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阪大 基礎工学研究科 システム創成専攻 数理科学I 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(解説6項目)

解説6項目の分野は線形代数1項目、微分積分・解析1項目、微分方程式1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 微分積分:対数関数の展開と広義積分

微分積分:対数関数の展開と広義積分の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 線形代数:相似変換による三角化と行列のべき乗

設問1 P−1APP^{-1}AP の計算

相似変換の意味

B=P−1APB=P^{-1}AP は、AA が表す一次変換を、PP の列 p1,p2,p3\bm p_1,\bm p_2,\bm p_3 を基底として表し直した行列である。AP=PBAP=PB を列ごとに読むと、BB の第 jj 列は ApjA\bm p_j を基底 p1,p2,p3\bm p_1,\bm p_2,\bm p_3 で展開したときの係数になる。本問では Ap1=(α+β)p1,Ap2=p1+αp2,Ap3=p2+(α−β)p3 A\bm p_1=(\alpha+\beta)\bm p_1,\qquad A\bm p_2=\bm p_1+\alpha\bm p_2,\qquad A\bm p_3=\bm p_2+(\alpha-\beta)\bm p_3 が成り立つ。たとえば Ap2=(1,α+1,α)TA\bm p_2=(1,\alpha+1,\alpha)^{\mathsf T} は p1+αp2=(1,1,0)T+(0,α,α)T\bm p_1+\alpha\bm p_2=(1,1,0)^{\mathsf T}+(0,\alpha,\alpha)^{\mathsf T} に等しい。この見方を使うと、逆行列を求めずに BB が読み取れ、同時に p1\bm p_1 が固有値 α+β\alpha+\beta の固有ベクトルであることも分かる。

P−1P^{-1} の求め方

LL は対角成分より下に1つずれた位置だけに1を持つ行列で、L2L^2 は2つずれた位置 (3,1)(3,1) に1を持ち、L3=OL^3=O となる。べき零行列 LL に対しては、等比級数と同じ形の (I+L)−1=I−L+L2−⋯(I+L)^{-1}=I-L+L^2-\cdots が有限項で終わる。行基本変形で [P∣I][P\mid I] を [I∣P−1][I\mid P^{-1}] に変形しても同じ結果になる。

検算の仕方

最も確実なのは AP=PBAP=PB を直接比べることである。PBPB の各列は (α+β)p1(\alpha+\beta)\bm p_1、p1+αp2\bm p_1+\alpha\bm p_2、p2+(α−β)p3\bm p_2+(\alpha-\beta)\bm p_3 で、上の ApjA\bm p_j と一致する。補助的に、相似変換で変わらない量も比べられる。トレースは tr⁡A=(α+β−1)+α+(α−β+1)=3α=tr⁡B\operatorname{tr}A=(\alpha+\beta-1)+\alpha+(\alpha-\beta+1)=3\alpha=\operatorname{tr}B、行列式は α=2\alpha=2、β=1\beta=1 の場合に det⁡A=6=det⁡B=3⋅2⋅1\det A=6=\det B=3\cdot2\cdot1 となる。

逆行列の1成分を落とした場合

P−1P^{-1} の (3,1)(3,1) 成分を落として Q=(100−1100−11)Q=\begin{pmatrix}1&0&0\\-1&1&0\\0&-1&1\end{pmatrix} とすると、QAP=(α+β100α1−α−β−1α−β)QAP=\begin{pmatrix}\alpha+\beta&1&0\\0&\alpha&1\\-\alpha-\beta&-1&\alpha-\beta\end{pmatrix} となり、三角行列にならない。困ったことに、この誤った結果もトレースは 3α3\alpha のままなので、トレースだけの検算では見逃す。PQPQ を計算すると (3,1)(3,1) 成分が −1-1 となって II にならないことから、PP−1=IPP^{-1}=I の確認が必要だと分かる。

設問2 固有値

三角行列 TT の行列式は対角成分の積である。第1列で余因子展開すると、0でないのは (1,1)(1,1) 成分だけなので det⁡T=t11det⁡T′\det T=t_{11}\det T'(T′T' は右下の小行列)となり、これを繰り返せばよい。λI−B\lambda I-B も上三角行列なので、固有多項式が因数分解された形で手に入る。

固有多項式が相似変換で変わらないことは、解答の1行目の等式と det⁡(P−1)det⁡P=det⁡(P−1P)=1\det(P^{-1})\det P=\det(P^{-1}P)=1 から従う。固有値は固有多項式の根なので、AA の固有値は BB の対角成分として読み取れる。ただし固有ベクトルは変わり、BB の固有ベクトル v\bm v に対して AA の固有ベクトルは PvP\bm v である。たとえば BB の固有値 α+β\alpha+\beta の固有ベクトル e1\bm e_1 は、AA では Pe1=p1=(1,1,0)TP\bm e_1=\bm p_1=(1,1,0)^{\mathsf T} になる。

和と積による確かめ

固有値の和は 3α3\alpha で tr⁡A\operatorname{tr}A と一致し、積は α(α2−β2)\alpha(\alpha^2-\beta^2) で det⁡A\det A と一致するはずである。α=1\alpha=1、β=1\beta=1 では A=(110111001)A=\begin{pmatrix}1&1&0\\1&1&1\\0&0&1\end{pmatrix} で、第3行で展開すると det⁡A=1⋅(1⋅1−1⋅1)=0\det A=1\cdot(1\cdot1-1\cdot1)=0 となり、1⋅(1−1)=01\cdot(1-1)=0 と合う。

対角成分を固有値と読む誤り

AA の対角成分 α+β−1, α, α−β+1\alpha+\beta-1,\ \alpha,\ \alpha-\beta+1 を固有値と答えてしまう誤りがある。これらの和も 3α3\alpha になるのでトレースでは見分けられないが、α=2\alpha=2、β=1\beta=1 では対角成分が 2,2,22,2,2 であるのに対し、正しい固有値は 3,2,13,2,1 である。AA は三角行列ではないので、対角成分と固有値は一般に一致しない。det⁡(λI−A)\det(\lambda I-A) を元の AA のまま展開する方法も誤りではないが、β\beta を含む成分が多く、符号の誤りが入りやすい。設問1の結果を使うのが、この問題の流れに沿った解き方である。

設問3 対角化可能であるための条件

対角化可能性の判定基準

nn 次正方行列 AA が対角化可能であることは、AA の固有ベクトルからなる基底が存在することと同値である。P−1AP=ΛP^{-1}AP=\Lambda を列ごとに読むと Aqj=λjqjA\bm q_j=\lambda_j\bm q_j となるからである。これは次のようにも言い換えられる。各固有値 λ\lambda について、固有空間の次元 3−rank⁡(A−λI)3-\operatorname{rank}(A-\lambda I)(幾何的重複度)が固有多項式の根としての重複度(代数的重複度)に等しい。

相異なる固有値の固有ベクトルが一次独立であることは、次のように示せる。λ1,λ2,λ3\lambda_1,\lambda_2,\lambda_3 が相異なり c1v1+c2v2+c3v3=0c_1\bm v_1+c_2\bm v_2+c_3\bm v_3=\bm 0 とする。A−λ3IA-\lambda_3I を掛けると c1(λ1−λ3)v1+c2(λ2−λ3)v2=0c_1(\lambda_1-\lambda_3)\bm v_1+c_2(\lambda_2-\lambda_3)\bm v_2=\bm 0、さらに A−λ2IA-\lambda_2I を掛けると c1(λ1−λ3)(λ1−λ2)v1=0c_1(\lambda_1-\lambda_3)(\lambda_1-\lambda_2)\bm v_1=\bm 0 となる。v1≠0\bm v_1\ne\bm 0 と固有値が相異なることから c1=0c_1=0、同様にして c2=c3=0c_2=c_3=0 が出る。

β=0\beta=0 での別の示し方

幾何的重複度で確かめることもできる。β=0\beta=0 のとき rank⁡(A−αI)=rank⁡(P(B−αI)P−1)=rank⁡N=2\operatorname{rank}(A-\alpha I)=\operatorname{rank}\bigl(P(B-\alpha I)P^{-1}\bigr)=\operatorname{rank}N=2 なので、固有値 α\alpha の固有空間は 3−2=13-2=1 次元しかない。代数的重複度3に届かないので、固有ベクトルの基底は作れない。

α\alpha が条件に現れない理由

A−αI=(β−110β011−ββ−11−β)A-\alpha I=\begin{pmatrix}\beta-1&1&0\\ \beta&0&1\\ 1-\beta&\beta-1&1-\beta\end{pmatrix} は α\alpha を含まない。A=αI+MβA=\alpha I+M_\beta と書けば、Q−1AQ=αI+Q−1MβQQ^{-1}AQ=\alpha I+Q^{-1}M_\beta Q なので、AA が対角化可能であることと MβM_\beta が対角化可能であることは同値になる。単位行列の定数倍を足しても対角化可能性は変わらないため、答えに α\alpha は入らない。

固有ベクトルの具体形

β>0\beta>0 のとき、BB の固有ベクトルは固有値 α+β, α, α−β\alpha+\beta,\ \alpha,\ \alpha-\beta の順に (1,0,0)T(1,0,0)^{\mathsf T}、(1,−β,0)T(1,-\beta,0)^{\mathsf T}、(1,−2β,2β2)T(1,-2\beta,2\beta^2)^{\mathsf T} である。たとえば (B−αI)(1,−β,0)T=(β−β, 0, 0)T=0(B-\alpha I)(1,-\beta,0)^{\mathsf T}=(\beta-\beta,\,0,\,0)^{\mathsf T}=\bm 0 となる。PP を掛けると AA の固有ベクトル (1,1,0)T,(1, 1−β, −β)T,(1, 1−2β, 2β2−2β)T (1,1,0)^{\mathsf T},\qquad (1,\,1-\beta,\,-\beta)^{\mathsf T},\qquad (1,\,1-2\beta,\,2\beta^2-2\beta)^{\mathsf T} が得られる。β→0\beta\to0 で3本とも (1,1,0)T(1,1,0)^{\mathsf T} に近づき、一次独立性が失われることが見て取れる。

重複度だけで判断する誤り

「β=0\beta=0 のとき固有値が重なるから対角化できない」と書くだけでは証明にならない。αI\alpha I は固有値 α\alpha が3重でも対角行列そのものである。重なった固有値に対して、A≠αIA\ne\alpha I(本問では N≠ON\ne O)を示して初めて結論が出る。

逆向きの誤りとして、正則性と対角化可能性を混同し、「α≠±β\alpha\ne\pm\beta かつ α≠0\alpha\ne0」のような条件を書く答案がある。α=β=1\alpha=\beta=1 では固有値が 2,1,02,1,0 で、AA は正則でないが固有値が相異なるので対角化可能である。

設問4 NnN^n の計算

NN は基底を e3→e2→e1→0\bm e_3\to\bm e_2\to\bm e_1\to\bm 0 と1つずつずらす写像で、べき零行列と呼ばれる。成分で書くと Nik=1N_{ik}=1 となるのは k=i+1k=i+1 のときだけなので、 (N2)ij=∑kNikNkj=1  ⟺  j=i+2 (N^2)_{ij}=\sum_kN_{ik}N_{kj}=1\iff j=i+2 となり、(1,3)(1,3) 成分だけが1になる。同じ計算を続けると (Nm)ij=1  ⟺  j=i+m(N^m)_{ij}=1\iff j=i+m で、m≥3m\ge3 では 1≤i,j≤31\le i,j\le3 の範囲にそのような組が無いので Nm=ON^m=O である。

ケーリー・ハミルトンの定理からも同じ結論が出る。NN は対角成分が0の上三角行列なので固有多項式は λ3\lambda^3 で、N3=ON^3=O が成り立つ。一般に、対角成分が0の kk 次上三角行列は kk 乗で零行列になる。

設問5とのつながり

β=0\beta=0 では設問1の結果が B=αI+NB=\alpha I+N となる。これは固有値 α\alpha の3次のジョルダン細胞で、p3,p2,p1\bm p_3,\bm p_2,\bm p_1 は (A−αI)p3=p2(A-\alpha I)\bm p_3=\bm p_2、(A−αI)p2=p1(A-\alpha I)\bm p_2=\bm p_1、(A−αI)p1=0(A-\alpha I)\bm p_1=\bm 0 という鎖を作る。N3=ON^3=O のおかげで、(αI+N)n(\alpha I+N)^n の二項展開は N2N^2 の項で打ち切られる。

答えの書き漏れと位置の誤り

問題は n≥2n\ge2 を指定しているので、n=2n=2 の N2≠ON^2\ne O と n≥3n\ge3 の Nn=ON^n=O を分けて答える。「n≥2n\ge2 で Nn=ON^n=O」とすると n=2n=2 が誤りになる。また、N2N^2 の1を (3,1)(3,1) 成分に置く答案は、NN の転置 NTN^{\mathsf T} の2乗を計算している。N2e3=e1N^2\bm e_3=\bm e_1 という列の動きで確かめれば、1が第1行第3列にあることが分かる。

設問5 β=0\beta=0 での AnA^n

二項定理に可換性が要る理由

行列 X,YX,Y について (X+Y)2=X2+XY+YX+Y2(X+Y)^2=X^2+XY+YX+Y^2 であり、これが X2+2XY+Y2X^2+2XY+Y^2 に等しいのは XY=YXXY=YX のときに限る。一般の nn でも、可換なら積の順序を並べ替えて (X+Y)n=∑k(nk)Xn−kYk(X+Y)^n=\sum_k\binom nkX^{n-k}Y^k とまとめられる。αI\alpha I はどの行列とも可換なので、(αI+N)n(\alpha I+N)^n に二項定理が使える。さらに N3=ON^3=O によって和は3項で止まる。結果の行列は、対角線上に αn\alpha^n、1つ上に nαn−1n\alpha^{n-1}、2つ上に (n2)αn−2\binom n2\alpha^{n-2} が並ぶ。これがジョルダン細胞のべき乗の一般形で、kk 番目の上の対角線に (nk)αn−k\binom nk\alpha^{n-k} が並ぶ。

PP を使わない別解

ケーリー・ハミルトンの定理を AA に使う方法もある。β=0\beta=0 では AA の固有多項式が (λ−α)3(\lambda-\alpha)^3 なので、M=A−αIM=A-\alpha I とおくと M3=OM^3=O である。A=αI+MA=\alpha I+M に二項定理を使えば An=αnI+nαn−1M+n(n−1)2αn−2M2,M=(−1100011−11),M2=(1−111−11000) A^n=\alpha^nI+n\alpha^{n-1}M+\frac{n(n-1)}2\alpha^{n-2}M^2,\qquad M=\begin{pmatrix}-1&1&0\\0&0&1\\1&-1&1\end{pmatrix},\quad M^2=\begin{pmatrix}1&-1&1\\1&-1&1\\0&0&0\end{pmatrix} となる。成分ごとに足すと、解答の行列とすべて一致する。たとえば (1,1)(1,1) 成分は αn−nαn−1+(n2)αn−2=a−b+c\alpha^n-n\alpha^{n-1}+\binom n2\alpha^{n-2}=a-b+c である。この形は「AnA^n は I,M,M2I,M,M^2 の一次結合」という構造も見せている。

特殊な値での確かめ

n=1n=1 を形式的に代入すると c=0c=0、b=1b=1、a=αa=\alpha で、(α−1100α11−1α+1)\begin{pmatrix}\alpha-1&1&0\\0&\alpha&1\\1&-1&\alpha+1\end{pmatrix} となり、β=0\beta=0 の AA そのものに戻る。トレースは (a−b+c)+(a−c)+(a+b)=3a=3αn(a-b+c)+(a-c)+(a+b)=3a=3\alpha^n で、固有値 α\alpha が3重であることと合う。α=1\alpha=1、n=2n=2 では a=1a=1、b=2b=2、c=1c=1 から A2=(0111032−23)A^2=\begin{pmatrix}0&1&1\\1&0&3\\2&-2&3\end{pmatrix} となる。A=(0100111−12)A=\begin{pmatrix}0&1&0\\0&1&1\\1&-1&2\end{pmatrix} を実際に2乗すると、第2行は (0,1,1)+(1,−1,2)=(1,0,3)(0,1,1)+(1,-1,2)=(1,0,3) となり一致する。α=0\alpha=0 なら A=MA=M で、A2=M2≠OA^2=M^2\ne O、A3=OA^3=O である。SymPyで n=2,…,7n=2,\dots,7 の AnA^n を直接計算した結果も、解答の式と一致した。

起こりやすい誤り

N2N^2 の項を落として (αI+N)n=αnI+nαn−1N(\alpha I+N)^n=\alpha^nI+n\alpha^{n-1}N とすると、(1,3)(1,3) 成分が 00 になる。α=1\alpha=1、n=2n=2 なら正しくは 11 なので、上の直接計算と比べれば分かる。

もう一つは相似変換の向きの取り違えで、An=P−1(αI+N)nPA^n=P^{-1}(\alpha I+N)^nP と書く誤りである。B=P−1APB=P^{-1}AP から AA を表すと A=PBP−1A=PBP^{-1} であり、PP と P−1P^{-1} の位置が逆になる。n=1n=1 を代入して AA に戻るかを確かめれば、この誤りは見つかる。α\alpha が負や0の場合も式は同じで、αn−2\alpha^{n-2} の扱いだけを書き添えればよい。

解答

設問1 P−1APP^{-1}AP の計算

P=I+LP=I+L、L=(000100010)L=\begin{pmatrix}0&0&0\\1&0&0\\0&1&0\end{pmatrix} と書くと L3=OL^3=O なので、(I+L)(I−L+L2)=I+L3=I(I+L)(I-L+L^2)=I+L^3=I より P−1=I−L+L2=(100−1101−11). P^{-1}=I-L+L^2=\begin{pmatrix}1&0&0\\-1&1&0\\1&-1&1\end{pmatrix}. PP の列ベクトルを p1=(1,1,0)T\bm p_1=(1,1,0)^{\mathsf T}、p2=(0,1,1)T\bm p_2=(0,1,1)^{\mathsf T}、p3=(0,0,1)T\bm p_3=(0,0,1)^{\mathsf T} とする。AA の列を足し合わせて Ap1=(α+βα+β0),Ap2=(1α+1α),Ap3=(01α−β+1). A\bm p_1=\begin{pmatrix}\alpha+\beta\\ \alpha+\beta\\ 0\end{pmatrix},\quad A\bm p_2=\begin{pmatrix}1\\ \alpha+1\\ \alpha\end{pmatrix},\quad A\bm p_3=\begin{pmatrix}0\\ 1\\ \alpha-\beta+1\end{pmatrix}. P−1P^{-1} を (u,v,w)T(u,v,w)^{\mathsf T} に掛けると (u, v−u, w−v+u)T(u,\ v-u,\ w-v+u)^{\mathsf T} になるので、 P−1AP=(α+β100α100α−β). P^{-1}AP=\begin{pmatrix}\alpha+\beta&1&0\\0&\alpha&1\\0&0&\alpha-\beta\end{pmatrix}.

設問2 固有値

B=P−1APB=P^{-1}AP とおくと det⁡(λI−B)=det⁡(P−1(λI−A)P)=det⁡(P−1)det⁡(λI−A)det⁡P=det⁡(λI−A) \det(\lambda I-B)=\det\bigl(P^{-1}(\lambda I-A)P\bigr)=\det(P^{-1})\det(\lambda I-A)\det P=\det(\lambda I-A) なので、AA と BB の固有多項式は等しい。BB は上三角行列だから det⁡(λI−A)=det⁡(λI−B)=(λ−(α+β))(λ−α)(λ−(α−β)). \det(\lambda I-A)=\det(\lambda I-B)=\bigl(\lambda-(\alpha+\beta)\bigr)(\lambda-\alpha)\bigl(\lambda-(\alpha-\beta)\bigr).

設問3 対角化可能であるための条件

β≥0\beta\ge0 なので、β>0\beta>0 と β=0\beta=0 に分けて調べる。

β>0\beta>0 のとき、固有値 α+β>α>α−β\alpha+\beta>\alpha>\alpha-\beta は相異なる。相異なる固有値に属する固有ベクトルは一次独立なので、AA は一次独立な3個の固有ベクトルを持ち、対角化可能である。

β=0\beta=0 のとき、B=P−1AP=αI+NB=P^{-1}AP=\alpha I+N で、固有値は α\alpha のみ(3重)である。仮に AA が対角化可能で A=QΛQ−1A=Q\Lambda Q^{-1}(Λ\Lambda は対角行列)と書けたとすると、Λ\Lambda の対角成分は AA の固有値なのですべて α\alpha、つまり Λ=αI\Lambda=\alpha I であり、A=Q(αI)Q−1=αIA=Q(\alpha I)Q^{-1}=\alpha I となる。すると B=P−1(αI)P=αIB=P^{-1}(\alpha I)P=\alpha I となるが、実際は B−αI=N≠OB-\alpha I=N\ne O なので矛盾する。よって対角化できない。

以上より、条件に α\alpha は関係しない。

設問4 NnN^n の計算

標準基底を e1,e2,e3\bm e_1,\bm e_2,\bm e_3 とすると、NN の列から Ne1=0N\bm e_1=\bm 0、Ne2=e1N\bm e_2=\bm e_1、Ne3=e2N\bm e_3=\bm e_2 である。よって N2e1=0,N2e2=Ne1=0,N2e3=Ne2=e1, N^2\bm e_1=\bm 0,\quad N^2\bm e_2=N\bm e_1=\bm 0,\quad N^2\bm e_3=N\bm e_2=\bm e_1, すなわち N2N^2 は第3列だけが e1\bm e_1 の行列である。さらに N3ej=N(N2ej)N^3\bm e_j=N(N^2\bm e_j) は j=3j=3 でも Ne1=0N\bm e_1=\bm 0 なので N3=ON^3=O。n≥3n\ge3 では Nn=Nn−3N3=ON^n=N^{n-3}N^3=O となる。

設問5 β=0\beta=0 での AnA^n

β=0\beta=0 のとき、設問1より P−1AP=αI+NP^{-1}AP=\alpha I+N なので A=P(αI+N)P−1A=P(\alpha I+N)P^{-1} である。間の P−1P=IP^{-1}P=I が消えるので An=P(αI+N)nP−1. A^n=P(\alpha I+N)^nP^{-1}. αI\alpha I と NN は可換だから二項定理が使え、設問4の Nk=O (k≥3)N^k=O\ (k\ge3) より、n≥2n\ge2 で (αI+N)n=αnI+nαn−1N+n(n−1)2αn−2N2=(abc0ab00a), (\alpha I+N)^n=\alpha^nI+n\alpha^{n-1}N+\frac{n(n-1)}2\alpha^{n-2}N^2 =\begin{pmatrix}a&b&c\\0&a&b\\0&0&a\end{pmatrix}, ただし a=αna=\alpha^n、b=nαn−1b=n\alpha^{n-1}、c=n(n−1)2αn−2c=\frac{n(n-1)}{2}\alpha^{n-2} とおいた(α=0\alpha=0、n=2n=2 では α0=1\alpha^0=1 と読む)。左から PP を掛けると P(abc0ab00a)=(abcaa+bb+c0aa+b). P\begin{pmatrix}a&b&c\\0&a&b\\0&0&a\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a&b&c\\a&a+b&b+c\\0&a&a+b\end{pmatrix}. 行ベクトル (u,v,w)(u,v,w) に右から P−1P^{-1} を掛けると (u−v+w, v−w, w)(u-v+w,\ v-w,\ w) になるので、 An=(a−b+cb−ccca−cb+cb−ba+b). A^n=\begin{pmatrix}a-b+c&b-c&c\\ c&a-c&b+c\\ b&-b&a+b\end{pmatrix}.

最終答

設問1 P−1APP^{-1}AP の計算

P−1AP=(α+β100α100α−β)\displaystyle P^{-1}AP=\begin{pmatrix}\alpha+\beta&1&0\\0&\alpha&1\\0&0&\alpha-\beta\end{pmatrix}

設問2 固有値

固有値は α+β, α, α−β\alpha+\beta,\ \alpha,\ \alpha-\beta。β>0\beta>0 なら3つは相異なり、β=0\beta=0 なら α\alpha が3重の固有値となる。

設問3 対角化可能であるための条件

AA が対角化可能   ⟺   β>0\iff\ \beta>0(α\alpha は任意の実数でよい)。

設問4 NnN^n の計算

N2=(001000000)N^2=\begin{pmatrix}0&0&1\\0&0&0\\0&0&0\end{pmatrix}、n≥3n\ge3 では Nn=ON^n=O。

設問5 β=0\beta=0 での AnA^n

n≥2n\ge2 のとき An=αn−22(2α2−2nα+n(n−1)2nα−n(n−1)n(n−1)n(n−1)2α2−n(n−1)2nα+n(n−1)2nα−2nα2α2+2nα). A^n=\frac{\alpha^{n-2}}{2} \begin{pmatrix} 2\alpha^2-2n\alpha+n(n-1)&2n\alpha-n(n-1)&n(n-1)\\ n(n-1)&2\alpha^2-n(n-1)&2n\alpha+n(n-1)\\ 2n\alpha&-2n\alpha&2\alpha^2+2n\alpha \end{pmatrix}. α=0\alpha=0 のときは αn−2\alpha^{n-2} を n=2n=2 で 11 と読み、A2=(1−111−11000)A^2=\begin{pmatrix}1&-1&1\\1&-1&1\\0&0&0\end{pmatrix}、n≥3n\ge3 で An=OA^n=O である。

第3問 — 複素関数論:留数定理による三角関数の定積分

複素関数論:留数定理による三角関数の定積分の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 常微分方程式:回転を含む定数係数の連立線形方程式

常微分方程式:回転を含む定数係数の連立線形方程式の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 数理統計:標本分散の偏り・分散・一致性

数理統計:標本分散の偏り・分散・一致性の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 数理統計:単回帰の最小2乗推定量と推定誤差の共分散

数理統計:単回帰の最小2乗推定量と推定誤差の共分散の途中式・最終答をPDFで見る

数理科学Iの解答・解説PDF

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年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(このページ・解説6項目)

    微分積分:対数関数の展開と広義積分 / 線形代数:相似変換による三角化と行列のべき乗 / 複素関数論:留数定理による三角関数の定積分

  • 2025年度(解説6項目)

    微分積分:ガウス積分と広義積分の収束 / 線形代数:対角化と、行列と交換する行列のなす空間の次元 / 常微分方程式:外力 αcos t を持つ2元連立線形方程式

  • 2024年度(解説6項目)

    微分積分:トーラスの座標変換とヤコビアン、重積分 / 線形代数:実対称行列の固有値・直交対角化と2次形式の最大最小 / 複素関数論:留数定理と cos の冪の積分

  • 2023年度(解説6項目)

    解析:置換積分と原点を含む領域の広義重積分 / 線形代数:固有値、対角化可能性、行列のべき乗 / 複素関数:一次分数関数の反復合成と留数

  • 2022年度(解説6項目)

    微分積分:ウォリス積分と円板上の重積分 / 線形代数:像と核、共通部分空間、2乗行列の核 / 複素関数:ローラン級数の和と解析接続

2026年度の出題内容

解説6項目

この6問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析対数関数の展開と広義積分—あり
第2問線形代数相似変換による三角化と行列のべき乗相似変換の意味 / P^-1 の求め方あり
第3問—複素関数論:留数定理による三角関数の定積分—あり
第4問微分方程式回転を含む定数係数の連立線形方程式—あり
第5問標本分散の偏り・分散・一致性—あり
第6問—数理統計:単回帰の最小2乗推定量と推定誤差の共分散—あり

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 6問 → 2026年度 6問
2025年度の解答例

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
院試hubの最終確認
2026-10-26
大阪大学の公式過去問PDF