阪大 基礎工学研究科 システム創成専攻 数理科学II 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(解説9項目)
解説9項目の分野は微分積分・解析2項目、位相・幾何1項目、確率・統計1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 実解析:平行移動した可積分関数と、無限遠で消える関数の積の積分
実解析:平行移動した可積分関数と、無限遠で消える関数の積の積分の途中式・最終答をPDFで見る第2問 — 位相・距離空間:離散距離の開集合と、コンパクト空間からの連続写像
位相・距離空間:離散距離の開集合と、コンパクト空間からの連続写像の途中式・最終答をPDFで見る第3問 — 複素解析:切れ目に沿う2本の半直線と留数定理による実積分の計算
複素解析:切れ目に沿う2本の半直線と留数定理による実積分の計算の途中式・最終答をPDFで見る第4問 — 実解析:矩形の窓による移動平均と、窓を狭めたときの収束
実解析:矩形の窓による移動平均と、窓を狭めたときの収束の途中式・最終答をPDFで見る第5問 — 関数解析:縮小写像の反復と、微分方程式の解の級数表示
関数解析:縮小写像の反復と、微分方程式の解の級数表示の途中式・最終答をPDFで見る第6問 — 数理統計:順序統計量の密度関数と、期待値の積分表示・極限
数理統計:順序統計量の密度関数と、期待値の積分表示・極限の途中式・最終答をPDFで見る第7問 — 数理統計:打ち切られた指数分布の平均と、λ の一致推定量
数理統計:打ち切られた指数分布の平均と、λ の一致推定量の途中式・最終答をPDFで見る第8問 — 数理統計:窓幅 h の密度推定量の平均・分散と、一致性の条件
数理統計:窓幅 h の密度推定量の平均・分散と、一致性の条件の途中式・最終答をPDFで見る第9問 — 確率論:独立な確率変数の和のキュムラント母関数と、4次キュムラントの不等式
設問1 のキュムラント母関数
独立な確率変数の積の期待値が期待値の積になること、対数が積を和に変えること、の2つがこの設問の全てである。積率母関数が積になることは、和 の分布が畳み込みで複雑になるのに比べ、母関数では掛け算になるという利点で、キュムラント母関数の定義 が選ばれた理由でもある。係数 は、 と見て、 の引数に入れる。
誤りとして、 を の外に出して とするものがある。これは が について線形でないことを見落としている。たとえば ポアソン分布(平均 )、 で2次キュムラントを求めると、正しくは だが、外に出すと になる。
設問2 の表示
キュムラントの2つの性質が、この式に含まれている。独立な変数の和のキュムラントは、各キュムラントの和である(加法性: の場合)。定数倍 の 次キュムラントは である(斉次性)。 乗が現れるのは、 を で 回微分するたびに係数 が1つずつ出るからである。係数が負のとき、 が奇数なら項の符号が変わり、偶数なら変わらない。
ポアソン分布(平均 )では なので、全ての で である。独立な平均 のポアソン変数について、式は となる。たとえば平均 のポアソン変数に を掛けた 次キュムラントは で、記号計算でも一致した。
ポアソン分布(平均 )、正規分布 、ベルヌーイ分布(成功確率 )の3つを で結合すると、 となり、 で、 を直接微分した値と式の値が一致した。
設問3 を分散で表す
、 が最初の2つのキュムラントで、 は3次の中心モーメント、( は4次の中心モーメント、 は分散)と表せる。ポアソン分布(平均 )、ベルヌーイ分布(成功確率 )、正規分布 で、これらの関係を記号計算で確かめた。たとえば は で、3次以上のキュムラントが全て になることが正規分布の特徴である。
結果 は、独立な確率変数の線形結合の分散を求める既知の式 と一致する。ポアソン(平均 )、、ベルヌーイ(成功確率 )を で結合すると、 である。 は で、 は である。
設問4 の不等式
凸結合の性質、すなわち数 の重み (和が )による平均は、 の最小値と最大値の間にあるという事実が骨格である。難所は、 の重み の和が とは限らないことである。条件 は、2乗の和についての条件で、 乗の和ではない。 で、等号は、全ての が か のとき、すなわち1つの で他が のときに限る。それ以外では となり、足りない重みを に割り当てる。不等式の両端に が入るのはこのためである。
を外せないことは例で確かめられる。積率母関数が全ての実数で存在するポアソン分布(平均 )は全ての で で、これを2つ、 で結合すると である。 なので、 を除いた下限 は を上回り、不等式が成り立たない。 を含めた下限は である。逆に上限側の例は、一様分布 (積率母関数 、)を2つ、同じ で結合した場合で、 は を上回る。 を含めた上限は である。
結果の意味は、重みの2乗和を に正規化した結合では、4次キュムラントが元の値の範囲か、その範囲と の間に縮むことである。独立同分布の変数を等しい重み で結合すると、 で (正規分布の値)に近づく。ポアソン(平均 )の3つを で結合すると で、これは中心極限定理の現れである。さらに、 の範囲で の無作為な と を 組発生させ、不等式と が全てで成り立つことを確かめた。
誤りとして、重みに を使い、 と書くものがある。これは の式(設問3)の形で、 には が掛かる。上のポアソン(平均 )の例では となり、正しい値 の倍になる。この誤りは、重みの和が に見えるので「 は不要」と結論づけ、上の不等式の片側が成り立たない形の答案を生む。
解答
設問1 のキュムラント母関数
とおく。 は独立なので、 も独立で、積の期待値は期待値の積になる。 各 は全ての実数で存在するので、 での値も有限である。 なので対数をとって
設問2 の表示
設問1より である。合成関数の微分を 回くり返すと、 である。 を代入して
設問3 を分散で表す
で、、 である。 より で となる。したがって で、設問2で とすると
設問4 の不等式
とする。設問2より ()である。
重みの和を評価する。 かつ なので、各 で である。よって で とおき、 と定める。すると となり、 は の凸結合(重みが非負で和が の加重平均)である。、 とおくと、各数 について で、重み を掛けて足せば したがって である。
最終答
設問1 のキュムラント母関数
設問2 の表示
設問3 を分散で表す
設問4 の不等式
は の凸結合で、(証明終)
年度別の解答例(5年度)
位相:連続関数の空間の部分集合は開か閉か / 解析:関数の下限と、下限に収束する数列 / 線形代数:固有ベクトルによる分解と行列のべき
偏微分方程式:波動方程式の変数変換とダランベールの公式 / 複素解析:鍵穴型の積分路と広義積分 ∫_0^∞ x^a-1(1+x)^-ndx / 実解析:指数型関数の積分の評価と優収束定理
線形代数・数値解析:べき乗法(優越固有値の固有ベクトルへの収束) / 解析学:広義積分 ∫_0^∞\bigl(x^α-1-(x+1)^α-1\bigr)dx とガンマ関数 / 解析学:数列空間 \ell^2 の内積不等式と、弱収束とノルム収束から強収束
2023年度(このページ・解説9項目)
実解析:平行移動した可積分関数と、無限遠で消える関数の積の積分 / 位相・距離空間:離散距離の開集合と、コンパクト空間からの連続写像 / 複素解析:切れ目に沿う2本の半直線と留数定理による実積分の計算
微積分:広義積分 ∫_0^∞ x^-α(1+x)^-\betadx の収束条件と対数因子の働き / 微積分:下限を含むパラメータ付き広義積分の微分と、漸化式による ∫_1^∞(x^3+1)^-3dx / 解析学:優級数による級数の収束と、∑ g_n(π/2)/n! の値
2023年度の出題内容
解説9項目
この9問の分野は微分積分・解析2問・位相・幾何1問・確率・統計1問・微分方程式1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 微分積分・解析 | 平行移動した可積分関数と、無限遠で消える関数の積の積分 | — | あり |
| 第2問 | 位相・幾何 | 離散距離の開集合と、コンパクト空間からの連続写像 | — | あり |
| 第3問 | — | 複素解析:切れ目に沿う2本の半直線と留数定理による実積分の計算 | — | あり |
| 第4問 | 微分積分・解析 | 矩形の窓による移動平均と、窓を狭めたときの収束 | — | あり |
| 第5問 | 微分方程式 | 縮小写像の反復と、微分方程式の解の級数表示 | — | あり |
| 第6問 | — | 数理統計:順序統計量の密度関数と、期待値の積分表示・極限 | — | あり |
| 第7問 | — | 数理統計:打ち切られた指数分布の平均と、λ の一致推定量 | — | あり |
| 第8問 | — | 数理統計:窓幅 h の密度推定量の平均・分散と、一致性の条件 | — | あり |
| 第9問 | 確率・統計 | 独立な確率変数の和のキュムラント母関数と、4次キュムラントの不等式 | — | あり |
前年度(2022年度)との違い
- 大問数
- 2022年度 10問 → 2023年度 9問
大阪大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
- 公式の解答例
- 解答例の掲載なし
- 英語の扱い
- 受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
- 院試hubの最終確認
- 2026-10-26