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阪大 基礎工学研究科 システム創成専攻 電子光科学II 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(解説8項目)

解説8項目の分野は電磁気学・回路4項目、物性物理2項目、熱・統計力学1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 電気回路:RL直列回路の過渡応答(定電圧と階段状電圧)

図2の場合 一定電圧 EE を加えたときの i(t)i(t)

解法は、1階線形の定数係数微分方程式 y′+ay=fy'+ay=f で ff が定数のとき、特解と同次解の和で一般解を作るというものである。成り立つのは RR と LL が時間によらず一定のときで、非線形の素子や時間変化する素子を含む回路には使えない。問題文の「RR および LL に流れる電流」は、素子が直列なので同じ電流 i(t)i(t) を指す。

初期条件を i(0)=0i(0)=0 とする根拠は、インダクタの電圧 vL=L di/dtv_L=L\,di/dt が有限であることにある。電流が瞬間的にとびとびに変わると di/dtdi/dt が無限大になり、有限な電源では支えられない。このため、電圧が急に印加された直後はインダクタが電流を通さない開放に近い状態にあり、t=0+t=0^+ では電源電圧 EE がすべて LL にかかる。確かめとして、解を微分すると i′(0)=E/Li'(0)=E/L となり、L i′(0)+R i(0)=EL\,i'(0)+R\,i(0)=E に一致する。t→∞t\to\infty では di/dt→0di/dt\to0 で LL の電圧が零になり、i→E/Ri\to E/R である。

時定数 τ=L/R\tau=L/R は、単位 H/Ω=s\mathrm{H/\Omega}=\mathrm s の時間で、t=τt=\tau で定常値の 1−e−1=63.2%1-e^{-1}=63.2\%、t=3τt=3\tau で 95.0%95.0\% に達する。たとえば R=100 ΩR=100\,\Omega、L=0.1 HL=0.1\,\mathrm H、E=10 VE=10\,\mathrm V なら τ=1 ms\tau=1\,\mathrm{ms}、E/R=100 mAE/R=100\,\mathrm{mA} で、i(τ)=63.21 mAi(\tau)=63.21\,\mathrm{mA}、i(3τ)=95.02 mAi(3\tau)=95.02\,\mathrm{mA} となる。t=0+t=0^+ の傾きは E/L=100 A/sE/L=100\,\mathrm{A/s} である。

時定数を R/LR/L と書く誤りがある。上の数値では R/L=1000 s−1R/L=1000\,\mathrm{s^{-1}} で、単位が時間でなく、e−t/τe^{-t/\tau} の指数も次元が合わない。また、LL を定常状態の短絡の感覚で扱い、t=0+t=0^+ で i=E/Ri=E/R とおく誤りもある。直後に電流が流れるなら、LL の電圧が L di/dt=0L\,di/dt=0 になって、キルヒホッフの電圧則が破れる。

図3の場合 E→2E→0E\to2E\to0 と変わる電圧を加えたときの i(t)i(t)

電圧が不連続に変わっても電流が連続になるのは、図2の場合と同じく L di/dtL\,di/dt が有限だからである。ii の値は連続で、傾き di/dt=(e−Ri)/Ldi/dt=(e-Ri)/L だけが TT と 3T3T で不連続になる。これを使うので、各区間の解の任意定数は、直前の区間の終端の値で決まる。

別の導き方として重ね合わせがある。方程式は線形なので、e(t)e(t) を単位ステップ関数 u(t)u(t) を使って e(t)=E u(t)+E u(t−T)−2E u(t−3T)e(t)=E\,u(t)+E\,u(t-T)-2E\,u(t-3T) と分ける。0<t<T0<t<T で EE、T<t<3TT<t<3T で E+E=2EE+E=2E、t>3Tt>3T で E+E−2E=0E+E-2E=0 になる。ステップ応答 g(t)=(1−e−at)/Rg(t)=(1-e^{-at})/R を使うと、i(t)=E[g(t)+g(t−T) u(t−T)−2g(t−3T) u(t−3T)]i(t)=E\left[g(t)+g(t-T)\,u(t-T)-2g(t-3T)\,u(t-3T)\right] となる。T<t<3TT<t<3T では ER[2−e−at−e−a(t−T)]\dfrac ER\left[2-e^{-at}-e^{-a(t-T)}\right] で、整理すると(ii)の式に一致する。t>3Tt>3T では ER[2e−a(t−3T)−e−a(t−T)−e−at]\dfrac ER\left[2e^{-a(t-3T)}-e^{-a(t-T)}-e^{-at}\right] で、(iii)の式を展開したものに一致する。両方の導き方で同じ式になることを、記号計算でも確かめた。

R=100 ΩR=100\,\Omega、L=0.1 HL=0.1\,\mathrm H、E=10 VE=10\,\mathrm V、T=τ=1 msT=\tau=1\,\mathrm{ms} を例にとる。電流は i(T)=63.21 mAi(T)=63.21\,\mathrm{mA}、i(2T)=149.68 mAi(2T)=149.68\,\mathrm{mA}、i(3T)=181.49 mAi(3T)=181.49\,\mathrm{mA} と増え、2E/R=200 mA2E/R=200\,\mathrm{mA} には届かない。電圧が 00 になる 3T3T で最大となり、その後は i(4T)=66.77 mAi(4T)=66.77\,\mathrm{mA}、i(5T)=24.56 mAi(5T)=24.56\,\mathrm{mA} と減る。傾きは TT の直前が (E−Ri)/L=36.8 A/s(E-Ri)/L=36.8\,\mathrm{A/s}、直後が (2E−Ri)/L=136.8 A/s(2E-Ri)/L=136.8\,\mathrm{A/s} で、3T3T の直後は −Ri/L=−181.5 A/s-Ri/L=-181.5\,\mathrm{A/s} となる。電流は連続のまま、傾きが折れ曲がる様子が下の図に現れる。

図3の電圧を加えたときの電流i(t)の概形(T=L/Rの場合)。電流はt=Tまでと、TからTの3倍までの区間で増え、t=3Tで最大になったあと減衰する。縦軸にE/Rと2E/Rの目安を示す。

自作解説図:図3の電圧を加えたときの電流(T=L/RT=L/R の場合の概形)。t=3Tt=3T で最大になり、その後は減衰する

誤りの例を2つ挙げる。1つは、T<t<3TT<t<3T の区間で初期電流を忘れ、i=2ER(1−e−a(t−T))i=\dfrac{2E}R\left(1-e^{-a(t-T)}\right) と書く答案である。これは t=Tt=T で電流が 00 に戻る不連続な式で、上の数値では i(T+)=0i(T^+)=0 となり、正しい 63.21 mA63.21\,\mathrm{mA} とずれる。t=3Tt=3T の値も 172.93 mA172.93\,\mathrm{mA} と、正しい 181.49 mA181.49\,\mathrm{mA} より小さい。もう1つは、t>3Tt>3T で時刻の基準を替えずに i(3T) e−ati(3T)\,e^{-at} と書く誤りで、t=4Tt=4T で 3.32 mA3.32\,\mathrm{mA} となり、正しい 66.77 mA66.77\,\mathrm{mA} よりはるかに小さい。最後に、区間 T<t<3TT<t<3T の定常値を E/RE/R のままにする誤りも多い。この区間の電源は 2E2E で、電流が近づく先は 2E/R2E/R である。

解答

図2の場合 一定電圧 EE を加えたときの i(t)i(t)

抵抗の電圧降下は RiRi、インダクタの電圧降下は L di/dtL\,di/dt で、これらの和が電源電圧に等しい。t>0t>0 では e(t)=Ee(t)=E なので Ldidt+Ri=E(t>0). L\frac{di}{dt}+Ri=E\qquad(t>0). この方程式の1つの解(特解)は、電流が変化しない定常状態 i=E/Ri=E/R である。電源を零にした同次方程式 L di/dt+Ri=0L\,di/dt+Ri=0 の解は Ae−Rt/LAe^{-Rt/L} なので、一般解は i(t)=ER+Ae−Rt/L. i(t)=\frac ER+Ae^{-Rt/L}. t<0t<0 では e=0e=0 で電流は流れておらず、インダクタの電流は不連続に変われないので i(0)=0i(0)=0 である。これから A=−E/RA=-E/R が決まる。

図3の場合 E→2E→0E\to2E\to0 と変わる電圧を加えたときの i(t)i(t)

電源は 0<t<T0<t<T で EE、T<t<3TT<t<3T で 2E2E、t>3Tt>3T で 00 である。方程式 L di/dt+Ri=e(t)L\,di/dt+Ri=e(t) は区間ごとに右辺だけが変わるので、各区間で「定常値+過渡項」の形の解を作り、境界の時刻でインダクタの電流が連続である条件でつなぐ。

(i) 0<t<T0<t<T。図2と同じ問題なので i(t)=ER(1−e−at),i(T)=ER(1−e−aT). i(t)=\frac ER\left(1-e^{-at}\right),\qquad i(T)=\frac ER\left(1-e^{-aT}\right). (ii) T<t<3TT<t<3T。定常値は 2E/R2E/R で、過渡項は e−a(t−T)e^{-a(t-T)} の形になる。i(t)=2ER+Be−a(t−T)i(t)=\dfrac{2E}R+Be^{-a(t-T)} とおき、t=Tt=T で(i)の値に一致する条件から B=i(T)−2ER=−ER(1+e−aT),i(t)=ER[2−(1+e−aT)e−a(t−T)]. B=i(T)-\frac{2E}R=-\frac ER\left(1+e^{-aT}\right),\qquad i(t)=\frac ER\left[2-\left(1+e^{-aT}\right)e^{-a(t-T)}\right]. t=3Tt=3T での値は i(3T)=ER[2−(1+e−aT)e−2aT]=ER(2−e−2aT−e−3aT). i(3T)=\frac ER\left[2-\left(1+e^{-aT}\right)e^{-2aT}\right]=\frac ER\left(2-e^{-2aT}-e^{-3aT}\right). (iii) t>3Tt>3T。電源が零なので、i(3T)i(3T) から時定数 L/RL/R で減衰する。 i(t)=ER(2−e−2aT−e−3aT)e−a(t−3T). i(t)=\frac ER\left(2-e^{-2aT}-e^{-3aT}\right)e^{-a(t-3T)}.

最終答

図2の場合 一定電圧 EE を加えたときの i(t)i(t)

i(t)=ER(1−e−Rt/L)(t>0)i(t)=\dfrac ER\left(1-e^{-Rt/L}\right)\quad(t>0)。RR と LL に流れる電流は同じ。

図3の場合 E→2E→0E\to2E\to0 と変わる電圧を加えたときの i(t)i(t)

0<t<T0<t<T:i(t)=ER(1−e−Rt/L)i(t)=\dfrac ER\left(1-e^{-Rt/L}\right)。
T<t<3TT<t<3T:i(t)=ER[2−(1+e−RT/L)e−R(t−T)/L]i(t)=\dfrac ER\left[2-\left(1+e^{-RT/L}\right)e^{-R(t-T)/L}\right]。
t>3Tt>3T:i(t)=ER(2−e−2RT/L−e−3RT/L)e−R(t−3T)/Li(t)=\dfrac ER\left(2-e^{-2RT/L}-e^{-3RT/L}\right)e^{-R(t-3T)/L}。

第2問 — 電気回路・波動:半無限の無損失伝送線路への電力供給

電気回路・波動:半無限の無損失伝送線路への電力供給の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 電子回路:バイポーラトランジスタのA級電力増幅回路と電力効率

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第4問 — ディジタル回路:Dフリップフロップ3段の帰還回路(ジョンソンカウンタ)

ディジタル回路:Dフリップフロップ3段の帰還回路(ジョンソンカウンタ)の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 電子物性:pn接合の拡散電位・空乏層幅・接合容量とC-V測定

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第6問 — 結晶物性:単結晶によるX線の弾性散乱とラウエ関数

結晶物性:単結晶によるX線の弾性散乱とラウエ関数の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 統計力学:2準位系のカノニカル分布と分配関数

統計力学:2準位系のカノニカル分布と分配関数の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 磁性:ブリュアン関数による常磁性体の磁化とキュリーの法則

磁性:ブリュアン関数による常磁性体の磁化とキュリーの法則の途中式・最終答をPDFで見る

電子光科学IIの解答・解説PDF

2022〜2026年度(5年度) · ¥2,880

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年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(解説8項目)

    電気回路:テブナン等価回路・最大電力供給・力率改善 / 電磁気:伝送線路の途中に挿入したキャパシタでの反射と透過 / 電子回路:理想オペアンプによる計装アンプ

  • 2025年度(解説8項目)

    電気回路:直列RLC回路の共振・Q値・半値幅 / 電気回路・波動:無損失伝送線路の初期値問題と進行波・定在波 / 電子回路:ウィーン・ブリッジ発振回路と発振の角周波数

  • 2024年度(解説8項目)

    電気回路:トランジスタ増幅回路モデルの入力インピーダンス・増幅率・負荷電流 / 電気回路・高周波:直列インピーダンスだけの2端子対回路の散乱行列 / 電子回路:理想オペアンプ2個による一般化インピーダンスコンバータ

  • 2023年度(このページ・解説8項目)

    電気回路:RL直列回路の過渡応答(定電圧と階段状電圧) / 電気回路・波動:半無限の無損失伝送線路への電力供給 / 電子回路:バイポーラトランジスタのA級電力増幅回路と電力効率

  • 2022年度(解説8項目)

    電気回路:RLC並列共振回路の共振周波数・共振時の枝電流・抵抗電流の周波数特性 / 電気回路:無損失伝送線路の入力インピーダンスと1/4波長変成器 / 電子回路:理想オペアンプの増幅回路と、抵抗をコンデンサに置き換えた積分回路

2023年度の出題内容

解説8項目

この8問の分野は電磁気学・回路4問・物性物理2問・熱・統計力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問電磁気学・回路RL直列回路の過渡応答(定電圧と階段状電圧)—あり
第2問電磁気学・回路半無限の無損失伝送線路への電力供給—あり
第3問電磁気学・回路バイポーラトランジスタのA級電力増幅回路と電力効率—あり
第4問電磁気学・回路Dフリップフロップ3段の帰還回路(ジョンソンカウンタ)—あり
第5問物性物理pn接合の拡散電位・空乏層幅・接合容量とC-V測定—あり
第6問物性物理単結晶によるX線の弾性散乱とラウエ関数—あり
第7問熱・統計力学2準位系のカノニカル分布と分配関数—あり
第8問ブリュアン関数による常磁性体の磁化とキュリーの法則—あり

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 8問 → 2023年度 8問
2022年度の解答例

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
院試hubの最終確認
2026-10-26
大阪大学の公式過去問PDF