阪大 基礎工学研究科 システム創成専攻 数理科学II 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(解説10項目)
解説10項目の分野は微分積分・解析2項目、位相・幾何1項目、線形代数1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 偏微分方程式:波動方程式の変数変換とダランベールの公式
偏微分方程式:波動方程式の変数変換とダランベールの公式の途中式・最終答をPDFで見る第2問 — 複素解析:鍵穴型の積分路と広義積分 ∫_0^∞ x^a-1(1+x)^-ndx
複素解析:鍵穴型の積分路と広義積分 ∫_0^∞ x^a-1(1+x)^-ndxの途中式・最終答をPDFで見る第3問 — 実解析:指数型関数の積分の評価と優収束定理
実解析:指数型関数の積分の評価と優収束定理の途中式・最終答をPDFで見る第4問 — 線形代数:部分空間の共通部分と固有値の最小最大原理
線形代数:部分空間の共通部分と固有値の最小最大原理の途中式・最終答をPDFで見る第5問 — 解析学:ラプラス型の積分、積分順序の交換とディリクレ積分
解析学:ラプラス型の積分、積分順序の交換とディリクレ積分の途中式・最終答をPDFで見る第6問 — 位相・距離空間:絶対収束数列の空間と、連続でない関数の閉じた準位集合
設問1 は 上の距離
距離の定義は、(i) かつ 、(ii)、(iii) の3つで、先に が から への写像として意味をもつこと(値が有限)が前提になる。無限級数の和は発散することがあるので、級数が収束することの確認が、最初の一歩になる。 が絶対収束する数列の集合であることは、この収束を保証するために使われている。
の重み は、通常の距離 より弱い距離を作る。 なので、 で近い数列は でも近いが、逆は成り立たない。たとえば と では、 で、 より小さい。設問3と4は、この2つの距離の違いに関わる。
答案で起こりやすい誤りは、(i)の「」で、各項が非負であることに触れずに「和が だから」とだけ書くことである。非負でない項が混じると、和が でも各項が とは限らない。また、三角不等式で級数の収束を断らずに項ごとの不等式を足すと、 のような意味のない式になる。有限の台をもつ数列から無作為に選んだ3つ組を5000通り、有理数の厳密計算で調べたが、距離の公理を破るものはなかった。
設問2 は連続
距離空間 上の関数 が点 で連続であるとは、任意の に対し、ある が存在して、 ならば となることをいう。ここでは が にも依存せず に取れるので、一様連続でもある。
証明の核は、 の1項だけを残す不等式である。同じ手順を第 項に使うと、一般に ( 番目の座標を取り出す関数は、リプシッツ定数 で連続)が得られる。この不等式は設問4で使う。有限台の数列の無作為な組5000通りで と を確かめ、反例はなかった。
ここで使うのは距離 であることに注意する。 も成り立つが、これは に関する連続性を示すだけで、 に関する連続性は示さない。 なので、 に関して連続であるほうが強い主張になる。
設問3 は連続でない
距離空間では、連続性は点列で言い換えられる。 が で連続であることは、 に収束する全ての点列 で が成り立つことと同値である。したがって、不連続性の証明では、 に収束するのに像が収束しない点列を1つ挙げれば足りる。
原因は、重み が遠くの座標を割り引くことである。 は「質量 を第 項に置いた数列」で、 が大きいほど質量が遠くへ逃げる。 は第 項の違いを に縮めて測るので、質量が逃げると では に近づく。 は質量の総量を測るので、逃げても のままである。通常のノルム では で、 は に近づかず、 は連続である()。 を使うことで連続性が失われる。
別の例でも同じことが起こる。 に を加えた点列は、 で と近づくが、 のままで、 には近づかない。
誤りとして、「 は連続関数 (設問2と同様に連続)の和だから連続」と書くものがある。連続関数の無限和は、収束が一様でない限り連続になるとは限らない。ここでは、残りの項 が に関して一様に小さくならない。その反例が、まさに ( なら残りの和が )である。
設問4 は閉集合
「 で は連続だから閉集合」という標準の論法は、設問3で見たとおり が連続でないために使えない。連続関数による閉集合の逆像は閉集合になるが、連続でない関数では一般に成り立たない。答案ではこの論法を取れないことを自覚し、 を連続な の上限として扱って、準位集合を の準位集合の共通部分に分解するのが、上の解答の方針である。
点列を使う書き方もある。 の点列 が に関して に収束するとする。設問2の不等式から各座標が収束し、 なので (各 で )となる。 は任意なので で、 である。
は連続関数 の上限で、このような関数は下半連続といい、準位集合 が閉集合になる。一方、 は開集合でない。 は だが、半径 の球には (、)が入り、その は である。 の 個の点で確かめた。 が開集合にならないのは、距離 のもとで が連続でないことの、もう1つの現れである。
極限を扱うときは、不等号の向きを確かめる。 とは書けず、(下半連続性)が成り立つ。 の点列では なので、 に至る。反対の不等号は一般には成り立たない。 では と、不等号が真に成り立つ。
解答
設問1 は 上の距離
とする。
が有限の実数であること
各 で で、 なので、比較判定法により級数 は収束する。よって である。
距離の公理
(i) 非負性と 。上で を示した。 なら全ての項が なので である。逆に とすると、各項が 以上で和が だから全ての項が で、 となり である。
(ii) 対称性。 より 。
(iii) 三角不等式。 とする。各 で で、両辺を で割る。3つの級数 はすべて収束するので、項を足し合わせて を得る。以上で は 上の距離である。
設問2 は連続
に対し、 の定義の和の第1項だけを取り出し、残りの項が 以上であることを使うと 任意の に対し とおけば、 ならば である。したがって は 上の連続関数(一様連続で、リプシッツ定数 )である。
設問3 は連続でない
の点列 (第 項が 、他は )を考える。 なので である。零列 も の元である。 なので、 の距離 について である。一方で 、 なので、 である。
- の形では次のようになる。 が で連続なら、 に対する があるが、 を選ぶと なのに となって矛盾する。よって は で連続でなく、 上の連続関数ではない。
設問4 は閉集合
に対し とおく。
は 上で連続
設問2の考察から なので よって はリプシッツ連続である。
は閉集合の共通部分
は、連続関数 による閉集合 の逆像なので閉集合である。各項が 以上なので、 で、 が成り立つ。したがって で、閉集合の共通部分は閉集合だから、 は の閉集合である。
最終答
設問1 は 上の距離
は有限の値をとり、非負性・・対称性・三角不等式をみたす。よって 上の距離である(証明終)
設問2 は連続
より、 は 上で連続である(証明終)
設問3 は連続でない
( に関して)だが なので、 は で連続でない(証明終)
設問4 は閉集合
は閉集合の共通部分なので、 の閉集合である(証明終)
第7問 — 数理統計:正規母集団の平均の検定と検出力
数理統計:正規母集団の平均の検定と検出力の途中式・最終答をPDFで見る第8問 — 数理統計:2次元正規分布、標本相関係数と信頼区間
数理統計:2次元正規分布、標本相関係数と信頼区間の途中式・最終答をPDFで見る第9問 — 数理統計:指数分布の最尤推定量と、丸めた観測による推定量の一致性
数理統計:指数分布の最尤推定量と、丸めた観測による推定量の一致性の途中式・最終答をPDFで見る第10問 — 数理統計:中央値が絶対偏差の期待値を最小にする
数理統計:中央値が絶対偏差の期待値を最小にするの途中式・最終答をPDFで見る年度別の解答例(5年度)
位相:連続関数の空間の部分集合は開か閉か / 解析:関数の下限と、下限に収束する数列 / 線形代数:固有ベクトルによる分解と行列のべき
2025年度(このページ・解説10項目)
偏微分方程式:波動方程式の変数変換とダランベールの公式 / 複素解析:鍵穴型の積分路と広義積分 ∫_0^∞ x^a-1(1+x)^-ndx / 実解析:指数型関数の積分の評価と優収束定理
線形代数・数値解析:べき乗法(優越固有値の固有ベクトルへの収束) / 解析学:広義積分 ∫_0^∞\bigl(x^α-1-(x+1)^α-1\bigr)dx とガンマ関数 / 解析学:数列空間 \ell^2 の内積不等式と、弱収束とノルム収束から強収束
実解析:平行移動した可積分関数と、無限遠で消える関数の積の積分 / 位相・距離空間:離散距離の開集合と、コンパクト空間からの連続写像 / 複素解析:切れ目に沿う2本の半直線と留数定理による実積分の計算
微積分:広義積分 ∫_0^∞ x^-α(1+x)^-\betadx の収束条件と対数因子の働き / 微積分:下限を含むパラメータ付き広義積分の微分と、漸化式による ∫_1^∞(x^3+1)^-3dx / 解析学:優級数による級数の収束と、∑ g_n(π/2)/n! の値
2025年度の出題内容
解説10項目
この10問の分野は微分積分・解析2問・位相・幾何1問・線形代数1問・微分方程式1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 微分方程式 | 波動方程式の変数変換とダランベールの公式 | — | あり |
| 第2問 | — | 複素解析:鍵穴型の積分路と広義積分 ∫_0^∞ x^a-1(1+x)^-ndx | — | あり |
| 第3問 | 微分積分・解析 | 指数型関数の積分の評価と優収束定理 | — | あり |
| 第4問 | 線形代数 | 部分空間の共通部分と固有値の最小最大原理 | — | あり |
| 第5問 | 微分積分・解析 | ラプラス型の積分、積分順序の交換とディリクレ積分 | — | あり |
| 第6問 | 位相・幾何 | 絶対収束数列の空間と、連続でない関数の閉じた準位集合 | — | あり |
| 第7問 | — | 数理統計:正規母集団の平均の検定と検出力 | — | あり |
| 第8問 | 2次元正規分布、標本相関係数と信頼区間 | — | あり | |
| 第9問 | — | 数理統計:指数分布の最尤推定量と、丸めた観測による推定量の一致性 | — | あり |
| 第10問 | 中央値が絶対偏差の期待値を最小にする | — | あり |
前年度(2024年度)との違い
- 大問数
- 2024年度 9問 → 2025年度 10問
大阪大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
- 公式の解答例
- 解答例の掲載なし
- 英語の扱い
- 受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
- 院試hubの最終確認
- 2026-10-26