院試hub

阪大 基礎工学研究科 システム創成専攻 電子光科学II 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(解説8項目)

解説8項目の分野は電磁気学・回路4項目、熱・統計力学1項目、物性物理1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 電気回路:テブナン等価回路・最大電力供給・力率改善

電気回路:テブナン等価回路・最大電力供給・力率改善の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 電磁気:伝送線路の途中に挿入したキャパシタでの反射と透過

電磁気:伝送線路の途中に挿入したキャパシタでの反射と透過の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 電子回路:理想オペアンプによる計装アンプ

(1) OP3 の出力 VoutV_{\mathrm{out}} を R3,R4,VA,VBR_3,R_4,V_A,V_B で表す

理想オペアンプの条件とその根拠

理想オペアンプは、出力が Vout=A(V+−V−)V_{\mathrm{out}}=A(V_+-V_-) で開ループ利得 A→∞A\to\infty、入力インピーダンスが無限大で入力端子に電流が流れないものとして扱う。出力は電源電圧の範囲に収まる有限の値なので、A→∞A\to\infty では V+−V−=Vout/A→0V_+-V_-=V_{\mathrm{out}}/A\to0 となり、2つの入力端子は同電位になる(仮想短絡)。この結論は、出力が反転入力端子に抵抗を通して戻る負帰還がかかっていて、出力が飽和していないときにだけ使える。OP3 には R4R_4 による負帰還があるので使える。OP1 は R1R_1、OP2 は R2R_2 で同様の負帰還がかかっている。

重ね合わせによる確認

OP3 は差動増幅回路である。VB=0V_B=0 とすると V+=0V_+=0 で反転増幅回路になり、Vout=−(R4/R3)VAV_{\mathrm{out}}=-(R_4/R_3)V_A となる。VA=0V_A=0 とすると非反転増幅回路で Vout=(1+R4/R3)⋅R4VB/(R3+R4)=(R4/R3)VBV_{\mathrm{out}}=(1+R_4/R_3)\cdot R_4V_B/(R_3+R_4)=(R_4/R_3)V_B となる。2つの和が上の結果と一致する。VBV_B 側の R4R_4 は接地された分圧抵抗で、これが反転側と同じ利得 R4/R3R_4/R_3 を与え、同相の入力を打ち消す役目を持つ。図の VAV_A 側と VBV_B 側で R3R_3、R4R_4 が同じ値になっているのはそのためである。

++ 入力端子の分圧 R4/(R3+R4)R_4/(R_3+R_4) を落とし、非反転側の利得を 1+R4/R31+R_4/R_3 のまま書くと Vout=(1+R4/R3)VB−(R4/R3)VAV_{\mathrm{out}}=(1+R_4/R_3)V_B-(R_4/R_3)V_A となる。たとえば R3=10 kΩR_3=10\,\mathrm{k}\Omega、R4=100 kΩR_4=100\,\mathrm{k}\Omega で VA=VB=1 VV_A=V_B=1\,\mathrm{V} のとき、正しい式では 0 V0\,\mathrm{V} だが、この式では 1 V1\,\mathrm{V} が残り、同相の信号を打ち消せない。

(2) VAV_A を R0,R1,V1,V2R_0,R_1,V_1,V_2 で表す

電流が1本の道を通ることを使う

問題の合図は、答えの変数に R2R_2 が入らず V2V_2 が入ることである。VAV_A は OP1 の側だけを見ても決まらず、OP2 の反転入力端子の電位 V2V_2 との差が R0R_0 に電流を流す。そこで先に R0R_0 の電流 I=(V1−V2)/R0I=(V_1-V_2)/R_0 を求める。入力端子に電流が流れないので、同じ II が OP1 側では R1R_1 を、OP2 側では R2R_2 を通る。次の図に示すように、VAV_A、V1V_1、V2V_2、VBV_B は1本の直列回路 R1R_1、R0R_0、R2R_2 の各点の電位になる。

抵抗R1、R0、R2を直列に流れる共通の電流I=(V1−V2)/R0。点AはOP1の−入力、点BはOP2の−入力につながり、V1>V2のとき電流は左から右へ流れる。

自作解説図:R1R_1、R0R_0、R2R_2 を通る共通の電流 II(V1>V2V_1>V_2 のとき左から右へ流れる)

R1R_1 の電圧降下 R1IR_1I の分だけ VAV_A は V1V_1 より高く、R2R_2 の電圧降下 R2IR_2I の分だけ VBV_B は V2V_2 より低い。V1<V2V_1<V_2 のときは I<0I<0 で、VAV_A は V1V_1 より低くなる。

V1=V2V_1=V_2 なら I=0I=0 なので VA=V1V_A=V_1 となり、式に V1=V2=VV_1=V_2=V を入れると VA=(1+R1/R0)V−(R1/R0)V=VV_A=(1+R_1/R_0)V-(R_1/R_0)V=V となって合う。R0→∞R_0\to\infty(R0R_0 を外した場合)では VA=V1V_A=V_1 となり、OP1 が電圧フォロワになる。数値例 R0=1 kΩR_0=1\,\mathrm{k}\Omega、R1=10 kΩR_1=10\,\mathrm{k}\Omega、V1=1.000 VV_1=1.000\,\mathrm{V}、V2=1.005 VV_2=1.005\,\mathrm{V} では I=−5 μAI=-5\,\mu\mathrm{A}、VA=1.000+10 kΩ×(−5 μA)=0.950 VV_A=1.000+10\,\mathrm{k}\Omega\times(-5\,\mu\mathrm{A})=0.950\,\mathrm{V} となる。

OP1 を独立の非反転増幅回路とみなして VA=(1+R1/R0)V1V_A=(1+R_1/R_0)V_1 と書く誤りがある。上の数値例では VA=11 VV_A=11\,\mathrm{V} という値になり、実際の 0.95 V0.95\,\mathrm{V} と大きく異なる。R0R_0 の他端は接地されておらず OP2 の反転入力端子の電位 V2V_2 につながっているので、V2V_2 の項が必要である。

(3) VoutV_{\mathrm{out}} を R0,R1,R2,R3,R4,V1,V2R_0,R_1,R_2,R_3,R_4,V_1,V_2 で表す

2段の働き

入力段(OP1、OP2、R0R_0、R1R_1、R2R_2)は、差 V2−V1V_2-V_1 を 1+(R1+R2)/R01+(R_1+R_2)/R_0 倍にする。出力段(OP3)は、その差をさらに R4/R3R_4/R_3 倍して接地基準の出力にする。2つの利得の積が全体の利得で、増幅度の調整は R0R_0 だけで済む。このような回路を計装アンプという。

入力の2つの電圧を、同相成分 Vc=(V1+V2)/2V_c=(V_1+V_2)/2 と差動成分 Vd=V2−V1V_d=V_2-V_1 に分けて考える。V1=Vc−Vd/2V_1=V_c-V_d/2、V2=Vc+Vd/2V_2=V_c+V_d/2 を入れると VoutV_{\mathrm{out}} の式に VcV_c が現れない。VcV_c は R0R_0 に電流を流さないので、入力段は同相成分を利得1でそのまま通し、OP3 の差動で消える。センサーの微小な差動信号に大きな同相ノイズが重なる場面で使われる理由である。

符号と別の確かめ

V2>V1V_2>V_1 のとき I<0I<0 で、VA<V1<V2<VBV_A<V_1<V_2<V_B となり VB−VA>0V_B-V_A>0 なので、出力は正になる。数値例 R0=1 kΩR_0=1\,\mathrm{k}\Omega、R1=R2=R3=10 kΩR_1=R_2=R_3=10\,\mathrm{k}\Omega、R4=100 kΩR_4=100\,\mathrm{k}\Omega、V1=1.000 VV_1=1.000\,\mathrm{V}、V2=1.005 VV_2=1.005\,\mathrm{V} では、VA=0.950 VV_A=0.950\,\mathrm{V}、VB=1.005+0.050=1.055 VV_B=1.005+0.050=1.055\,\mathrm{V}、Vout=10×(1.055−0.950)=1.05 VV_{\mathrm{out}}=10\times(1.055-0.950)=1.05\,\mathrm{V} となる。公式から求めた利得 10×(1+20)=21010\times(1+20)=210 に差動入力 5 mV5\,\mathrm{mV} を掛けても 1.05 V1.05\,\mathrm{V} で一致する。

V1V_1 と V2V_2 を取り違えると、符号が逆の −1.05 V-1.05\,\mathrm{V} になる。端子の向きと V2−V1V_2-V_1 の順を、(1)の VB−VAV_B-V_A から追って確かめる。また R1R_1 や R2R_2 に電流が流れないものとして VA=V1V_A=V_1、VB=V2V_B=V_2 とおくと、Vout=(R4/R3)(V2−V1)=0.05 VV_{\mathrm{out}}=(R_4/R_3)(V_2-V_1)=0.05\,\mathrm{V} となり、正しい値の 1/211/21 になる。入力段の利得 1+(R1+R2)/R0=211+(R_1+R_2)/R_0=21 を落としたことが原因である。

解答

(1) OP3 の出力 VoutV_{\mathrm{out}} を R3,R4,VA,VBR_3,R_4,V_A,V_B で表す

OP3 の ++ 入力端子には VBV_B が R3R_3、R4R_4 で分圧されてかかる。入力端子に電流は流れ込まないので V+=R4R3+R4VB. V_+=\frac{R_4}{R_3+R_4}V_B. 負帰還がかかっているので、反転入力端子の電位 V−V_- は V+V_+ に等しい。V−V_- の端子につながる R3R_3(VAV_A 側)と R4R_4(出力側)の電流は、入力端子に流れ込まないので釣り合う。 VA−V−R3=V−−VoutR4. \frac{V_A-V_-}{R_3}=\frac{V_--V_{\mathrm{out}}}{R_4}. V−=V+V_-=V_+ を代入して VoutV_{\mathrm{out}} について解く。 Vout=(1+R4R3)V−−R4R3VA=R3+R4R3⋅R4R3+R4VB−R4R3VA=R4R3(VB−VA). V_{\mathrm{out}}=\left(1+\frac{R_4}{R_3}\right)V_--\frac{R_4}{R_3}V_A =\frac{R_3+R_4}{R_3}\cdot\frac{R_4}{R_3+R_4}V_B-\frac{R_4}{R_3}V_A =\frac{R_4}{R_3}(V_B-V_A).

(2) VAV_A を R0,R1,V1,V2R_0,R_1,V_1,V_2 で表す

OP1 の反転入力端子の電位は V+=V1V_+=V_1 に等しく、OP2 の反転入力端子の電位は V2V_2 に等しい。この2つの端子は R0R_0 でつながっている。入力端子には電流が流れ込まないので、R0R_0 を OP1 側から OP2 側へ流れる電流を II とすると I=V1−V2R0. I=\frac{V_1-V_2}{R_0}. OP1 の反転入力端子には電流が流れ込まないので、R1R_1 から来た電流はすべて R0R_0 へ向かう。すなわち R1R_1 にも、A から反転入力端子の向きに同じ電流 II が流れる。R1R_1 の両端の電位差は VA−V1=R1IV_A-V_1=R_1I なので VA=V1+R1I=V1+R1R0(V1−V2)=(1+R1R0)V1−R1R0V2. V_A=V_1+R_1I=V_1+\frac{R_1}{R_0}(V_1-V_2)=\left(1+\frac{R_1}{R_0}\right)V_1-\frac{R_1}{R_0}V_2.

(3) VoutV_{\mathrm{out}} を R0,R1,R2,R3,R4,V1,V2R_0,R_1,R_2,R_3,R_4,V_1,V_2 で表す

(2)と同様に、OP2 の反転入力端子に入った電流 II は R2R_2 を通って B へ流れ出す。R2R_2 の両端で V2−VB=R2IV_2-V_B=R_2I なので VB=V2−R2I=V2−R2R0(V1−V2)=(1+R2R0)V2−R2R0V1. V_B=V_2-R_2I=V_2-\frac{R_2}{R_0}(V_1-V_2)=\left(1+\frac{R_2}{R_0}\right)V_2-\frac{R_2}{R_0}V_1. これと(2)の VAV_A から VB−VA=(V2−V1)−R1+R2R0(V1−V2)=(1+R1+R2R0)(V2−V1). V_B-V_A=(V_2-V_1)-\frac{R_1+R_2}{R_0}(V_1-V_2)=\left(1+\frac{R_1+R_2}{R_0}\right)(V_2-V_1). (1)の結果に代入すると Vout=R4R3(VB−VA)=R4R3(1+R1+R2R0)(V2−V1). V_{\mathrm{out}}=\frac{R_4}{R_3}(V_B-V_A)=\frac{R_4}{R_3}\left(1+\frac{R_1+R_2}{R_0}\right)(V_2-V_1).

最終答

(1) OP3 の出力 VoutV_{\mathrm{out}} を R3,R4,VA,VBR_3,R_4,V_A,V_B で表す

Vout=R4R3 (VB−VA)\displaystyle V_{\mathrm{out}}=\frac{R_4}{R_3}\,(V_B-V_A)。

(2) VAV_A を R0,R1,V1,V2R_0,R_1,V_1,V_2 で表す

VA=(1+R1R0)V1−R1R0 V2\displaystyle V_A=\left(1+\frac{R_1}{R_0}\right)V_1-\frac{R_1}{R_0}\,V_2。

(3) VoutV_{\mathrm{out}} を R0,R1,R2,R3,R4,V1,V2R_0,R_1,R_2,R_3,R_4,V_1,V_2 で表す

Vout=R4R3(1+R1+R2R0)(V2−V1)\displaystyle V_{\mathrm{out}}=\frac{R_4}{R_3}\left(1+\frac{R_1+R_2}{R_0}\right)(V_2-V_1)。

第4問 — デジタル回路:CMOS 回路の動作と論理ゲート

デジタル回路:CMOS 回路の動作と論理ゲートの途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 電子物性:金属--n形半導体ショットキー接合の障壁と整流特性

電子物性:金属--n形半導体ショットキー接合の障壁と整流特性の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 結晶学:X線回折の散乱ベクトルとブラッグ条件、ω--2θ 走査

結晶学:X線回折の散乱ベクトルとブラッグ条件、ω--2θ 走査の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 統計力学:理想気体の分配関数と、重力場中での熱容量

統計力学:理想気体の分配関数と、重力場中での熱容量の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 磁性:分子場近似によるキュリー温度と自発磁化の温度変化

磁性:分子場近似によるキュリー温度と自発磁化の温度変化の途中式・最終答をPDFで見る

電子光科学IIの解答・解説PDF

2022〜2026年度(5年度) · ¥2,880

解答PDFの商品ページへ

年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(このページ・解説8項目)

    電気回路:テブナン等価回路・最大電力供給・力率改善 / 電磁気:伝送線路の途中に挿入したキャパシタでの反射と透過 / 電子回路:理想オペアンプによる計装アンプ

  • 2025年度(解説8項目)

    電気回路:直列RLC回路の共振・Q値・半値幅 / 電気回路・波動:無損失伝送線路の初期値問題と進行波・定在波 / 電子回路:ウィーン・ブリッジ発振回路と発振の角周波数

  • 2024年度(解説8項目)

    電気回路:トランジスタ増幅回路モデルの入力インピーダンス・増幅率・負荷電流 / 電気回路・高周波:直列インピーダンスだけの2端子対回路の散乱行列 / 電子回路:理想オペアンプ2個による一般化インピーダンスコンバータ

  • 2023年度(解説8項目)

    電気回路:RL直列回路の過渡応答(定電圧と階段状電圧) / 電気回路・波動:半無限の無損失伝送線路への電力供給 / 電子回路:バイポーラトランジスタのA級電力増幅回路と電力効率

  • 2022年度(解説8項目)

    電気回路:RLC並列共振回路の共振周波数・共振時の枝電流・抵抗電流の周波数特性 / 電気回路:無損失伝送線路の入力インピーダンスと1/4波長変成器 / 電子回路:理想オペアンプの増幅回路と、抵抗をコンデンサに置き換えた積分回路

2026年度の出題内容

解説8項目

この8問の分野は電磁気学・回路4問・熱・統計力学1問・物性物理1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問電磁気学・回路テブナン等価回路・最大電力供給・力率改善—あり
第2問電磁気学・回路伝送線路の途中に挿入したキャパシタでの反射と透過—あり
第3問電磁気学・回路理想オペアンプによる計装アンプ理想オペアンプの条件とその根拠 / 重ね合わせによる確認あり
第4問電磁気学・回路CMOS 回路の動作と論理ゲート—あり
第5問物性物理金属--n形半導体ショットキー接合の障壁と整流特性—あり
第6問X線回折の散乱ベクトルとブラッグ条件、ω--2θ 走査—あり
第7問熱・統計力学理想気体の分配関数と、重力場中での熱容量—あり
第8問分子場近似によるキュリー温度と自発磁化の温度変化—あり

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 8問 → 2026年度 8問
2025年度の解答例

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
院試hubの最終確認
2026-10-26
大阪大学の公式過去問PDF