(1) 交換関係 [x^,p^]
交換子 [A^,B^]=A^B^−B^A^ は、2つの演算子を作用させる順序で結果がどれだけ変わるかを表す。位置と運動量では、p^ が x で微分するため、p^x^ の計算で積の微分 dxd(xf)=f+xf′ の余分な項 f が出る。これが iℏ の由来である。位置と運動量は同時に確定できず、不確定性関係 ΔxΔp≥21⟨[x^,p^]⟩=2ℏ の根拠になる。
確かめでは、f=x2 で [x^,p^]x2=x(−2iℏx)+iℏ⋅3x2=iℏx2 となり、f=1、f=eikx などでも同じ結果になる。次元も見る。x^p^ は長さ×運動量で、m⋅kgm/s=Js となり、ℏ と同じ次元になる。誤りは、p^x^ の計算で f を落とし、[x^,p^]=0 としてしまうものである。順序を逆にして [p^,x^]=iℏ と書く符号の誤りもあり、(2) で [a^,a^†]=−1 になって誤りが見つかる。
(2) [a^,a^†] とハミルトニアン H^
H^ は x^2 と p^2 の和なので、複素数の ∣z∣2=z∗z にならって (αx^−iβp^)(αx^+iβp^) と因数分解する発想が a^,a^† の定義にある。ただし x^ と p^ は交換しないので、展開で交換子の項 −21 が残る。この −21 が、H^ の表式にある零点エネルギー ℏω/2 に当たる。[a^,a^†]=1 は [x^,p^]=iℏ と同じ情報を持ち、(3) で固有値の間隔を決める。
確かめを3つ行う。次元は、αx^ が無次元なので a^ も無次元で、[a^,a^†]=1 と矛盾しない。H^ の各項は ℏω(J)で、エネルギーの次元に合う。さらに、x^=ℏ/2mω(a^+a^†)、p^=−imℏω/2(a^−a^†) を H^ に代入すると、同じ ℏω(a^†a^+21) に戻る。任意の関数への作用として、記号計算でも確かめた。
誤りは、x^ と p^ が交換するものとして a^†a^=α2x^2+β2p^2 とし、H^=ℏωa^†a^ と答えるものである。基底状態のエネルギーが 0 になってしまい、零点振動がないという誤った結論になる。[x^,p^]=−iℏ と取り違えると [a^,a^†]=−1 になり、(1) の符号を点検する合図になる。
(3) a^†∣n⟩
a^† は固有値を 1 だけ上げる昇降演算子(生成演算子)で、理由は [n^,a^†]=a^† にある。この交換子は、a^† を作用させたあとに n^ を測ると、作用させる前より 1 大きい値が出ることを意味する。H^=ℏω(n^+21) なので、a^† はエネルギーを ℏω だけ上げる。固有値が縮退しないのは、1次元の束縛状態のエネルギー準位が縮退しないという性質による。係数 n+1 は規格化から決まり、位相は ∣n+1⟩ の位相を、係数が正になるように選ぶ約束で決める。
確かめでは、同じ手順で a^∣n⟩=n∣n−1⟩ と a^∣0⟩=0 が出る。n^ の期待値が ⟨n∣n^∣n⟩=∥a^∣n⟩∥2≥0 なので固有値は非負の整数になり、En=ℏω(n+21) が導かれる。∥a^†∣1⟩∥2=2 も、波動関数で積分して確認した。
誤りは係数の落としである。a^†∣n⟩=∣n+1⟩ としてしまうと、(a^†)2∣0⟩=∣2⟩ となるが、正しくは a^†a^†∣0⟩=12∣2⟩=2∣2⟩ である。また、n と n+1 を取り違えるものもあり、a^†∣0⟩=0 と結論して基底状態から励起状態が作れないことになる。
(4) 波動関数 ψ1(x)
状態ベクトルの式を波動関数に直すには、x^=x、p^=−iℏd/dx を a^† に代入して微分演算子にする。a^† に含まれる p^ の係数の符号が −i なので、微分項の符号は −rd/dx になり、ガウス関数の微分 −x/r2 と合わさって x/r が加わる。
規格化を確かめる。∫∣ψ0∣2dx=C2∫e−x2/r2dx=C2πr=1 から C=(πr2)−1/4 である。ψ1 については
∫∣ψ1∣2dx=r22C2∫x2e−x2/r2dx=r22C2⋅2πr3=C2πr=1
となり、a^†∣0⟩=1∣1⟩ の係数 1 と整合する。ほかにも次を確かめた。a^ψ0=21(rx+rdxd)ψ0=0 で、与えられた ψ0 が基底状態の条件を満たす。ψ1 は奇関数で x=0 に節を1つ持ち、ψ0 と直交する。直接微分して H^ψ1=23ℏωψ1、n^ψ1=ψ1 も成り立つ。次元は、x/r が無次元で、C が長さの −1/2 乗である。
誤りは3つある。1つめは係数 2 を落として ψ1=C(x/r)e−x2/2r2 と書くもので、規格化積分が 1/2 になる。2つめは、a^† を a^ と取り違えて微分項の符号を逆にするもので、ψ1=0 になる。3つめは、ψ1∝xe−x2/2r2 の形だけ答えるもので、問題は C,r をそのまま使ってよいとしているので、係数 2C/r まで答える。
解答
(1) 交換関係 [x^,p^]
演算子の等式は、任意の波動関数 f(x) に作用させて確かめる。x^=x、p^=−iℏ∂/∂x なので
[x^,p^]f=x(−iℏdxdf)−(−iℏ)dxd(xf)=−iℏxf′+iℏ(f+xf′)=iℏf.
f は任意だから、演算子として [x^,p^]=iℏ である。
(2) [a^,a^†] とハミルトニアン H^
[a^,a^†]=[αx^+iβp^, αx^−iβp^] を展開する。同じ演算子どうしの交換子は 0 なので、
[a^,a^†]=−iαβ[x^,p^]+iαβ[p^,x^]=−2iαβ[x^,p^]=−2i⋅2ℏ1⋅iℏ=1.
次に a^†a^ を展開する。
a^†a^=(αx^−iβp^)(αx^+iβp^)=α2x^2+β2p^2+iαβ(x^p^−p^x^)=2ℏmωx^2+2mℏωp^2−21.
最後の項は iαβ⋅iℏ=−21 から出る。両辺に ℏω を掛けると
ℏωa^†a^=21mω2x^2+2mp^2−2ℏω=H^−2ℏω.
(3) a^†∣n⟩
n^=a^†a^ と (2) の [a^,a^†]=1 から
[n^,a^†]=a^†[a^,a^†]+[a^†,a^†]a^=a^†.
これを使うと n^a^†=a^†n^+a^†=a^†(n^+1) で、
n^(a^†∣n⟩)=a^†(n^+1)∣n⟩=(n+1)a^†∣n⟩.
a^†∣n⟩ が零でなければ、固有値 n+1 の固有状態である。ノルムは
∥a^†∣n⟩∥2=⟨n∣a^a^†∣n⟩=⟨n∣(a^†a^+1)∣n⟩=n+1>0
で零でない。固有値 n+1 の規格化された状態は位相を除いて ∣n+1⟩ ただ1つなので、a^†∣n⟩=c∣n+1⟩ と書け、∣c∣2=n+1 である。位相は c>0 に取る。
(4) 波動関数 ψ1(x)
(3) で n=0 とすると ∣1⟩=a^†∣0⟩ なので、ψ1(x)=a^†ψ0(x) である。位置表示で r=ℏ/mω を使うと α=2r1、βℏ=2r なので、
a^†=αx−iβ(−iℏdxd)=21(rx−rdxd).
ψ0=Ce−x2/2r2 の微分は ψ0′=−r2xψ0 なので
ψ1=21(rx+rx)ψ0=r2xCe−x2/2r2.
最終答
(1) 交換関係 [x^,p^]
[x^,p^]=iℏ(恒等演算子の iℏ 倍)
(2) [a^,a^†] とハミルトニアン H^
[a^,a^†]=1,H^=ℏω(a^†a^+21) (=2ℏω(a^a^†+a^†a^))
(3) a^†∣n⟩
a^†∣n⟩=n+1∣n+1⟩
(4) 波動関数 ψ1(x)
ψ1(x)=2Crxexp(−2r2x2)(r=ℏ/mω。C=(πr2)−1/4 なら規格化されている)