r˙φ˙+rφ¨ \frac1r\frac{d}{dt}\bigl(r^2\dot\varphi\bigr) =\frac1r\bigl(2r\dot r\dot\varphi+r^2\ddot\varphi\bigr) =2\dot r\dot\varphi+r\ddot\varphi であるから、φ^\hat\varphi 成分は 1rddt(r2φ˙)\dfrac1r\dfrac{d}{dt}(r^2\dot\varphi) とも書ける。

放物面 z=ar2z=ar^2 上の高さ z0z_0 に対応する半径を r0r_0 とすると z0=ar02z_0=ar_0^2、すなわち r0=z0/ar_0=\sqrt{z_0/a} である。面は滑らかなので、質点が受ける力は重力 −mgz^-mg\hat z と面に垂直な抗力だけである。拘束を f(r,z)=z−ar2=0f(r,z)=z-ar^2=0 と書くと ∇f=−2ar r^+z^⟹n^=−2ar r^+z^1+4a2r2 \nabla f=-2ar\,\hat r+\hat z \quad\Longrightarrow\quad \hat n=\frac{-2ar\,\hat r+\hat z}{\sqrt{1+4a^2r^2}} が単位法線である。抗力の大きさを N>0N>0 として運動方程式 ma⃗=−mgz^+Nn^m\vec a=-mg\hat z+N\hat n の r^\hat r 成分と z^\hat z 成分をとると m(r¨−rφ˙2)=−2arN1+4a2r2,mz¨=−mg+N1+4a2r2. m\bigl(\ddot r-r\dot\varphi^2\bigr)=-\frac{2arN}{\sqrt{1+4a^2r^2}}, \qquad m\ddot z=-mg+\frac{N}{\sqrt{1+4a^2r^2}} . 高さ z0z_0 を保つ円運動では r=r0r=r_0 一定、r˙=r¨=0\dot r=\ddot r=0、z=z0z=z_0 一定、z¨=0\ddot z=0 である。第2式より N1+4a2r02=mg \frac{N}{\sqrt{1+4a^2r_0^2}}=mg であり、これを第1式に代入すると −mr0φ˙2=−2ar0 mg⟹φ˙2=2ag. -mr_0\dot\varphi^2=-2ar_0\,mg \quad\Longrightarrow\quad \dot\varphi^2=2ag . 求める速さは vc=r0∣φ˙∣v_c=r_0|\dot\varphi| であるから vc=r02ag=z0a⋅2ag=2gz0. v_c=r_0\sqrt{2ag}=\sqrt{\frac{z_0}{a}}\cdot\sqrt{2ag}=\sqrt{2gz_0}.

(4) 角運動量の保存と値

質点に働く力は重力と抗力だけである。重力は −mgz^-mg\hat z で zz 軸に平行だから、zz 軸まわりのモーメントを持たない。抗力は軸対称な面の法線方向、すなわち r^\hat r と z^\hat z の張る平面内を向き、φ^\hat\varphi 成分を持たない。したがって zz 軸まわりの力のモーメントは常に 00 で、設問(2)の φ^\hat\varphi 成分の式から mrddt(r2φ˙)=0⟹h=mr2φ˙=一定 \frac{m}{r}\frac{d}{dt}\bigl(r^2\dot\varphi\bigr)=0 \quad\Longrightarrow\quad h=mr^2\dot\varphi=\text{一定} となる。射出時には高さ z0z_0、半径 r0=z0/ar_0=\sqrt{z_0/a} で速度が水平かつ面に沿う、すなわち φ^\hat\varphi 方向であるから φ˙=v0/r0\dot\varphi=v_0/r_0 であり h=mr02⋅v0r0=mr0v0=mv0z0a. h=mr_0^2\cdot\frac{v_0}{r_0}=mr_0v_0=mv_0\sqrt{\frac{z_0}{a}} .

(5) 運動エネルギーと力学的エネルギー

拘束 z=ar2z=ar^2 から r2=z/ar^2=z/a、z˙=2arr˙\dot z=2ar\dot r、したがって r˙2=z˙24a2r2=z˙24az,r2φ˙2=h2m2r2=ah2m2z \dot r^2=\frac{\dot z^2}{4a^2r^2}=\frac{\dot z^2}{4az}, \qquad r^2\dot\varphi^2=\frac{h^2}{m^2r^2}=\frac{ah^2}{m^2z} である。これを K=m2(r˙2+r2φ˙2+z˙2)K=\frac{m}{2}(\dot r^2+r^2\dot\varphi^2+\dot z^2) に代入すると K=m2(1+14az)z˙2+ah22mz. K=\frac{m}{2}\left(1+\frac{1}{4az}\right)\dot z^2+\frac{ah^2}{2mz}. 力学的エネルギーは E=K+mgzE=K+mgz で保存する。最高点 z=z0z=z_0 では z˙=0\dot z=0 だから E=ah22mz0+mgz0=a2mz0⋅m2v02z0a+mgz0=12mv02+mgz0. E=\frac{ah^2}{2mz_0}+mgz_0 =\frac{a}{2mz_0}\cdot\frac{m^2v_0^2z_0}{a}+mgz_0 =\frac12mv_0^2+mgz_0 .

(6) 最下点の高さ

最下点でも z˙=0\dot z=0 であるから、エネルギー保存の式は ah22mz+mgz=E⟺2mgz2−2Ez+ah2m=0 \frac{ah^2}{2mz}+mgz=E \quad\Longleftrightarrow\quad 2mgz^2-2Ez+\frac{ah^2}{m}=0 となり、 z=12mg(E±E2−2agh2). z=\frac{1}{2mg}\left(E\pm\sqrt{E^2-2agh^2}\right). ここに E=12mv02+mgz0E=\frac12mv_0^2+mgz_0 と h2=m2v02z0/ah^2=m^2v_0^2z_0/a を代入すると E2−2agh2=m2{(v022+gz0)2−2gv02z0}=m2(gz0−v022)2 E^2-2agh^2 =m^2\left\{\left(\frac{v_0^2}{2}+gz_0\right)^2-2gv_0^2z_0\right\} =m^2\left(gz_0-\frac{v_0^2}{2}\right)^2 であり、0<v0<vc=2gz00<v_0<v_c=\sqrt{2gz_0} より gz0−v02/2>0gz_0-v_0^2/2>0 だから z=12g{(v022+gz0)±(gz0−v022)}=z0 または v022g. z=\frac{1}{2g}\left\{\left(\frac{v_0^2}{2}+gz_0\right)\pm\left(gz_0-\frac{v_0^2}{2}\right)\right\} =z_0\ \text{または}\ \frac{v_0^2}{2g}. 大きい方の根 z0z_0 が最高点、小さい方が最下点である。

(7) ラグランジアンと拘束条件

円筒座標 (r,φ,z)(r,\varphi,z) を一般化座標にとると L=m2(r˙2+r2φ˙2+z˙2)−mgz,f(r,z)=z−ar2=0. L=\frac{m}{2}\bigl(\dot r^2+r^2\dot\varphi^2+\dot z^2\bigr)-mgz, \qquad f(r,z)=z-ar^2=0 . 拘束条件はホロノミックで、時間を陽に含まない。

(8) 未定乗数を含むラグランジュ方程式

λ\lambda を未定乗数として ddt∂L∂q˙−∂L∂q=λ∂f∂q(q=r,φ,z) \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial\dot q}-\frac{\partial L}{\partial q} =\lambda\frac{\partial f}{\partial q} \qquad(q=r,\varphi,z) とする。∂f/∂r=−2ar\partial f/\partial r=-2ar、∂f/∂φ=0\partial f/\partial\varphi=0、∂f/∂z=1\partial f/\partial z=1 であるから mr¨−mrφ˙2=−2arλ,ddt(mr2φ˙)=0,mz¨+mg=λ. m\ddot r-mr\dot\varphi^2=-2ar\lambda, \qquad \frac{d}{dt}\bigl(mr^2\dot\varphi\bigr)=0, \qquad m\ddot z+mg=\lambda . λ\lambda は拘束力(面からの抗力)の大きさを表す量で、φ\varphi の式は設問(4)の角運動量保存 mr2φ˙=hmr^2\dot\varphi=h そのものである。

(9) r˙2\dot r^2 と λ\lambda

エネルギー保存 E=m2(r˙2+r2φ˙2+z˙2)+mgzE=\frac{m}{2}(\dot r^2+r^2\dot\varphi^2+\dot z^2)+mgz に z˙=2arr˙\dot z=2ar\dot r、z=ar2z=ar^2、r2φ˙2=h2/(m2r2)r^2\dot\varphi^2=h^2/(m^2r^2) を代入すると E=m2(1+4a2r2)r˙2+h22mr2+mgar2 E=\frac{m}{2}\bigl(1+4a^2r^2\bigr)\dot r^2+\frac{h^2}{2mr^2}+mgar^2 であるから r˙2=1m(1+4a2r2)(2E−h2mr2−2mgar2). \dot r^2=\frac{1}{m\bigl(1+4a^2r^2\bigr)} \left(2E-\frac{h^2}{mr^2}-2mgar^2\right). 次に λ\lambda を求める。z=ar2z=ar^2 より z¨=2a(r˙2+rr¨)\ddot z=2a(\dot r^2+r\ddot r) であり、rr の式から r¨=rφ˙2−2arλm=h2m2r3−2arλm \ddot r=r\dot\varphi^2-\frac{2ar\lambda}{m}=\frac{h^2}{m^2r^3}-\frac{2ar\lambda}{m} である。これを λ=m(z¨+g)\lambda=m(\ddot z+g) に代入すると λ=2amr˙2+2ah2mr2−4a2r2λ+mg \lambda=2am\dot r^2+\frac{2ah^2}{mr^2}-4a^2r^2\lambda+mg すなわち (1+4a2r2)λ=mg+2ah2mr2+2amr˙2 \bigl(1+4a^2r^2\bigr)\lambda=mg+\frac{2ah^2}{mr^2}+2am\dot r^2 となる。ここに r˙2\dot r^2 の表式を入れると (1+4a2r2)2λ=(1+4a2r2)(mg+2ah2mr2)+2a(2E−h2mr2−2mgar2) \bigl(1+4a^2r^2\bigr)^2\lambda =\bigl(1+4a^2r^2\bigr)\left(mg+\frac{2ah^2}{mr^2}\right) +2a\left(2E-\frac{h^2}{mr^2}-2mgar^2\right) となり、右辺で 4a2r2mg4a^2r^2mg と −4mga2r2-4mga^2r^2、2ah2/(mr2)2ah^2/(mr^2) と −2ah2/(mr2)-2ah^2/(mr^2) がそれぞれ打ち消し合って λ=mg+4aE+8a3h2m(1+4a2r2)2=mg+4aE+8a3h2m(1+4az)2. \lambda=\frac{mg+4aE+\dfrac{8a^3h^2}{m}}{\bigl(1+4a^2r^2\bigr)^2} =\frac{mg+4aE+\dfrac{8a^3h^2}{m}}{(1+4az)^2}.

(10) 最下点の高さ

最下点では z˙=0\dot z=0 であり、z˙=2arr˙\dot z=2ar\dot r かつ r≠0r\neq0 だから r˙=0\dot r=0 である。(9) の r˙2\dot r^2 の分子を 00 とおき、r2=z/ar^2=z/a を用いると 2E−ah2mz−2mgz=0⟺2mgz2−2Ez+ah2m=0 2E-\frac{ah^2}{mz}-2mgz=0 \quad\Longleftrightarrow\quad 2mgz^2-2Ez+\frac{ah^2}{m}=0 となって設問(6)と同じ二次方程式に帰着する。したがって z=12mg(E−E2−2agh2)=v022g z=\frac{1}{2mg}\left(E-\sqrt{E^2-2agh^2}\right)=\frac{v_0^2}{2g} が最下点の高さで、設問(6)の結果と一致する。

最終答

vc=2gz0 (=r02ag, r0=z0/a)v_c=\sqrt{2gz_0}\ \left(=r_0\sqrt{2ag},\ r_0=\sqrt{z_0/a}\right)

h=mv0z0/ah=mv_0\sqrt{z_0/a}、E=12mv02+mgz0E=\dfrac12mv_0^2+mgz_0、最下点の高さは zmin⁡=v022gz_{\min}=\dfrac{v_0^2}{2g}

r˙2=1m(1+4a2r2)(2E−h2mr2−2mgar2)\dot r^2=\dfrac{1}{m(1+4a^2r^2)}\left(2E-\dfrac{h^2}{mr^2}-2mgar^2\right)、λ=mg+4aE+8a3h2/m(1+4az)2\lambda=\dfrac{mg+4aE+8a^3h^2/m}{(1+4az)^2}、最下点は z=v022gz=\dfrac{v_0^2}{2g}

第2問 — 電磁気学:直線電流の磁場・ベクトルポテンシャルと円形コイル

方針

ビオ・サバールの積分では、まず外積で向きを確定させ、すべての素片の寄与が同じ向きであることを述べてから大きさの積分に移る。z^×r^=φ^\hat z\times\hat r=\hat\varphi を使えば向きの議論は一行で済む。原始関数 z′/r2+z′2z'/\sqrt{r^2+z'^2} は z′=rtan⁡θz'=r\tan\theta の置換でも得られるが、微分して確かめる方が答案では短い。

検算

l1,l2→∞l_1,l_2\to\infty では cos⁡θ1,cos⁡θ2→1\cos\theta_1,\cos\theta_2\to1 なので B→μ0I/(2πr)B\to\mu_0I/(2\pi r) となり、設問(1)に一致する。また導線の中央を通る垂線上(l1=l2=ll_1=l_2=l)では B=μ0Il/(2πrr2+l2)B=\mu_0Il/\bigl(2\pi r\sqrt{r^2+l^2}\bigr) で、r≫lr\gg l なら B≃μ0I(2l)/(4πr2)B\simeq\mu_0I(2l)/(4\pi r^2) となり、長さ 2l2l の電流素片が単独でつくる磁場の式に帰着する。

失点しやすい点

有限長の直線電流は単独では電流の連続の式を満たさないので、これはあくまで回路の一部としての寄与である。答案で θ1,θ2\theta_1,\theta_2 を使うときは、どの点を頂点としてどの二方向のなす角かを必ず定義する。定義を書かずに cos⁡θ1\cos\theta_1 と書くと、補角をとった誤答と区別がつかない。

設問(3)(4) ベクトルポテンシャルからの導出

有理化がすべて

微分した形 r/s1s1+l1\dfrac{r/s_1}{s_1+l_1} をそのまま cos⁡θ\cos\theta に結びつけるのは難しい。分母分子に s1−l1s_1-l_1 を掛けて s12−l12=r2s_1^2-l_1^2=r^2 を使うと、rr が約分されて 1r(1−l1/s1)\frac1r(1-l_1/s_1) という見通しのよい形になる。下端側は s2−l2s_2-l_2 が分母なので s2+l2s_2+l_2 を掛ける。この二回の有理化が設問(4)の計算の山場である。

二つの道筋の違い

ビオ・サバールは電流素片ごとにベクトルを足すので外積の向きに注意が要る。一方ベクトルポテンシャルはスカラー量 AzA_z の積分に帰着し、被積分関数の次数も ∣R⃗∣−3|\vec R|^{-3} から ∣R⃗∣−1|\vec R|^{-1} に下がるので積分が楽になる。代わりに最後に回転をとる手間が加わる。どちらを選んでも同じ結果になることを確認させるのがこの大問の狙いである。

失点しやすい点

AzA_z には積分定数(ゲージの自由度)の任意性があり、対数の中身の定数倍は B⃗\vec B に効かない。有限長では log⁡\log の引数がそのまま定まるが、設問(5)のように無限長の極限をとると発散するので、定数の扱いを意識しておく必要がある。また円筒座標の回転で φ^\hat\varphi 成分が −∂Az/∂r-\partial A_z/\partial r になる符号を落とすと磁場の向きが逆になる。

設問(5)(6) 往復する無限長平行導線

発散項の打ち消し

無限長の1本の導線では AzA_z が対数発散する。これは無限に長い電流という理想化の副作用で、往復電流のように全電流が 00 になる配置では発散項が消えて有限のベクトルポテンシャルが定まる。答案では「l1,l2l_1,l_2 に依る項が2本で相殺する」ことを一行書いておくと、極限操作の正当性が示せる。

余弦定理を使う位置

∣∇Az∣|\nabla A_z| の計算で現れる u⃗1⋅u⃗2\vec u_1\cdot\vec u_2 は、三角形(導線1、導線2、点 Q)に余弦定理を当てるだけで消える。角度を導入して cos⁡\cos の加法定理で処理しようとすると煩雑になるので、内積のまま d2=r12+r22−2u⃗1⋅u⃗2d^2=r_1^2+r_2^2-2\vec u_1\cdot\vec u_2 を使うのが最短である。

検算

2本の導線を結ぶ線分の垂直二等分線上では r1=r2=ρr_1=r_2=\rho なので B=μ0Id/(2πρ2)B=\mu_0Id/(2\pi\rho^2) となる。これは二つの磁場が同じ向きに重なる場合の直接計算 2×μ0I2πρ×d/2ρ2\times\frac{\mu_0I}{2\pi\rho}\times\frac{d/2}{\rho} と一致する。また r1r2≫d2r_1r_2\gg d^2 の遠方では BB が距離の −2-2 乗で減衰し、単独の導線の −1-1 乗より速い。往復電流が遠方でほとんど磁場をつくらないという事実に対応する。

設問(7)(8) 直線導線と円形コイル

方針

磁束密度が xx だけの関数なので、コイル面を xx 一定の細い帯に切って積分する。帯の長さは円の弦の長さ 2a2−(x−d)22\sqrt{a^2-(x-d)^2} である。

積分の分解

a2−u2/(d+u)\sqrt{a^2-u^2}/(d+u) をそのまま置換積分すると三角関数の有理式になって長い。分子を a2−u2a^2-u^2 に直し、a2−u2=(a2−d2)+(d+u)(d−u)a^2-u^2=(a^2-d^2)+(d+u)(d-u) という恒等式で二つに割ると、片方は ∫du/a2−u2=π\int du/\sqrt{a^2-u^2}=\pi(区間全体で)という基本形に、もう片方は ∫dθ/(d+asin⁡θ)\int d\theta/(d+a\sin\theta) という定型の積分になる。d>ad>a という条件は、d2−a2\sqrt{d^2-a^2} が実数であることと、被積分関数が積分区間で発散しないことの両方に効いている。

検算

a≪da\ll d では d2−a2≃d(1−a2/2d2)\sqrt{d^2-a^2}\simeq d\bigl(1-a^2/2d^2\bigr) なので Φ≃μ0I1a2/(2d)\varPhi\simeq\mu_0I_1a^2/(2d) となり、コイルの面積 πa2\pi a^2 に中心での磁束密度 μ0I1/(2πd)\mu_0I_1/(2\pi d) を掛けた値に一致する。力も F≃μ0I1I2a2/(2d2)F\simeq\mu_0I_1I_2a^2/\bigl(2d^2\bigr) となり、磁気モーメント m=I2πa2m=I_2\pi a^2 の磁気双極子が受ける力 m ∂B/∂dm\,\partial B/\partial d と一致する。逆に d→ad\to a では FF が発散するが、これはコイルが導線に接する極限で、導線近傍の 1/x1/x 発散を拾うためである。

力を求める道具の選び方

コイル各部に I2 dl⃗×B⃗I_2\,d\vec l\times\vec B を積分しても答えは出るが、xx 依存の磁場を円周に沿って積分し直すことになり手間が増える。相互インダクタンス M(d)M(d) をいったん求めておけば、力は I1I2 dM/ddI_1I_2\,dM/dd の一行で済む。電流一定の条件では電源が仕事をするため、力は磁気エネルギーの −- 勾配ではなく ++ 勾配になる点に注意する。この符号を取り違えると引力と斥力が逆になる。

電磁気学:直線電流の磁場・ベクトルポテンシャルと円形コイルの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学:無限井戸型ポテンシャルと調和振動子

井戸を原点対称にとる利点

井戸が −L<x<L-L<x<L と原点対称なので、ハミルトニアンはパリティ演算子と交換する。したがって固有関数を偶関数と奇関数に分けて探してよく、境界条件も片側だけ課せば足りる。上の解答では和と差をとることでこの分解を機械的に実行した。井戸を 0<x<2L0<x<2L にとると ψ=Csin⁡(Nπx/(2L))\psi=C\sin(N\pi x/(2L)) の一本にまとまるが、パリティの議論が見えにくくなる。

NN と nn のずれ

この問題でいちばん多い失点が、量子数 NN と励起状態の番号 nn の取り違えである。nn は基底状態を 00 と数えるので N=n+1N=n+1 となる。設問(2)で En∝(n+1)2E_n\propto(n+1)^2 と与えられているのは、この対応を確認させるためである。設問(3)の答え nn 個も、N−1N-1 を nn に直して初めて設問(10)と揃う。

検算

幅 ℓ=2L\ell=2L の井戸の一般公式 E=ℏ2π2N2/(2mℓ2)E=\hbar^2\pi^2N^2/(2m\ell^2) に ℓ=2L\ell=2L を代入すると ℏ2π2N2/(8mL2)\hbar^2\pi^2N^2/(8mL^2) となり、上の結果に一致する。基底状態(n=0n=0)は節を持たず、nn が1増えるごとに節が1個増える。これは一次元の束縛状態に一般に成り立つ振動定理の内容である。

設問(4)(5) 生成消滅演算子とエネルギー固有値

交換関係を書く位置

X^\widehat X と P^\widehat P は交換しないので、a^†a^\widehat a^\dagger\widehat a を展開する際に「X^P^\widehat X\widehat P と P^X^\widehat P\widehat X をまとめて交換子にする」段を必ず書く。ここを −1/2-1/2 の由来として明示できるかどうかが採点の分かれ目で、この −1/2-1/2 が零点エネルギー ℏω/2\hbar\omega/2 に化ける。

昇降演算子の論理

[H^,a^†]=ℏωa^†[\widehat{\mathcal H},\widehat a^\dagger]=\hbar\omega\widehat a^\dagger さえ示せば、固有値が ℏω\hbar\omega 刻みで並ぶことは自動的に従う。下限があること(a^†a^\widehat a^\dagger\widehat a は半正定値なので E≥ℏω/2E\ge\hbar\omega/2)と、下限を与える状態が a^∣0⟩=0\widehat a|0\rangle=0 を満たすことを添えると、EnE_n がこれ以外にないことまで言える。問題では ∣n⟩|n\rangle の形が与えられているので、答案では帰納法の一行で十分である。

設問(6)(7) 基底状態と第 nn 励起状態の波動関数

与えられた等式の読み方

(x−βddx)f=−βg−1ddx(gf)\left(x-\beta\frac{d}{dx}\right)f=-\beta g^{-1}\frac{d}{dx}(gf) は、g−1g^{-1} と gg で挟むと演算子 x−β d/dxx-\beta\,d/dx が単なる微分に化けるという主張である。この形なら nn 回の合成で内側の g⋅g−1g\cdot g^{-1} が次々に相殺し、微分演算子の nn 乗だけが残る。帰納法の一段を書けば十分で、nn 回分を書き下す必要はない。

ψ02\psi_0^2 が現れる理由

f=ψ0=Cgf=\psi_0=Cg を入れると gf∝g2∝ψ02gf\propto g^2\propto\psi_0^2 となる。つまりロドリゲスの公式の「重み関数」が基底状態の確率密度そのものである。これは調和振動子の固有関数がガウス重みに関する直交多項式(エルミート多項式)で書けることの言い換えで、HnH_n が xx の nn 次多項式になることも dndxn(e−γx2)=Pn(x)e−γx2\frac{d^n}{dx^n}\bigl(e^{-\gamma x^2}\bigr)=P_n(x)e^{-\gamma x^2}(PnP_n は nn 次)から従う。

失点しやすい点

位置表示に移すときの符号を取り違えやすい。a^\widehat a では +imωP^→+βddx+\frac{i}{m\omega}\widehat P\to+\beta\frac{d}{dx}、a^†\widehat a^\dagger では −βddx-\beta\frac{d}{dx} である。a^\widehat a 側で符号を誤ると ψ0\psi_0 が発散する e+mωx2/2ℏe^{+m\omega x^2/2\hbar} になるので、規格化できない時点で気づける。

設問(8)〜(10) パリティと存在確率が 00 になる点

論証の型

設問(10)は「少なくとも nn 個」と「高々 nn 個」を別々の理由で示し、挟み撃ちにする形になっている。前者は与えられた性質(ロルの定理の一般化)を微分の回数だけ繰り返すこと、後者は HnH_n が nn 次多項式であることから従う。片方だけでは「一致する」の証明にならないので、答案では両方を明示する。

与えられた性質を使う前提の確認

性質の仮定は「実数値をとり、x→±∞x\to\pm\infty で 00 に収束する可微分関数」である。fjf_j がガウス因子を含むおかげでこの仮定が満たされることを一言書いておく。多項式だけなら無限遠で発散するので性質は使えず、ガウス因子が本質的である。

二つのポテンシャルをつなぐもの

無限井戸と調和振動子ではポテンシャルの形も固有値の並び方(∝(n+1)2\propto(n+1)^2 と ∝n+12\propto n+\frac12)も違うのに、節の個数はどちらも nn である。これは一次元の束縛状態について、エネルギーの低い順に 0,1,2,…0,1,2,\ldots 個の節が並ぶという振動定理の帰結で、ポテンシャルの詳細によらない。設問(3)と設問(10)を並べたのは、この普遍性に気づかせるためである。

検算

第1・第2励起状態の節の位置は、エルミート多項式 H1∝ξH_1\propto\xi、H2∝2ξ2−1H_2\propto2\xi^2-1(ξ=mω/ℏ x\xi=\sqrt{m\omega/\hbar}\,x)の零点に一致する。第2励起状態の節 x=±ℏ/(2mω)x=\pm\sqrt{\hbar/(2m\omega)} は、古典的な折り返し点 x=±5ℏ/(mω)x=\pm\sqrt{5\hbar/(m\omega)} よりずっと内側にあり、節が古典的に到達できる領域の内部に分布するという一般的な描像とも整合する。

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第4問 — 統計力学:一様重力下に置かれた理想気体

方針

ハミルトニアンが1粒子ごとに分離しているので、Z=zN/N!Z=z^N/N! に落として1粒子分配関数だけを計算すればよい。無限に長い容器なので高さ方向の積分は発散しそうに見えるが、ボルツマン因子 e−βmgze^{-\beta mgz} が指数的に減衰するため有限で、スケールハイト kBT/(mg)k_{\mathrm B}T/(mg) が実効的な気柱の高さを与える。重力が「柔らかいふた」の役割をしていると読める。

1/N!1/N! と h3Nh^{3N} の扱い

問題に与えられた ZZ の形に 1/N!1/N! と h−3Nh^{-3N} が含まれているので、答案でもこの規約を明示して使う。1/N!1/N! を落とすとギブスのパラドックスが生じ、設問(5)以降の示量性(FiF_i が NiN_i に比例すること)が壊れる。

検算

g→0g\to0 の極限で kBT/(mg)→∞k_{\mathrm B}T/(mg)\to\infty となり、実効的な体積が発散する。これは重力がなければ無限長の容器に気体が広がってしまうことを表しており、密度分布 n(z)n(z) も zz に依らない一様な値に近づく(ただし N/(A⋅∞)→0N/(A\cdot\infty)\to0)。逆に T→0T\to0 では気柱が底面に張り付く。

設問(3)(4) 内部エネルギーと熱容量

等分配定理の使い分け

運動量については p2/2mp^2/2m が2次形式なので1自由度あたり 12kBT\frac12k_{\mathrm B}T、高さについては mgzmgz が1次式なので 12kBT\frac12k_{\mathrm B}T ではなく kBTk_{\mathrm B}T になる。一般化等分配定理 ⟨z∂H∂z⟩=kBT\left\langle z\dfrac{\partial\mathcal H}{\partial z}\right\rangle=k_{\mathrm B}T に ∂H/∂z=mg\partial\mathcal H/\partial z=mg を入れれば ⟨mgz⟩=kBT\langle mgz\rangle=k_{\mathrm B}T が直ちに出る。nn 次の同次関数なら1自由度あたり kBT/nk_{\mathrm B}T/n という覚え方でも整理できる。

どの熱容量と比べているか

容器は無限に長いので、この気体は体積を固定した系ではない。温度を上げれば気柱は自由に上へ広がる。それでも C=52NkBC=\frac52Nk_{\mathrm B} が単原子分子理想気体の定圧熱容量 52NkB\frac52Nk_{\mathrm B} と数値的に一致するのは偶然ではなく、底面での圧力 P(0)=Nmg/AP(0)=Nmg/A が温度によらず一定に保たれるためである(設問(6)参照)。答案では、問題文の指示どおり定積熱容量 32NkB\frac32Nk_{\mathrm B} との差を述べたうえで、この点に触れると理解の深さが伝わる。

失点しやすい点

E=−∂ln⁡Z/∂βE=-\partial\ln Z/\partial\beta の計算で、ln⁡N!\ln N! が β\beta に依らないことと、zz の β\beta 依存性が β−5/2\beta^{-5/2} にまとまることを確認せずに項別に微分すると、AA や mgmg が残った誤答になりやすい。指数だけを取り出して −52ln⁡β-\frac52\ln\beta と書くのが安全である。

設問(5)(6) 小空間の自由エネルギーと圧力

局所平衡という考え方

ℓ≪kBT/(mg)\ell\ll k_{\mathrm B}T/(mg) という条件は、小空間の中で密度も位置エネルギーも一定とみなしてよいという意味である。この近似のもとで小空間は「重力のない体積 vv の理想気体」と同じ扱いになり、状態方程式 Piv=NikBTP_iv=N_ik_{\mathrm B}T がそのまま使える。重力の効果は、小空間ごとの NiN_i の違い(すなわち n(z)n(z) の高さ依存性)に押し込められている。

底面の圧力の意味

P(0)=Nmg/AP(0)=Nmg/A は、気柱全体の重さを底面積で割った値である。無限に長い容器では上端がないので、底が支えているのは気体の全重量であり、これは温度に依らない。TT を上げると密度分布は上へ広がるが、底面圧力は変わらないという点が、この系のいちばん見通しのよい性質である。

失点しやすい点

FiF_i に NimgzN_img z の項を書き落とすと、設問(6)の圧力は正しく出るのに設問(7)の化学ポテンシャルが zz 依存になってしまい、「zz によらず一定」が示せなくなる。問題文の「重力による位置エネルギーを一定として」は、この項を落としてよいという意味ではなく、mgzmgz を小空間内で定数として扱ってよいという意味である。

設問(7)(8) 化学ポテンシャルと力学的平衡

方針

設問(7)は ln⁡\ln の中の n(z)n(z) が e−βmgze^{-\beta mgz} を含み、その ln⁡\ln が −mgz-mgz を生んで、外側の +mgz+mgz とちょうど打ち消すという構造になっている。μ\mu が「内部の化学ポテンシャル ++ 外場の位置エネルギー」の和であり、平衡状態ではこの和が一定になる、というのが一般的な描像である。

力の釣り合いと分布の関係

静水圧平衡 dP/dz=−mgn(z)dP/dz=-mgn(z) と状態方程式 P=nkBTP=nk_{\mathrm B}T を組み合わせると dn/dz=−βmgndn/dz=-\beta mgn となり、指数分布 n(z)∝e−βmgzn(z)\propto e^{-\beta mgz} が一意に決まる。つまり設問(2)の統計力学的な導出と設問(8)の力学的な条件は同じ内容を別の言葉で述べたものである。答案では、両者が同じ分布を与えることを確認する形で書くと説得力がある。

ℓ\ell に関する条件がどこで効くか

e−βmgℓ≃1−βmgℓe^{-\beta mg\ell}\simeq1-\beta mg\ell という一次近似を使えるのは ℓ≪kBT/(mg)\ell\ll k_{\mathrm B}T/(mg) だからである。この条件がないと、小空間の中で密度が大きく変わるため「一様な理想気体」とみなす前提が崩れ、Ni=n(z)AℓN_i=n(z)A\ell も成り立たない。設問(5)から設問(8)まで一貫してこの条件が土台になっている。

失点しやすい点

平衡条件を問われて力の釣り合いだけを書くと、温度と化学ポテンシャルの一致に触れていないぶん説明が不足する。逆に μ\mu 一定だけを書いても、上下面の圧力差が重さを支えるという力学的な内容が抜ける。3つの条件を挙げ、そのうち力学的平衡を具体的に検証する、という順序で書くのが答案として無駄がない。

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年度別の解答例(4年度)

  • 2026年度(このページ・全4問)

    力学:円筒座標系と放物面上の質点 / 電磁気学:直線電流の磁場・ベクトルポテンシャルと円形コイル / 量子力学:無限井戸型ポテンシャルと調和振動子

  • 2025年度(全4問)

    二重振り子と剛体振り子 / 電場・双極子・誘電体球 / 磁束を囲む荷電粒子

  • 2024年度(全4問)

    連成振動と連成振り子 / 電磁波と定常電流の磁場 / 井戸型ポテンシャルとデルタ関数摂動

  • 2023年度(全4問)

    二体中心力と有効ポテンシャル / 同軸円電流の相互作用 / 大正準分布と光子気体

2026年度の出題内容

全4問

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学円筒座標系と放物面上の質点\hatφ 成分の二つの書き方 / 検算と物理的な意味あり
第2問電磁気学・回路直線電流の磁場・ベクトルポテンシャルと円形コイル有理化がすべて / 二つの道筋の違いあり
第3問量子力学無限井戸型ポテンシャルと調和振動子井戸を原点対称にとる利点 / N と n のずれあり
第4問熱・統計力学一様重力下に置かれた理想気体1/N! と h^3N の扱い / 等分配定理の使い分けあり

2026年度の解説には検算4件・失点しやすい点4件が付いています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 4問 → 2026年度 4問
2025年度の解答例

大阪公立大学の公式過去問

公開年度範囲
2023〜2025(博士前期・後期)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEFL/TOEIC スコア提出。
院試hubの最終確認
2026-06-03
大阪公立大学の公式過去問PDF