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東北大 工学研究科 電気・情報系 基礎・専門科目 2023年3月実施 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問の分野は電磁気学・回路3問、情報1問、制御工学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 基礎・電磁気学:真空中を伝わる平面電磁波

方針

波動方程式の導出は「回転をもう一度とる」「ベクトル三重積の公式で ∇2\nabla^2 を出す」「発散が0であることを使って第1項を消す」の3手で終わる。電界と磁界で使う法則が入れ替わるだけなので、片方を丁寧に書き、もう片方は「同様にして」と書いても減点されない。ただし磁界側では ∇⋅H=0\nabla\cdot\boldsymbol{H}=0 を根拠として明示する必要がある。

失点しやすい点

真空中という条件を落として ∇⋅D=ρ\nabla\cdot\boldsymbol{D}=\rho のまま書くと、∇(∇⋅E)\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{E}) が消せず導出が止まる。また D\boldsymbol{D} と B\boldsymbol{B} のまま計算を進めると ε0μ0\varepsilon_0\mu_0 が現れないので、最初に E\boldsymbol{E} と H\boldsymbol{H} へそろえておく。時間微分と回転の交換は、場が tt と位置の滑らかな関数であることを一言添えれば足りる。

この設問が試していること

4式の暗記そのものではなく、真空という条件が式のどこを落とすかを理解しているかどうかである。導出の最後に「ε0μ0\varepsilon_0\mu_0 の逆数の平方根が伝搬速度になる」と一言書いておくと、設問2との接続が自然になる。

設問2 平面波の速度・回転・磁界振幅

検算

ε0=8.85×10−12\varepsilon_0=8.85\times10^{-12}、μ0=4π×10−7\mu_0=4\pi\times10^{-7} を入れると c=2.998×108c=2.998\times10^{8} m/s、μ0/ε0=376.7 Ω\sqrt{\mu_0/\varepsilon_0}=376.7\ \Omega となり、既知の値と一致する。また E0/H0E_0/H_0 が抵抗の次元をもつことを確かめれば、ε0/μ0\sqrt{\varepsilon_0/\mu_0} を逆数にしていないかを一目で点検できる。

電磁波としての整合性

E\boldsymbol{E} は xx 方向、H\boldsymbol{H} は yy 方向で、E\boldsymbol{E} と H\boldsymbol{H} は同位相である。ポインティングベクトル S=E×H\boldsymbol{S}=\boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H} は i×j=k\boldsymbol{i}\times\boldsymbol{j}=\boldsymbol{k} より +z+z 方向を向き、問題文が与えた「zz 軸方向に伝搬する」という設定と合う。答案の最後にこの1行を書くと、符号の取り違えがないことを採点者に示せる。

失点しやすい点

(c) で時間積分の定数を残したまま「HyH_y の振幅」と答えると、直流磁界が重畳した式になってしまう。振動解を求めているので定数は0とおく、と明記する。また ∂/∂t\partial/\partial t を ∂/∂z\partial/\partial z と取り違えると符号が反転し、S\boldsymbol{S} が −z-z を向く矛盾が生じる。(b) の結果をそのまま (c) に代入できるよう、(b) では j\boldsymbol{j} 成分であることを式に残しておく。

時間配分

設問1に12分、設問2に10分、見直し3分で足りる。設問1の3式だけでも部分点が大きいので、途中で詰まったら設問2の (a)(b) を先に片付けるとよい。

解答

微分形の4式

電荷も電流も存在しない真空中なので ρ=0\rho=0、i=0\boldsymbol{i}=\boldsymbol{0} であり、構成方程式は D=ε0E\boldsymbol{D}=\varepsilon_0\boldsymbol{E}、B=μ0H\boldsymbol{B}=\mu_0\boldsymbol{H} である。これを用いると ∇⋅E=0,∇⋅H=0, \nabla\cdot\boldsymbol{E}=0, \qquad \nabla\cdot\boldsymbol{H}=0, ∇×E=−μ0∂H∂t,∇×H=ε0∂E∂t \nabla\times\boldsymbol{E}=-\mu_0\frac{\partial\boldsymbol{H}}{\partial t}, \qquad \nabla\times\boldsymbol{H}=\varepsilon_0\frac{\partial\boldsymbol{E}}{\partial t} となる。左上がガウスの法則、右上が磁界に関するガウスの法則、左下がファラデーの法則、右下がアンペール--マクスウェルの法則である。

電界の波動方程式

ファラデーの法則の両辺の回転をとり、右辺で時間微分と空間微分の順序を交換する。 ∇×(∇×E)=−μ0∂∂t(∇×H)=−ε0μ0∂2E∂t2. \nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{E}) =-\mu_0\frac{\partial}{\partial t}(\nabla\times\boldsymbol{H}) =-\varepsilon_0\mu_0\frac{\partial^2\boldsymbol{E}}{\partial t^2}. 左辺に与えられた公式を適用し、∇⋅E=0\nabla\cdot\boldsymbol{E}=0 を使うと ∇×(∇×E)=∇(∇⋅E)−∇2E=−∇2E \nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{E}) =\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{E})-\nabla^2\boldsymbol{E} =-\nabla^2\boldsymbol{E} であるから、両辺の符号を払って ∇2E−ε0μ0∂2E∂t2=0 \nabla^2\boldsymbol{E}-\varepsilon_0\mu_0\frac{\partial^2\boldsymbol{E}}{\partial t^2}=0 を得る。これが (1A) である。

磁界の波動方程式

同じ手順をアンペール--マクスウェルの法則に対して行う。 ∇×(∇×H)=ε0∂∂t(∇×E)=−ε0μ0∂2H∂t2. \nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{H}) =\varepsilon_0\frac{\partial}{\partial t}(\nabla\times\boldsymbol{E}) =-\varepsilon_0\mu_0\frac{\partial^2\boldsymbol{H}}{\partial t^2}. ∇⋅H=0\nabla\cdot\boldsymbol{H}=0 より左辺は −∇2H-\nabla^2\boldsymbol{H} であるから ∇2H−ε0μ0∂2H∂t2=0 \nabla^2\boldsymbol{H}-\varepsilon_0\mu_0\frac{\partial^2\boldsymbol{H}}{\partial t^2}=0 となり、(1B) が導かれた。

(a) 伝搬速度

E=(E0sin⁡(kz−ωt), 0, 0)\boldsymbol{E}=(E_0\sin(kz-\omega t),\,0,\,0) は xx 成分だけをもち、その xx 成分は zz と tt だけの関数である。したがって ∇2Ex=∂2Ex∂z2=−k2E0sin⁡(kz−ωt),∂2Ex∂t2=−ω2E0sin⁡(kz−ωt). \nabla^2 E_x=\frac{\partial^2E_x}{\partial z^2}=-k^2E_0\sin(kz-\omega t), \qquad \frac{\partial^2E_x}{\partial t^2}=-\omega^2E_0\sin(kz-\omega t). これらを (1A) の xx 成分に代入すると (−k2+ε0μ0 ω2)E0sin⁡(kz−ωt)=0 \bigl(-k^2+\varepsilon_0\mu_0\,\omega^2\bigr)E_0\sin(kz-\omega t)=0 となる。すべての z,tz,t で成立するので括弧の中が0であり、ω2/k2=1/(ε0μ0)\omega^2/k^2=1/(\varepsilon_0\mu_0) を得る。位相速度は c=ω/kc=\omega/k であるから c=1ε0μ0. c=\frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}}.

(b) 電界の回転

E=(Ex,0,0)\boldsymbol{E}=(E_x,0,0) の回転を成分で書くと ∇×E=(∂Ez∂y−∂Ey∂z,  ∂Ex∂z−∂Ez∂x,  ∂Ey∂x−∂Ex∂y) \nabla\times\boldsymbol{E} =\left( \frac{\partial E_z}{\partial y}-\frac{\partial E_y}{\partial z},\; \frac{\partial E_x}{\partial z}-\frac{\partial E_z}{\partial x},\; \frac{\partial E_y}{\partial x}-\frac{\partial E_x}{\partial y} \right) である。Ey=Ez=0E_y=E_z=0 であり、また ExE_x は yy に依存しないので、第1成分と第3成分は0になる。残る第2成分は ∂Ex∂z=kE0cos⁡(kz−ωt) \frac{\partial E_x}{\partial z}=kE_0\cos(kz-\omega t) であるから、yy 軸方向の単位ベクトルを j\boldsymbol{j} として ∇×E=j kE0cos⁡(kz−ωt) \nabla\times\boldsymbol{E}=\boldsymbol{j}\,kE_0\cos(kz-\omega t) が示された。

(c) 磁界の振幅

ファラデーの法則 ∇×E=−μ0 ∂H/∂t\nabla\times\boldsymbol{E}=-\mu_0\,\partial\boldsymbol{H}/\partial t の yy 成分をとると kE0cos⁡(kz−ωt)=−μ0∂Hy∂t⟹∂Hy∂t=−kE0μ0cos⁡(kz−ωt). kE_0\cos(kz-\omega t)=-\mu_0\frac{\partial H_y}{\partial t} \quad\Longrightarrow\quad \frac{\partial H_y}{\partial t}=-\frac{kE_0}{\mu_0}\cos(kz-\omega t). tt で積分する。定常的に振動する解を考えるので積分定数は0とおいてよく、 Hy=kE0μ0ωsin⁡(kz−ωt). H_y=\frac{kE_0}{\mu_0\omega}\sin(kz-\omega t). ここで (a) の ω/k=c=1/ε0μ0\omega/k=c=1/\sqrt{\varepsilon_0\mu_0} を代入すると kμ0ω=1μ0c=ε0μ0μ0=ε0μ0 \frac{k}{\mu_0\omega}=\frac{1}{\mu_0 c}=\frac{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}}{\mu_0}=\sqrt{\frac{\varepsilon_0}{\mu_0}} となるので、HyH_y の振幅は ε0/μ0 E0\sqrt{\varepsilon_0/\mu_0}\,E_0 である。

最終答

c=1ε0μ0c=\dfrac{1}{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}}

HyH_y の振幅 =ε0μ0 E0=E0Z0=\sqrt{\dfrac{\varepsilon_0}{\mu_0}}\,E_0=\dfrac{E_0}{Z_0}(Z0=μ0/ε0Z_0=\sqrt{\mu_0/\varepsilon_0} は真空の波動インピーダンス)

第2問 — 基礎・電気回路:直列共振とフェーザによる回路設計

方針

「説明せよ」という問い方なので、RR の値と ω0\omega_0 の関係式を並べるだけでは足りない。同じ電流が全素子に流れるという条件から直列接続が決まること、同相という条件がリアクタンスの相殺を意味すること、この2段の論理を文章で書く。LL と CC は ω02LC=1\omega_0^2LC=1 を満たせばよく、個別の値は一意に定まらない点にも触れておくと丁寧である。

共振の見方

ω0=1/LC\omega_0=1/\sqrt{LC} は LL と CC に蓄えられるエネルギーが毎周期で完全にやりとりされ、電源からは抵抗の消費分だけを供給すればよい状態を表す。このとき電源から見た力率は1で、消費電力は VI=100×4=400VI=100\times4=400 W、すなわち I2R=42×25=400I^2R=4^2\times25=400 W と一致する。

失点しやすい点

RR を求めずに ω0=1/LC\omega_0=1/\sqrt{LC} だけを書くと、与えられた 44 A という数値を使っていないことになり大きく減点される。逆に R=25 ΩR=25\ \Omega だけを書いて共振条件を落とす答案も多い。問われているのは RR、LL、CC、ω0\omega_0 の4つが満たすべき条件であるから、両方を書く。

設問2 分流条件を満たす回路の設計

方針

「回路を描け」という設問だが、実際に決めるべきものは各枝のインピーダンスの複素数値である。Z˙=V˙/I˙\dot Z=\dot V/\dot I を先に計算し、実部を抵抗、虚部の符号でコイルかコンデンサかを判定する、という順で書けば図は自動的に決まる。位相「進み」が与えられているので I˙2\dot I_2 の偏角は +π/4+\pi/4、したがって Z˙2\dot Z_2 の偏角は −π/4-\pi/4 になる。

別解

枝2は直列でなくてもよい。抵抗 RR とコンデンサ CC の並列で Z˙=R⋅1jωCR+1jωC=R1+jωCR \dot Z=\frac{R\cdot\dfrac{1}{j\omega C}}{R+\dfrac{1}{j\omega C}}=\frac{R}{1+j\omega CR} とし、偏角 −arctan⁡(ωCR)=−π/4-\arctan(\omega CR)=-\pi/4 より ωCR=1\omega CR=1、大きさ R/2=252R/\sqrt{2}=25\sqrt{2} より R=50 ΩR=50\ \Omega、1/(ωC)=50 Ω1/(\omega C)=50\ \Omega とすれば Z˙=25−j25\dot Z=25-j25 になる。素子数はやはり2個なので、こちらでも条件を満たす。設計問題では解が一意でないので、選んだ構成のインピーダンス値を図に明記することが要求を満たす条件になる。

検算

Z˙2=25−j25\dot Z_2=25-j25 の大きさは 25225\sqrt{2} で、∣I˙2∣=100/(252)=22|\dot I_2|=100/(25\sqrt{2})=2\sqrt{2} A と一致する。電源から見た合成インピーダンスは Z˙=1006+j2=100(6−j2)40=15−j5 \dot Z=\frac{100}{6+j2}=\frac{100(6-j2)}{40}=15-j5 で、Z˙1∥Z˙2\dot Z_1\parallel\dot Z_2 を直接計算しても同じ値になる。皮相電力は 100×210=632100\times2\sqrt{10}=632 VA、有効電力は Re(V˙I˙‾)=100×6=600\mathrm{Re}(\dot V\overline{\dot I})=100\times6=600 W で、抵抗の消費 42×25+(22)2×25=400+200=6004^2\times25+(2\sqrt2)^2\times25=400+200=600 W と一致する。

失点しやすい点

位相進み π/4\pi/4 を I˙2=22e−jπ/4\dot I_2=2\sqrt{2}e^{-j\pi/4} と符号を逆にとると、枝2が誘導性になり答えが変わる。フェーザ図で I˙2\dot I_2 が第1象限にあることを図示しておけば、この取り違えは起こらない。また Z˙2\dot Z_2 を求めずに「コンデンサだけを入れる」と答える誤りも多いが、それでは位相が π/2\pi/2 進んでしまう。実部が残ることが抵抗を必要とする理由である。

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第3問 — 基礎・情報基礎:グラフの表現と探索アルゴリズム

方針

(a) は定義通りに書くだけだが、行と列がどの節点に対応するかを明記しないと採点できない。OO 記法の (b) では「なぜその位数になるか」を要素数の数え上げで1行示す。(c) はクラスカル法とプリム法のどちらでもよいが、答案には採用した枝と捨てた枝の理由(閉路になる)を並べておくと、手順を理解していることが伝わる。

解の一意性の確認

このグラフでは最小全域木は一意である。節点 aa は aa--bb(6)か aa--cc(7)でしか接続できず、小さい方を選ぶしかない。残り4節点を結ぶ3本は、重み 1,2,31,2,3 の3本が閉路を作らずに全部使えるので合計6が下限であり、これを実現する組合せは他にない。したがって合計は 6+6=126+6=12 が最小である。重みがすべて相異なるグラフでは最小全域木が一意になる、という一般則の確認にもなっている。

失点しやすい点

隣接リストの記憶量を O(m)O(m) と書く誤りが多い。孤立点があっても先頭ポインタは必要なので nn の項が消えない。また隣接行列を O(n2)O(n^2) ではなく O(n2/2)O(n^2/2) と書くと、OO 記法で定数倍を落とすという約束に反する。無向グラフの隣接行列は対称なので上三角だけを持つ実装もあるが、位数は変わらない。

設問2 二重にソートされた行列の O(n+m)O(n+m) 探索

なぜ右上隅なのか

起点の条件は「一方向へ進むと必ず増え、他方向へ進むと必ず減る」ことである。右上隅は左へ行くと減り、下へ行くと増えるのでこれを満たす。左下隅 (n,1)(n,1) も同じ性質をもつので、右へ進むと増え上へ進むと減る、として同じ計算量のアルゴリズムが書ける。一方、左上隅や右下隅は両方向が同じ向きに動くので、分岐で領域を1つに絞れず使えない。

他の解法との比較

各行に二分探索をかけると O(nlog⁡m)O(n\log m) で、nn と mm が同程度なら O(nlog⁡n)O(n\log n) となり O(n+m)O(n+m) より遅い。行列全体を線形に走査すれば O(nm)O(nm) である。O(n+m)O(n+m) という指定は、行と列を1本ずつ確定的に捨てる方式を要求している、と読むのが正しい。

答案の書き方

擬似コードを書いてもよいが、この設問は「概要を説明せよ」なので、起点・進み方・停止条件の3点と、計算量の見積もりを文章で書けば十分である。正当性の根拠(捨てる行や列に xx が存在しない理由)を1行添えると、単に手順を暗記しているのではないことが示せる。

時間配分

設問1は10分、設問2は10分で書ける。残りを見直しに回せるので、この問題を選んだ場合はもう1題に時間を厚く配分できる。基礎科目でどれを選ぶか迷ったときは、まずこの問題を確保してから残り1題を検討するのが安全である。

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第4問 — 基礎・数学:固有値・ジョルダン標準形・行列のべき

検算

固有値の和は 1+3+3=71+3+3=7 で AA の対角和 3+4+0=73+4+0=7 に一致し、積は 1⋅3⋅3=91\cdot3\cdot3=9 で det⁡A=9\det A=9 に一致する。固有ベクトルは AvA\boldsymbol{v} を直接計算して確かめる。A(1,0,−2)T=(1,0,−2)TA(1,0,-2)^{\mathsf{T}}=(1,0,-2)^{\mathsf{T}}、A(1,1,−1)T=(3,3,−3)TA(1,1,-1)^{\mathsf{T}}=(3,3,-3)^{\mathsf{T}} となり正しい。この2つの検算は30秒で済み、以降の3設問すべてを守る。

この設問が示している構造

代数的重複度 22 に対して幾何的重複度が 11 である、というのがこの問題の核心である。設問3で与えられる行列 BB が (2,3)(2,3) 成分に 11 をもつ上三角行列であることは、まさにこの 2×22\times2 のジョルダン細胞に対応している。設問1の段階で「対角化できない」と書いておくと、設問3の方針が自動的に決まる。

設問2 BnB^n の証明

00=10^0=1 という約束の意味

b=0b=0 の場合、n=1n=1 での (2,3)(2,3) 成分は 1⋅001\cdot 0^{0} となる。この約束がないと n=1n=1 での基底段が定義できない。答案では基底段を確認するときに「b0=1b^{0}=1(b=0b=0 を含む)」と一言添えると、約束を使ったことが伝わる。実際には設問3で b=3b=3 と定まるので、以降この配慮は不要になる。

別解

BB をブロックに分けて B=diag(a, J)B=\mathrm{diag}(a,\,J)、J=bI2+NJ=bI_2+N、N=(0100)N=\left(\begin{smallmatrix}0&1\\0&0\end{smallmatrix}\right) と書く。N2=ON^2=O かつ bI2bI_2 と NN は交換するので、二項定理から Jn=(bI2+N)n=bnI2+n bn−1N J^n=(bI_2+N)^n=b^nI_2+n\,b^{n-1}N となり、同じ結果が1行で出る。冪零行列の性質を使うこの書き方は、設問4の計算量を見積もるときにも役立つ。

失点しやすい点

帰納法の基底段を n=0n=0 から始めると、B0=IB^0=I の (2,3)(2,3) 成分 0⋅b−10\cdot b^{-1} が定義できず破綻する。問題が nn を正の整数と指定しているので、基底は n=1n=1 にとる。また Bk+1=BBkB^{k+1}=BB^k と左から掛けても同じ結果になるが、上三角行列では順序を変えると成分の見え方が変わるので、どちらで計算したかを明示する。

設問3 P−1AP=BP^{-1}AP=B を満たす a,b,Pa,b,P

方針

P−1AP=BP^{-1}AP=B をそのまま扱うのではなく、両辺に左から PP を掛けた AP=PBAP=PB の形にしてから列ごとに読むのが最短である。BB の (2,3)(2,3) 成分の 11 が、第3列に p2\boldsymbol{p}_2 を呼び込む。これが一般化固有ベクトルの定義そのものである。

解の非一意性

p1\boldsymbol{p}_1 は任意の 00 でない定数倍でよく、p3\boldsymbol{p}_3 は p2\boldsymbol{p}_2 の任意の定数倍を加えても条件を満たす。また p2\boldsymbol{p}_2 を cc 倍すると p3\boldsymbol{p}_3 も cc 倍しなければならない。したがって PP は一意ではない。答案には「PP は一意ではないが、以下はその一例である」と書き、選んだ PP について det⁡P≠0\det P\neq0 を確認しておく。

検算

P−1P=IP^{-1}P=I を成分計算で確かめるほか、AP=PBAP=PB の第3列だけを検算するのが速い。Ap3=A(0,1,0)T=(1,4,−1)TA\boldsymbol{p}_3=A(0,1,0)^{\mathsf{T}}=(1,4,-1)^{\mathsf{T}} であり、p2+3p3=(1,1,−1)T+(0,3,0)T=(1,4,−1)T\boldsymbol{p}_2+3\boldsymbol{p}_3=(1,1,-1)^{\mathsf{T}}+(0,3,0)^{\mathsf{T}}=(1,4,-1)^{\mathsf{T}} で一致する。ここを間違えると設問4が全滅するので、必ず確かめる。

設問4 AnA^n の計算

検算

n=1n=1 を代入すると 30=13^{0}=1 より第1項は (412−24−1−4−1−2)\left(\begin{smallmatrix}4&1&2\\-2&4&-1\\-4&-1&-2\end{smallmatrix}\right) で、第2項を加えると AA そのものに戻る。さらに対角和を見ると tr⁡An=3n−1{(6−2n)+(n+3)+(n−3)}+1=6⋅3n−1+1=2⋅3n+1 \operatorname{tr}A^n=3^{n-1}\bigl\{(6-2n)+(n+3)+(n-3)\bigr\}+1=6\cdot3^{n-1}+1=2\cdot3^n+1 となり、固有値のべきの和 1n+3n+3n1^n+3^n+3^n と一致する。n=2n=2 で直接 A⋅AA\cdot A を計算しても一致するので、時間があれば (1,1)(1,1) 成分だけでも確かめておく。

別解

ケーリー--ハミルトンの定理 A3−7A2+15A−9I=OA^3-7A^2+15A-9I=O を使い、xnx^n を (x−1)(x−3)2(x-1)(x-3)^2 で割った余り αx2+βx+γ\alpha x^2+\beta x+\gamma から An=αA2+βA+γIA^n=\alpha A^2+\beta A+\gamma I とする道もある。係数は x=1x=1 の値、x=3x=3 の値と微分値の3条件で決まる。

失点しやすい点

An=P−1BnPA^n=P^{-1}B^nP と PP と P−1P^{-1} を逆に書く誤りが最も多い。P−1AP=BP^{-1}AP=B の両辺を左から PP、右から P−1P^{-1} で挟むと A=PBP−1A=PBP^{-1} になる、と一度書いてから進めると防げる。また n⋅3n−1n\cdot3^{n-1} の項を n⋅3nn\cdot3^{n} と書き写す誤りも多いので、最後に n=1n=1 を代入する検算を必ず入れる。

時間配分

設問1に8分、設問2に4分、設問3に8分、設問4に8分で、検算を含めて30分弱である。P−1P^{-1} を掃き出し法で求めると数分縮められる。

基礎・数学:固有値・ジョルダン標準形・行列のべきの途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 専門・電気工学:PI制御系の安定性と単相変圧器

方針

(b) は「概形を描け」なので、実部の符号、実軸との交点、両端の挙動の3つを押さえれば十分である。分母を実部と虚部に分けてから有理化する順序を守ると、交点の ω=3\omega=\sqrt3 が虚部の因数 3−ω23-\omega^2 から即座に読める。(c) と (d) は、ナイキスト判別とラウス判別のどちらでも解けるが、(d) のように分子に零点が入ると軌跡の形が変わるので、ラウス表の方が速い。答案では (c) をナイキストで解き、末尾にラウスで確認した旨を1行書くと、(d) への移行が自然になる。

検算

(c) の境界 KI=12K_{\mathrm{I}}=12 では特性方程式が s3+4s2+3s+12=(s+4)(s2+3)=0s^3+4s^2+3s+12=(s+4)(s^2+3)=0 と因数分解でき、純虚数根 s=±j3s=\pm j\sqrt3 をもつ。持続振動の角周波数が 3\sqrt3 で、ナイキストの交点の角周波数と一致することが確認できる。(d) の境界 KP=6K_{\mathrm{P}}=6 でも s3+4s2+9s+36=(s+4)(s2+9)=0s^3+4s^2+9s+36=(s+4)(s^2+9)=0 となり、ω=3\omega=3 の持続振動が現れる。この因数分解は30秒でできるので、必ず入れておきたい。

失点しやすい点

ゲイン余裕を 20log⁡10(KI/12)20\log_{10}(K_{\mathrm{I}}/12) と符号を逆にする誤りが多い。定義は「位相交差点の利得を何 dB 上げると不安定になるか」なので、利得が小さいほど余裕は大きく、正の値になる。また (d) の定常速度偏差は、系が1形であることを確認せずに 1/(1+Kp)1/(1+K_p)(位置偏差の式)を使うと誤る。ランプ入力に対する偏差なので KvK_v を使う。

制御系としての意味

積分項は定常偏差を消すために入れるが、位相を 90∘90^\circ 遅らせるので安定余裕を食う。(c) の KI<12K_{\mathrm{I}}<12 はその代償を表している。(d) で KI=6KPK_{\mathrm{I}}=6K_{\mathrm{P}} と比を固定すると、比例項の零点 s=−6s=-6 が位相を戻すため、偏差を小さくする要求と安定性の要求が 5<KP<65<K_{\mathrm{P}}<6 という狭い窓で両立する。設計の窓が狭いこと自体がこの設問の主題である。

設問2 単相変圧器の定格・力率・効率

最大効率条件の位置づけ

「銅損=鉄損で効率最大」は暗記事項として使ってよいが、導出は上のように相加相乗平均1行で済む。答案では条件式を書いた上で「したがって銅損と鉄損が等しいときに最大」と結論する形にすると、公式の丸暗記でないことが示せる。定格出力時は銅損 450450 W が鉄損 7272 W より大きいので、最大効率点は定格より軽い負荷側(負荷率 0.40.4)にあることも図示せずに言える。

検算

負荷率 0.40.4 は Pi/Pc,rated=72/450=0.16=0.4\sqrt{P_{\mathrm{i}}/P_{\mathrm{c,rated}}}=\sqrt{72/450}=\sqrt{0.16}=0.4 で、定格容量に掛けると 10 kVA×0.4=410\ \mathrm{kVA}\times0.4=4 kVA、力率 1.01.0 なら出力 44 kW となって上の計算と一致する。また (c) の 162162 W は 450×0.62450\times0.6^2 で、0.62=0.360.6^2=0.36 という素直な数になるので、割り切れない値が出たら電流の取り違えを疑う。

失点しやすい点

(b) で皮相電力 200×30=6200\times30=6 kVA を出力と混同して力率を 11 とする誤りがある。与えられた 4.84.8 kW は有効電力である。(d) では力率が 1.01.0 に変わっている点を見落とし、0.80.8 のまま計算すると効率が 95.8 %95.8\ \% になってしまう。設問ごとに条件が置き換わることに注意する。

時間配分

設問2は計算だけなので10分で終わる。したがって設問1に20分を充てられる。専門科目でこの問題を選ぶ場合は、先に設問2を片付けて得点を確定させ、残り時間を設問1の (c)(d) に使うと取りこぼしが少ない。

専門・電気工学:PI制御系の安定性と単相変圧器の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 専門・計算機:ビット差分を数える順序回路

方針

Z(t)Z(t) は最大でも 1+3=41+3=4 なので3ビットに収まり、桁あふれを心配する必要がない。この上限を最初に確認しておくと、設問2で必要な加算器の段数が決まる。また F(t)F(t) は Z(t)Z(t) の値の偶奇ではなく、Z(t)Z(t) の3ビットに含まれる 11 の個数の偶奇である。Z=3=011Z=3=011 で F=0F=0 になるのがその違いを示す例で、ここを取り違えると t=3t=3 以降がすべてずれる。

検算

FF は1ビットなので、誤ると翌時刻の ZZ が 11 だけずれる。D(t)D(t) を先に5個まとめて求めてから FF を順に伝播させると、DD の計算ミスと FF の伝播ミスを分けて点検できる。D(t)D(t) は XX と YY の2進表記が何ビット異なるか(ハミング距離)なので、10進のまま引き算してはいけない。t=3t=3 の X=1X=1、Y=7Y=7 は差が 66 だが D=2D=2 である。

設問2 順序回路のブロック図

方針

「できるだけ少ない数の論理ゲート」という条件があるので、∣xi−yi∣|x_i-y_i| を減算器で作ってはいけない。ビットの絶対値差が排他的論理和に等しいことに気づけば1ゲートで済む。同様に「3ビットの 11 の個数」を数える回路も、条件分岐で作らず全加算器1個に帰着させる。この2つの読み替えが設問2の得点源である。

タイミングの書き方

Dフリップフロップの出力は時刻 tt の間 F(t−1)F(t-1) を保持し、入力には組合せ回路が計算した F(t)F(t) が与えられている。次のクロックの立ち上がりで F(t)F(t) が取り込まれ、時刻 t+1t+1 の F(t)F(t) になる。答案では、フリップフロップの出力側に F(t−1)F(t-1)、入力側に F(t)F(t) と明記し、初期値 F(0)=0F(0)=0 をリセット入力で与えることを1行添える。ここを書かないと「順序回路として動く」ことが示せない。

失点しやすい点

ZZ を3ビットとして扱う根拠を書かない答案が多い。D≤3D\le3 かつ F≤1F\le1 なので Z≤4Z\le4、したがって3ビットで足りる、と明示する。また F(t)F(t) を Z(t)Z(t) の最下位ビットと勘違いする誤りがある。F(t)F(t) は3ビットの総和の偶奇なので、z2⊕z1⊕z0z_2\oplus z_1\oplus z_0 である。

設問3 全加算器の最簡積和形

ss が簡単化できない理由

s=a⊕b⊕cis=a\oplus b\oplus c_i は、入力を1ビット変えると必ず出力が反転する関数である。したがってカルノー図では 11 のマスが市松模様に並び、隣接する 11 が存在しない。積和形では4項が下限になる。答案では「排他的論理和の3入力形なので隣接項がなく、これ以上簡単化できない」と一言添えると、簡単化を怠ったのではないことが伝わる。

coc_o の別形

co=ab∨(a⊕b)cic_o=ab\vee(a\oplus b)c_i と書くと、ss の中間結果 a⊕ba\oplus b を共用できるためゲート数は減る。ただしこれは積和形ではないので、最簡積和形を問われている本設問の答えにはならない。設問2のブロック図では共用形の方が実装として自然なので、両者を使い分ける。

時間配分

設問1に8分、設問2に12分、設問3に6分で、見直しに4分残る。設問2のブロック図が書けないときでも、設問1と設問3で半分以上は確保できる。専門科目でもう1題を電気工学にすると、計算中心と論理中心で頭の使い方が分かれるため、相互に見直しがしやすい組合せになる。

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年度別の解答例(7年度)

  • 2026年3月(全6問)

    電磁誘導 / 二端子対回路 / 全加算器とMUX

  • 2025年8月(全6問)

    平面電磁波の反射と透過 / 線路負荷と過渡応答 / JKフリップフロップ

  • 2025年3月(全6問)

    平行導体と接地平板 / 無損失伝送線路 / 3値入力論理

  • 2024年8月(全6問)

    静電界と静電容量 / 共振回路と変圧器 / 論理式の簡単化

  • 2024年3月(全12問)

    中空円筒導体とポインティングベクトル / 交流回路と結合インダクタ / 多数決関数と中立関数

  • 2023年8月(全12問)

    同心球導体の電界と静電容量 / 並列交流回路と結合インダクタ / リード・マラー標準形

  • 2023年3月実施(このページ・全6問)

    基礎・電磁気学:真空中を伝わる平面電磁波 / 基礎・電気回路:直列共振とフェーザによる回路設計 / 基礎・情報基礎:グラフの表現と探索アルゴリズム

2023年3月実施の出題内容

全6問

この6問の分野は電磁気学・回路3問・情報1問・制御工学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問電磁気学・回路真空中を伝わる平面電磁波この設問が試していること / 電磁波としての整合性あり
第2問電磁気学・回路直列共振とフェーザによる回路設計共振の見方あり
第3問情報グラフの表現と探索アルゴリズム解の一意性の確認 / なぜ右上隅なのかあり
第4問固有値・ジョルダン標準形・行列のべきこの設問が示している構造 / 0^0=1 という約束の意味あり
第5問制御工学PI制御系の安定性と単相変圧器制御系としての意味 / 最大効率条件の位置づけあり
第6問電磁気学・回路ビット差分を数える順序回路タイミングの書き方 / s が簡単化できない理由あり

2023年3月実施の解説には失点しやすい点6件・検算5件・答案の書き方1件が付いています。

東北大学の公式過去問

公開年度範囲
2023年8月〜2026年3月実施分(実施回ごとに筆記試験問題を掲載)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEFL iBT または TOEIC 公開テストのスコア提出(試験実施日から過去2年以内に受験したもの)。
院試hubの最終確認
2026-09-26
東北大学の公式過去問PDF