院試hub

第1問 — 電気回路:RLC並列共振回路の共振周波数・共振時の枝電流・抵抗電流の周波数特性

電気回路:RLC並列共振回路の共振周波数・共振時の枝電流・抵抗電流の周波数特性の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 電気回路:無損失伝送線路の入力インピーダンスと1/4波長変成器

電気回路:無損失伝送線路の入力インピーダンスと1/4波長変成器の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 電子回路:理想オペアンプの増幅回路と、抵抗をコンデンサに置き換えた積分回路

電子回路:理想オペアンプの増幅回路と、抵抗をコンデンサに置き換えた積分回路の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 論理回路:JKフリップフロップとDフリップフロップによる2ビットカウンタ

論理回路:JKフリップフロップとDフリップフロップによる2ビットカウンタの途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 量子力学:水素原子の基底状態のハミルトニアンと r・位置エネルギー・運動エネルギーの期待値

(1) 全エネルギーのハミルトニアン

古典力学の全エネルギー p2/(2m)+Vp^2/(2m)+V の運動量 p\bm p を演算子 −iℏ∇-i\hbar\nabla に置き換えたものがハミルトニアンである。本問は、原子核の質量が電子に比べて十分大きいという条件があるので、核の運動エネルギーと換算質量の補正を考えず、電子の質量 mm をそのまま使える。電荷が異符号なので引力となり、位置エネルギーは負である。

確かめは次元で行う。q2/(4πε0r)q^2/(4\pi\varepsilon_0r) の単位は C2/(F m−1⋅m)=C2/F=J\mathrm{C^2/(F\,m^{-1}\cdot m)}=\mathrm{C^2/F}=\mathrm J でエネルギーの次元になり、ℏ2∇2/m\hbar^2\nabla^2/m の単位も (J s)2 m−2/kg=J\mathrm{(J\,s)^2\,m^{-2}/kg}=\mathrm J である。誤りには、位置エネルギーの符号を正にすること、SI単位系の指定があるのにガウス単位系の −q2/r-q^2/r と書いて 4πε04\pi\varepsilon_0 を落とすこと、および運動エネルギーの係数 1/21/2 を落として −ℏ2∇2/m-\hbar^2\nabla^2/m とすることがある。

(2) rr の期待値

期待値は、波動関数が規格化されているとき、物理量の演算子 A^\hat A について ⟨A⟩=∫ψ∗A^ψ dV\langle A\rangle=\int\psi^*\hat A\psi\,dV で定義される。∣ψ∣2 dV|\psi|^2\,dV が、体積 dVdV の中に電子を見いだす確率だからである。rr の演算子は掛け算なので、r∣ψ∣2r|\psi|^2 の積分になる。球対称な ∣ψ∣2|\psi|^2 では、半径 rr から r+drr+dr の薄い球殻の体積が 4πr2dr4\pi r^2dr で、動径確率密度は P(r)=4πr2∣ψ∣2=(4/a03) r2e−2r/a0P(r)=4\pi r^2|\psi|^2=(4/a_0^3)\,r^2e^{-2r/a_0} となる。P(r)P(r) の最大は r=a0r=a_0(最確半径)にある。平均が 3a0/23a_0/2 と最確値より大きいのは、P(r)P(r) が rr の大きい側へ裾を引く非対称な形だからである。

規格化の確認は同じ積分でできる。∫0∞r2e−crdr=2/c3\int_0^\infty r^2e^{-cr}dr=2/c^3 を使って (4/a03)⋅2a03/8=1(4/a_0^3)\cdot2a_0^3/8=1 となり、与えられた ψ\psi が規格化されている。積分の誤りには、体積要素の r2r^2 を落として (4/a03)∫r e−2r/a0dr(4/a_0^3)\int r\,e^{-2r/a_0}dr とするものがあり、結果は 1/a01/a_0 となって長さの次元にならない。指数を2乗し忘れて c=1/a0c=1/a_0 とすると ⟨r⟩=24a0\langle r\rangle=24a_0 で、正しい値の16倍になる。波動関数の2乗が確率密度である点が、指数の 2/a02/a_0 の出どころである。

(3) 静電ポテンシャルエネルギーの期待値

⟨V⟩\langle V\rangle は ⟨1/r⟩\langle 1/r\rangle から求める。VV が rr の関数なので、V(⟨r⟩)V(\langle r\rangle) のように期待値を関数の中へ入れることはできない。関数が線形でないとき、期待値と関数の順序は入れ替えられない。実際、⟨r⟩=3a0/2\langle r\rangle=3a_0/2 を VV に代入すると −(2/3) q2/(4πε0a0)-(2/3)\,q^2/(4\pi\varepsilon_0a_0) となり、正しい値の 2/32/3 倍になる。数値では、正しい ⟨V⟩\langle V\rangle が −27.21 eV-27.21\,\mathrm{eV}(ハートリーエネルギー)、この誤りの値が −18.14 eV-18.14\,\mathrm{eV} である。1/r1/r は rr の凸関数なので、一般に ⟨1/r⟩≥1/⟨r⟩\langle1/r\rangle\ge1/\langle r\rangle が成り立ち(ここでは 1/a0≥2/(3a0)1/a_0\ge2/(3a_0))、核に近い領域が ⟨1/r⟩\langle1/r\rangle に大きく寄与する。

1/r1/r は r→0r\to0 で発散するが、体積要素の r2r^2 が掛かるので積分は有限になる。(3)の結果は、最確半径 a0a_0 での位置エネルギー V(a0)=−q2/(4πε0a0)V(a_0)=-q^2/(4\pi\varepsilon_0a_0) と一致する。これは ⟨1/r⟩=1/a0\langle1/r\rangle=1/a_0 という基底状態の結果から出るもので、別の状態や別のポテンシャルで成り立つ一般則ではない。符号と大きさの確かめとして、⟨V⟩\langle V\rangle は全エネルギー EE の2倍(−27.2 eV=2×(−13.6 eV)-27.2\,\mathrm{eV}=2\times(-13.6\,\mathrm{eV}))になっており、(4)で運動エネルギーが正の 13.6 eV13.6\,\mathrm{eV} になるための前提と整合する。

(4) 運動エネルギーの期待値

全エネルギーの期待値が運動エネルギーと位置エネルギーの期待値の和になるのは、期待値の線形性による。結果は ⟨T⟩=−E\langle T\rangle=-E、⟨V⟩=2E\langle V\rangle=2E という関係を満たし、これは力が 1/r21/r^2 に比例するクーロン力のときに成り立つビリアル定理 2⟨T⟩=−⟨V⟩2\langle T\rangle=-\langle V\rangle と一致する。数値では E=−13.61 eVE=-13.61\,\mathrm{eV}、⟨V⟩=−27.21 eV\langle V\rangle=-27.21\,\mathrm{eV}、⟨T⟩=13.61 eV\langle T\rangle=13.61\,\mathrm{eV} である。

別の導き方として、運動エネルギーを直接計算できる。球対称な ψ\psi では ∇2ψ=1r2ddr ⁣(r2dψdr)=(1a02−2a0r)ψ\nabla^2\psi=\dfrac1{r^2}\dfrac{d}{dr}\!\left(r^2\dfrac{d\psi}{dr}\right)=\left(\dfrac1{a_0^2}-\dfrac2{a_0r}\right)\psi で、⟨T⟩=−ℏ22m(1a02−2a0⟨1r⟩)=ℏ22ma02\langle T\rangle=-\dfrac{\hbar^2}{2m}\left(\dfrac1{a_0^2}-\dfrac2{a_0}\left\langle\dfrac1r\right\rangle\right)=\dfrac{\hbar^2}{2ma_0^2} となる。ボーア半径の式 a0=4πε0ℏ2/(mq2)a_0=4\pi\varepsilon_0\hbar^2/(mq^2) から ℏ2/(ma0)=q2/(4πε0)\hbar^2/(ma_0)=q^2/(4\pi\varepsilon_0) なので、これは q2/(8πε0a0)q^2/(8\pi\varepsilon_0a_0) に一致する。同じ計算で H^ψ=Eψ\hat H\psi=E\psi の 1/r1/r の項が打ち消し合う条件が a0=4πε0ℏ2/(mq2)a_0=4\pi\varepsilon_0\hbar^2/(mq^2) であることも示せる。

誤りとして、引き算の向きを逆にして ⟨T⟩=⟨V⟩−E=−q2/(8πε0a0)\langle T\rangle=\langle V\rangle-E=-q^2/(8\pi\varepsilon_0a_0)(−13.6 eV-13.6\,\mathrm{eV})とするものがある。運動エネルギーの演算子 −(ℏ2/2m)∇2-(\hbar^2/2m)\nabla^2 は期待値が負にならない演算子なので、負の値は結果として成り立たない。符号の確認で気づける。

解答

(1) 全エネルギーのハミルトニアン

電子の運動エネルギーの演算子は、運動量演算子 p^=−iℏ∇\hat{\bm p}=-i\hbar\nabla から T^=p^2/(2m)=−(ℏ2/2m)∇2\hat T=\hat{\bm p}^2/(2m)=-(\hbar^2/2m)\nabla^2 である。静電ポテンシャルエネルギーは、電荷 +q+q の原子核(原点)と電荷 −q-q の電子が距離 rr だけ離れているときのクーロンエネルギーで、無限遠を0とするSI単位系では V(r)=−q2/(4πε0r)V(r)=-q^2/(4\pi\varepsilon_0r) である。この2つの和がハミルトニアンになる。

(2) rr の期待値

演算子 rr は座標をかけるだけなので、期待値は ⟨r⟩=∫r ∣ψ∣2 dV\langle r\rangle=\int r\,|\psi|^2\,dV である。ψ\psi は球対称で、球座標の体積要素は dV=r2sin⁡θ dr dθ dϕdV=r^2\sin\theta\,dr\,d\theta\,d\phi である。角度の積分は ∫sin⁡θ dθ dϕ=4π\int\sin\theta\,d\theta\,d\phi=4\pi となるので、 ⟨r⟩=1πa03⋅4π∫0∞r⋅r2 e−2r/a0 dr=4a03∫0∞r3e−2r/a0 dr \langle r\rangle=\frac{1}{\pi a_0^3}\cdot4\pi\int_0^\infty r\cdot r^2\,e^{-2r/a_0}\,dr =\frac{4}{a_0^3}\int_0^\infty r^3e^{-2r/a_0}\,dr である。ヒントで c=2/a0c=2/a_0 とおくと ∫0∞r3e−crdr=6/c4=6a04/16\int_0^\infty r^3e^{-cr}dr=6/c^4=6a_0^4/16 なので、 ⟨r⟩=4a03⋅6a0416=32 a0 \langle r\rangle=\frac{4}{a_0^3}\cdot\frac{6a_0^4}{16}=\frac{3}{2}\,a_0 となる。

(3) 静電ポテンシャルエネルギーの期待値

V(r)=−q2/(4πε0r)V(r)=-q^2/(4\pi\varepsilon_0r) の期待値は、rr の代わりに 1/r1/r の期待値を使う。 ⟨V⟩=−q24πε0⟨1r⟩,⟨1r⟩=1πa03⋅4π∫0∞1r r2e−2r/a0 dr=4a03∫0∞r e−2r/a0 dr \langle V\rangle=-\frac{q^2}{4\pi\varepsilon_0}\left\langle\frac1r\right\rangle,\qquad \left\langle\frac1r\right\rangle=\frac{1}{\pi a_0^3}\cdot4\pi\int_0^\infty\frac1r\,r^2e^{-2r/a_0}\,dr=\frac{4}{a_0^3}\int_0^\infty r\,e^{-2r/a_0}\,dr (2)と同じ形の積分で、rr のべきが3乗から1乗に下がっただけである。ヒントで c=2/a0c=2/a_0 とおくと ∫0∞r e−crdr=1/c2=a02/4\int_0^\infty r\,e^{-cr}dr=1/c^2=a_0^2/4 なので、⟨1/r⟩=(4/a03)(a02/4)=1/a0\langle1/r\rangle=(4/a_0^3)(a_0^2/4)=1/a_0 である。したがって

(4) 運動エネルギーの期待値

基底状態は H^ψ=Eψ\hat H\psi=E\psi の固有状態なので、全エネルギーの期待値 ⟨H⟩=⟨T⟩+⟨V⟩\langle H\rangle=\langle T\rangle+\langle V\rangle は固有値 E=−14πε0q22a0E=-\dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{q^2}{2a_0} に等しい。(3)の ⟨V⟩\langle V\rangle を使って ⟨T⟩=E−⟨V⟩=−14πε0q22a0+14πε0q2a0=14πε0q22a0 \langle T\rangle=E-\langle V\rangle=-\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q^2}{2a_0}+\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q^2}{a_0}=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q^2}{2a_0} である。

最終答

(1) 全エネルギーのハミルトニアン

H^=−ℏ22m∇2−14πε0q2r\hat H=-\dfrac{\hbar^2}{2m}\nabla^2-\dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{q^2}{r}

(2) rr の期待値

⟨r⟩=32 a0\langle r\rangle=\dfrac32\,a_0(a0=4πε0ℏ2/(mq2)=5.29×10−11 ma_0=4\pi\varepsilon_0\hbar^2/(mq^2)=5.29\times10^{-11}\,\mathrm m なので約 7.94×10−11 m7.94\times10^{-11}\,\mathrm m)

(3) 静電ポテンシャルエネルギーの期待値

⟨V⟩=−14πε0q2a0\langle V\rangle=-\dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{q^2}{a_0}

(4) 運動エネルギーの期待値

⟨T⟩=14πε0q22a0=q28πε0a0\langle T\rangle=\dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{q^2}{2a_0}=\dfrac{q^2}{8\pi\varepsilon_0a_0}(約 13.6 eV13.6\,\mathrm{eV})

第6問 — 電子物性:単純立方結晶の(100)表面からのX線回折とエワルド球

電子物性:単純立方結晶の(100)表面からのX線回折とエワルド球の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 電子物性:一次元結晶の電子バンド(空格子近似)と格子振動の分散関係

電子物性:一次元結晶の電子バンド(空格子近似)と格子振動の分散関係の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 磁性:磁性体薄膜の磁化曲線の読み取りと磁区構造

磁性:磁性体薄膜の磁化曲線の読み取りと磁区構造の途中式・最終答をPDFで見る

電子光科学IIの解答・解説PDF

2022〜2026年度(5年度) · ¥2,880

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年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(解説8項目)

    電気回路:テブナン等価回路・最大電力供給・力率改善 / 電磁気:伝送線路の途中に挿入したキャパシタでの反射と透過 / 電子回路:理想オペアンプによる計装アンプ

  • 2025年度(解説8項目)

    電気回路:直列RLC回路の共振・Q値・半値幅 / 電気回路・波動:無損失伝送線路の初期値問題と進行波・定在波 / 電子回路:ウィーン・ブリッジ発振回路と発振の角周波数

  • 2024年度(解説8項目)

    電気回路:トランジスタ増幅回路モデルの入力インピーダンス・増幅率・負荷電流 / 電気回路・高周波:直列インピーダンスだけの2端子対回路の散乱行列 / 電子回路:理想オペアンプ2個による一般化インピーダンスコンバータ

  • 2023年度(解説8項目)

    電気回路:RL直列回路の過渡応答(定電圧と階段状電圧) / 電気回路・波動:半無限の無損失伝送線路への電力供給 / 電子回路:バイポーラトランジスタのA級電力増幅回路と電力効率

  • 2022年度(このページ・解説8項目)

    電気回路:RLC並列共振回路の共振周波数・共振時の枝電流・抵抗電流の周波数特性 / 電気回路:無損失伝送線路の入力インピーダンスと1/4波長変成器 / 電子回路:理想オペアンプの増幅回路と、抵抗をコンデンサに置き換えた積分回路

2022年度の出題内容

解説8項目

この8問の分野は電磁気学・回路4問・物性物理1問・量子力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問電磁気学・回路RLC並列共振回路の共振周波数・共振時の枝電流・抵抗電流の周波数特性—あり
第2問電磁気学・回路無損失伝送線路の入力インピーダンスと1/4波長変成器—あり
第3問電磁気学・回路理想オペアンプの増幅回路と、抵抗をコンデンサに置き換えた積分回路—あり
第4問電磁気学・回路JKフリップフロップとDフリップフロップによる2ビットカウンタ—あり
第5問量子力学水素原子の基底状態のハミルトニアンと r・位置エネルギー・運動エネルギーの期待値—あり
第6問物性物理単純立方結晶の(100)表面からのX線回折とエワルド球—あり
第7問—電子物性:一次元結晶の電子バンド(空格子近似)と格子振動の分散関係—あり
第8問磁性体薄膜の磁化曲線の読み取りと磁区構造—あり

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
院試hubの最終確認
2026-10-26
大阪大学の公式過去問PDF