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ベクトル解析の院試対策|線積分・面積分の使い方

線積分と面積分の4種類を区別し、曲線・曲面のパラメータ表示から計算する手順を説明。保存場、Green・Stokes・発散定理の条件と向きを確認し、院試過去問へ戻るための学習順を示します。

ベクトル解析の院試対策では、まず積分する量を区別し、曲線や曲面をパラメータで表して計算できるようにします。そのうえで保存場、Greenの定理、Stokesの定理、発散定理を使うと、条件を確認しながら計算方法を選べます。

ここでは線積分・面積分と、それらを結ぶ定理を扱います。志望校の出題範囲を確認し、記事末尾の過去問例で必要な技能を照合してください。対応する解答・解説PDFには、ベクトル解析以外の数学や力学も含まれます。

線積分・面積分の4種類

スカラー関数をf、ベクトル場をFとします。問題文に「線積分」「面積分」とあっても、積分する式によって計算が変わります。特に、弧長の要素dsとベクトルの変位drを同じものとして扱わないでください。

積分する量式と意味向きを反転すると
曲線上のスカラー
∫Cf ds\int_C f\,ds
弧長を重みとして足す。線密度から質量を求める場合など。
値は変わらない。
ベクトル場の線積分
∫CF⋅dr\int_C \mathbf F\cdot d\mathbf r
接線方向成分を積分する。力の仕事や循環など。
進む向きを逆にすると符号が反転する。
曲面上のスカラー
∬Sf dS\iint_S f\,dS
面積を重みとして足す。面密度から質量を求める場合など。
法線の選び方で値は変わらない。
ベクトル場の流束
∬SF⋅n dS\iint_S \mathbf F\cdot\mathbf n\,dS
単位法線nの方向へ通過する成分を積分する。
単位法線を逆にすると符号が反転する。

スカラーの積分でも、fが負なら積分は負になり得ます。向きに依存しないことと、積分値が非負であることは別です。f=1の場合は、上のスカラー積分がそれぞれ曲線の長さと曲面の面積になります。

線積分:接線方向接線場 F曲線の進む向きを指定する流束:法線方向法線場 F面のどちら側を正にするか決める
ベクトル場の線積分では接線、流束では法線との内積を取ります。長さや面積を重みとして足すスカラーの積分には、この向きによる符号はありません。

パラメータ表示による直接計算

曲線:接線ベクトルと速さを分ける

曲線Cをr(t)、a≤t≤bで一度たどるように表し、v(t)=r′(t)と置きます。区間ごとに滑らかな曲線なら、折れ曲がる点で積分を分けます。始点・終点が問題の指定と一致するかを、t=aとt=bを代入して確認してください。

dr=v(t) dt,ds=∥v(t)∥ dtd\mathbf r=\mathbf v(t)\,dt,\qquad ds=\|\mathbf v(t)\|\,dt
∫Cf ds=∫abf(r(t)) ∥v(t)∥ dt,∫CF⋅dr=∫abF(r(t))⋅v(t) dt.\begin{aligned}\int_C f\,ds &=\int_a^b f(\mathbf r(t))\,\|\mathbf v(t)\|\,dt,\\ \int_C\mathbf F\cdot d\mathbf r &=\int_a^b\mathbf F(\mathbf r(t))\cdot\mathbf v(t)\,dt. \end{aligned}

スカラーの積分では速さの大きさ、ベクトル場の線積分では向きを持つ接線ベクトルを使います。ベクトル場Fの座標にもr(t)を代入します。接線だけをtの式にして、Fにxやyを残したまま積分しないようにしてください。

線分なら始点Aと終点Bからr(t)=(1−t)A+tB、0≤t≤1と置けます。円弧なら角度、らせんなら角度と高さの関係を使います。閉曲線かどうかだけで解法を決めず、まず指定された経路をこの形で表せるか確かめます。

曲面:外積の大きさと向きを分ける

曲面をr(u,v)、パラメータ領域Dで表し、面の内部で2本の接ベクトルが平行にならない正則な表示を使います。外積N=ru×rvは法線方向を持ち、その長さが面積の拡大率になります。

N=ru×rv,dS=∥N∥ du dv\mathbf N=\mathbf r_u\times\mathbf r_v,\qquad dS=\|\mathbf N\|\,du\,dv
∬Sf dS=∬Df(r(u,v)) ∥N∥ du dv,∬SF⋅n dS=∬DF(r(u,v))⋅N du dv.\begin{aligned}\iint_S f\,dS &=\iint_D f(\mathbf r(u,v))\,\|\mathbf N\|\,du\,dv,\\ \iint_S\mathbf F\cdot\mathbf n\,dS &=\iint_D\mathbf F(\mathbf r(u,v))\cdot\mathbf N\,du\,dv. \end{aligned}

流束の式はNが指定された法線と同じ向きの場合です。逆なら外積の順番を入れ替えるか、式にマイナスを付けます。面を重複して覆わないようにし、1つの表示で扱えない面は部分に分けて足します。

z=g(x,y)というグラフでは、r(u,v)=(u,v,g(u,v))からN=(−gu,−gv,1)となり、上向きです。このNを流束に使ったうえで、面積要素の平方根をもう一度掛けると二重に数えてしまいます。

曲面がh(x,y,z)=0で与えられた場合は、∇hが0でない点で法線を作れます。ただし∇hを単位化しても、dSや積分領域が決まったことにはなりません。曲面の表示を選び、∇hが指定された内向き・外向きのどちらを向くかも確認します。

保存場と領域の穴

領域全体でF=∇φとなる1価のポテンシャルφがあれば、領域内の曲線に沿った線積分は端点だけで決まります。ここでは数学の勾配としてF=∇φと書いています。物理で力F=−∇Uと定義する位置エネルギーUとは、符号の約束が異なります。

∫AB∇ϕ⋅dr=ϕ(B)−ϕ(A)\int_{A}^{B}\nabla\phi\cdot d\mathbf r=\phi(B)-\phi(A)

実際にφを求めるなら、Fの1成分を積分し、残りの変数の関数を積分定数として残します。その後、他の成分で微分して照合します。積分定数を数値1個に固定すると、必要な項を落とすことがあります。

回転が0であることから保存場だと結論するには、領域の条件も必要です。3次元の単連結な開領域上でFがC¹級なら、curl F=0はポテンシャルの存在を保証します。C¹級は、1階の偏微分が存在して連続であることです。

穴を除いた領域では、回転が0でも閉曲線の積分が0とは限りません。例えば、原点を除く平面で次の場を考えると、平面の回転に当たる偏微分の差は0ですが、原点を一周する単位円を反時計回りに進んだ線積分は2πです。

F(x,y)=(−yx2+y2,xx2+y2)\mathbf F(x,y)=\left(-\frac{y}{x^2+y^2},\frac{x}{x^2+y^2}\right)

この場は原点で定義されていません。円の内部まで含めてGreenの定理を適用することはできません。保存場と判断できない場合も、経路上でFが連続なら、曲線をパラメータ表示して直接積分できます。

Green・Stokes・発散定理の条件

以下は院試で使う標準的な十分条件です。曲線・面・境界は区分的に滑らかとし、ベクトル場の偏微分が必要な範囲で連続であることを確かめます。領域内に分母が0になる点がないかも、変換前に調べてください。

Greenの定理:平面の閉曲線から面積分へ

有界な平面領域Dと、その境界Cを考えます。PとQがDの閉包を含む開集合上でC¹級なら、正の向きにたどる境界について次の式を使えます。外側の境界は反時計回り、穴の境界は時計回りで、進むときに領域が左側になる向きです。

∮∂D(P dx+Q dy)=∬D(∂Q∂x−∂P∂y)dx dy\oint_{\partial D}(P\,dx+Q\,dy) =\iint_D\left(\frac{\partial Q}{\partial x}-\frac{\partial P}{\partial y}\right)dx\,dy

求める経路が開曲線なら、そのままこの式へ置き換えられません。直接積分するか、補助経路で閉じたうえで、補助経路の積分を向き込みで差し引きます。特異点を囲むときは、穴を開けた領域に変更すると新しい境界の積分も必要になります。

Stokesの定理:空間の閉曲線と曲面の境界

境界を含めてコンパクトな、向き付けられた曲面Sと、その境界∂Sを使います。FはSを含む開集合でC¹級とします。境界をたどる向きは、法線側から局所的に見て曲面が左側になるように取ります。平面の円板なら右手の親指を法線に向けたときの指の向きで、穴があれば穴の境界は逆回りです。複数の境界をすべて含めます。

∮∂SF⋅dr=∬S(∇×F)⋅n dS\oint_{\partial S}\mathbf F\cdot d\mathbf r =\iint_S(\nabla\times\mathbf F)\cdot\mathbf n\,dS

右辺は元のFの流束ではなく、回転curl Fの流束です。同じ境界を持つ計算しやすい面へ替える場合も、替えた面の上でFが定義され、必要な微分が連続かを確かめます。特異点を横切る面に替えることはできません。

発散定理:閉曲面の流束から体積積分へ

有界領域Vの境界全体∂Vを使い、nを外向き単位法線とします。FはVの閉包を含む開集合でC¹級とします。半球面なら底の円板、円柱の側面なら上下の蓋が境界に含まれているかを確認します。

∬∂VF⋅n dS=∭V∇⋅F dV\iint_{\partial V}\mathbf F\cdot\mathbf n\,dS =\iiint_V\nabla\cdot\mathbf F\,dV

求める面が境界の一部だけなら、閉曲面全体の流束を求め、補った面の流束を引く方法があります。その面の流束が0かどうかも、法線とFの内積で確かめます。内部に特異点がある場へ、この式をそのまま使うことはできません。

定理の条件を満たさなくても、求める曲線・曲面上で積分が定義できれば直接計算に戻れます。積分対象そのものに特異点がある場合は、区間を分けるだけで済むとは限らず、広義積分としての収束など別の確認が必要です。

定理の式と条件は、MITの多変数微積分講義ノートの発散定理(18.5節)、Stokesの定理(19.1〜19.2節)、Greenの定理(20.1節)で確認できます。

復習する順番と答案の点検

参考書を最初から読み直す前に、解けなかった問題でどの操作が止まったかを分けます。定理名は思い出せるのに面積分を書けないなら、外積とパラメータ表示へ戻ります。式は立つが積分できないなら、重積分の範囲や変数変換を復習します。

  1. 内積・外積と微分を確認する。曲線の微分から接線を、2本の接ベクトルの外積から法線を作ります。∇φはベクトル、div Fはスカラー、curl Fは3次元のベクトルになることと、成分での計算を確かめます。
  2. 積分を1つ設定する。曲線・曲面の表示、パラメータの範囲、代入した場、長さまたは面積要素を自力で書きます。計算に入る前に、変数と積分範囲がそろっているかを見ます。
  3. 向きだけを変えて検算する。同じ曲線を逆にたどる、同じ面の法線を逆にする、という変更で結果がどう変わるかを確認します。スカラー積分まで符号が変わったら、要素の取り方を見直します。
  4. 定理の条件を照合する。閉曲線・閉曲面か、場が必要な範囲で滑らかか、境界の向きは合うかを書きます。簡単な練習問題では直接計算と定理の両方を試し、同じ値になるかを確認します。
  5. 志望校の過去問へ戻る。設定、定理の選択、積分計算を分けて自分の答案と解説を照合します。違った箇所だけを復習し、解説を閉じてもう一度設定から書きます。

最終値だけが一致しても、法線と境界の符号を二度間違えて相殺した可能性は残ります。答案では、表示した曲線の進行方向、外積の向き、定理を適用する領域を順にたどれるか確認してください。積分の収束や交換が問題になる場合は、微積分・解析の定理条件も参照できます。

過去問で確かめる技能と販売範囲

九大システム情報科学府の2026年度公式過去問では、数学の第3問(PDF5ページ)に、らせん経路の線積分、閉曲面の流束、回転と閉経路積分が含まれます。経路を直接表す技能、閉曲面をそろえる技能、保存場の条件を説明する技能を、別々に確認できる題材です。

まず公式問題を読み、どの積分に当たるかと、使う表示・定理を自分で選んでください。その後、2026年度の既存解説で方針を確認し、詳細な途中計算が必要なら数学の解答・解説PDFの収録内容と見本を確認できます。

販売範囲は2022〜2026年度の数学全体で、線形代数、解析学・微積分、ベクトル解析、確率・統計の解説を含みます。ベクトル解析だけの問題集ではありません。受験時に選べる分野や試験時間は、受験年度の要項を九大数学ガイドと併せて確認してください。

電通大基盤理工の基礎数学にも、2025年度のStokesの定理、2024年度のGreenの定理・発散定理を扱う問題があります。基礎数学・力学ガイドで題材を選べます。対応する販売PDFは2022〜2026年度の基礎数学と力学で、専攻の全選択科目を含むものではありません。

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