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阪大 基礎工学研究科 システム創成専攻 電子光科学I 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(解説7項目)

解説7項目の分野は電磁気学・回路3項目、情報1項目、線形代数1項目です。解説は1問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数:対称行列の直交対角化と行列指数関数

(1) 固有値と規格化された固有ベクトル

固有値と固有ベクトルは Av=λvA\bm v=\lambda\bm v(v≠0\bm v\ne\bm 0)で定義される。この式は (A−λI)v=0(A-\lambda I)\bm v=\bm 0 と書け、同次連立1次方程式が自明でない解を持つのは係数行列が正則でないとき、すなわち det⁡(A−λI)=0\det(A-\lambda I)=0 のときである。2次では固有多項式が λ2−(tr⁡A)λ+det⁡A\lambda^2-(\operatorname{tr}A)\lambda+\det A の形になり、本問は tr⁡A=0\operatorname{tr}A=0、det⁡A=−1\det A=-1 なので λ2−1\lambda^2-1 となる。

固有ベクトルは定数倍の自由度を持つ。求めた λ=±1\lambda=\pm1 では A−λIA-\lambda I の階数が1なので、固有空間は1次元である。「規格化された」という指示は長さを ∣v∣=1|\bm v|=1 に固定する意味で、実ベクトルでは符号の自由度だけが残る。(1,1)T(1,1)^{\mathsf T} の長さは 2\sqrt2 なので、2\sqrt2 で割る。

2つの固有ベクトルが直交することは偶然ではない。実対称行列では、異なる固有値 λ1≠λ2\lambda_1\ne\lambda_2 の固有ベクトルについて v1⋅(Av2)=λ2 v1⋅v2\bm v_1\cdot(A\bm v_2)=\lambda_2\,\bm v_1\cdot\bm v_2 と (Av1)⋅v2=λ1 v1⋅v2(A\bm v_1)\cdot\bm v_2=\lambda_1\,\bm v_1\cdot\bm v_2 が成り立つ。AT=AA^{\mathsf T}=A から両辺は等しいので (λ1−λ2) v1⋅v2=0(\lambda_1-\lambda_2)\,\bm v_1\cdot\bm v_2=0、よって v1⋅v2=0\bm v_1\cdot\bm v_2=0 となる。実際 (1,1)⋅(1,−1)=0(1,1)\cdot(1,-1)=0 である。

確かめは直接の掛け算が早い。A(1,1)T=(1,1)TA(1,1)^{\mathsf T}=(1,1)^{\mathsf T}、A(1,−1)T=(−1,1)T=−(1,−1)TA(1,-1)^{\mathsf T}=(-1,1)^{\mathsf T}=-(1,-1)^{\mathsf T} となり、固有値の和 1+(−1)=0=tr⁡A1+(-1)=0=\operatorname{tr}A、積 −1=det⁡A-1=\det A とも合う。誤りは主に2つある。規格化を忘れて (1,1)T(1,1)^{\mathsf T} のまま答えると長さが 2\sqrt2 になる。固有値と固有ベクトルの対応を取り違えて、λ=1\lambda=1 に (1,−1)T(1,-1)^{\mathsf T} を割り当てると、上の計算から A(1,−1)T=−(1,−1)TA(1,-1)^{\mathsf T}=-(1,-1)^{\mathsf T} となって矛盾する。

(2) AA を対角化する直交行列 PP

nn 次正方行列 AA が対角化可能であるとは、正則行列 PP で P−1AP=ΛP^{-1}AP=\Lambda(対角行列)とできることをいう。これを AP=PΛAP=P\Lambda と書いて列ごとに読むと、PP の第 jj 列 pj\bm p_j が Apj=λjpjA\bm p_j=\lambda_j\bm p_j を満たす。つまり PP の列は固有ベクトルで、正則であるには列が一次独立でなければならない。直交行列は PTP=IP^{\mathsf T}P=I を満たす行列で、列が正規直交基底をなすことと同値であり、逆行列が転置で済む。

実対称行列は、必ず直交行列で対角化できる(スペクトル定理)。固有値が重なる場合も、各固有空間から正規直交基底を選べるからである。本問は固有値が相異なるので話はもっと簡単で、設問(1)で規格化した2本が自動的に直交し、並べるだけで PP が得られる。問題文の「直交行列」という指定は、規格化を要求している。

幾何で読むと、AA は xx と yy を入れ替える変換、つまり直線 y=xy=x に関する鏡映である。鏡の方向 (1,1)(1,1) では固有値 11、鏡に垂直な方向 (1,−1)(1,-1) では固有値 −1-1 となる。det⁡P=−1\det P=-1 なので、この PP は回転ではなく鏡映である。列を (1,1)/2(1,1)/\sqrt2、(−1,1)/2(-1,1)/\sqrt2 の順に取れば、45∘45^\circ の回転行列 12(1−111)\dfrac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}1&-1\\1&1\end{pmatrix} になり、これも同じ diag⁡(1,−1)\operatorname{diag}(1,-1) を与える。

誤りとして多いのは、規格化しない (111−1)\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix} をそのまま PP とすることである。この行列は PTP=2IP^{\mathsf T}P=2I で直交行列ではなく、PTAP=diag⁡(2,−2)P^{\mathsf T}AP=\operatorname{diag}(2,-2) と対角成分が2倍になる。もう1つは、列を入れ替えたのに diag⁡(1,−1)\operatorname{diag}(1,-1) と書くことで、(v−v+)\begin{pmatrix}\bm v_-&\bm v_+\end{pmatrix} を使うなら対角行列は diag⁡(−1,1)\operatorname{diag}(-1,1) である。この PP は P−1=PT=PP^{-1}=P^{\mathsf T}=P を満たすため、P−1APP^{-1}AP と PAP−1PAP^{-1} を取り違えても結果が変わらないが、一般の行列ではこの順序を守る必要がある。

(3) exp⁡(iθA)\exp(i\theta A) の行列表示

行列指数関数 exp⁡(M)\exp(M) の級数は、任意の正方行列で収束する。対角化できる M=PΛP−1M=P\Lambda P^{-1} では Mn=PΛnP−1M^n=P\Lambda^nP^{-1} が成り立つので、exp⁡(M)=Pexp⁡(Λ)P−1\exp(M)=P\exp(\Lambda)P^{-1} と書け、対角行列の指数関数は対角成分ごとの指数関数になる。ただし、これは行列全体を対角化した後の話である。AA のままで成分ごとに e(⋅)e^{(\cdot)} を取ってはならない。また exp⁡(X+Y)=exp⁡(X)exp⁡(Y)\exp(X+Y)=\exp(X)\exp(Y) は XY=YXXY=YX のときに限って成り立つ。

A2=IA^2=I なので (iA)2=−I(iA)^2=-I となり、iAiA は虚数単位 ii と同じ役を果たす。そのため exp⁡(θ iA)=cos⁡θ I+sin⁡θ (iA)\exp(\theta\,iA)=\cos\theta\,I+\sin\theta\,(iA) は eiθ=cos⁡θ+isin⁡θe^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta の行列版にあたる。

確かめは特殊な θ\theta で行える。θ=0\theta=0 では II になる。θ=π/2\theta=\pi/2 では iA=(0ii0)iA=\begin{pmatrix}0&i\\i&0\end{pmatrix} になり、固有値 eiπ/2=ie^{i\pi/2}=i と e−iπ/2=−ie^{-i\pi/2}=-i を持つ行列として整合する。θ=π\theta=\pi では −I-I で、固有値 e±iπe^{\pm i\pi} がともに −1-1 であることと合う。AA はエルミート行列(実対称)なので exp⁡(iθA)\exp(i\theta A) はユニタリ行列になるはずで、(cos⁡θ−isin⁡θ−isin⁡θcos⁡θ)(cos⁡θisin⁡θisin⁡θcos⁡θ)=(cos⁡2θ+sin⁡2θ)I=I\begin{pmatrix}\cos\theta&-i\sin\theta\\-i\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}\begin{pmatrix}\cos\theta&i\sin\theta\\i\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}=(\cos^2\theta+\sin^2\theta)I=I である。行列式も cos⁡2θ+sin⁡2θ=1=eiθtr⁡A\cos^2\theta+\sin^2\theta=1=e^{i\theta\operatorname{tr}A} と一致する。

もっとも起こりやすい誤りは、成分ごとに指数関数を取って (e0eiθeiθe0)\begin{pmatrix}e^{0}&e^{i\theta}\\e^{i\theta}&e^{0}\end{pmatrix} と書くことである。θ=π/2\theta=\pi/2 では (1ii1)\begin{pmatrix}1&i\\i&1\end{pmatrix} となり、固有値 ±i\pm i を持つ正しい値 (0ii0)\begin{pmatrix}0&i\\i&0\end{pmatrix} と対角成分が合わない。θ=0\theta=0 でも (1111)≠I\begin{pmatrix}1&1\\1&1\end{pmatrix}\ne I となるので、この誤答は θ=0\theta=0 を代入する確認で見つかる。

解答

(1) 固有値と規格化された固有ベクトル

固有値 λ\lambda は、Av=λvA\bm v=\lambda\bm v が v≠0\bm v\ne\bm 0 の解を持つ条件 det⁡(A−λI)=0\det(A-\lambda I)=0 から決まる。 det⁡(A−λI)=∣−λ11−λ∣=λ2−1=0⟹λ=1, −1. \det(A-\lambda I)=\begin{vmatrix}-\lambda&1\\1&-\lambda\end{vmatrix}=\lambda^2-1=0 \quad\Longrightarrow\quad \lambda=1,\ -1. λ=1\lambda=1 のとき、(A−I)v=0(A-I)\bm v=\bm 0 は −v1+v2=0-v_1+v_2=0 と同じなので v=c (1,1)T\bm v=c\,(1,1)^{\mathsf T} である。長さを1にするには ∣c∣2=1|c|\sqrt2=1 とすればよく、c=1/2c=1/\sqrt2 と取る。

λ=−1\lambda=-1 のとき、(A+I)v=0(A+I)\bm v=\bm 0 は v1+v2=0v_1+v_2=0 と同じなので v=c (1,−1)T\bm v=c\,(1,-1)^{\mathsf T}、規格化して c=1/2c=1/\sqrt2 と取る。

(2) AA を対角化する直交行列 PP

設問(1)の固有ベクトルを列に並べる。 P=(v+v−)=12(111−1). P=\begin{pmatrix}\bm v_+&\bm v_-\end{pmatrix}=\frac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}. PTP=12(1+11−11−11+1)=IP^{\mathsf T}P=\dfrac12\begin{pmatrix}1+1&1-1\\1-1&1+1\end{pmatrix}=I なので PP は直交行列で、P−1=PTP^{-1}=P^{\mathsf T} である。列ごとに AP=(Av+Av−)=(v+−v−)=P(100−1)AP=\begin{pmatrix}A\bm v_+&A\bm v_-\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\bm v_+&-\bm v_-\end{pmatrix}=P\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix} が成り立つ。左から PTP^{\mathsf T} を掛けて PTAP=(100−1). P^{\mathsf T}AP=\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}.

(3) exp⁡(iθA)\exp(i\theta A) の行列表示

行列指数関数は exp⁡(M)=∑n=0∞Mn/n!\exp(M)=\sum_{n=0}^{\infty}M^n/n! で定義される。ここで A2=(0110)2=IA^2=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}^2=I なので、A2k=IA^{2k}=I、A2k+1=AA^{2k+1}=A である。また (iθ)2k=(−1)kθ2k(i\theta)^{2k}=(-1)^k\theta^{2k}、(iθ)2k+1=i(−1)kθ2k+1(i\theta)^{2k+1}=i(-1)^k\theta^{2k+1} より exp⁡(iθA)=∑k=0∞(−1)kθ2k(2k)! I+iA∑k=0∞(−1)kθ2k+1(2k+1)!=cos⁡θ I+isin⁡θ A. \exp(i\theta A)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k\theta^{2k}}{(2k)!}\,I+iA\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k\theta^{2k+1}}{(2k+1)!} =\cos\theta\,I+i\sin\theta\,A. 設問(2)の PP を使っても同じ結果になる。A=PΛPTA=P\Lambda P^{\mathsf T}(Λ=diag⁡(1,−1)\Lambda=\operatorname{diag}(1,-1))から An=PΛnPTA^n=P\Lambda^nP^{\mathsf T} なので exp⁡(iθA)=Pexp⁡(iθΛ)PT\exp(i\theta A)=P\exp(i\theta\Lambda)P^{\mathsf T} であり、 exp⁡(iθA)=12(111−1)(eiθ00e−iθ)(111−1)=12(eiθ+e−iθeiθ−e−iθeiθ−e−iθeiθ+e−iθ). \exp(i\theta A)=\frac12\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}e^{i\theta}&0\\0&e^{-i\theta}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix} =\frac12\begin{pmatrix}e^{i\theta}+e^{-i\theta}&e^{i\theta}-e^{-i\theta}\\e^{i\theta}-e^{-i\theta}&e^{i\theta}+e^{-i\theta}\end{pmatrix}. オイラーの公式 eiθ±e−iθe^{i\theta}\pm e^{-i\theta} により、次の結果を得る。

最終答

(1) 固有値と規格化された固有ベクトル

固有値 11 の規格化固有ベクトル v+=12(11)\bm v_+=\dfrac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}、固有値 −1-1 の規格化固有ベクトル v−=12(1−1)\bm v_-=\dfrac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}。各ベクトルの符号を反転したものも答えになる。

(2) AA を対角化する直交行列 PP

P=12(111−1)P=\dfrac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}。このとき PTAP=diag⁡(1,−1)P^{\mathsf T}AP=\operatorname{diag}(1,-1)。列の順序や符号を変えた直交行列でもよい。

(3) exp⁡(iθA)\exp(i\theta A) の行列表示

exp⁡(iθA)=(cos⁡θisin⁡θisin⁡θcos⁡θ)\displaystyle\exp(i\theta A)=\begin{pmatrix}\cos\theta&i\sin\theta\\i\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}

第2問 — 複素関数論:留数定理による実軸上の広義積分

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第3問 — 情報理論:エントロピー、最適な瞬時符号、弱大数の法則

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第4問 — 量子力学:一次元の矩形ポテンシャルと定常状態の境界条件

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第5問 — 電磁気学:同軸円筒導体間の誘電体(2層と連続分布)

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第6問 — 電磁気学:磁性体入りトロイダルコイルと空隙の磁気エネルギー・力

電磁気学:磁性体入りトロイダルコイルと空隙の磁気エネルギー・力の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 電磁気学:導電性媒質中の電磁波と表皮効果

電磁気学:導電性媒質中の電磁波と表皮効果の途中式・最終答をPDFで見る

電子光科学Iの解答・解説PDF

2022〜2026年度(5年度) · ¥2,880

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年度別の解答例(5年度)

  • 2026年度(このページ・解説7項目)

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  • 2022年度(解説7項目)

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2026年度の出題内容

解説7項目

この7問の分野は電磁気学・回路3問・情報1問・線形代数1問・量子力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数対称行列の直交対角化と行列指数関数—あり
第2問留数定理による実軸上の広義積分—あり
第3問情報エントロピー、最適な瞬時符号、弱大数の法則—あり
第4問量子力学一次元の矩形ポテンシャルと定常状態の境界条件—あり
第5問電磁気学・回路同軸円筒導体間の誘電体(2層と連続分布)—あり
第6問電磁気学・回路磁性体入りトロイダルコイルと空隙の磁気エネルギー・力—あり
第7問電磁気学・回路導電性媒質中の電磁波と表皮効果—あり

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 7問 → 2026年度 7問
2025年度の解答例

大阪大学の公式過去問

公開年度範囲
領域別。電子光・物性物理・化学・化学工学・数理科学は2022〜2026年度など
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
受験する年度・専攻の募集要項で確認してください。
院試hubの最終確認
2026-10-26
大阪大学の公式過去問PDF