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阪大 基礎工学研究科 システム創成専攻 数理科学I 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(解説6項目)

解説6項目の分野は線形代数1項目、微分積分・解析1項目、微分方程式1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 微分積分:ウォリス積分と円板上の重積分

微分積分:ウォリス積分と円板上の重積分の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 線形代数:像と核、共通部分空間、2乗行列の核

線形代数:像と核、共通部分空間、2乗行列の核の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 複素関数:ローラン級数の和と解析接続

複素関数:ローラン級数の和と解析接続の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 常微分方程式:定数係数の2階線形方程式と初期条件

常微分方程式:定数係数の2階線形方程式と初期条件の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 統計:原点を通る単回帰と片側検定

統計:原点を通る単回帰と片側検定の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 統計:台が母数に依存する分布の最尤推定

設問1 最尤推定量

最尤推定量とは、観測値を固定したときの尤度 L(θ)L(\theta) を最大にする θ\theta のことである。密度が正規分布や指数分布のように台が θ\theta によらない場合は、対数尤度を θ\theta で微分して 00 とおけばよい。本問の密度には x≥θx\ge\theta という範囲の条件が付いていて、θ\theta が台の端点になっている。これが微分で解けない場合の合図である。実際、log⁡L=nlog⁡θ−2∑log⁡xi\log L=n\log\theta-2\sum\log x_i を微分すると n/θ>0n/\theta>0 で、00 になる θ\theta は存在せず、停留点が見つからない。最大は、尤度が 00 に落ちる直前の境界 θ=x(1)\theta=x_{(1)} で起こる。

例を挙げる。n=3n=3 で観測値が 2.5, 4, 72.5,\,4,\,7 なら、θ≤2.5\theta\le2.5 の範囲で尤度は θ3/(2.5⋅4⋅7)2\theta^3/(2.5\cdot4\cdot7)^2 に比例して増加し、θ=2.5\theta=2.5 を超えると f(2.5∣θ)=0f(2.5\mid\theta)=0 となって尤度は 00 になる。θ^=2.5\widehat\theta=2.5 である。数値の格子で尤度を比べても、最大の位置は標本の最小値と一致した。

台の範囲を逆に読み、θ≥xi\theta\ge x_i のつもりで最大値 max⁡Xi\max X_i を答えるのは誤りである。観測値 2.5,4,72.5,4,7 で θ=7\theta=7 とすると f(2.5∣7)=0f(2.5\mid7)=0 で、尤度が 00 になってしまう。標本平均を使うモーメント法も使えない。E[X]=∫θ∞x⋅θx2dx=θ∫θ∞dxxE[X]=\int_\theta^\infty x\cdot\frac{\theta}{x^2}dx=\theta\int_\theta^\infty\frac{dx}x が発散し、平均が存在しないからである。

設問2 θ^n\widehat\theta_n の分布関数

最小値の分布は、「最小値が xx 以下」の余事象「全部が xx より大きい」を使って求める。個々の分布関数を F(x)F(x) とすると、独立な標本の最小値について P(min⁡≤x)=1−{1−F(x)}nP(\min\le x)=1-\{1-F(x)\}^n が成り立つ。最大値の場合は逆で、P(max⁡≤x)=F(x)nP(\max\le x)=F(x)^n である。本問の F(x)=1−θ/xF(x)=1-\theta/x (x≥θx\ge\theta) を代入すると上の式になる。

各 XiX_i の分布関数は x≥θx\ge\theta で F(x)=∫θxθt2dt=1−θxF(x)=\int_\theta^x\frac\theta{t^2}dt=1-\frac\theta x で、1−F(x)=P(Xi>x)=θ/x1-F(x)=P(X_i>x)=\theta/x は生存関数と呼ばれる。最小値の議論では、分布関数より生存関数を使うほうが、独立性による積がそのまま現れて扱いやすい。n=1n=1 とすると 1−θ/x1-\theta/x となり、X1X_1 自身の分布関数に戻る。

分布関数としての性質も確かめられる。x=θx=\theta で値は 00 になって左側と連続につながり、x→∞x\to\infty で 11 に近づき、xx について単調に増える。微分すると密度 nθnxn+1\dfrac{n\theta^n}{x^{n+1}} (x>θx>\theta) が得られ、設問3で使う。

最大値の式と取り違える誤りは値で見分けられる。n=3n=3、x=2θx=2\theta のとき、本文の式は 1−(1/2)3=7/81-(1/2)^3=7/8 である。最大値の式 F(x)n=(1/2)3=1/8F(x)^n=(1/2)^3=1/8 を使うと 1/81/8 になる。しかし最小値は1個の観測値より小さい側に寄るので、P(θ^n≤2θ)≥P(X1≤2θ)=1/2P(\widehat\theta_n\le2\theta)\ge P(X_1\le2\theta)=1/2 でなければならず、1/81/8 はこの下限にも反する。

設問3 不偏性

推定量 θ^\widehat\theta が不偏であるとは、すべての θ\theta について E[θ^]=θE[\widehat\theta]=\theta が成り立つことをいう。不偏でないことを示すには期待値を計算して θ\theta と比べればよく、ここでは積分 ∫θ∞x−ndx=θ1−n/(n−1)\int_\theta^\infty x^{-n}dx=\theta^{1-n}/(n-1) を使う。分母の n−1n-1 が結論を決める。分母を nn と書き誤ると E[θ^n]=θE[\widehat\theta_n]=\theta となり、不偏と判断してしまう。

結果の向きは、計算の前に分かる。θ^n≥θ\widehat\theta_n\ge\theta で、θ^n=θ\widehat\theta_n=\theta となる確率は 00 だから、E[θ^n]>θE[\widehat\theta_n]>\theta となることは明らかで、推定値は常に大きめに出る。n=3n=3 なら E=1.5θE=1.5\theta、n=10n=10 なら E=10θ/9E=10\theta/9 である。標本の大きさが増えると偏り θ/(n−1)\theta/(n-1) は小さくなるが、00 にはならない。数値実験(n=5n=5、θ=2\theta=2、6万回)でも平均は 2.5002.500 で、5⋅2/4=2.55\cdot2/4=2.5 と一致した。

偏りは補正できる。n−1nθ^n\frac{n-1}{n}\widehat\theta_n の期待値は θ\theta なので、これは不偏推定量になる。また、設問4で使うので E[θ^n2]=nθn∫θ∞x1−ndx=nn−2θ2E[\widehat\theta_n^2]=n\theta^n\int_\theta^\infty x^{1-n}dx=\dfrac{n}{n-2}\theta^2 も求めておくと、分散は Var⁡(θ^n)=nn−2θ2−n2(n−1)2θ2=n θ2(n−1)2(n−2) \operatorname{Var}(\widehat\theta_n)=\frac{n}{n-2}\theta^2-\frac{n^2}{(n-1)^2}\theta^2=\frac{n\,\theta^2}{(n-1)^2(n-2)} である。分散が有限になる条件が n>2n>2 で、問題の仮定 n≥3n\ge3 はこれにあたる。

設問4 一致性

推定量 θ^n\widehat\theta_n が一致推定量であるとは、任意の ε>0\varepsilon>0 について P(∣θ^n−θ∣>ε)→0P(|\widehat\theta_n-\theta|>\varepsilon)\to0(n→∞n\to\infty)が成り立つこと、すなわち θ\theta に確率収束することである。不偏性とは別の性質で、一方からもう一方は出ない。設問3の結果は不偏でない推定量が一致推定量になりうることを示す例になっていて、偏り θ/(n−1)\theta/(n-1) が 00 に近づくことと整合する。

別の確かめ方もある。平均二乗誤差は E[(θ^n−θ)2]=Var⁡(θ^n)+(θn−1)2=2θ2(n−1)(n−2)⟶0 E\bigl[(\widehat\theta_n-\theta)^2\bigr]=\operatorname{Var}(\widehat\theta_n)+\left(\frac{\theta}{n-1}\right)^2=\frac{2\theta^2}{(n-1)(n-2)}\longrightarrow0 で、チェビシェフ(マルコフ)の不等式 P(∣θ^n−θ∣>ε)≤E[(θ^n−θ)2]/ε2P(|\widehat\theta_n-\theta|>\varepsilon)\le E[(\widehat\theta_n-\theta)^2]/\varepsilon^2 から同じ結論になる。ただし分散の計算は n≥3n\ge3 を使うので、本文の分布関数による直接の評価のほうが短い。

収束の速さは数値で見える。θ=1\theta=1、ε=0.1\varepsilon=0.1 のとき確率 (1/1.1)n(1/1.1)^n は n=10n=10 で 0.3860.386、n=50n=50 で 0.00850.0085、n=100n=100 で 7.3×10−57.3\times10^{-5} と、指数的に小さくなる。誤差の大きさは θ/n\theta/n 程度で、P(n(θ^n−θ)/θ>s)=(1+s/n)−n→e−sP\bigl(n(\widehat\theta_n-\theta)/\theta>s\bigr)=(1+s/n)^{-n}\to e^{-s} となるから、nn 倍した誤差は平均 11 の指数分布に近づく。

誤りやすい点は、「不偏でないから一致推定量でもない」と結論してしまうことである。偏り θ/(n−1)\theta/(n-1) が 00 に近づき、分散も 00 に近づくので、この結論は成り立たない。大数の法則を使う場合は、標本平均の期待値が存在することが前提になるが、本問では E[X]E[X] が発散しているので使えない。確率を直接計算する方法が自然である。

解答

設問1 最尤推定量

観測値を x1,…,xnx_1,\dots,x_n とすると、尤度は L(θ)=∏i=1nf(xi∣θ)L(\theta)=\prod_{i=1}^nf(x_i\mid\theta) である。各 f(xi∣θ)f(x_i\mid\theta) は xi≥θx_i\ge\theta のとき θ/xi2\theta/x_i^2、xi<θx_i<\theta のとき 00 なので、min⁡ixi=x(1)\min_ix_i=x_{(1)} とおくと L(θ)={θn∏ixi2(0<θ≤x(1)),0(θ>x(1)). L(\theta)= \begin{cases} \dfrac{\theta^n}{\prod_ix_i^2} & (0<\theta\le x_{(1)}),\\[3mm] 0 & (\theta>x_{(1)}). \end{cases} 0<θ≤x(1)0<\theta\le x_{(1)} では L(θ)L(\theta) は θn\theta^n の正の定数倍で、θ\theta について単調増加する。θ>x(1)\theta>x_{(1)} では 00 である。したがって L(θ)L(\theta) は θ=x(1)\theta=x_{(1)} で最大になる。

設問2 θ^n\widehat\theta_n の分布関数

XiX_i の分布関数を考える。x≥θx\ge\theta のとき P(Xi>x)=∫x∞θt2 dt=θx P(X_i>x)=\int_x^\infty\frac{\theta}{t^2}\,dt=\frac\theta x である。Xi≥θX_i\ge\theta なので θ^n≥θ\widehat\theta_n\ge\theta であり、x<θx<\theta なら P(θ^n≤x)=0P(\widehat\theta_n\le x)=0 である。x≥θx\ge\theta では、最小値が xx 以下であることの余事象は、すべての XiX_i が xx より大きいことなので、独立性から P(θ^n>x)=∏i=1nP(Xi>x)=(θx)n P(\widehat\theta_n>x)=\prod_{i=1}^nP(X_i>x)=\left(\frac\theta x\right)^n となる。

設問3 不偏性

設問2の分布関数を微分すると、θ^n\widehat\theta_n の密度は x>θx>\theta で g(x)=nθnx−n−1g(x)=n\theta^nx^{-n-1} である。n≥3n\ge3 なので以下の積分は収束し、 E[θ^n]=∫θ∞x⋅nθnx−n−1 dx=nθn∫θ∞x−n dx=nθn⋅θ1−nn−1=nn−1 θ E[\widehat\theta_n]=\int_\theta^\infty x\cdot n\theta^nx^{-n-1}\,dx=n\theta^n\int_\theta^\infty x^{-n}\,dx =n\theta^n\cdot\frac{\theta^{1-n}}{n-1}=\frac{n}{n-1}\,\theta となる。n/(n−1)≠1n/(n-1)\ne1 なので、すべての θ>0\theta>0 で E[θ^n]≠θE[\widehat\theta_n]\ne\theta である。

設問4 一致性

任意の ε>0\varepsilon>0 をとる。θ^n≥θ\widehat\theta_n\ge\theta なので ∣θ^n−θ∣>ε|\widehat\theta_n-\theta|>\varepsilon は θ^n>θ+ε\widehat\theta_n>\theta+\varepsilon と同じである。設問2で x=θ+ε≥θx=\theta+\varepsilon\ge\theta とおくと P(∣θ^n−θ∣>ε)=P(θ^n>θ+ε)=(θθ+ε)n. P\bigl(|\widehat\theta_n-\theta|>\varepsilon\bigr)=P(\widehat\theta_n>\theta+\varepsilon)=\left(\frac{\theta}{\theta+\varepsilon}\right)^n . 0<θ/(θ+ε)<10<\theta/(\theta+\varepsilon)<1 なので、n→∞n\to\infty で右辺は 00 に収束する。したがって θ^n\widehat\theta_n は θ\theta に確率収束し、θ\theta の一致推定量である。

最終答

設問1 最尤推定量

θ^n=min⁡(X1,…,Xn)\widehat\theta_n=\min(X_1,\dots,X_n)。

設問2 θ^n\widehat\theta_n の分布関数

P(θ^n≤x)={0(x<θ),1−(θx)n(x≥θ). P(\widehat\theta_n\le x)= \begin{cases} 0 & (x<\theta),\\[1mm] 1-\left(\dfrac{\theta}{x}\right)^{n} & (x\ge\theta). \end{cases}

設問3 不偏性

θ^n\widehat\theta_n は θ\theta の不偏推定量ではない。E[θ^n]=nn−1θE[\widehat\theta_n]=\dfrac{n}{n-1}\theta で、偏りは θn−1>0\dfrac{\theta}{n-1}>0 である。

設問4 一致性

θ^n\widehat\theta_n は θ\theta の一致推定量である。

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年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(解説6項目)

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  • 2022年度(このページ・解説6項目)

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2022年度の出題内容

解説6項目

この6問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析ウォリス積分と円板上の重積分—あり
第2問線形代数像と核、共通部分空間、2乗行列の核—あり
第3問—複素関数:ローラン級数の和と解析接続—あり
第4問微分方程式定数係数の2階線形方程式と初期条件—あり
第5問—統計:原点を通る単回帰と片側検定—あり
第6問台が母数に依存する分布の最尤推定—あり

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
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院試hubの最終確認
2026-10-26
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