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金沢大 自然科学研究科 数物科学専攻 数学コース 数学 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問の分野は線形代数2問、微分積分・解析2問、位相・幾何1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数:固有値・固有空間とJordan標準形

方針

固有多項式は3次の行列式を展開してもよいが、λ3−(tr⁡A)λ2+(2次主小行列式の和)λ−det⁡A\lambda^{3}-(\operatorname{tr}A)\lambda^{2}+(\text{2次主小行列式の和})\lambda-\det A の形を使うと計算量が減り、検算にもなる。展開後は整数根を探して因数分解する。det⁡A=18\det A=18 なので、有理根は 1818 の約数に限られ、λ=2\lambda=2 がすぐ見つかる。

Jordan形が決まる仕組み

3次で固有値が 2,3,32,3,3 の場合、可能性は「対角化可能」と「固有値 33 に大きさ 22 のブロック」の2通りしかない。どちらかは dim⁡ker⁡(A−3I)\dim\ker(A-3I) だけで決まり、本問は 11 なので後者である。したがって ker⁡(A−3I)2\ker(A-3I)^{2} を計算しなくても形は確定し、あとは Jordan 鎖 p3↦p2↦0p_{3}\mapsto p_{2}\mapsto \mathbf{0} を1本作ればよい。

検算

固有値の和 2+3+3=8=tr⁡A2+3+3=8=\operatorname{tr}A、積 2⋅3⋅3=18=det⁡A2\cdot3\cdot3=18=\det A が一致する。さらに AP=PJAP=PJ は列ごとに確かめられ、第3列は Ap3=p2+3p3Ap_{3}=p_{2}+3p_{3} となることを直接計算すればよい。JJ の第3列が (0,1,3)t(0,1,3)^{t} であることと対応している。

失点しやすい点

(A−3I)p3=p2(A-3I)p_{3}=p_{2} の右辺を取り違えると JJ の 11 の位置が転置側に移ってしまう。また PP の列の順序を変えれば JJ の形も変わるので、答案では「この順序の基底に関する表示である」と明記する。固有空間は span⁡\operatorname{span} の形で集合として答えるのが安全である。

別の説明

最小多項式を使ってもよい。(A−2I)(A−3I)≠O(A-2I)(A-3I)\ne O かつ (A−2I)(A−3I)2=O(A-2I)(A-3I)^{2}=O なので最小多項式は (λ−2)(λ−3)2(\lambda-2)(\lambda-3)^{2} であり、重根をもつことから対角化不可能、しかも 33 に関する最大ブロックの大きさが 22 と分かる。固有空間の次元から判定する方法と結論は一致する。

解答

問題で与えられた3次実行列を AA とする。

(1) 固有値

AA について、跡が tr⁡A=8\operatorname{tr}A=8、2次の主小行列式の和が 2121、行列式が det⁡A=18\det A=18 であるから、固有多項式は det⁡(λI−A)=λ3−8λ2+21λ−18=(λ−2)(λ−3)2 \det(\lambda I-A) =\lambda^{3}-8\lambda^{2}+21\lambda-18 =(\lambda-2)(\lambda-3)^{2} となる。よって固有値は λ=2 (代数的重複度 1),λ=3 (代数的重複度 2) \lambda=2\ (\text{代数的重複度}\ 1),\qquad \lambda=3\ (\text{代数的重複度}\ 2) である。

(2) 固有空間

λ=2\lambda=2 について、A−2IA-2I を行基本変形すると連立方程式 {x+y−z=0y−2z=0 \begin{cases} x+y-z=0\\ y-2z=0 \end{cases} と同値になる。rank⁡(A−2I)=2\operatorname{rank}(A-2I)=2 であり、z=tz=t とおけば y=2t, x=−ty=2t,\ x=-t となるので W(2)=ker⁡(A−2I)={ t(−121) | t∈R }=span⁡{(−121)}. W(2)=\ker(A-2I) =\left\{\,t\begin{pmatrix}-1\\2\\1\end{pmatrix}\ \middle|\ t\in\mathbb{R}\,\right\} =\operatorname{span}\left\{\begin{pmatrix}-1\\2\\1\end{pmatrix}\right\}.

λ=3\lambda=3 について、A−3IA-3I を行基本変形すると {x−z=0y−z=0 \begin{cases} x-z=0\\ y-z=0 \end{cases} と同値になり、rank⁡(A−3I)=2\operatorname{rank}(A-3I)=2 である。したがって W(3)=ker⁡(A−3I)=span⁡{(111)} W(3)=\ker(A-3I) =\operatorname{span}\left\{\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix}\right\} であり、次元はいずれも 11 である。

(3) Jordan標準形と変換行列

固有値 33 は代数的重複度 22 に対し dim⁡W(3)=1\dim W(3)=1 であるから、AA は対角化できず、固有値 33 に対応する Jordan ブロックは大きさ 22 がひとつである。固有値 22 は単純固有値なので大きさ 11 のブロックとなる。

p1=(−1,2,1)tp_{1}=(-1,2,1)^{t}、p2=(1,1,1)tp_{2}=(1,1,1)^{t} とおき、(A−3I)p3=p2(A-3I)p_{3}=p_{2} を満たす p3p_{3} を求める。この連立方程式は {y−z=1x−z=−1 \begin{cases} y-z=1\\ x-z=-1 \end{cases} と同値であり、z=tz=t として p3=(t−1, t+1, t)tp_{3}=(t-1,\,t+1,\,t)^{t} が解である。t=0t=0 をとって p3=(−110) p_{3}=\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix} とする。このとき Ap1=2p1,Ap2=3p2,Ap3=p2+3p3 Ap_{1}=2p_{1},\qquad Ap_{2}=3p_{2},\qquad Ap_{3}=p_{2}+3p_{3} であるから、 P=(p1 p2 p3)=(−11−1211110),det⁡P=1≠0 P=(p_{1}\ p_{2}\ p_{3}) =\begin{pmatrix} -1&1&-1\\ 2&1&1\\ 1&1&0 \end{pmatrix},\qquad \det P=1\ne 0 は正則で、列ごとの関係をまとめると AP=PJAP=PJ、すなわち P−1AP=J=(200031003) P^{-1}AP=J= \begin{pmatrix} 2&0&0\\ 0&3&1\\ 0&0&3 \end{pmatrix} が成り立つ。なお det⁡P=1\det P=1 なので P−1P^{-1} は整数行列になる。

最終答

λ=2, 3\lambda=2,\ 3(33 は重複度 22 の重解)。

W(2)=span⁡{(−1,2,1)t}W(2)=\operatorname{span}\{(-1,2,1)^{t}\}、W(3)=span⁡{(1,1,1)t}W(3)=\operatorname{span}\{(1,1,1)^{t}\}(ともに1次元)。

P=(−11−1211110)P=\begin{pmatrix}-1&1&-1\\2&1&1\\1&1&0\end{pmatrix}、P−1AP=(200031003)P^{-1}AP=\begin{pmatrix}2&0&0\\0&3&1\\0&0&3\end{pmatrix}。

第2問 — 線形代数:像と核による直和分解

方針

ff は多項式関係 t2+t=t(t+1)t^{2}+t=t(t+1) を満たす。相異なる1次式の積が ff を消すので ff は対角化可能であり、固有値は 00 と −1-1 だけ、固有空間はそれぞれ ker⁡f\ker f と Im⁡f\operatorname{Im}f である。この見通しを最初に立てておくと、(2) は固有空間分解、(3) はその基底を並べるだけ、と一本の流れになる。

分解を思いつく道筋

P=−fP=-f とおくと P2=f2=−f=PP^{2}=f^{2}=-f=P となり、PP は射影である。射影があれば x=Px+(x−Px)\mathbf{x}=P\mathbf{x}+(\mathbf{x}-P\mathbf{x}) が Im⁡P⊕ker⁡P\operatorname{Im}P\oplus\ker P への分解を与える。本問の恒等式 x=(x+f(x))+(−f(x))\mathbf{x}=(\mathbf{x}+f(\mathbf{x}))+(-f(\mathbf{x})) はこれを書き下したものである。答案では射影に触れなくてもよいが、この見方を知っていると分解の形をその場で作れる。

仮定 Im⁡f≠{0}\operatorname{Im}f\ne\{\mathbf{0}\}、ker⁡f≠{0}\ker f\ne\{\mathbf{0}\} の役割

関係式 λ(λ+1)=0\lambda(\lambda+1)=0 だけからは「固有値は高々 0,−10,-1」しか言えない。2つの仮定は、ff が零写像でも同型写像でもないことを保証し、00 と −1-1 の両方が実際に固有値であること、および (3) の 1≤r≤n−11\le r\le n-1 を保証する。この2つを引用せずに「固有値は 00 と −1-1」と書くと不十分な答案になる。

行列表示による確認

(3) の基底に関する ff の表現行列は (−IrOOOn−r) \begin{pmatrix}-I_{r}&O\\O&O_{n-r}\end{pmatrix} である。実際この行列 BB は B2+B=OB^{2}+B=O を満たし、階数 rr、核の次元 n−rn-r となって仮定と整合する。逆に f2+f=0f^{2}+f=0 を満たす線形変換は、基底の取り替えでこの形にすべて帰着することが (3) の主張である。

失点しやすい点

(2) で「和が VV」だけを示して共通部分が {0}\{\mathbf{0}\} であることを落とすと直和が言えない。次元定理 dim⁡Im⁡f+dim⁡ker⁡f=n\dim\operatorname{Im}f+\dim\ker f=n は和が直和であることの証明にはならず、共通部分が {0}\{\mathbf{0}\} と併せて初めて使える。(3) では、2つの基底を合わせたものが VV の基底になる根拠として (2) を引くことを忘れない。

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第3問 — 微分積分:導関数が消えない関数の単調性

方針

小問が (1)→(2)→(3) の順に並んでいるのは、後の主張が前の主張を道具にするからである。(1) は Rolle の定理の対偶、(2) は中間値の定理と単射性の組み合わせ、(3) は (2) を部分区間 [a,x2][a,x_{2}] に適用する、という筋道になっている。(2) の主張が「区間の両端の値が最小値と最大値である」ことを述べている点を意識すると、(3) での使い方が見える。

別解(Darboux の定理)

導関数は連続とは限らないが中間値性をもつ(Darboux の定理)。f′f' は (a,b)(a,b) で 00 をとらないから符号が一定であり、もし f′<0f'<0 なら平均値の定理より f(b)−f(a)=f′(c)(b−a)<0f(b)-f(a)=f'(c)(b-a)<0 となって f(a)<f(b)f(a)<f(b) に反する。よって f′>0f'>0 が (a,b)(a,b) 全体で成り立ち、平均値の定理から直ちに狭義単調増加が従う。この道筋なら (3) を単独で示せるが、Darboux の定理を既知としてよいかは講義の範囲による。答案では本解のように (1)(2) を使う方が安全である。

仮定の使いどころ

微分可能性と f′≠0f'\ne0 は開区間 (a,b)(a,b) だけの仮定で、端点での微分可能性は要求されていない。Rolle の定理も平均値の定理も「閉区間で連続、開区間で微分可能」で足りるので、部分区間 [x1,x2]⊂[a,b][x_{1},x_{2}]\subset[a,b] に適用するときも仮定は自動的に引き継がれる。答案ではこの引き継ぎを一言添えるとよい。

失点しやすい点

「f′≠0f'\ne0 だから f′f' の符号は一定」を無条件に使う答案が多いが、これは f′f' の連続性か Darboux の定理が必要な主張で、断りなしに書くと減点される。(2) では「連続関数の閉区間上の像は閉区間」だけで止めると、その端点がちょうど f(a),f(b)f(a),f(b) であることが示されていない。単射性を使って区間の外側の値を排除する部分が (2) の核心である。

この問題が試していること

Rolle の定理・中間値の定理という基本定理を、仮定を確認しながら部分区間に正しく適用できるか、そして前の小問の結果を後の小問で道具として使えるか、という2点である。計算はまったく要らず、論証の順序と仮定の管理だけで完結する。

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第4問 — 微分積分:変数変換による平面上の広義重積分

方針

3小問は「(1) を作り、(2)(3) はそこへ帰着する」という一本道である。(1) では極座標と t=r2t=r^{2} の2段の置換で、円周方向の 2π2\pi と r dr=12dtr\,dr=\tfrac12dt の 12\tfrac12 が掛かって π\pi が出る。(2) は座標軸方向の伸縮だけなので対角行列のヤコビアン、(3) は平方完成で交差項を消して (2) の形にする。

一般形として覚える

正定値2次形式 Q(x,y)=αx2+2βxy+γy2Q(x,y)=\alpha x^{2}+2\beta xy+\gamma y^{2} を対称行列 S=(αββγ)S=\begin{pmatrix}\alpha&\beta\\\beta&\gamma\end{pmatrix} で表すと ∬R2f(Q(x,y)) dxdy=πdet⁡S \iint_{\mathbf{R}^{2}}f\bigl(Q(x,y)\bigr)\,dxdy=\frac{\pi}{\sqrt{\det S}} が成り立つ。実際 (2) は S=diag⁡(a,b)S=\operatorname{diag}(a,b) で det⁡S=ab\det S=ab、(3) は S=(1−12−121)S=\begin{pmatrix}1&-\frac12\\-\frac12&1\end{pmatrix} で det⁡S=34\det S=\frac34 であり、いずれも上の結果に一致する。答案でこの一般形を示してから代入してもよい。

別の変数変換

(3) は直交変換でも処理できる。x=u−v2, y=u+v2x=\dfrac{u-v}{\sqrt2},\ y=\dfrac{u+v}{\sqrt2}(45∘45^{\circ} の回転、ヤコビアンは 11)とすると x2−xy+y2=12u2+32v2 x^{2}-xy+y^{2}=\frac12u^{2}+\frac32v^{2} となり、(2) を a=12, b=32a=\frac12,\ b=\frac32 として適用すれば π/3/4=2π/3\pi/\sqrt{3/4}=2\pi/\sqrt3 を得る。これは対称行列 SS の固有値が 12,32\frac12,\frac32 であることに対応し、積が det⁡S=34\det S=\frac34 なので平方完成と同じ答えになる。計算量は平方完成の方が少ない。

検算

f(t)=e−tf(t)=e^{-t} は仮定を満たす(非負連続で ∫0∞e−tdt=1\int_{0}^{\infty}e^{-t}dt=1)。このとき (1) は Gauss 積分の2乗 (∫−∞∞e−x2dx)2=π\bigl(\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^{2}}dx\bigr)^{2}=\pi と一致し、(3) は ∬R2e−(x2−xy+y2)dxdy=2π3≈3.63 \iint_{\mathbf{R}^{2}}e^{-(x^{2}-xy+y^{2})}dxdy=\frac{2\pi}{\sqrt3}\approx3.63 となる。これは2次元 Gauss 積分の公式 2π/det⁡M2\pi/\sqrt{\det M}(ここで Q=12xtMxQ=\frac12\mathbf{x}^{t}M\mathbf{x}、M=(2−1−12)M=\begin{pmatrix}2&-1\\-1&2\end{pmatrix}、det⁡M=3\det M=3)と一致する。

失点しやすい点

ヤコビアンは絶対値をとること、変換が R2\mathbf{R}^{2} 全体から R2\mathbf{R}^{2} 全体への全単射であることの2点を書き落としやすい。また (3) では、2次形式が正定値でなければ広義積分が発散し得るので、判別式 (−1)2−4⋅1⋅1<0(-1)^{2}-4\cdot1\cdot1<0 あるいは平方完成の形から正定値性を確認しておく。広義積分の存在は、f≥0f\ge0 から近似の取り方によらないことを一言添えると論証が閉じる。

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第5問 — 複素解析:扇形の積分路とFresnel積分

なぜ偏角が π/4\pi/4 なのか

z=reiαz=re^{i\alpha} とすると z2=r2e2iαz^{2}=r^{2}e^{2i\alpha} であり、α=π/4\alpha=\pi/4 のとき z2=ir2z^{2}=ir^{2} となって e−z2=e−ir2e^{-z^{2}}=e^{-ir^{2}}、すなわち Fresnel 型の被積分関数がちょうど現れる。実軸上では Gauss 積分、斜辺上では Fresnel 積分、円弧上では 00 に消える量、という役割分担が扇形の角度で決まっている。角度を π/8\pi/8 などにすると (1) の書き換えが成り立たない。

(3) の評価の型

円弧の長さは πR/4\pi R/4 なので、∣e−z2∣≤1|e^{-z^{2}}|\le1 だけで押さえる素朴な評価(ML 評価)では上界が πR/4\pi R/4 となり発散してしまう。Re⁡(z2)=R2cos⁡2θ\operatorname{Re}(z^{2})=R^{2}\cos2\theta を残し、θ\theta が π/4\pi/4 に近づくと指数が 00 に近づくことを Jordan の不等式で処理するのが定石である。置換 φ=π/2−2θ\varphi=\pi/2-2\theta は、この不等式を使える形 sin⁡φ\sin\varphi に直すためのものである。

収束の意味

ここで示したのは lim⁡R→∞∫0Rcos⁡x2dx\displaystyle\lim_{R\to\infty}\int_{0}^{R}\cos x^{2}dx が存在することであって、絶対収束ではない。実際 x2=tx^{2}=t と置換すると ∫0∞cos⁡x2 dx=∫0∞cos⁡t2t dt \int_{0}^{\infty}\cos x^{2}\,dx=\int_{0}^{\infty}\frac{\cos t}{2\sqrt{t}}\,dt であり、∫0∞∣cos⁡t∣/(2t) dt=∞\int_{0}^{\infty}|\cos t|/(2\sqrt t)\,dt=\infty となる。この形からは Dirichlet の判定法でも収束が示せるが、値までは出ない。値を出すために複素積分を使う、という構成である。

失点しやすい点

C3,RC_{3,R} の向きを取り違えると (1) の符号が消え、(4) の答えの符号や偏角がずれる。閉曲線は反時計回りなので、斜辺は外向きではなく原点へ戻る向きである。また ∣e−z2∣=e−Re⁡(z2)|e^{-z^{2}}|=e^{-\operatorname{Re}(z^{2})} を e−∣z∣2e^{-|z|^{2}} と書く誤りが多い。(2) では「整関数だから内部に特異点がない」ことを一言書けば十分で、留数計算は不要である。

検算

得られた値は 2π/4≈0.6267\sqrt{2\pi}/4\approx0.6267 である。cos⁡\cos 側と sin⁡\sin 側が同じ値になるのは e−πi/4=(1−i)/2e^{-\pi i/4}=(1-i)/\sqrt2 の実部と虚部の絶対値が等しいためで、答えの形からすぐ確認できる。数値的にも ∫05cos⁡x2dx≈0.61\int_{0}^{5}\cos x^{2}dx\approx0.61、∫010cos⁡x2dx≈0.60\int_{0}^{10}\cos x^{2}dx\approx0.60 と、振動しながらゆっくりこの値に近づく。収束が遅いのは絶対収束でないことの反映である。

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第6問 — 位相:距離関数の取り替えと開集合

方針

ρ\rho の具体形にとらわれず、ρ=φ∘d\rho=\varphi\circ d と見て φ\varphi の性質だけで議論すると全体が短くなる。必要なのは、φ(0)=0\varphi(0)=0 かつ t>0t>0 で φ(t)>0\varphi(t)>0、狭義単調増加、劣加法的、という3条件である。この3条件を満たす φ\varphi に対して φ∘d\varphi\circ d は常に距離関数になり、さらに φ\varphi が 00 を 00 に写す連続な狭義単調増加全単射なら位相も変わらない。本問はその一般論の具体例である。

劣加法性の示し方

本解では s+t≤s+t\sqrt{s+t}\le\sqrt s+\sqrt t と (1+s)(1+t)≥1+s+t(1+\sqrt s)(1+\sqrt t)\ge1+\sqrt s+\sqrt t という初等的な2つの不等式だけを使った。別の道筋として、φ′(t)=12t (1+t)\varphi'(t)=\dfrac{1}{2\sqrt t\,(1+\sqrt t)} が t>0t>0 で減少することから φ\varphi は上に凸であり、φ(0)=0\varphi(0)=0 の凸性から劣加法性が従う、と述べてもよい。試験では前者の方が計算が短く、微分可能性の議論も要らない。

(3) を1行で片づける書き方

開球の対応 Bρ(x,ε)=Bd(x,(eε−1)2)B_{\rho}(x,\varepsilon)=B_{d}(x,(e^{\varepsilon}-1)^{2}) と Bd(x,δ)=Bρ(x,log⁡(1+δ))B_{d}(x,\delta)=B_{\rho}(x,\log(1+\sqrt\delta)) を先に示しておけば、開集合の定義に現れる半径を取り替えるだけで両方向が同時に片づく。逆関数 ψ(s)=(es−1)2\psi(s)=(e^{s}-1)^{2} を明示しておくと、ε\varepsilon に対する δ\delta が点 aa によらないことも見えるので、位相同値より強い一様同値まで示せている。

失点しやすい点

三角不等式の証明で、φ\varphi の単調性を使う段と劣加法性を使う段の2段階を混ぜてしまう答案が多い。d(x,z)≤d(x,y)+d(y,z)d(x,z)\le d(x,y)+d(y,z) をまず φ\varphi に代入し、そのあとで φ(s+t)≤φ(s)+φ(t)\varphi(s+t)\le\varphi(s)+\varphi(t) を使う、という順序を明示する。また (3) では両方向の包含を示す必要があり、片方だけでは「同値」の証明にならない。

この問題が試していること

距離を取り替えても位相が変わらないことがある、という基本的な感覚である。ρ\rho の値は dd と大きく異なるが、開集合は距離の値そのものではなく「各点に十分小さい球が入るか」だけで決まるので、位相は保たれる。定義に忠実な確認を求める設問である。

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年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度(全6問)

    Jordan標準形 / 交代化写像 / 指数関数の独立性

  • 2025年度(全6問)

    Jordan 標準形 / 左からの行列積 / 一様連続性

  • 2024年度(全6問)

    固有空間とJordan形 / 線形写像と核・像 / 最大値評価

  • 2023年度(全6問)

    線形代数:固有空間・広義固有空間とJordan標準形 / 線形代数:交換子で定まる線形写像の表現行列 / 微分積分:狭義凸性と零点の一意性

  • 2022年度(全6問)

    線形代数:固有空間・広義固有空間とジョルダン標準形 / 線形代数:1次分数変換が誘導する多項式空間の線形写像 / 解析:一様連続性の定義と判定

  • 2021年度(このページ・全6問)

    線形代数:固有値・固有空間とJordan標準形 / 線形代数:像と核による直和分解 / 微分積分:導関数が消えない関数の単調性

2021年度の出題内容

全6問

この6問の分野は線形代数2問・微分積分・解析2問・位相・幾何1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数固有値・固有空間とJordan標準形Jordan形が決まる仕組み / 別の説明あり
第2問線形代数像と核による直和分解分解を思いつく道筋 / 仮定 Imf\ne\{0\}、\ker f\ne\{0\} の役割あり
第3問微分積分・解析導関数が消えない関数の単調性別解(Darboux の定理) / 仮定の使いどころあり
第4問微分積分・解析変数変換による平面上の広義重積分一般形として覚える / 別の変数変換あり
第5問—複素解析:扇形の積分路とFresnel積分なぜ偏角が π/4 なのか / (3) の評価の型あり
第6問位相・幾何距離関数の取り替えと開集合劣加法性の示し方 / (3) を1行で片づける書き方あり

2021年度の解説には失点しやすい点6件・検算3件が付いています。

金沢大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2026年度(直近3年分)
公式の解答例
全年度・全科目で公開
院試hubの最終確認
2026-08-13
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